別れを告げたら、赤い紐で結ばれて・・・ハッピーエンド

KUMANOMORI(くまのもり)

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なぜかラブラブ

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 目覚めはほぼ同時で、二人して起きあがる。
「軽く食べたら、朝ランする?」
 慧ちゃんはとてもらしいことを言った。私も朝ランは好きだから、する、と答える。
 軽めの朝ご飯としてヨーグルトとプロテインを用意していたときに、薬指に何もついていないことに気がついた。
「ついてない」私が思わず呟くと、慧ちゃんは「気づいちゃったか」と言う。
「俺は朝方一回起きたときに気づいてたけど、知らんぷりしてみた。ラッキーって思われるんじゃないかって」
「え、確かに、そうかもだけど」
 どこか物足りなく感じるのはなぜだろう。
「でも、朝ランはしてくれんの?」
「う、うん」
「別れる話は?」
 慧ちゃんはグイと顔を寄せてくる。濃厚な夜が明けて、何でもないように話を蒸し返すのは難しかった。腕と腕が触れあい、ぞくっと自分の中に生まれる熱に驚く。私は思わず身体を動かして、腕をどかすと、
「今日のところは保留、かな。もちろん、証拠集めたら別れると思うけど」と言った。
「そっか。まだ那々の彼氏ヅラできるんだ」慧ちゃんはそう言って、私の分のヨーグルトもボウルによそってくれる。
「ありがとう」
 慧ちゃんは優しい。私が無謀な相手を追いかけていたときも、友達として仲良くしてくれていたし、私を導いてくれる。

 天然モテ男に無謀な恋をするということは、他の女の子たちに敵愾心を抱き続けていたわけで、あまり健全な精神性ではなかった。二股だから三股だが、それ以上だか、何人いるか分からない自分以外の女の子に対して、いつも不安を抱えていたのだから。

 結局、天然モテ男を射止めたのは、二歳上の先輩だった。私にとっても憧れの先輩だったので、そりゃそうか、と思う反面、自己肯定感はダダ下がりだ。自分には何もないような気がしてしまっていた私に、「潤を見返すのをモチベにしたらいいじゃん」という慧ちゃんの言葉で、私はトレーニングの道に進んだ。その間ずっと慧ちゃんはそばにいてくれた。
 もちろん、友達としての仲なので、他に慧ちゃんに彼女が、私にも短期間だけ付き合う彼氏がいたこともある。でも友達としての関係はずっと続いていたのだった。


「那々以外と付き合っても、やっぱ続かせられない。那々が好きだ」
彼女との別れを聞いて、飲みに誘った帰りに改めてそんなことを言われた。お酒が入った言葉やベッドでの言葉は信用しないと決めていたけれど、そのときばかりは結構心に響いちゃったのは事実で。私はそれ以降、痛手を上書きするためだけの、男性付き合いをやめた。それからほどなくして、慧ちゃんを付き合うことになったのだ。


 朝ランを終えて、シャワーを浴びたらそれぞれ出勤の準備をする。慧ちゃんの家に少しばかり置いていた着替えが役立った。ウェアは職場のロッカーにストックがあるので、今日のところはわざわざ自宅に戻らなくても良さそうだ。
「二、三分だけ時間ずらそうか」と私は言う。
 私たちが付き合っていることは、一部の職員だけが知っている。別に隠すことでもないから、聞かれれば話しているけれど、新しく来たトレーナーさんやバイトさんの中には知らない人もいる。
 あえて話をしない場合も多いので、慧ちゃんに好意を抱いている新人トレーナーの話を聞くこともあった。
「別に一緒でもいいじゃん、隠してないし」
 慧ちゃんがそう言うので、時間をずらすことなく、出勤した。その日の仕事で、まさか数年ぶりの衝撃がやって来るとは思わない。
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