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第16話 ドキドキ
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お昼ご飯を食べ終わり、次はイルカショーを楽しむ。
ちょうど二人で座れるスペースが空いていた。
イルカショーは、水しぶきが飛んできそうで、ドキドキ、ハラハラ。
イルカ、賢いな。
あのつぶらな瞳がかわいいな。
ショーが終わると、また二人でプラプラと館内を歩く。
気になる魚の水槽前で立ち止まり、説明書きをふむふむと読む。
彼は私の歩く早さに合わせて、ゆっくり歩いてくれている。
優しいな、その気遣いが嬉しい。
水族館を存分に楽しんだ後、だんだん空が晴れてきたので、海が見える公園へと移動する。
移動中にクレープを売るお店をみつけた。ついつい目が吸い寄せられる。
気づいた彼が「クレープ食べよっか?」と提案してくれた。
さすが、康生くん。
私のことをよくわかってる~。
私、わかりやすかったかな?
じーっと見すぎてたのかもしれない。
私はチョコバナナ、彼はイチゴカスタードを食べる。
イチゴカスタードも美味しそう。
「愛実も、少し食べる?」
「じゃあ私のも。」
また彼に気持ちを気づかれたようだ。
二人でクレープを交換する。
美味しいものを食べると、自然と笑顔になるよね。
それに、彼にクレープ、とっても似合ってる。
公園へ着くと、空がオレンジの混ざった赤色に染まってきている。
夕陽が海へと近づいていく。
康生と二人、ベンチに座り、夕陽を眺める。
夕陽が海に触れた瞬間、ジュジュっと音がしたような気がした。
キレイだねと、彼の方を見ると、彼は私を見ていた。
心臓がバクバクしていて、彼にまで私の心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかと恥ずかしくなる。
真っ赤な顔を見合せ、フフフと笑う。
私は彼の視線を感じて、ずっとドキドキしている。
二人、手を繋ぎ、ゆっくりと歩いて駅へと向かった。
帰りの電車は、何かイベントがあったのか、混雑していた。
電車に乗り込んだが、手すりにもつり革にも捕まれそうにない。
電車の出入口付近で、人にぶつからないよう注意しながら、フラフラ揺られていると、それに気づいた彼が、立つ位置を変えて、私を守ってくれる。
彼との距離が近くて恥ずかしいが、嫌ではないし、むしろほっと安心する。
知らない人にぶつかるんじゃないかと心配だったから。
これでもう大丈夫。
どれだけ揺られても、ぶつかる相手は康生だけだ。
私は彼に守られている。
彼も頼りになる男の人なんだな…
今日はドキドキさせられっぱなしだ。
***
新人研修が終わり、配属先が発表された。
「佐藤さんの席はここね。」
案内されたのは右側の前方には部長、右斜め後の前方には課長、正面には係長というすごい席。全く気が抜けない席だった。
うわぁ~。
同じ課に配属された沢木くんに
「うわっ、俺、君の席じゃなくてよかった~。」としみじみ言われた。
なぜ新入社員の私がここに?
理由は、横に座る先輩 中岸さんの言葉でわかった。
「佐藤さんは、秘書検定とってるらしいね。秘書ができたと部長が喜んでたよ。」
えっ、この席は資格のせい?
康生が資格の勉強を頑張ってたから、私も何かないかと調べ、秘書検定と簿記検定の教本を購入。空いた時間にコツコツ勉強し、試験を受けていたのだ。
履歴書を書く時には、資格欄に書ける資格を取っていてよかったと思ったものだ。
そして、内定をもらった後は、パソコンの短期集中コースを受講した。
まぁ実際は、秘書らしい仕事を任されることはなく、まずは雑務や電話対応から。
私が一番困ったのは、電話対応。
今は文字での連絡ばかりで、知らない人と電話で話したことはほとんどなかった。
敬語も小学校で習った知識がある程度。丁寧語ならなんとなくわかるが、実際に敬語を使う経験などほぼないに等しい。
自分が謝った使い方をしていないか不安にだった。
最も動揺したのは、電話相手の話す言葉を聞き取れなかったこと。
聞いたことのない方言、しかも早口。
聞き直したが、やはり聞き取れず、これ以上聞き返すのは失礼だと、先輩にお願いして電話をかわってもらった。
先輩も「今のは難しかったかな。仕方がないよ。そのうち聞き取れるようになるから。」と慰めてくれた。
資料作りもパソコンは使えても、一文字あける場所だったり、わかりやすいグラフの配置だったり、わからずにできていないことが多く、何度も赤ペンでの訂正が入る。
訂正が入ったとおりに直して提出すればいいかと再提出しても、また別の箇所に訂正が入る。
早くも心が折れそうだ。
私が凹んでいる姿を見た上司が「見込みがあるから指導してるんだからな。言っても無駄と思ったら、誰も何も言わなくなる。」と言った。
うん、それは見捨てられるということか。
それはそれで嫌だ。
そうやって指導を受けながら働き方を身につけていった。
慣れない生活に、毎日どっと疲れる。
お風呂からあがると、すぐに眠る。
目がシバシバして、起きていられないのだ。
こんなに早寝なのは、小学生以来かも。
朝起きると、夜中に康生から連絡が入っていた。
朝食を食べながら、連絡を返す。
『康生、おはよう。ごめん、昨夜は眠ってた。また連絡するね。』
連絡に気づかないなんて、余程ぐっすり眠っていたみたい。
少しでもいいから、康生と話がしたかったな。
ちょうど二人で座れるスペースが空いていた。
イルカショーは、水しぶきが飛んできそうで、ドキドキ、ハラハラ。
イルカ、賢いな。
あのつぶらな瞳がかわいいな。
ショーが終わると、また二人でプラプラと館内を歩く。
気になる魚の水槽前で立ち止まり、説明書きをふむふむと読む。
彼は私の歩く早さに合わせて、ゆっくり歩いてくれている。
優しいな、その気遣いが嬉しい。
水族館を存分に楽しんだ後、だんだん空が晴れてきたので、海が見える公園へと移動する。
移動中にクレープを売るお店をみつけた。ついつい目が吸い寄せられる。
気づいた彼が「クレープ食べよっか?」と提案してくれた。
さすが、康生くん。
私のことをよくわかってる~。
私、わかりやすかったかな?
