8 / 14
第8話 呼び出し
しおりを挟む
次の定休日。
昼食に、みんなの前でたまごロールパンを作る。
マヨネーズを作るのは力仕事なので、リュカとノアにお願いする。
おばさんと、私でゆでたまごの殻を剥き、私が潰す。
塩コショウとマヨネーズで味を調える。
これが味の決め手になるので、私が担当する。
なんとなくだが、自分がしなければいけない気がして。
おじさんが焼いたパンに具材をつめるのは、ハンバーガーの時と同じで、おばさんと私。
今回もみんなで試食。
確かにとびきり美味しいが…元気が沸いてくるとか、体がポカボカするとか、わからない。
そんな中、ダンおじさんは、肩の痛みが、マーサおばさんは、足腰の痛みがなおったそうだ。
おじさんとおばさんがハンバーガーを口にしたのは、最初に食べた一度きりだった。
軽い症状だったので、街の噂のような実感はなかったらしい。
今回のたまごロールパンを意識して食べると…
「こりゃすごい!!」とおじさん。
「えっ、どうして?リリーちゃん、何か特別な材料が入ってるのかい?」とおばさん。
ハンバーガーの時は、買い出しに出かけたが、普通のお店で買えるものしか使っていない。
今回は全てパン屋にあるものを使っている。
たくさんの人に購入してもらうには…
パンのサイズを小さくして、売値を安く設定する。
切れ目を入れたパンにたまごの具をスプーンで入れるのは大変なので、生クリーム用の絞りだしを買いにいき、口の部分を少しだけ加工した。
これで、大量にサクサク作れるんじゃないかな。
たまごロールパンを買い占められないように、1人2個までにさせてもらう。
たまごロールパンを売り出すと、こちらも瞬く間に人気商品となった。
ハンバーガーと同じく、たまごロールパンにも病気を改善する効果があった。
真似する店が出てきたが、ハンバーガーのソースやたまごロールパンのマヨネーズは真似できなかったようだ。
味が全然違うし、人々が期待する効果もあらわれない。
結局、真似ようとした店は、悪い噂が広がり、つぶれてしまった。
だんだんと『パン屋のリリーは、聖女様だ。』との噂が広がりーーー
ある日、いかにも高級そうな真っ白な厚手の紙が使われた手紙が届いた。
手紙を受け取ったダンおじさんの手は震えている。
ついに、この街の領主に呼ばれたのである。
領民の健康に貢献しているパン屋。
開店時間に呼び出すわけにはいかない。
『次の定休日に話を聞きたいので、パン屋で働いている全員で来るように』との呼び出しだった。
そういえば、私は自分がどこにいるのかもわからない。
リュカにこっそり教えてもらう。
ここは、ギリシアン国 フラリス領という場所らしい。
ギリシアン国? フラリス領?
聞いたことないな。
今の私が生まれ育った場所なのかしら?
***
何だかんだで、定休日も大忙しである。
領主様の用件は、新商品のことだろう。
もし違っていたとしても、話題の商品をお土産に持っていけば喜ばれるはずとのマーサおばさんの提案で、ハンバーガーとたまごロールパンを持参することになった。
朝からみんなで分担し、せっせと作る。
もう手慣れたものだ。
迎えの馬車がやってきた。
ダンおじさん、マーサおばさん、リュカ、ノア、私で乗り込む。
領主様の邸宅に着き、私が馬車から顔を出すと、手を差しのべられた。
無意識に自分の手をのせて、エスコートされる。
なぜか私に注目が集まっているような…
リュカとノアなんて、ポカンとクチが開いてますよー。
ハッ、私はいったい誰にエスコートされてる?
ゆっくりと顔を動かし、隣を確認すると、
それはそれは見目麗しい若者が。
えっ! だれ?
