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第9話 工房へ
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ロンが帰っていき、部屋に戻ると、すぐに夕食の時間がやってきた。
ロンの質問責めはスゴかった~。
わからないことを理解しようとあれこれ質問してきたのだ。
延々と続く質問に圧倒されたし、答えるのが大変だった。
ロンの新しいものを知りたい、作りたいという熱意は、素晴らしいと思う。
でも、正直なところドッと疲れた。
これから夕食でパパにプレゼンしたかったのに、何も準備できてない。
とりあえず、ざっくりとメモした内容を話しておく。
パパと兄に誉められ、後日詳しい話をすることになった。
ママと姉は、姉の縁談話について話しているようだ。
今、お付き合いしている彼 エードラン伯爵令息のフレデリック様との縁談をすすめることが決まった。
学院卒業と同時に、姉はシュシューリア伯爵家の養女となり、彼と婚約することになった。
相手が上位貴族な為、ランドリー家ではダメなのだそう。
最近は、休日も彼が馬車で迎えに来ている。
姉は、エードラン伯爵家やシュシューリア伯爵家にて貴族としての教育を受けているらしい。
この世界の成人は16歳。
16歳になった後、婚姻する。
姉が将来は貴族へ嫁ぐ。
好きな人と縁を結べるのは、幸せなことで恵まれているとは思うが……育った環境が違いすぎて心配になる。
ライアには早くも婚約者がいるようだし、サマンサにも縁談は舞い込んでいるようだ。
私は……私は商家の娘で、平民だ。
パパとママは、平民同士の恋愛結婚だ。
アマーヤ学院で出会ったらしい。
「カスミンは自由に恋愛して、好きな人と一緒になっていいのよ。家のことは心配いらないから。」
ママはそう言ってくれ、パパも頷いてくれた。
ジーン兄さんは、学校と商会を行き来してばかりで、浮いた話一つない。
パジャマの商品化にあたり、パパについて忙しく動き回っていたらしい。
ランドリー商会の美人姉妹の兄だよ。
見た目はなかなかだ。
「このままだとジーンは見合いかしらねぇ
。」とママが話していた。
***
後日、パパとジーン兄さんに呼ばれ、資料を持って執務室へ向かうと、工房長のジャンと息子のレン、ロンも集められていた。
長テーブルに私の持ってきた資料が並べられ、私が次々と説明していく。
全ての説明が終わると、パパが口を開いた。
「ジーン、レンと組んでどれかやってみないか?」
「「いいんですか?」」
ジーン兄さん、レンの言葉が揃った。
「おうっ。パジャマの時に学んだことを自分たちでやってみろ。」
「「はい!」」
前のめりになった兄たちの声がまた揃った。
すぐに二人でどれを商品化するのか話し合い出した。
ロンは兄たちを羨ましそうに見ている。
じゃあ、解散となった時、突然 ロンが声をあげた。
「メイソンさん、俺にもチャンスをいただけませんか?」
「ほーうっ、ロンもやってみたいのか。お前は何を作りたいんだ?」
「俺は、男性用のTシャツってやつを作ってみたいです。」
「今回の商品化候補にあがってないから、まぁよかろう。勉強と思って、作ってみなさい。上手くできたら、商品化を検討しよう。」
「ありがとうございます。俺、俺、頑張ります!」
ロンは感極まったようで、顔を真っ赤にして今にも泣き出しそうだ。
拳を握りしめ、プルプルと震えている。
「パパ、私も!私もやりたい。工房へ行きたい。」
ピョンピョン跳びはねアピールする。
「カスミンは裁縫嫌いじゃなかったのか?」
パパの問いに、そういえばサリにも『裁縫をしない』と言われたなと思い出した。
フルフルと首を横に振りつつ、
「嫌いじゃないよ。やってみたい!やりたい!」とアピールする。
「ロン、すまないが、カスミンと一緒に取り組んでくれないか?
ジャン、工房にカスミンも出入りしていいか?」
「カスミン様なら自由に出入りしてもらって構いませんよ。」
すぐに工房超ジャンの許可がもらえた。
「わかりました。カスミン、よろしくな!」
「うん、ロン、よろしく!」
ロンと顔を見合わせ、グータッチ。
やったね!
私も工房に出入りして、ロンと一緒にTシャツ作りに携われることになった。
***
次の休日、ロンと一緒に工房へと向かう。
窓の外からロンがミシンを使う姿を見た時から、ずっと入ってみたいと思っていた。
工房近くを通った時には、こっそりと窓に近寄り、ロンが布を扱う姿を眺めていた。
誰でも入れるわけじゃないけど、私はランドリー商会の娘だからね。
商会の工房近くをウロチョロしても咎められなかったんだと思う。
もーうっ、嬉しくって楽しみで、昨夜はなかなか寝付けなかった。
工房へ近づいているだけで、ニコニコ笑顔になっちゃう。
ロンも嬉しそう。
ご機嫌な二人で、工房へと足を踏み入れる。
ロンは慣れた感じで元気いっぱいな挨拶を。
「おはようございます。」
私は緊張でドキドキしながらも、しっかりと挨拶を。
「おはようございますっ!今日から時々出入りします。カスミン・ランドリーです。よろしくお願いします。」
べコリと頭を下げる。
すると、みな作業の手を止めて、顔をあげた。
「君がパジャマの発案者?こんな小さい子が?」
「パジャマ、俺も買ったぞ。」
「新たな商品を作るらしいな。今から楽しみだ。」
あちこちからパラパラと声があがる。
静かになると、またカタカタカタカタとミシンの音、ジョキジョキッと布を切る音、懐かしい音たちが響く。
あー、やっぱり私はこの音たちに囲まれている瞬間が幸せだ。
どうして、カスミンは裁縫をしなかったの?