じーっと見すぎてたのかもしれない。
私はチョコバナナ、彼はイチゴカスタードを食べる。
イチゴカスタードも美味しそう。
「愛実も、少し食べる?」
「じゃあ私のも。」
また彼に気持ちを気づかれたようだ。
二人でクレープを交換する。
美味しいものを食べると、自然と笑顔になるよね。
それに、彼にクレープ、とっても似合ってる。
公園へ着くと、空がオレンジの混ざった赤色に染まってきている。
夕陽が海へと近づいていく。
康生と二人、ベンチに座り、夕陽を眺める。
夕陽が海に触れた瞬間、ジュジュっと音がしたような気がした。
キレイだねと、彼の方を見ると、彼は私を見ていた。
心臓がバクバクしていて、彼にまで私の心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかと恥ずかしくなる。
真っ赤な顔を見合せ、フフフと笑う。
私は彼の視線を感じて、ずっとドキドキしている。
二人、手を繋ぎ、ゆっくりと歩いて駅へと向かった。
帰りの電車は、何かイベントがあったのか、混雑していた。
電車に乗り込んだが、手すりにもつり革にも捕まれそうにない。
電車の出入口付近で、人にぶつからないよう注意しながら、フラフラ揺られていると、それに気づいた彼が、立つ位置を変えて、私を守ってくれる。
彼との距離が近くて恥ずかしいが、嫌ではないし、むしろほっと安心する。
知らない人にぶつかるんじゃないかと心配だったから。
これでもう大丈夫。
どれだけ揺られても、ぶつかる相手は康生だけだ。
私は彼に守られている。
彼も頼りになる男の人なんだな…
今日はドキドキさせられっぱなしだ。
***
新人研修が終わり、配属先が発表された。
「佐藤さんの席はここね。」
案内されたのは右側の前方には部長、右斜め後の前方には課長、正面には係長というすごい席。全く気が抜けない席だった。
うわぁ~。
同じ課に配属された沢木くんに
「うわっ、俺、君の席じゃなくてよかった~。」としみじみ言われた。
なぜ新入社員の私がここに?
理由は、横に座る先輩 中岸さんの言葉でわかった。
「佐藤さんは、秘書検定とってるらしいね。秘書ができたと部長が喜んでたよ。」
えっ、この席は資格のせい?
康生が資格の勉強を頑張ってたから、私も何かないかと調べ、秘書検定と簿記検定の教本を購入。空いた時間にコツコツ勉強し、試験を受けていたのだ。
履歴書を書く時には、資格欄に書ける資格を取っていてよかったと思ったものだ。
そして、内定をもらった後は、パソコンの短期集中コースを受講した。
まぁ実際は、秘書らしい仕事を任されることはなく、まずは雑務や電話対応から。
私が一番困ったのは、電話対応。
今は文字での連絡ばかりで、知らない人と電話で話したことはほとんどなかった。
敬語も小学校で習った知識がある程度。丁寧語ならなんとなくわかるが、実際に敬語を使う経験などほぼないに等しい。
自分が謝った使い方をしていないか不安にだった。
最も動揺したのは、電話相手の話す言葉を聞き取れなかったこと。
聞いたことのない方言、しかも早口。
聞き直したが、やはり聞き取れず、これ以上聞き返すのは失礼だと、先輩にお願いして電話をかわってもらった。
先輩も「今のは難しかったかな。仕方がないよ。そのうち聞き取れるようになるから。」と慰めてくれた。
資料作りもパソコンは使えても、一文字あける場所だったり、わかりやすいグラフの配置だったり、わからずにできていないことが多く、何度も赤ペンでの訂正が入る。
訂正が入ったとおりに直して提出すればいいかと再提出しても、また別の箇所に訂正が入る。
早くも心が折れそうだ。
私が凹んでいる姿を見た上司が「見込みがあるから指導してるんだからな。言っても無駄と思ったら、誰も何も言わなくなる。」と言った。
うん、それは見捨てられるということか。
それはそれで嫌だ。
そうやって指導を受けながら働き方を身につけていった。
慣れない生活に、毎日どっと疲れる。
お風呂からあがると、すぐに眠る。
目がシバシバして、起きていられないのだ。
こんなに早寝なのは、小学生以来かも。
朝起きると、夜中に康生から連絡が入っていた。
朝食を食べながら、連絡を返す。
『康生、おはよう。ごめん、昨夜は眠ってた。また連絡するね。』
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少しでもいいから、康生と話がしたかったな。
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