私の心の声が聞こえたのか…
「初めてお目にかかります。聖女リリー様。私はマルソー・フラリスです。
是非ともお見知りおきを。」
優雅に微笑む彼は、ゆるくカーブした銀髪に琥珀色の瞳。
肌が、肌がキレイ。
触ったらすべすべなんだろうなぁ。
天使じゃなかろうか。
聖女リリー? なにそれ?
私のこと?
私が聖女? まさかー。
どうしよう…
マルソー様は、フラリス伯爵家の嫡男だ。
昨日、リュカから教えてもらっていた。
今さら手を離したら、失礼?失礼にあたる?
わからない、わからなーい。
もうどっしり構えて、流れに身を任せるしかないよね。
そういう時こそ、前世の人生経験が物を言う。
心臓を激しくパクバクさせながらも、すました顔でマルソー様にエスコートされる。
「リリー様はどこの家の出身ですか?
エスコートに慣れていらっしゃるようだ。」
ギクッ
エスコートに慣れている?
何も覚えてないんだけど…
身体が自然と動いた。
今の私は貴族なの?
とにかくエスコートされた経験があるのだろう。
記憶喪失だと言っても、大丈夫なのかな…
マルソー様のキレイな琥珀色の瞳に圧を、圧を感じる。
嘘をついても見破るぞということか。
「それがよく覚えていなくて……」
申し訳なさそうに目を伏せる。
「あっ、リリー様大丈夫ですから。
怖がらないでください。
フラリス伯爵家はあなたの味方ですから。」
マルソー様が慌てている。
「マルソー、何してる?
いくら聖女様と離れたくないからと、待ちくたびれたぞ。
聖女様、みな、息子がすまない。」
フラリス伯爵の登場だ。
マルソー様をダンディなおじ様にした感じ?大人の魅力たっぷりだ。
「じゃあ、昼食でも食べながら話すとしよう。
聖女様、よろしいですか?」
えっ、私?私に聞くの?
「聖女様だなんて…私はただのリリーです。
ダンおじさん、いいですか?」
「はい、もちろん。いえ、大丈夫であります。」
おじさん緊張してるなー。
何しろ相手は領主様だものね。
昼食に、みんなの前でたまごロールパンを作る。
マヨネーズを作るのは力仕事なので、リュカとノアにお願いする。
おばさんと、私でゆでたまごの殻を剥き、私が潰す。
塩コショウとマヨネーズで味を調える。
これが味の決め手になるので、私が担当する。
なんとなくだが、自分がしなければいけない気がして。
おじさんが焼いたパンに具材をつめるのは、ハンバーガーの時と同じで、おばさんと私。
今回もみんなで試食。
確かにとびきり美味しいが…元気が沸いてくるとか、体がポカボカするとか、わからない。
そんな中、ダンおじさんは、肩の痛みが、マーサおばさんは、足腰の痛みがなおったそうだ。
おじさんとおばさんがハンバーガーを口にしたのは、最初に食べた一度きりだった。
軽い症状だったので、街の噂のような実感はなかったらしい。
今回のたまごロールパンを意識して食べると…
「こりゃすごい!!」とおじさん。
「えっ、どうして?リリーちゃん、何か特別な材料が入ってるのかい?」とおばさん。
ハンバーガーの時は、買い出しに出かけたが、普通のお店で買えるものしか使っていない。
今回は全てパン屋にあるものを使っている。
たくさんの人に購入してもらうには…
パンのサイズを小さくして、売値を安く設定する。
切れ目を入れたパンにたまごの具をスプーンで入れるのは大変なので、生クリーム用の絞りだしを買いにいき、口の部分を少しだけ加工した。
これで、大量にサクサク作れるんじゃないかな。
たまごロールパンを買い占められないように、1人2個までにさせてもらう。
たまごロールパンを売り出すと、こちらも瞬く間に人気商品となった。
ハンバーガーと同じく、たまごロールパンにも病気を改善する効果があった。
真似する店が出てきたが、ハンバーガーのソースやたまごロールパンのマヨネーズは真似できなかったようだ。
味が全然違うし、人々が期待する効果もあらわれない。
結局、真似ようとした店は、悪い噂が広がり、つぶれてしまった。
だんだんと『パン屋のリリーは、聖女様だ。』との噂が広がりーーー
ある日、いかにも高級そうな真っ白な厚手の紙が使われた手紙が届いた。
手紙を受け取ったダンおじさんの手は震えている。
ついに、この街の領主に呼ばれたのである。
領民の健康に貢献しているパン屋。
開店時間に呼び出すわけにはいかない。
『次の定休日に話を聞きたいので、パン屋で働いている全員で来るように』との呼び出しだった。
そういえば、私は自分がどこにいるのかもわからない。
リュカにこっそり教えてもらう。
ここは、ギリシアン国 フラリス領という場所らしい。
ギリシアン国? フラリス領?
