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初夜もまた試練
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じっと睨みつけたら、
「こういう時こそ、抱っこしてって言うべきじゃないんですか?」とからかわれてしまう。
私の夫は、結構いやな人だった。
どうしよう?
これから起こることを、素面で耐えられる気がしない。神経回路のどこかがプチッと断絶する可能性がある。
「や、優しくしなかったら。業務完了にて離婚します」
「どうかな、それは難しいかもしれないな?」
難しいのは優しくすること?
離婚すること?
耳の後ろを撫でて扇を取りだそうとしたら、手をとられて指先を舐められた。そのまま吸われて、背筋に刺激が走る。
「こ、これが。見せていない、本性ですか?」
「そんなこと言いましたっけ?」
融はぼけたことを言って、微笑んだ。
失われた記憶の糸を整えて咲綾を元の生活に戻すこと、樹内兄妹の処遇、甲子童子の木像を作ること、万理が食べてしまった禁書の確認などなど。
今回の業務では、まだやらなければいけないことがたくさんあるのに。
「諦めてください」
人差し指でおいでおいでをして、視線をよこせと言う。
――――うぅ、恐い。融さん。
視線が交わる瞬間に唇が触れ合う感覚がある。
しびしびっと身体の芯が痺れた。
そして記憶の部屋が見えてくるのだ。
見えるものは分かっている――――!
これが今日一番の試練になるとは、思いもしなかった。
「こういう時こそ、抱っこしてって言うべきじゃないんですか?」とからかわれてしまう。
私の夫は、結構いやな人だった。
どうしよう?
これから起こることを、素面で耐えられる気がしない。神経回路のどこかがプチッと断絶する可能性がある。
「や、優しくしなかったら。業務完了にて離婚します」
「どうかな、それは難しいかもしれないな?」
難しいのは優しくすること?
離婚すること?
耳の後ろを撫でて扇を取りだそうとしたら、手をとられて指先を舐められた。そのまま吸われて、背筋に刺激が走る。
「こ、これが。見せていない、本性ですか?」
「そんなこと言いましたっけ?」
融はぼけたことを言って、微笑んだ。
失われた記憶の糸を整えて咲綾を元の生活に戻すこと、樹内兄妹の処遇、甲子童子の木像を作ること、万理が食べてしまった禁書の確認などなど。
今回の業務では、まだやらなければいけないことがたくさんあるのに。
「諦めてください」
人差し指でおいでおいでをして、視線をよこせと言う。
――――うぅ、恐い。融さん。
視線が交わる瞬間に唇が触れ合う感覚がある。
しびしびっと身体の芯が痺れた。
そして記憶の部屋が見えてくるのだ。
見えるものは分かっている――――!
これが今日一番の試練になるとは、思いもしなかった。
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