召喚獣と敬愛の契りを

たとい

文字の大きさ
3 / 4

クラーケン

しおりを挟む
「召喚、クラーケン。」




クラーケンといえば、海に生息している巨大なイカの怪物のことだ。

しかし昔は姿を見て生きて帰った者はおらず、舟を襲い食らう謎の巨大生物として語られていた。

正体が判明し、一番大きな大将が退治されてからは多くの冒険者によって対処できるようになり、海で扱う召喚獣としての契約もされるようになった。




「久しぶり、クラーケン。」




召喚されたクラーケンは、まだ小さな子供の時にサテラと契約した生き物だ。どうやら仲間とはぐれたらしく、弱っていたのを拾われて育てられていた。

だからなのか、大きくなって別れてからもサテラを母親のように慕ってくれている。クラーケンはいつものように甘えきた。




「まったく、もうあなたは子供じゃないのに。」




そう言いながらも、サテラは嬉しそうにクラーケンを撫でてやる。

サテラのクラーケンは比較的小さい方なので扱いやすい。今回呼び出したのは湖だが、余裕をもって喚び出せた。




「実は、この湖に指輪を落とした人がいるの。大事なものだけど、ここって深いし危ないから探せなくて。見つけてくれる?」




クラーケンは頷いて潜っていく。

この世界において、墨で黒く染めた海を泳ぐことからクラーケンは物を探すのが得意だと予測されている。特に宝物をだ。舟を襲っていたのも、運んでいた宝が目当てだったのではと言われている。

ゆえに、サテラはクラーケンに頼んだのであった。

しばらくしてクラーケンが水面から顔を出し、目的の指輪と思われるものを差し出す。




「早かったね、ありがとう。あれ?これは。」




クラーケンはもう1つ、サテラに差し出す。それはとてもキレイな色をした水晶だった。削られたのか、形は歪だが丸々としていた。




「ついでに見つけてきたの?この湖にこんなものがあったなんてね。ありがとう、大事にする。」




サテラは水晶を抱いて微笑んだ。その顔を見てクラーケンもおおいに喜び、じゃあもっと拾ってこようと今度は勢いよく潜り込む。




「あぁ、一個で充分だから!また潜らなくていいから!」




これ以上なにかを見つけられても困るので、彼女は慌てて止めさせようとしたのだった。







「そうそう!この指輪よ。本当にありがとう。」

「いえ、こちらこそ報酬までいただいてしまってすいません。」

「当然のことよ。諦めていたんだもの。」

「あの、ところで他にも落とし物をされた方ってご存知ないですか?」

「え?そういえばそんな話を何人かから聞いたような。もしかして他にも何か見つかったの?そうよね、あの湖って広いから。」

「えぇ、まぁ。紹介してもらえます?」

「もちろんよ、協力するわ。私、顔広いから期待してて頂戴。」

「それは、助かります。」




なるべく沢山の情報が必要なのだ。

なにせ、気合いを入れてたくさん拾ってきてしまったのだから。




「見つからなかった分は、寄付しようかなぁ・・・。」




ちなみに彼女が去ったあと、湖が綺麗になったことが噂になり、水晶もとれることから村の名所になるのだが、その起源は知られることがなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

物語は始まりませんでした

王水
ファンタジー
カタカナ名を覚えるのが苦手な女性が異世界転生したら……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...