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第19話 罪滅ぼし
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お茶の時間が終わり、叔母様とライリーが帰ることになり、馬車まで送る。
「ライリー、今日は迎えに来てくれてありがとう。」
「罪滅ぼししてもらう約束だけど……明日、一緒に出かけて欲しい。」
「えっ、そんなことでいいの?」
「オリィのたった1週間しかない休みのうち、貴重な1日を僕がもらうわけだからね?
それだけで充分な罪滅ぼしになるよ。
明日迎えに来るから、おめかしして待ってて。楽しみにしてる。じゃあ!」
ライリーは軽く手を降り、馬車で帰って行った。
本当にそんなことでいいのかなぁ。
私も実家へ帰ってきたとはいえ、特に予定も入ってないし、のんびりするかな~と思っていた。
ライリーとのお出かけなら気楽だし、絶対楽しいはず。
罪滅ぼしどころか、私にとってはご褒美じゃないかしら。
お出かけの前って楽しみで、なかなか眠れなかったりする。
私もなかなか眠れなかった。
まぁ昼寝したからかもしれないけれど……
***
翌日、侍女のアニスが準備を手伝ってくれる。
マリオン侯爵家では自分のことは自分でやっていたから、手伝われなくても一通りのことはできるんだけど……
使用人が少なくなったとはいえ、実家での私はお嬢様である。
アニスが出してきた淡いラベンダー色のドレスに着替える。
腰まである髪はブラシで丁寧に整えられて、サイドを編み込まれていく。
編み込まれた部分を後ろでまとめ、白いリボンが結ばれた。
軽く化粧が施されると、気分があがる。
準備が終わり、部屋の窓から外を眺めていると、馬車が我が家へ向かってくるのが見えた。
ライリーだわ。
私はゆっくりと階段を下り、玄関へと向かう。
執事によって扉が開かれ、ライリーが入ってきた。
「ライリー、おはよう!」
「オリィ、今日もキレイだね。僕の為におめかししてくれて嬉しいよ。」
整いすぎて、冷たく見られがちだというライリーの顔がフニャリと緩む。
「ありがとう。ライリーもカッコいいわよ。ふふふっ。」
なんだろう、社交辞令とわかっていても、キレイなんて言われるとたとえ従兄であっても照れる。
彼の顔のせいだと思う。
今のフニャリとしたあまーい顔。
カッコいいのにかわいくて、見ているこっちが照れる。
「じゃあ、行こうか。」
「うん。」
彼にエスコートされ、馬車に乗り込む。
まず着いたのは、祖父母の邸だった。
「オリィはお祖父様、お祖母様に会いたがってただろ?僕から連絡しておいた。」
お祖父様、お祖母様は昼食を準備して待っていてくれた。
4人で食事しながら、近況を報告する。
私はマリオン侯爵家で、とても恵まれていて、よくしていただいているとだけ話した。
アレク様の瞳のことなど、いろんなことがあったけれど、それは話せないから。
私の胸の内に留めておく。
お祖父様にマリオン侯爵家を紹介してもらったお礼を伝えることができてよかった。
昼食を終えると、また馬車に乗り込み、街へとやってきた。
どこへ行くのだろうと思っていると、赤いとんがり屋根のかわいらしいお店へ。
ふわっふわパンケーキで有名なお店。
扉を開けると、カランカランと軽やかな鐘の音が鳴り響く。
ふわ~と甘い香りが漂う店内は木製の円テーブルとイスが並んでいる。
まだお茶の時間には少し早いが、もうほとんどの席が埋まっている。
待たずに座れて運がよかった。
スカイブルーのワンビースに白いエプロン、髪にカチューシャをつけた店員さんたち。
忙しそうではあるが、ステキな笑顔で接客してくれる。
店内は女性客ばかり。
ちらほらと男性客の姿も見えるが、みな女性連れだ。
