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第6章
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「まさか休日に会えるなんて、思わなかったよ~律くん」
京子がニッコニコ穏やかな笑顔で迎えてくれて、ここの人達は本当に優しいな、と思う。
「ね、律くん、ケーキと紅茶持って俺の部屋行かない?」
由伊にそう言われ、チラリと文崇を見る。
「行ってきなさい、待ってるよ」
そう言われ嬉しくなって、「うん.......!」と返事をした。
由伊の後ろについて行く。
久しぶりの由伊の部屋に心躍る。
「律く~ん!!」
「わっ!」
急に抱き締められ、抱き留めるのにバランスが崩れ床に倒れる。
幸い、カーペットのおかげで体は痛くない。
ふわ、と由伊の甘い香りが心地よく落ち着く。
あ~、やっぱり父さんとはまた違う安心感だなあ、なんてホッコリする。
「嬉しい、嬉しい律くん!」
犬みたいにぎゅーっと抱き締めてくれる由伊に、律も嬉しくなってそっと由伊の背に手を伸ばし、「.......俺も」と返した。
すると、ガバッと顔を上げた由伊は言う。
「ねえ、キスしたい」
「.......ぅえっ!?」
思わず変な声を出してしまい、由伊に「何その声」と笑われる。
「い、いきなり変なこと言うから!」
「変じゃないよ。キスしたいって思ったんだ、本当に」
ムゥ、と口をとがらせ拗ねたように言う由伊に律は頬が熱くなるのを感じながら、視線を逸らす。
「..............す、少し、なら.......?」
疑問形で返すと、由伊はぱあっと顔を明るくして「うん!少し!」と言って唇を合わせてきた。
「ん.......、」
「ふふ、可愛い」
由伊の事だから、なんかえっちぃやつしてくるんだと思ったけど、ふにっ、と唇を合わせるだけの優しいキスで終わった。
「.......あんまりやると、律くんお父さんに隠せなそうだから我慢するね」
意地悪そうに囁かれ、「ばっ、馬鹿じゃないの!」と怒っておいた。
「てか、本当に律くんとお父さんって仲良かったんだね」
意外だとでも言うように、しみじみそんな事を言ってくる。
律は起き上がり由伊の隣に座る。
「前から思ってたんだけど、なんで由伊は俺と父さんが仲悪いと思ってたの?」
そう聞くと、由伊は難しい顔をして「何となく?」と笑ってはぐらかした。
由伊自身、律が無事なのであれば問題はなかった。
だとしたら律に何があったのだろうか。父親ではないということは赤の他人に何かをされたから.......自傷癖やメンタル面が不安定なのだろうけど.......。
「ま、良かったよ!元気そうで」
由伊はにっこり笑って、律の不安を煽らぬよう声をかけた。
「元気そうでって、昨日ぶりなだけじゃん」
そう笑うと、由伊は照れくさそうに言う。
「そうなんだけど、俺は律くんの事大好きだから少しでも会わない時間があると途方もなく長く感じるんだよ、30分でも、1時間でも、3日と一週間くらいね」
それは長すぎだよ、なんて思ったけど純粋に嬉しくて頬が緩んでしまう。
飽きられたくない、嫌われたくない、その想いばかりが強くなる。
このままずーっと、一緒に居れたらいいのに。
「律くんは?寂しいって思ってくれた?」
優しく目を細めて聞かれ、どきり、と胸が鳴る。
これは確実に由伊の弟の寛貴に感じたドキドキとは違う。
由伊は全部、他人に感じるものは別の種類なんだ。
なんでだろう?
ドキドキも、嬉しさも安心感も、全部他の人では感じられない種類。
特別で、あたたかさだって特別だ。
不思議なんだ、由伊は。
「.......寂しい、って思ったよ」
だから、 失いたくない想いが日に日に強くなる。
終わるはずなんてないと思うのに、終わらせたくない、と思う自分が居た。
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