52 / 74
第2章 魔塔編
【その後③】酔い
しおりを挟む「っ、イーゼル!」
「?」
夕食の場で、響いた父の声に驚いて外らを向くと、兄様が何かを飲んでいる所だった。
そして兄様は傾けたコップを持ったまましばらく停止し、そっとコップから口を離し、口の中のものを飲み込む。そしてその口元を上品にナプキンで拭った。
「...大丈夫か?」
父の心配げな問いかけに、兄様は何でもないように返事をする。
「はい。」
「すぐに水を持ってきてくれ。
___それは、ワインだ。」
わーお。
どうやら兄様は間違ってお酒を飲んでしまったらしい。
でも、心配をする父を他所に兄様は本当に何ともないようで、いつもの冷静な姿のままその後の食事を終えた。
それが、今からおよそ10分前の事だった。
「...ああ、アステル。可愛いな。可愛い。好きだ。どうしてこんなに可愛いんだ?アステルだからか?アステルだからだな。天使と書いてアステルと読むんだろうな。俺の弟は世界一可愛い。すぅ...良い匂いだ。」
そしてこれが現在の兄様。
頬をほんのり赤く染めたまま、いつも以上に溶けた顔をして僕を抱きしめている。声も甘い。甘すぎる。かろうじて呂律は正常だが、なんかもう吐息が多い。僕が女の子だったら真っ赤になってるだろう。
あとずっと吸われてる。猫みたいに。
幸い今は2人きりだから、この兄様を目撃しているのは僕だけだ。父も母も「イーゼルならアステルに何かする事はないだろう。」と言う絶対的な信頼をおいて部屋を出て行ってしまった。
えぇ...?僕1人でこの兄様を相手できるかな?
「可愛い。小さいな...。手も足も顔もこんなに小さい...。ん?大きいか?アステル、大きくなったなぁ。前までは両手で抱えたらすっぽり隠れるくらいだったのに。...成長したんだな。」
「はい!おおきくなりました!」
「おしゃべりも上手になったな。この可愛い口が初めてにいさまと言った時のことは、忘れられない。顔を真っ赤にして泣いていたな。俺の、ために。...はぁ、可愛い。可愛すぎる。好きだアステル。」
両手で頬を掴まれ真正面から兄様の顔を見つめる。そんなうっとり見つめられると非常に恥ずかしいですが...。
ああ!唇を撫でないでください!くすぐったいですよ!!
「うぅ...。」
「どうした、そんなに可愛い声を出して。ご機嫌斜めなのか?」
はぁ、と熱い息が頬を撫でる。
うぅーー!!耳元で話さないで!!ぞわぞわする!!
「アステルが嫌なものは全部俺が壊してやるからな...。いつか、空間魔法がうまくなったらアステルと俺だけの世界を作るんだ。...そうすれば、アステルと俺はずっと一緒だ。」
あ、このちょっと危うい兄様はなんか久しぶりだ。というか使えるものが増えたせいで悪化してる...?すごく壮大な事をお考えなんですね。
「...俺の世界に閉じ込めたい。」
あぶなーーーい!!!!
「そっ、そうですね!ぼくは、このいえで!ずっとにいさまといっしょです!」
「そうだな。それでいい。...今は、まだ。」
「................。」
今は、まだ。
...うーん、よし!無視しよう!!無視だもう!!
ごめんね!兄様!!!
「アステルは冷たくて気持ちがいい...。」
「そ、それは、にいさまがあついから...。ひゃ、」
スッと首に触れられて、くすぐったくて変な声が出る。それに何故か兄様は気をよくしたのか、すりすりと撫でる手が止まらない。
「ぅっ、ぁ、くすぐったいです...。」
「ふっ...可愛い声。もっと聞かせてくれ。アステル。俺のアステル。お前の声だけを聞いていたい。」
ふぅ、と再び耳に息がかかる。
もぉー!!なんなんだ!!誰だ!兄様にこんな危ない事を教えたのは!!けしからん!!他所でやったらどうするんですか!!
...させるか!!!!!!!!!!!!(怒)
「に、にいさま、おちついて...。」
「ん?」
~っ!!だから!なんで「ん?」の一言でそんなに色気が出せるんですか!?どこで覚えてきたんですか!?この世界にネットはないはずなのに!
「アステルの、かわいい声、きかせてくれないのか...?」
「ろ、ろれつがあやうい...!もう、ねたほうがいいですよ。にいさま。」
というか上目遣いは反則ですから!絶対自分の顔がいいのを分かっててやってますよね!?
「じゃあ、さいごに。そのかわいぃ口で、いってみろ。いつもの、やつ。」
「いつもの...?」
「あぁ。いわなくても、分かるだろう?」
きゅっと、意地悪そうに細められた赤い目を見つめながら質問の答えを考える。
「えぇ...?うーん...。」
いつもの、いつもの...。
僕が、兄様にいつも言っていること...。
...ああ、そうか。
「いーぜるにいさま、だいすきです。」
「あぁ...。おれも、大好きだ。愛してる。アステル。かわいい、おれのアステル...。」
最後に一度僕の名前を呟いて、兄様はソファに座ったまますぅ、と眠りについた。
次の日、頭痛に耐えながら兄様は必死に謝ってきた。特に痛い事をされた訳でも、嫌がる事をされた訳でも無いので、なにに謝られているのかはいまいちわからなかったが。
寧ろ有料級のイケメンが見れて眼福だった。
なのに兄様は「嫌いにならないでくれ...。」と青い顔をしていたから、「だいすきですよ!!」と元気よく返しておいた。僕がいつも言うやつだ。
まだ未成年だからお酒は飲めないけど、いつかまたあの甘々兄様に会いたいなと思った。
あ!今でも十分甘々なんですけどね!!!
___________________________
今回、兄弟の絡みが物足りないので小話を...!
それではここまで第2章をお読みいただきありがとうございます!
たくさんの評価も励みになりました🙇♀️
次章はアステルがメインというか、アステルが8割くらいイーゼルの腕の中にいます🫶
更新がいつ頃になるかは未定です💦
ではまた...!!(更新開始のお知らせはXでしてます)
3,410
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!
由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。
さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった!
しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って?
いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!
【8話完結】いじめられっ子だった僕が、覚醒したら騎士団長に求愛されました
キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。
けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。
そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。
なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」
それが、すべての始まりだった。
あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。
僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。
だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。
過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。
これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。
全8話。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる