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第8話 最高です
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ケント様にダンスのお礼を伝えて別れると、一気に力が抜けた。
久しぶりに汗をかくほど身体を動かしたのだ。
想像していた以上に楽しくて、つい無理してしまった。
あちこち痛くて、カクカクする。
自分の部屋へ戻ると、真っ白なソファーに直行、そのままくたりと座り込む。
お行儀悪いんだろうけれど、足を体操座りみたいに折りたたんででソファーの座面にあげてしまう。
うわぁ~、足の筋肉がガチガチ。
足首からふくらはぎまでを手でもみもみ、もみもみ。
「ダンス楽しかったようですね。足が痛いんですね?すぐ湯浴みの準備をしてまいります」と言い、ロナは離れていった。
ソファーで足をあげてもみもみしている行儀の悪い行いはスルーしてくれたようだ。
トントン
「リナ様、お湯の準備ができました。今からゆっくりお湯に入りましょう」
ありがたい、ありがたい。
ロナとともに浴室へ向かう。
湯気が立ち上る湯船につかると、あー、疲れた体に温かいお湯がしみわたる~。
最高、最高だ!!
この広い浴槽だと足が伸ばせるのよね。
ゆったりと手足を伸ばしてみたり、湯船の中で手や足をもみもみしてみる。
少しでも筋肉をほぐしておかないと、明日大変なことになりそう。
筋肉痛がひどいと、歩くのも大変って場合もあるからね。
お風呂からあがり、部屋へ戻ると、
「今からマッサージしますので、ベッドでうつ伏せになってください」
ロナが得意気に微笑み、指の関節をポキポキ鳴らした。
えっ、なに、なに?
マッサージしてもらえるの?
すっごい、嬉しい。
「足はもちろんですが、慣れない動きであちこち凝っていると思いますよ。湯浴みへ向かう足取りもおぼつかない感じでしたし……」
「そう、そうなのよ。久しぶりの運動したらこうなるわよね。早めに切り上げればよかったんだけど、楽しくて……
湯船の中で自分なりに筋肉をほぐしてはみたんだけど、まだまだ足りない感じ。
誰かにマッサージしてもらうのって、すごく気持ちいいのよね。では、よろしくお願いします!」
「はい、お任せくださいっ」
私の喜び方が、はしゃぎ方が、大袈裟だったかな。
ロナはふふっ、ふふふっと笑っている。
私がベッドへうつぶせで寝転ぶと、ロナによる少し体重をかけながらのマッサージが始まった。
リズミカルに手のひらで、指で、ぐいぐいと的確にツボを押していく。
ロナのマッサージ、力加減が絶妙でめちゃくちゃ気持ちいい!
「ううっ、いい、気持ちいい」
「うん、そこそこ」
「はぁー」と声を出していた私だったが、あまりの気持ち良さに、目がとろんとしてだんだん瞼を持ち上げることが難しくなってきた。
「リナ様、眠くなってきましたか?」
「う~ん、あまりの気持ちよさに意識が飛びそう。ロナ、マッサージ上手すぎっ。最高よ!」
「ふふっ、ふふっ、ありがとうございます。ベッドの上ですので、このまま眠ってしまって大丈夫ですからね」
私の耳へ届いたのは、ここまで……
んんっ?
目が覚めた時には、ベッドに寝そべる私の体には柔らかいふわふわな布がかけられていた。
ロナのマッサージが気持ちよすぎて眠っちゃったみたい。
ロナのマッサージは最高です!
