【完結】私は彼女になりたい

青井 海

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第5話 私は彼女?

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朝 カーテンの隙間から差しこむ眩しい光に目が覚めた。
まだ目覚まし時計は鳴っていない。

ゆっくり目蓋を開けると、見覚えのない天井。
私が横たわるベッドは私のものよりも幅が広くふんわりとしていて、肌触りのよい真っ白なシーツに包まれていた。
なに、なに? ここはどこ?

私は旅行中?じゃないよね。

私の部屋じゃないんだけど。
部屋に置かれたドレッサーの鏡にうつる顔を見て、固まった。

私は夢を見ているのかな。
頬を軽くつねってみると、痛い。
夢じゃない、これは現実?

私は丹後アヤメなのに。
どうして雛子ちゃんになっているの?

もしかして、ここは彼女の部屋?

棚に置かれた学校のカバンを開けてみる。
桃井雛子と書かれた教科書やノートが入っている。
部屋から出ると、かわいらしいおばさまが「まぁ雛子ちゃん、今日は学園が休みなのに、自分で起きてきたの?すごいじゃない。」と誉められた。

おばさまは、どことなく雛子ちゃんに似てる。雰囲気なんて彼女そっくり。
きっと雛子ちゃんのお母さんだ。

なに? 
自力で起きただけで誉めてもらえるの?
家はどこもかしこもすごい。
廊下に置かれた花瓶には、華やかな花が生けられている。
雛子ちゃんはお嬢様なんだ…
しかもかなり甘やかされていそう。

何が起きているのか、よくわからない。
とにかく私は雛子ちゃんになっているようだ。
とにかく今は、彼女らしく振るまわなければ。

「雛子ちゃん、食事を済ませたら、荒木さんと一緒に準備なさいね。今日は彼がいらっしゃる日ですよ。」

ん? 彼? 誰かお客様ね。
「お母さん、わかりました。」

「どうしたの? 今日の雛子ちゃんはおかしいわね。まだ寝ぼけてる? いつものように
ママと呼んでね。お母さんなんて初めて呼ばれて、なんだかムズムズするわ。」

失敗した。
雛子ちゃんはお母さんのことを、ママと呼ぶのか…
話し言葉も丁寧にしたほうがよさそうね。

「はい、ママ。」
少し学校での彼女を真似て、甘えた声を出してみる、

「わかったのならいいわ。荒木さん、後は頼んだわね。」
「はい、奥様。」

荒木さん? 
話の流れからして、お手伝いさん?
桃井家にはお手伝いさんがいるの?

品数多めのしっかりした朝食を何とか残さずに食べきる。

部屋に戻ると、荒木さんが洋服を持ってきた。
首周りが広くあき、デコルテがキレイに見えるふわりと軽いワンピース。
アヤメなら絶対に着ないであろう服。

「お嬢様、今日は伊集院様がいらっしゃるのですから、お淑やかになさってくださいね。」

「伊集院様?」
今ならまだ寝ぼけたふりで何とかなる?
キョトンと首を傾ける。

「まあまぁお嬢様。まだ目が覚めませんか? 雛子様の婚約者 伊集院 尊様(いじゅういん たける)ですよ。」

えっ、嘘でしよ。
雛子ちゃんには婚約者がいるの?



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