【完結】ダメな私、こんな人生もありだよね?

青井 海

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第10話 サークル

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水曜日、気になっていたテニスサークルへ向かう。
見学とは言いながらも、ボールを打つ機会があるかもしれない。
高校時代に買ったテニスシューズを履いて行く。
洋服も動きやすいパーカーに柔らかく伸びるジーンズにした。

渡辺さんに教えられたテニスコートは高校時代に訪れたことがあるコートだった。
一年生で、新人戦に出た時のコートだ。
その時はダブルスの試合へ出場し、私のミスでボロ負け。
ベアの友達に対し、申し訳ない思いでいっぱいだった。
私にとって苦い思い出だ。

だが、このコートは自宅から大学へ通う途中にあり、練習場所としては最適だ。

ボールを打ち合う人たちの姿を見ていると、上手い人はコーチでもできそう。
私と同じように初心者もチラホラいるみたい。

一人でコート際で見学している私に気づいた背が高い男性が、近くまで来てくれた。
「佐藤さんですか?渡辺です。見ていてどう?よかったら、少し打ってみない?」とラケットを女性の先輩から借りてきてくれた。

渡辺さんの球出しで、実際に打たせてもらう。
「もしかして経験者?」
渡辺さんに電話でテニス経験を聞かれた私は、テニス未経験と伝えていた。
経験者でないと入れないサークルは、私には敷居が高い。
それに経験者と言えるほど経験せすにテニス部をやめたのだから。

「少しだけ打ったことがあります。」
「なるほど。うちは未経験者も多いし、大歓迎だよ。練習は毎週 水曜、金曜にやってるから。」

すぐにサークル加入が決まり、連絡先などを交換する。
渡辺さんは気を利かせて、私より先に加入していた新入生の女性二人を呼んでくれた。
大学では見た覚えがない。
学部が違うのだろうか。

彼女たちは、既に練習に参加していた。
彼女たちとも連絡先を交換する。

「来月半ばに、歓迎会を開いてくれるらしいよ。一緒に行こう。」
一緒にと誘ってくれた。
話しやすい子たちで、すぐに仲良くなれそうだ。

「うん。行く行く。」
それからは、大学の講義が終わると 水曜と金曜はテニスコートへ向かうようになった。

私はアルバイトも経験したかったが、父に反対された。
「アルバイトは禁止。働くのはいつでもできる。学生のうちは勉強と、他のことを楽しみなさい。」

アルバイト禁止かぁ~。
サークルへ参加するにはお金がかかる。
道具やウェア、試合代、合宿代など。
だからバイトしたいと言うと、それらは全て父が出してくれた。

どれだけ、バイトさせたくないのかとムッとしたが、出してもらえるのはありがたい。
父に甘えることにし、テニスで必要なものを一式揃えた。


私の大学生活は、だんだん充実していった。
もちろん勉強も単位を落とさぬよう頑張っている。
友人と遊ぶのも楽しい。
テニスサークルでも友人ができた。
サークルは先輩たちも優しく、練習への参加も自由、バイトを優先している人もいたりして、気楽で居心地がよかった。

私は、サークル加入後、ほぼ皆勤で練習に参加していたが、それでも新入生歓迎会で初めて顔を合わせた人も結構いた。

歓迎会で隣の席になり、いろんな話をしたのが、水野くん(みずの)
テニスしてるわりには色白で、中肉中背の彼。
低めの落ち着いた声で、話していて安心する。

テニス経験者で、サークルにあまり顔を出さずに何をしているかというと、テニススクールコーチのバイトに入ってるとのこと。

じゃあなぜサークルに籍をおいたんだろう。人脈作り?
私が腑に落ちない顔でいると、水野くんはこう言った。
「愛実ちゃんみたいなかわいい子がいるなら、サークルの練習にも顔を出そうかな。」そして、ニコっと笑う。

うわ~、軽いよ。
その声でそんなこと言っちゃうの?
イメージと違う。

それから水野くんは、本当にサークルの金曜にある練習に、時々顔を出すようになった。

そして私に話しかけてくるのだ。
コーチのバイトに入るだけのことはあり、教えるのも上手い。
テニスが上手い人ってかっこよく見えてしまう。
だんだんと、水野くんいいなと思うようになっていった。

二ヶ月経った金曜日、テニスの練習が終わり帰っていると、水野くんが追いかけてきた。

「愛実ちゃん、ちょっといい?」
「うん。水野くん、どうしたの?」
「愛実ちゃん、僕と付き合ってください。」
ひぇ~、告白された。
初めて男の人に告白されたよ。

水野くんをいいなと思っていた私は、その場で答えた。
「はい。よろしくお願いします。」

「えっ、えっ、本当にいいの?やった!」
体全体を使って喜ぶ水野くんに、思わず私は笑ってしまう。

そんなに喜んでくれるんだ。
嬉しい。

水野くんが少し落ち着いてきて、
「最近 免許とったから、今度ドライブに行こう。最初に助手席に乗せてあげる。」
とデートに誘われた。

えっ、デートは嬉しいけど、免許取り立ての彼が運転する車に乗るのは不安だな。

次の水曜日、練習に参加すると、いろんな人に聞かれた。
「愛実ちゃんは、水野くんと付き合い出したの?」
なぜみんな知ってるの?
水野くんから告白された時、周りには誰もいなかったのに。

「うん。なんでみんな知ってるの?」
「だって水野くんが言ってたよ。」
えっ、みんなに言っちゃったの?
まだ付き合うと決めたばかりで、二人で出かけたこともないのに。


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