ロンの質問責めはスゴかった~。
わからないことを理解しようとあれこれ質問してきたのだ。
延々と続く質問に圧倒されたし、答えるのが大変だった。
ロンの新しいものを知りたい、作りたいという熱意は、素晴らしいと思う。
でも、正直なところドッと疲れた。
これから夕食でパパにプレゼンしたかったのに、何も準備できてない。
とりあえず、ざっくりとメモした内容を話しておく。
パパと兄に誉められ、後日詳しい話をすることになった。
ママと姉は、姉の縁談話について話しているようだ。
今、お付き合いしている彼 エードラン伯爵令息のフレデリック様との縁談をすすめることが決まった。
学院卒業と同時に、姉はシュシューリア伯爵家の養女となり、彼と婚約することになった。
相手が上位貴族な為、ランドリー家ではダメなのだそう。
最近は、休日も彼が馬車で迎えに来ている。
姉は、エードラン伯爵家やシュシューリア伯爵家にて貴族としての教育を受けているらしい。
この世界の成人は16歳。
16歳になった後、婚姻する。
姉が将来は貴族へ嫁ぐ。
好きな人と縁を結べるのは、幸せなことで恵まれているとは思うが……育った環境が違いすぎて心配になる。
ライアには早くも婚約者がいるようだし、サマンサにも縁談は舞い込んでいるようだ。
私は……私は商家の娘で、平民だ。
パパとママは、平民同士の恋愛結婚だ。
アマーヤ学院で出会ったらしい。
「カスミンは自由に恋愛して、好きな人と一緒になっていいのよ。家のことは心配いらないから。」
ママはそう言ってくれ、パパも頷いてくれた。
ジーン兄さんは、学校と商会を行き来してばかりで、浮いた話一つない。
パジャマの商品化にあたり、パパについて忙しく動き回っていたらしい。
ランドリー商会の美人姉妹の兄だよ。
見た目はなかなかだ。
「このままだとジーンは見合いかしらねぇ
。」とママが話していた。
***
後日、パパとジーン兄さんに呼ばれ、資料を持って執務室へ向かうと、工房長のジャンと息子のレン、ロンも集められていた。
長テーブルに私の持ってきた資料が並べられ、私が次々と説明していく。
全ての説明が終わると、パパが口を開いた。
「ジーン、レンと組んでどれかやってみないか?」
「「いいんですか?」」
ジーン兄さん、レンの言葉が揃った。
「おうっ。パジャマの時に学んだことを自分たちでやってみろ。」
「「はい!」」
前のめりになった兄たちの声がまた揃った。
すぐに二人でどれを商品化するのか話し合い出した。
ロンは兄たちを羨ましそうに見ている。
じゃあ、解散となった時、突然 ロンが声をあげた。
「メイソンさん、俺にもチャンスをいただけませんか?」
「ほーうっ、ロンもやってみたいのか。お前は何を作りたいんだ?」
「俺は、男性用のTシャツってやつを作ってみたいです。」
「今回の商品化候補にあがってないから、まぁよかろう。勉強と思って、作ってみなさい。上手くできたら、商品化を検討しよう。」
「ありがとうございます。俺、俺、頑張ります!」
ロンは感極まったようで、顔を真っ赤にして今にも泣き出しそうだ。
拳を握りしめ、プルプルと震えている。
「パパ、私も!私もやりたい。工房へ行きたい。」
ピョンピョン跳びはねアピールする。
「カスミンは裁縫嫌いじゃなかったのか?」
パパの問いに、そういえばサリにも『裁縫をしない』と言われたなと思い出した。
フルフルと首を横に振りつつ、
「嫌いじゃないよ。やってみたい!やりたい!」とアピールする。
「ロン、すまないが、カスミンと一緒に取り組んでくれないか?
ジャン、工房にカスミンも出入りしていいか?」
「カスミン様なら自由に出入りしてもらって構いませんよ。」
すぐに工房超ジャンの許可がもらえた。
「わかりました。カスミン、よろしくな!」
「うん、ロン、よろしく!」
ロンと顔を見合わせ、グータッチ。
やったね!
私も工房に出入りして、ロンと一緒にTシャツ作りに携われることになった。
***
次の休日、ロンと一緒に工房へと向かう。
窓の外からロンがミシンを使う姿を見た時から、ずっと入ってみたいと思っていた。
工房近くを通った時には、こっそりと窓に近寄り、ロンが布を扱う姿を眺めていた。
誰でも入れるわけじゃないけど、私はランドリー商会の娘だからね。
商会の工房近くをウロチョロしても咎められなかったんだと思う。
もーうっ、嬉しくって楽しみで、昨夜はなかなか寝付けなかった。
工房へ近づいているだけで、ニコニコ笑顔になっちゃう。
ロンも嬉しそう。
ご機嫌な二人で、工房へと足を踏み入れる。
ロンは慣れた感じで元気いっぱいな挨拶を。
「おはようございます。」
私は緊張でドキドキしながらも、しっかりと挨拶を。
「おはようございますっ!今日から時々出入りします。カスミン・ランドリーです。よろしくお願いします。」
べコリと頭を下げる。
すると、みな作業の手を止めて、顔をあげた。
「君がパジャマの発案者?こんな小さい子が?」
「パジャマ、俺も買ったぞ。」
「新たな商品を作るらしいな。今から楽しみだ。」
あちこちからパラパラと声があがる。
静かになると、またカタカタカタカタとミシンの音、ジョキジョキッと布を切る音、懐かしい音たちが響く。
あー、やっぱり私はこの音たちに囲まれている瞬間が幸せだ。
どうして、カスミンは裁縫をしなかったの?
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