私は、クリームとフルーツがたんまりとのったパンケーキと紅茶を。
彼は、蜂蜜とナッツがのったパンケーキにコーヒーを注文。
どちらも本当に美味しそう。
ライリーがパンケーキを食べている姿を見ていると笑われた。
「あっ、さてはこっちも食べたいんだろう?少し食べるか?」
ナイフとフォークで切り分けたものを私の皿にのせてくれる。
私もお返しに、少し切り分けたものを渡す。
2種類ものパンケーキを味わうことができて大満足。
お腹いっぱいでふうっと息をはき、イスから立ち上がる。
「食べすきたか?」
彼に笑われた。
何もかもお見通しである。
次は、若い女性たちの間で噂になっているジュエリーショップの前で止まった。
「オリィ、確か大きくなったら行ってみたいと言ってただろ?」
ライリーは私が何気なくポロリとこぼした言葉を拾い、覚えていてくれたようだ。
お店は白を基調としていて洗練された落ち着いた雰囲気。
光を抑えた黒いテーブルには色とりどりなアクセサリーが並んでいる。
宝石は小ぶりで普段身につけるのによさそうなものばかり。
どれも素敵、素敵なんだけれど……
我が家の現状を思うと、新しくアクセサリーを購入するなんて考えられない。
それでも一度行ってみたかったお店に連れて来てもらえて、とても嬉しい。
「これなんかどう? オリィによく似合う。」
ライリーから髪飾りを手渡された。
黒地にシルバーの花びらがついている。
その花びらの中央には小さなアメジスト。
手のひらに乗った髪飾りをじーっと見ているとヒョイっと取り上げられた。
彼は私の髪に結ばれたリボンをスルスルと取り去り、パチンと髪飾りをつけた。
「ほら、見てごらん?」
大きな鏡の前にエスコートされたが、後ろについた髪飾りは見えない。
店員さんが手鏡を渡してくれ、鏡に映る後ろ姿を手鏡で確認した。
私の髪色に髪飾りの黒がよく似合う。
店員さんに手鏡を返すと、
「よくお似合いです。ステキな旦那様ですね。」
ニコリと微笑む店員さん。
だっ、だんなさま~?
「ライリー、今日は迎えに来てくれてありがとう。」
「罪滅ぼししてもらう約束だけど……明日、一緒に出かけて欲しい。」
「えっ、そんなことでいいの?」
「オリィのたった1週間しかない休みのうち、貴重な1日を僕がもらうわけだからね?
それだけで充分な罪滅ぼしになるよ。
明日迎えに来るから、おめかしして待ってて。楽しみにしてる。じゃあ!」
ライリーは軽く手を降り、馬車で帰って行った。
本当にそんなことでいいのかなぁ。
私も実家へ帰ってきたとはいえ、特に予定も入ってないし、のんびりするかな~と思っていた。
ライリーとのお出かけなら気楽だし、絶対楽しいはず。
罪滅ぼしどころか、私にとってはご褒美じゃないかしら。
お出かけの前って楽しみで、なかなか眠れなかったりする。
私もなかなか眠れなかった。
まぁ昼寝したからかもしれないけれど……
***
翌日、侍女のアニスが準備を手伝ってくれる。
マリオン侯爵家では自分のことは自分でやっていたから、手伝われなくても一通りのことはできるんだけど……
使用人が少なくなったとはいえ、実家での私はお嬢様である。
アニスが出してきた淡いラベンダー色のドレスに着替える。
腰まである髪はブラシで丁寧に整えられて、サイドを編み込まれていく。
編み込まれた部分を後ろでまとめ、白いリボンが結ばれた。
軽く化粧が施されると、気分があがる。
準備が終わり、部屋の窓から外を眺めていると、馬車が我が家へ向かってくるのが見えた。
ライリーだわ。
私はゆっくりと階段を下り、玄関へと向かう。
執事によって扉が開かれ、ライリーが入ってきた。
「ライリー、おはよう!」
「オリィ、今日もキレイだね。僕の為におめかししてくれて嬉しいよ。」
整いすぎて、冷たく見られがちだというライリーの顔がフニャリと緩む。
