2 / 4
ゴブリン
しおりを挟む
「ほら。杖、強化終わったぞ。」
「いつもありがと、ゴブリン。」
サテラは、仕上げた杖を受け取った。
この杖は昔からゴブリンであるオイラが重ねに重ねて何度も強くしている。
だから元々は召喚用としてでしか使いようのなかった、この杖の今の威力には結構自信がある。
「最近そっちの様子はどうなの?」
「珍しい植物の種が手に入って、最近はそれをどれだけ上手に育てるかがブームになってるな。食い物だし。」
「へぇー。私も食べてみたいなぁ。」
「いつでも戻ってくれば、オイラが作った特製のを食べさせてやるよ。」
「わぁい。楽しみ。」
にへら、と笑うサテラは相変わらず幼なびていて愛らしい。
昔はこうして人間と交流するだなんてこと、とてもじゃないがありえなかった。
こいつは、昔っからこんなだったけど。
オイラ達ゴブリンは背が低くて鼻と耳が長く、土や石をうまく扱うことができる。
ゆえにドワーフと呼ばれる小人と、地の妖精ノームとの子孫ではないかという説が多い。
しかし特徴がつかめないうえに特殊な姿だったから人間からは醜く気味の悪い生き物だと避けられ、オイラ達も性根の悪いのが多かったから人間と仲良くやろうなんて思う奴はいなかった。
だから、当時の人間とゴブリンの仲は最悪だった。
ゴブリンは人間の作り出した物を奪い、人間はゴブリンを捕えると無理やり働かせる。そういう関係だった。
そんな時代にオイラがサテラに初めて出会ったのは、花畑だった。
畑から食い物を盗むのに失敗して怪我を負って逃げてきたら、そこで出会った彼女が治療をしようとしてくれたのだ。
ビックリした。だからすぐ逃げた。でもなんか気になって、また花畑に行った。
そしたら彼女がいた。彼女も、同じことを考えていた。今度は、警戒しながらも治療を受けた。
そして話をした。
「なんで食べ物盗んだの?」
「なんでって、オイラ達は森に無ぇもんは人間から奪うのが普通なんだよ。それに人間の作ったやつって、なんか旨いし。」
「でもゴブリンって土のことには詳しくて扱うのも得意なんでしょ?その気になれば、私達よりも上手に植物育てられそうだけど。」
「は?なんで土に詳しいと植物が上手に育つんだ?」
「だって、土から栄養もらってるし。良い土だと育ちがよくなるんだよ、植物って。他にも日光とか水とか必要だけど。」
「そんな手間のかかることやってられないよ。盗む方が簡単でいい。」
「でも、やってみると楽しいかもよ?」
そう言って、サテラは花畑の冠に持ってきた自分の育てた花を添えて、俺にかぶせた。
「これ、さっきから作ってたやつだよな?何だよこれ。」
「お花の冠、のつもり。あんまり上手じゃないけど。」
「これが冠?ぐちゃぐちゃじゃん。しょーがねぇな、ちょっと作ってやるからよく見てろ。」
「え、作れるの?」
「お前のやり方見てたらなんとなくはな。何度も同じこと繰り返すだけだし。」
あまりの下手っぷりに職人魂の火でもついたのか、俺は真似して花の冠を作ってやった。
初めてだったが簡単に綺麗なのが出来上がって、かぶせてやる。
「ほらよ。こんなもん、オイラなんかよりお前の方が似合う。」
「うわぁ、ありがとう!すごいね、本当に初めて?やっぱり、ゴブリンって器用なんだね。」
「比較的そうだな。特に、土に関しては。」
「じゃあ、やっぱり上手く作れると思うよ?植物。」
「え?ないない。たしかにこれ作るのは案外楽しかったけど、あんな奴らの世話を焼くのは、ちょっと。」
「そんなことないって。きっと、楽しく作れるよ。この花冠みたいに。」
その出来事が、全てのキッカケだった。
サテラに苗をもらって、教えてもらいながら作ってみたら見事にはまってしまったのだ。
それを見た他のゴブリンもだんだん真似するようになった。
時が経つうちに各地域のゴブリンと人間もしだいに交流するようになって。
今となってはすっかり馴染んで、ゴブリンが人間と町で暮らしながら鍛冶工房なんかで働くというのが当たり前になっている。
植物を育てているゴブリンは、オイラ達の一族ぐらいだが。
「そうだ。久しぶりに花冠、作ってみたんだ。どう?前よりは上手に作れたでしょ。」
すっかり成長したサテラが、そう言って持っていた花冠をかぶせてきた。
正直、腕はまったく成長していなかった。
「まったく。醜いゴブリンに花冠をあげる奴なんてお前ぐらいだな。」
だけど嬉しかったから、ただ素直にその冠を受け取ったのだった。
