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第13話 開業準備
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カーゾイでの川遊びを気に入りらまだまだ遊びたいとごねるルーカスには、
「今日も新しいお菓子を作りたいなぁと思っていたんだけど、これ以上帰りが遅くなったら作れなくなりそう……残念ね」と伝えてみる。
バァ~ッと目を輝かせたルーカスは、濡れた手をブラブラ振って水分を飛ばし、川から離れると、
「ほらっ、お姉様、早く早く、帰りますよ」
私の背中をグイグイ押して、馬車へ向かう。
「いや、あのね、ルーカス、あなた手を拭いてないわよね?まさか私の背中で拭いているんじゃ……」
「お姉様、ごめんなさい。そういえば手を拭いていませんでした。わざとではないですよ?新しいお菓子と聞いて、早く早くと慌ててしまって……」
ルーカスったら、本当に食いしん坊なんだから……背中が少し冷たいことなんて許してあげる。
かわいいわ、かわいすぎるわ。
帰宅後、マーサに手伝ってもらい手早く楽な洋服に着替えると、早歩きで調理場へ向かう。
少しお行儀が悪いんだけど、お菓子を作ると宣言しちゃったから急がないとね。
今日はあまり時間もない為、すぐにできる甘味を作るわ。
ケビンが舌処理して茹でてくれた栗を使うことにする。
「ケビン、栗の下処理ありがとう。今から使わせてもらうね。他にもパンを使いたいんだけど、使ってもいいパンはないかしら?」
「お嬢様、また新しいお菓子を作るのかい?このパンなら使ってもらって構わないが、少し乾燥して固くなってる。それでもいいですか?」
ケビン、また言葉がチグハグよ。
丁寧に話そうとしているのは伝わってくるのだけれど……
ふふふっ。
「固くなったパンで大丈夫よ。まだ食べられる状態なら」
「それはもちろん。さすがに食べられないものは出しませんよ」
「では、遠慮なく使わせてもらうわね」
ケビンにもらったパンを薄く切って、牛乳、卵、砂糖を混ぜた液に浸ける。
フライパンにバターを広げ、ジュワジュワと焼くと、フレンチトーストの出来上がり!
う~ん、香ばしい香りが広がる。
バターの香りが最高ねっ。
冷蔵庫から出した茹で栗を上に乗せて、ハチミツをたらりと垂らす。
ふふふっ、どうよ。
ルーカスもケビンもフレンチトーストに視線が釘付けよ。
栗を茹でてもらっていてよかったわ。
栗の上からたらりと垂れるハチミツがキラキラ輝いて……いかにも美味しそう。
今日はお父様、お母様にも食べてもらう。
栗は甘く煮詰めたほうがよかったんだろうけど、今回は時間もないし、茹で栗にはちみつで代用した。
まぁこれはこれで美味しいからいいだろう。
お父様、お母様も目をまんまるくして驚いていたわ。
「リーゼが作ったお菓子を食べる日がくるなんて……」
お父様は感激してウルウルと瞳を潤ませている。
「まぁ、リーゼ、初めて食べる食感だわ。
しっとりしているのね。ハチミツの甘みもまたいいわ。お茶会で出したら人気が出そうね」
「お母様、フレンチトーストは焼きたてが美味しいから、お茶会で出すのなら少人数のお茶会にしてくださいね」
2人ともフレンチトーストを気に入ったみたい。
もちろん、ルーカスとケビンもね!