あとでお礼を伝えなきゃね。
***
【ケント視点】
リナに運動したい、ダンスがしたいと言われた。
僕はダンスが好きだ。
好きなんだが、女性と接することが苦手で、今まで社交場ではほとんどダンスをしてこなかった。
ダンスレッスンで女性と踊るくらいで……
一応動き方はわかるし、体も動くと思うのだが、それをリナに教えるとなるとうまくできるかわからない。
男性パートと女性パートでは動きが異なるのだから……
「今日すぐに来てくれる女性パートのダンス講師を呼んでくれ」と執事のセスへ指示を出すと、
「リナ様が習うのですか?」と確認された。
「いや、リナはダンス経験が全くないんだ。初めは僕が教えようと思う」
「では、レッスンを受けるのはケント様ですか?」
「ああ、そうだ」
「えっ、ぼっ、坊っちゃんが女性パート、女性パートを?」
セスは表情を取り繕う余裕さえ持てないようだ。
激しく動揺し、取り乱している。
その泣いてるのか笑っているのかわからない顔。
僕の心を乱すから勘弁してくれ。
それに坊っちゃんって……
幼い頃の呼び方じゃないか。
絶対にみんなの前で呼ばないでくれよ。
「ああ、僕が教わるつもりだ」
「そうですか……そうですか……お任せください。すぐに手配いたします」
セスはすぐに動いたようだ。
講師はすぐにやってきた。
「えっ、男性に女性パートを指導するのですか?私には経験ありません……」と逃げ腰だった講師だが、セスが事情を説明すると、
「まぁまぁ、なんてロマンティックなのかしら!私にお任せくださいっ」と急にやる気になった。
女性パートの基礎の動きを確認。
実際に目の前で動いて教えてもらう。
セスに男性パートを担当してもらい、女性役として実際に踊ってみたりもした。
何度か動き方や注意点を確認して、なんとか及第点がもらえ、レッスンは終了。
これで基本的な動きくらいなら、僕からリナに教えることができるだろう。
彼女は初めてダンスらしいので、ダンスに興味を持ち、もっと上手くなりたいと願うようなら、きちんと講師を招いて習うのもいいかもしれない。
後日、ダンスホールに現れた彼女は、さぁやるぞっ!と気合い十分だった。
なんとも微笑ましい限りだ。
彼女はコツを掴むのが早い。
しかも根性がある。
一生懸命踊る彼女とのダンスは思いのほか楽しかった。
媚をうる女性とのダンスは適切な距離を保つのが大変で疲れる。
リナとのダンスは、僕にダンスの楽しさを思い出させてくれた。
久しぶりに汗をかくほど身体を動かしたのだ。
想像していた以上に楽しくて、つい無理してしまった。
あちこち痛くて、カクカクする。
自分の部屋へ戻ると、真っ白なソファーに直行、そのままくたりと座り込む。
お行儀悪いんだろうけれど、足を体操座りみたいに折りたたんででソファーの座面にあげてしまう。
うわぁ~、足の筋肉がガチガチ。
足首からふくらはぎまでを手でもみもみ、もみもみ。
「ダンス楽しかったようですね。足が痛いんですね?すぐ湯浴みの準備をしてまいります」と言い、ロナは離れていった。
ソファーで足をあげてもみもみしている行儀の悪い行いはスルーしてくれたようだ。
トントン
「リナ様、お湯の準備ができました。今からゆっくりお湯に入りましょう」
ありがたい、ありがたい。
ロナとともに浴室へ向かう。
湯気が立ち上る湯船につかると、あー、疲れた体に温かいお湯がしみわたる~。
最高、最高だ!!
この広い浴槽だと足が伸ばせるのよね。
ゆったりと手足を伸ばしてみたり、湯船の中で手や足をもみもみしてみる。
少しでも筋肉をほぐしておかないと、明日大変なことになりそう。
筋肉痛がひどいと、歩くのも大変って場合もあるからね。
お風呂からあがり、部屋へ戻ると、
「今からマッサージしますので、ベッドでうつ伏せになってください」
ロナが得意気に微笑み、指の関節をポキポキ鳴らした。
えっ、なに、なに?
マッサージしてもらえるの?