「ありがとう。ライリーもカッコいいわよ。ふふふっ。」
なんだろう、社交辞令とわかっていても、キレイなんて言われるとたとえ従兄であっても照れる。
彼の顔のせいだと思う。
今のフニャリとしたあまーい顔。
カッコいいのにかわいくて、見ているこっちが照れる。
「じゃあ、行こうか。」
「うん。」
彼にエスコートされ、馬車に乗り込む。
まず着いたのは、祖父母の邸だった。
「オリィはお祖父様、お祖母様に会いたがってただろ?僕から連絡しておいた。」
お祖父様、お祖母様は昼食を準備して待っていてくれた。
4人で食事しながら、近況を報告する。
私はマリオン侯爵家で、とても恵まれていて、よくしていただいているとだけ話した。
アレク様の瞳のことなど、いろんなことがあったけれど、それは話せないから。
私の胸の内に留めておく。
お祖父様にマリオン侯爵家を紹介してもらったお礼を伝えることができてよかった。
昼食を終えると、また馬車に乗り込み、街へとやってきた。
どこへ行くのだろうと思っていると、赤いとんがり屋根のかわいらしいお店へ。
ふわっふわパンケーキで有名なお店。
扉を開けると、カランカランと軽やかな鐘の音が鳴り響く。
ふわ~と甘い香りが漂う店内は木製の円テーブルとイスが並んでいる。
まだお茶の時間には少し早いが、もうほとんどの席が埋まっている。
待たずに座れて運がよかった。
スカイブルーのワンビースに白いエプロン、髪にカチューシャをつけた店員さんたち。
忙しそうではあるが、ステキな笑顔で接客してくれる。
店内は女性客ばかり。
ちらほらと男性客の姿も見えるが、みな女性連れだ。
私は、クリームとフルーツがたんまりとのったパンケーキと紅茶を。
彼は、蜂蜜とナッツがのったパンケーキにコーヒーを注文。
どちらも本当に美味しそう。
ライリーがパンケーキを食べている姿を見ていると笑われた。
「あっ、さてはこっちも食べたいんだろう?少し食べるか?」
ナイフとフォークで切り分けたものを私の皿にのせてくれる。
私もお返しに、少し切り分けたものを渡す。
2種類ものパンケーキを味わうことができて大満足。
お腹いっぱいでふうっと息をはき、イスから立ち上がる。
「食べすきたか?」
彼に笑われた。
何もかもお見通しである。
次は、若い女性たちの間で噂になっているジュエリーショップの前で止まった。
「オリィ、確か大きくなったら行ってみたいと言ってただろ?」
ライリーは私が何気なくポロリとこぼした言葉を拾い、覚えていてくれたようだ。
お店は白を基調としていて洗練された落ち着いた雰囲気。
光を抑えた黒いテーブルには色とりどりなアクセサリーが並んでいる。
宝石は小ぶりで普段身につけるのによさそうなものばかり。
どれも素敵、素敵なんだけれど……
我が家の現状を思うと、新しくアクセサリーを購入するなんて考えられない。
それでも一度行ってみたかったお店に連れて来てもらえて、とても嬉しい。
「これなんかどう? オリィによく似合う。」
ライリーから髪飾りを手渡された。
黒地にシルバーの花びらがついている。
その花びらの中央には小さなアメジスト。
手のひらに乗った髪飾りをじーっと見ているとヒョイっと取り上げられた。
彼は私の髪に結ばれたリボンをスルスルと取り去り、パチンと髪飾りをつけた。
「ほら、見てごらん?」
大きな鏡の前にエスコートされたが、後ろについた髪飾りは見えない。
店員さんが手鏡を渡してくれ、鏡に映る後ろ姿を手鏡で確認した。
私の髪色に髪飾りの黒がよく似合う。
店員さんに手鏡を返すと、
「よくお似合いです。ステキな旦那様ですね。」
ニコリと微笑む店員さん。
だっ、だんなさま~?
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