夕飯時、また家族で相談だ。
場所にあわせて銭湯のデザインなどを決める。
外から見えず、中からは自然いっぱいな景色を楽しめるよう工夫しないとね。
お母様はデザインを考えるのが好きなようで、土魔法で銭湯を作り上げる予定のお父様と話し合っている。
ルーカスと私は、ふむふむ、うんうん、とその案を聞き、自分の希望があれば、その時だけ意見を伝える。
両親主体で進むので、非常に楽である。
銭湯の建物、内装。
全て2人にお任せする。
今も紙に絵を描いて、2人で並んで見ている。
夫婦仲良くていいことだ。
そう思うけれど、それが自分の両親だと気恥ずかしいというか、何というか……
デザートとして、私とルーカスで昨日試作していたパウンドケーキやスコーンなど食べてもらう。
どのお菓子も好評だ。
もう少し改良すれば、商品として販売してもいいだろう。
順調に計画は進み、銭湯は無事に完成した。
領民のみんなは、突然現れた建物に驚いて、集まってきていた。
本来なら建物を作る前に良民への説明があるべきだった。
だけど、先に説明すると建物が建つまでを見学に来ちゃうかもしれないでしょ。
こっそり魔法を使う為には、秘密にする必要があったの。
だから領主であるお父様が、
「知り合いの土魔法保持者に頼み、作ってもらったんだ。魔法保持者は忙しいから、夜中に作ってもらったんだが……説明もなく突然作ってもらうことになったから、驚かせてしまったな」と説明。
父が金策に走り回っていたことは領民にも知られていたので、その時に頼み込んだのだろうと納得してくれたようだ。
午前中、水を沸かしてお湯にする。
りんごのお菓子を作った時に出たりんごの皮と芯を袋に入れたものを数個浮かべる。
りんごの甘い香りが広がる。
これで準備はできた。
お風呂は、男女それぞれ浴槽を2つずつ用意した。
ただ沸かしただけの湯と、日替わりの湯にしている。
今日の日替わりの湯は『りんご風呂』
美肌と保湿、疲労回復などが期待できる。
りんごの香りでリフレッシュできそうだ。
昼から、まず家族や使用人が男女に別れ、実際に入ってみる。
ほんのり香るりんごの香りに、う~ん癒される。
お肌もしっとりした気がする。
来週からは、領民のみんなに入ってもらう。
いわゆるブレオープンだ。
入湯料を受けとる受付は、領民に声をかけ、シフトを組み、アルバイトのような体制にしている。
誰も出れない時は、我が家の使用人にお願いする。
これで営業できるだろうか。
問題点を洗いだし改善できたら、いよいよ営業開始。
ワクワクする。
お風呂から上がり、のんびり寛いでいると、銭湯の前で侍女のお仕着せを着た女性がウロウロしている。
彼女の後ろには、馬車が控えている。
まだ銭湯は開業日が決まっていないし、大々的には宣伝もしていない。
どうしたのかしら?
「どうかなさいましたか?」
私が声をかけると、街でお風呂の噂を聞いたようで、様子を見に訪れたそうだ。
その侍女 アンナが仕えている奥様の体調が思わしくない為に、馬車で療養先を探して回っているとのこと。
エッセン領は自然豊かで、療養に適していると思って来てみたら、銭湯のことを聞きつけた。
銭湯という初めて聞くお風呂が、どんなお風呂か気になったらしい。
まだ開業前なんだけど、どうしようかしら……
「今日も新しいお菓子を作りたいなぁと思っていたんだけど、これ以上帰りが遅くなったら作れなくなりそう……残念ね」と伝えてみる。
バァ~ッと目を輝かせたルーカスは、濡れた手をブラブラ振って水分を飛ばし、川から離れると、
「ほらっ、お姉様、早く早く、帰りますよ」
私の背中をグイグイ押して、馬車へ向かう。
「いや、あのね、ルーカス、あなた手を拭いてないわよね?まさか私の背中で拭いているんじゃ……」
「お姉様、ごめんなさい。そういえば手を拭いていませんでした。わざとではないですよ?新しいお菓子と聞いて、早く早くと慌ててしまって……」
ルーカスったら、本当に食いしん坊なんだから……背中が少し冷たいことなんて許してあげる。
かわいいわ、かわいすぎるわ。
帰宅後、マーサに手伝ってもらい手早く楽な洋服に着替えると、早歩きで調理場へ向かう。
少しお行儀が悪いんだけど、お菓子を作ると宣言しちゃったから急がないとね。
今日はあまり時間もない為、すぐにできる甘味を作るわ。
ケビンが舌処理して茹でてくれた栗を使うことにする。
「ケビン、栗の下処理ありがとう。今から使わせてもらうね。他にもパンを使いたいんだけど、使ってもいいパンはないかしら?」
「お嬢様、また新しいお菓子を作るのかい?このパンなら使ってもらって構わないが、少し乾燥して固くなってる。それでもいいですか?」
ケビン、また言葉がチグハグよ。
丁寧に話そうとしているのは伝わってくるのだけれど……
ふふふっ。
「固くなったパンで大丈夫よ。まだ食べられる状態なら」
「それはもちろん。さすがに食べられないものは出しませんよ」
「では、遠慮なく使わせてもらうわね」
ケビンにもらったパンを薄く切って、牛乳、卵、砂糖を混ぜた液に浸ける。
フライパンにバターを広げ、ジュワジュワと焼くと、フレンチトーストの出来上がり!
