【完結】引きこもり伯爵令息を幸せにしたい

青井 海

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第20話 いざ舞踏会へ

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初めての馬車酔いを経験した私の青白かった顔色が、少しなおった頃、
ケント様が今回の舞踏会について説明を始めた。

「ああ、そうだ。説明しておいたほうがいいかな。今回参加する舞踏会はね、我が家と同格のスカリーナ伯爵家主催の舞踏会なんだ。参加条件は未婚の男女。参加条件はパートナー同伴」

「パートナーは婚約者や恋人でないといけないなんてことは?貴族限定ではないのですか?それだと私が参加するわけにはいかないですよね?ケント様のお相手にご迷惑をかけてしまうんじゃ……」

「僕の相手?そんな人はいないよ。今まで我が家で暮らしてきて僕を訪ねてきた女性などいなかっただろ?」

「まぁ、確かに……」
でも自宅へ来なくても外で会えば……
あっ、あー、ケント様は引きこもりだったわ。

「リナ、そんな目で見ないでくれ。まるで僕が哀れな男みたいじゃないか。悲しくなる」

私ったら、どんな目をしていたんだろう。
パートナー同伴でって……
「ごめんなさい。でもパートナー同伴だとあまり出逢いに繋がらないんじゃないかしら?」

「うーん、一応 未婚の若者の交流会。別に男女の出逢いを求めた集まりというわけじゃないからね? 未婚と指定があることから、もちろん出逢いを求めている参加者も多いだろうけど……まぁ、パートナーは婚約者や恋人同伴じゃないことも多いと思うよ。兄弟姉妹や友人、幼馴染みとか……」

「ふう~ん、なるほど」

ケント様は恋人募集中ってことだよね?
私がこの世界へ来てからというもの、彼にはお世話になりっぱなしだ。
私が協力して素敵な彼女ができたら、それって恩返しになるのでは……彼には幸せになって欲しい。
そう考えたら、なぜだな胸にチクリと痛みが走った。


「ほらっ、もうすぐ王都に入るぞ」
ケント様の声で我に返った。

建物が立ち並ぶ景色が見えてくると、馬車は徐々に速度を落としていく。

ゆっくりと進む馬車から外を見ていると、家が密集していたのが、奥へ進むにつれて建物の間隔があき、だんだんと大きく立派になってきた。
どうも貴族の居住地域に入ったようだ。

美しい建築物に、ほぉーっと目を奪われる。
門扉も塀も装飾がなされていて、外国の観光名所、古城を見ているような気持ちになる。

ケント様のデリーノ伯爵邸ももちろん大きく立派ですごいのだが、王都の貴族邸のほうが装飾が多くて目立つのだ。

「リナ、着いたぞ。では、行こう」
ケント様のエスコートで馬車からおり、案内について会場へ入ると、会場の豪華さに圧倒される。

大きなシャンデリアが天井からぶら下がり、キラキラと輝いている。
会場の一角、壁沿いには料理がこれでもかというくらい並び、テーブルとイスが置かれて、食事をとれるようになっている。

そして何より鮮やかなドレスの群れ。
そうまさに群れ。
いろんな色が溢れ、華やかだ。

想像以上に規模が大きくて……
キラキラとした別世界、まるで夢の世界だ。
「リナ、口が開いてる……」
ケント様に小声で指摘され、慌てて口を閉じる。
はっ、はずかしいっ、はずかしすぎるぅ~。

チラリと横目で彼の様子を伺うと、俯きながら肩を震わせている。
だんだん耐えきれなくなってきたようで、
「クッ、クククッ」
ほんの少し声が漏れてきてますよ。

ケント様に笑われたことで、緊張が解れたというか、開き直ったというか、まぁ自分でもよくわからないけれど、冷静になれた気がする。

まずは、ケント様に連れられ、主催者であるドマリニ侯爵令息へご挨拶。
私も教わったとおりに挨拶を。
何も指摘されなかったので、問題なかったのだろう。

次に、ケント様の学生時代からのご友人の集まりに連れていかれた。
彼らはごくごく普通の穏やかそうな男性たちで、連れの女性も落ち着いた感じの女性たち。
うんうん、ケント様と気が合いそうな感じだわ。

「ケントとまたこうして会えるようになったのは君のお陰だね。ケントをよろしく」
「また次の集まりにも来てくださいね」とか好意的に接してくださる方々で、初対面の私にも彼らの傍は居心地がよかった。

オーケストラの演奏が始まり、主催者のドマリニ侯爵令息とパートナーが会場の中央で踊り出した。
少しずつ踊り出す人が増えていき……

「そろそろ僕たちも行こう」
ケント様に手を引かれ、私たちも踊り出す。
踊り出した瞬間、ケント様の姿勢がスッと伸び顔がキリリと引き締まる。

この人はダンスになると、なんでこうも人が変わるんだろうってくらい何割も増して格好よくなる。

私たちの周りから人々が距離を取っていき、動けるスペースが広がるにつれ、ケント様の動きがダイナミックになっていく。
私の腰をグイッと掴むと、持ち上げてクルリと回転させられた。
スカイブルーのドレスが大輪の花のようにふわりと広がる。

なんだろう……
すごく、すごく視線を感じる。
あちこちから。

あっ、あー、動きが派手だから、みんな驚いてる?
それとも彼の格好よさに見惚れてる?
どちらにしろ注目を浴びてしまったのは間違いない。

曲が切り替わった瞬間、私たちが会場の隅へと移動しようと歩き出すと、割れんばかりの拍手がおこり、演奏が中断された。

またまた視線が集まる。
えっ、これ、これはどうすればいいの?












    
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