すっごい、嬉しい。
「足はもちろんですが、慣れない動きであちこち凝っていると思いますよ。湯浴みへ向かう足取りもおぼつかない感じでしたし……」
「そう、そうなのよ。久しぶりの運動したらこうなるわよね。早めに切り上げればよかったんだけど、楽しくて……
湯船の中で自分なりに筋肉をほぐしてはみたんだけど、まだまだ足りない感じ。
誰かにマッサージしてもらうのって、すごく気持ちいいのよね。では、よろしくお願いします!」
「はい、お任せくださいっ」
私の喜び方が、はしゃぎ方が、大袈裟だったかな。
ロナはふふっ、ふふふっと笑っている。
私がベッドへうつぶせで寝転ぶと、ロナによる少し体重をかけながらのマッサージが始まった。
リズミカルに手のひらで、指で、ぐいぐいと的確にツボを押していく。
ロナのマッサージ、力加減が絶妙でめちゃくちゃ気持ちいい!
「ううっ、いい、気持ちいい」
「うん、そこそこ」
「はぁー」と声を出していた私だったが、あまりの気持ち良さに、目がとろんとしてだんだん瞼を持ち上げることが難しくなってきた。
「リナ様、眠くなってきましたか?」
「う~ん、あまりの気持ちよさに意識が飛びそう。ロナ、マッサージ上手すぎっ。最高よ!」
「ふふっ、ふふっ、ありがとうございます。ベッドの上ですので、このまま眠ってしまって大丈夫ですからね」
私の耳へ届いたのは、ここまで……
んんっ?
目が覚めた時には、ベッドに寝そべる私の体には柔らかいふわふわな布がかけられていた。
ロナのマッサージが気持ちよすぎて眠っちゃったみたい。
ロナのマッサージは最高です!
あとでお礼を伝えなきゃね。
***
【ケント視点】
リナに運動したい、ダンスがしたいと言われた。
僕はダンスが好きだ。
好きなんだが、女性と接することが苦手で、今まで社交場ではほとんどダンスをしてこなかった。
ダンスレッスンで女性と踊るくらいで……
一応動き方はわかるし、体も動くと思うのだが、それをリナに教えるとなるとうまくできるかわからない。
男性パートと女性パートでは動きが異なるのだから……
「今日すぐに来てくれる女性パートのダンス講師を呼んでくれ」と執事のセスへ指示を出すと、
「リナ様が習うのですか?」と確認された。
「いや、リナはダンス経験が全くないんだ。初めは僕が教えようと思う」
「では、レッスンを受けるのはケント様ですか?」
「ああ、そうだ」
「えっ、ぼっ、坊っちゃんが女性パート、女性パートを?」
セスは表情を取り繕う余裕さえ持てないようだ。
激しく動揺し、取り乱している。
その泣いてるのか笑っているのかわからない顔。
僕の心を乱すから勘弁してくれ。
それに坊っちゃんって……
幼い頃の呼び方じゃないか。
絶対にみんなの前で呼ばないでくれよ。
「ああ、僕が教わるつもりだ」
「そうですか……そうですか……お任せください。すぐに手配いたします」
セスはすぐに動いたようだ。
講師はすぐにやってきた。
「えっ、男性に女性パートを指導するのですか?私には経験ありません……」と逃げ腰だった講師だが、セスが事情を説明すると、
「まぁまぁ、なんてロマンティックなのかしら!私にお任せくださいっ」と急にやる気になった。
女性パートの基礎の動きを確認。
実際に目の前で動いて教えてもらう。
セスに男性パートを担当してもらい、女性役として実際に踊ってみたりもした。
何度か動き方や注意点を確認して、なんとか及第点がもらえ、レッスンは終了。
これで基本的な動きくらいなら、僕からリナに教えることができるだろう。
彼女は初めてダンスらしいので、ダンスに興味を持ち、もっと上手くなりたいと願うようなら、きちんと講師を招いて習うのもいいかもしれない。
後日、ダンスホールに現れた彼女は、さぁやるぞっ!と気合い十分だった。
なんとも微笑ましい限りだ。
彼女はコツを掴むのが早い。
しかも根性がある。
一生懸命踊る彼女とのダンスは思いのほか楽しかった。
媚をうる女性とのダンスは適切な距離を保つのが大変で疲れる。
リナとのダンスは、僕にダンスの楽しさを思い出させてくれた。
応援ありがとうございます!
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