聞いたことないな。
今の私が生まれ育った場所なのかしら?
***
何だかんだで、定休日も大忙しである。
領主様の用件は、新商品のことだろう。
もし違っていたとしても、話題の商品をお土産に持っていけば喜ばれるはずとのマーサおばさんの提案で、ハンバーガーとたまごロールパンを持参することになった。
朝からみんなで分担し、せっせと作る。
もう手慣れたものだ。
迎えの馬車がやってきた。
ダンおじさん、マーサおばさん、リュカ、ノア、私で乗り込む。
領主様の邸宅に着き、私が馬車から顔を出すと、手を差しのべられた。
無意識に自分の手をのせて、エスコートされる。
なぜか私に注目が集まっているような…
リュカとノアなんて、ポカンとクチが開いてますよー。
ハッ、私はいったい誰にエスコートされてる?
ゆっくりと顔を動かし、隣を確認すると、
それはそれは見目麗しい若者が。
えっ! だれ?
私の心の声が聞こえたのか…
「初めてお目にかかります。聖女リリー様。私はマルソー・フラリスです。
是非ともお見知りおきを。」
優雅に微笑む彼は、ゆるくカーブした銀髪に琥珀色の瞳。
肌が、肌がキレイ。
触ったらすべすべなんだろうなぁ。
天使じゃなかろうか。
聖女リリー? なにそれ?
私のこと?
私が聖女? まさかー。
どうしよう…
マルソー様は、フラリス伯爵家の嫡男だ。
昨日、リュカから教えてもらっていた。
今さら手を離したら、失礼?失礼にあたる?
わからない、わからなーい。
もうどっしり構えて、流れに身を任せるしかないよね。
そういう時こそ、前世の人生経験が物を言う。
心臓を激しくパクバクさせながらも、すました顔でマルソー様にエスコートされる。
「リリー様はどこの家の出身ですか?
エスコートに慣れていらっしゃるようだ。」
ギクッ
エスコートに慣れている?
何も覚えてないんだけど…
身体が自然と動いた。
今の私は貴族なの?
とにかくエスコートされた経験があるのだろう。
記憶喪失だと言っても、大丈夫なのかな…
マルソー様のキレイな琥珀色の瞳に圧を、圧を感じる。
嘘をついても見破るぞということか。
「それがよく覚えていなくて……」
申し訳なさそうに目を伏せる。
「あっ、リリー様大丈夫ですから。
怖がらないでください。
フラリス伯爵家はあなたの味方ですから。」
マルソー様が慌てている。
「マルソー、何してる?
いくら聖女様と離れたくないからと、待ちくたびれたぞ。
聖女様、みな、息子がすまない。」
フラリス伯爵の登場だ。
マルソー様をダンディなおじ様にした感じ?大人の魅力たっぷりだ。
「じゃあ、昼食でも食べながら話すとしよう。
聖女様、よろしいですか?」
えっ、私?私に聞くの?
「聖女様だなんて…私はただのリリーです。
ダンおじさん、いいですか?」
「はい、もちろん。いえ、大丈夫であります。」
おじさん緊張してるなー。
何しろ相手は領主様だものね。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
228
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる