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あなた方が死ぬまで観察します

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 咲綾の記憶を元に戻す作業は、落日が率先して行う。私や融、そして椿木が手伝うこともあった。椿木はあの一件以降、挑文師に関する見方が変わったようだ。
 個人的に連絡をくれて「漠の清浄以外でも、何かあれば手伝うよ」と言ってくれる。

 樹内兄妹は千景の私刑により、黄昏の監獄にいた。
「禁書をもてあそんだ挑文師がいる、制裁は必要か?」
 と本局に指示を仰いだら、捨て置けと冷たい指令がくだる。
 本局は相変わらず禁書や禁術に関して、遅速だ。

 禁書の器を作るためにスクールがある、と樹内兄妹は語っていた。
 それが本当なら、本局にも加担していた挑文師がいると暗に示している。
スクールの先生たちは私たちが護る者と恐ろしい者のどちらに転がるのかを、案じていたように思う。

「恐ろしいものにならないでほしい」と鴉先生は言った。
 先生たちが加担していたとは思えない。
 そう、水盤表の教師である我々と同様に、彼らスクールの教師も生徒の前途に幸いが多いことを望んでいたように思う。

 融は本局にいたことがあるというけれど、その全体像は分からないようだ。
 挑文師業にはまだ分からないことが多い。

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