う~ん、香ばしい香りが広がる。
バターの香りが最高ねっ。
冷蔵庫から出した茹で栗を上に乗せて、ハチミツをたらりと垂らす。
ふふふっ、どうよ。
ルーカスもケビンもフレンチトーストに視線が釘付けよ。
栗を茹でてもらっていてよかったわ。
栗の上からたらりと垂れるハチミツがキラキラ輝いて……いかにも美味しそう。
今日はお父様、お母様にも食べてもらう。
栗は甘く煮詰めたほうがよかったんだろうけど、今回は時間もないし、茹で栗にはちみつで代用した。
まぁこれはこれで美味しいからいいだろう。
お父様、お母様も目をまんまるくして驚いていたわ。
「リーゼが作ったお菓子を食べる日がくるなんて……」
お父様は感激してウルウルと瞳を潤ませている。
「まぁ、リーゼ、初めて食べる食感だわ。
しっとりしているのね。ハチミツの甘みもまたいいわ。お茶会で出したら人気が出そうね」
「お母様、フレンチトーストは焼きたてが美味しいから、お茶会で出すのなら少人数のお茶会にしてくださいね」
2人ともフレンチトーストを気に入ったみたい。
もちろん、ルーカスとケビンもね!
夕飯時、また家族で相談だ。
場所にあわせて銭湯のデザインなどを決める。
外から見えず、中からは自然いっぱいな景色を楽しめるよう工夫しないとね。
お母様はデザインを考えるのが好きなようで、土魔法で銭湯を作り上げる予定のお父様と話し合っている。
ルーカスと私は、ふむふむ、うんうん、とその案を聞き、自分の希望があれば、その時だけ意見を伝える。
両親主体で進むので、非常に楽である。
銭湯の建物、内装。
全て2人にお任せする。
今も紙に絵を描いて、2人で並んで見ている。
夫婦仲良くていいことだ。
そう思うけれど、それが自分の両親だと気恥ずかしいというか、何というか……
デザートとして、私とルーカスで昨日試作していたパウンドケーキやスコーンなど食べてもらう。
どのお菓子も好評だ。
もう少し改良すれば、商品として販売してもいいだろう。
順調に計画は進み、銭湯は無事に完成した。
領民のみんなは、突然現れた建物に驚いて、集まってきていた。
本来なら建物を作る前に良民への説明があるべきだった。
だけど、先に説明すると建物が建つまでを見学に来ちゃうかもしれないでしょ。
こっそり魔法を使う為には、秘密にする必要があったの。
だから領主であるお父様が、
「知り合いの土魔法保持者に頼み、作ってもらったんだ。魔法保持者は忙しいから、夜中に作ってもらったんだが……説明もなく突然作ってもらうことになったから、驚かせてしまったな」と説明。
父が金策に走り回っていたことは領民にも知られていたので、その時に頼み込んだのだろうと納得してくれたようだ。
午前中、水を沸かしてお湯にする。
りんごのお菓子を作った時に出たりんごの皮と芯を袋に入れたものを数個浮かべる。
りんごの甘い香りが広がる。
これで準備はできた。
お風呂は、男女それぞれ浴槽を2つずつ用意した。
ただ沸かしただけの湯と、日替わりの湯にしている。
今日の日替わりの湯は『りんご風呂』
美肌と保湿、疲労回復などが期待できる。
りんごの香りでリフレッシュできそうだ。
昼から、まず家族や使用人が男女に別れ、実際に入ってみる。
ほんのり香るりんごの香りに、う~ん癒される。
お肌もしっとりした気がする。
来週からは、領民のみんなに入ってもらう。
いわゆるブレオープンだ。
入湯料を受けとる受付は、領民に声をかけ、シフトを組み、アルバイトのような体制にしている。
誰も出れない時は、我が家の使用人にお願いする。
これで営業できるだろうか。
問題点を洗いだし改善できたら、いよいよ営業開始。
ワクワクする。
お風呂から上がり、のんびり寛いでいると、銭湯の前で侍女のお仕着せを着た女性がウロウロしている。
彼女の後ろには、馬車が控えている。
まだ銭湯は開業日が決まっていないし、大々的には宣伝もしていない。
どうしたのかしら?
「どうかなさいましたか?」
私が声をかけると、街でお風呂の噂を聞いたようで、様子を見に訪れたそうだ。
その侍女 アンナが仕えている奥様の体調が思わしくない為に、馬車で療養先を探して回っているとのこと。
エッセン領は自然豊かで、療養に適していると思って来てみたら、銭湯のことを聞きつけた。
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