「いつもありがと、ゴブリン。」
サテラは、仕上げた杖を受け取った。
この杖は昔からゴブリンであるオイラが重ねに重ねて何度も強くしている。
だから元々は召喚用としてでしか使いようのなかった、この杖の今の威力には結構自信がある。
「最近そっちの様子はどうなの?」
「珍しい植物の種が手に入って、最近はそれをどれだけ上手に育てるかがブームになってるな。食い物だし。」
「へぇー。私も食べてみたいなぁ。」
「いつでも戻ってくれば、オイラが作った特製のを食べさせてやるよ。」
「わぁい。楽しみ。」
にへら、と笑うサテラは相変わらず幼なびていて愛らしい。
昔はこうして人間と交流するだなんてこと、とてもじゃないがありえなかった。
こいつは、昔っからこんなだったけど。
オイラ達ゴブリンは背が低くて鼻と耳が長く、土や石をうまく扱うことができる。
ゆえにドワーフと呼ばれる小人と、地の妖精ノームとの子孫ではないかという説が多い。
しかし特徴がつかめないうえに特殊な姿だったから人間からは醜く気味の悪い生き物だと避けられ、オイラ達も性根の悪いのが多かったから人間と仲良くやろうなんて思う奴はいなかった。
だから、当時の人間とゴブリンの仲は最悪だった。
ゴブリンは人間の作り出した物を奪い、人間はゴブリンを捕えると無理やり働かせる。そういう関係だった。
そんな時代にオイラがサテラに初めて出会ったのは、花畑だった。
畑から食い物を盗むのに失敗して怪我を負って逃げてきたら、そこで出会った彼女が治療をしようとしてくれたのだ。
ビックリした。だからすぐ逃げた。でもなんか気になって、また花畑に行った。
そしたら彼女がいた。彼女も、同じことを考えていた。今度は、警戒しながらも治療を受けた。
そして話をした。
「なんで食べ物盗んだの?」
「なんでって、オイラ達は森に無ぇもんは人間から奪うのが普通なんだよ。それに人間の作ったやつって、なんか旨いし。」
「でもゴブリンって土のことには詳しくて扱うのも得意なんでしょ?その気になれば、私達よりも上手に植物育てられそうだけど。」
「は?なんで土に詳しいと植物が上手に育つんだ?」
「だって、土から栄養もらってるし。良い土だと育ちがよくなるんだよ、植物って。他にも日光とか水とか必要だけど。」
「そんな手間のかかることやってられないよ。盗む方が簡単でいい。」
「でも、やってみると楽しいかもよ?」
そう言って、サテラは花畑の冠に持ってきた自分の育てた花を添えて、俺にかぶせた。
「これ、さっきから作ってたやつだよな?何だよこれ。」
「お花の冠、のつもり。あんまり上手じゃないけど。」
「これが冠?ぐちゃぐちゃじゃん。しょーがねぇな、ちょっと作ってやるからよく見てろ。」
「え、作れるの?」
「お前のやり方見てたらなんとなくはな。何度も同じこと繰り返すだけだし。」
あまりの下手っぷりに職人魂の火でもついたのか、俺は真似して花の冠を作ってやった。
初めてだったが簡単に綺麗なのが出来上がって、かぶせてやる。
「ほらよ。こんなもん、オイラなんかよりお前の方が似合う。」
「うわぁ、ありがとう!すごいね、本当に初めて?やっぱり、ゴブリンって器用なんだね。」
「比較的そうだな。特に、土に関しては。」
「じゃあ、やっぱり上手く作れると思うよ?植物。」
「え?ないない。たしかにこれ作るのは案外楽しかったけど、あんな奴らの世話を焼くのは、ちょっと。」
「そんなことないって。きっと、楽しく作れるよ。この花冠みたいに。」
その出来事が、全てのキッカケだった。
サテラに苗をもらって、教えてもらいながら作ってみたら見事にはまってしまったのだ。
それを見た他のゴブリンもだんだん真似するようになった。
時が経つうちに各地域のゴブリンと人間もしだいに交流するようになって。
今となってはすっかり馴染んで、ゴブリンが人間と町で暮らしながら鍛冶工房なんかで働くというのが当たり前になっている。
植物を育てているゴブリンは、オイラ達の一族ぐらいだが。
「そうだ。久しぶりに花冠、作ってみたんだ。どう?前よりは上手に作れたでしょ。」
すっかり成長したサテラが、そう言って持っていた花冠をかぶせてきた。
正直、腕はまったく成長していなかった。
「まったく。醜いゴブリンに花冠をあげる奴なんてお前ぐらいだな。」
だけど嬉しかったから、ただ素直にその冠を受け取ったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる