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11.最終話?
しおりを挟む2人がお付き合いすることになって、初めての現場。どうなることかと思っていた純太だったが、どうやら自分は仕事と恋愛は共存しないタイプと確信する。
「鷹宮さん、確認お願いします」
「あ、うん、ありがとう。藤白くん」
付き合う前よりもキビキビとした仕事ぶりに、驚きつつも鷹宮はときめいていた。今まで鷹宮にとって恋人は公私混同タイプしかいなかったからだ。
「本当、純太くんはいいなぁ」
「いやいや、最初ってもっとラブラブ楽しいときじゃないの?」
2人の関係を知っている唯一の人物である男ルイが隣でツッコミを入れるも、当事者たちは不思議そうに首を傾げている。
「楽しいに決まってるだろ」
「うん、楽しいよ?」
「いや、うん。俺が間違ってたわ」
呆れた顔のルイと、幸せそうな2人。そんな様子を同じ現場で遠くから見ていた先輩が、変化に気づかないわけがなかった。
(プライベートのことだし、僕がどうこう言うことじゃないよね)
理解ある先輩は2人が付き合ったんだろうと気づいてはいたが、会社には報告しなかった。そのおかげで純太は鷹宮事務所の担当を継続し、新CMも見事に成功。
それだけではなく何事も素直に吸収し、学習した純太はメキメキと頭角を現し、鷹宮事務所の窓口担当から、頼りになる若手社員へと成長を遂げていく。
「藤白くんも、一人でだいぶ仕事こなせるようになってきたね」
「先輩のご指導のおかげです!」
「ハハハ! またまた~」
オフィスにて、隣同士に座っている先輩と純太が、そんなにこやかムードで話していると、通路一本離れたブースにいるお姉さま方の話し声が聞こえてくる。
「もったいないよねぇ」
「人手不足でしょ?」
「鷹宮社長まだまだ現役でいけるのにねー」
話題の主が恋人の話だと気づき、純太は耳をそばだてる。
「モデルの仕事は全部ルイくんにふってるし」
「自分はもう表には出ないのかしら」
「俳優業したいから独立したとも聞いたけどね」
真相はわかんないわーと、3人の話が終わり、純太は今初めて知った事実に驚き言葉を失う。
(クリスさんが、俳優?!)
「藤白くん、今の聞こえた?」
コクコクとうなずく純太に、どこから話そうかと先輩はしばし考えた。
「詳しくは本人に聞いた方がいいんだろうけど、鷹宮さんが独立したのは、したい仕事をさせてもらえなかったからって聞いてるよ。ルイくんも前の事務所でしたくない仕事を割り当てられて困ってたらしい……」
「そう、だったんですね」
今の明るい2人から想像できない話に困惑している純太を見て、先輩はニコリと微笑む。
「大丈夫、藤白くんにならなんでも教えてくれるよ」
「えっ……そ、そうですかね?」
バレているのに気づいていない純太は、先輩の自信がどこから来ているのかわからず、さらに困惑するのだった。
そんな話を聞いた後、久しぶりに全員の休日が合った日。純太は鷹宮の家で食事をしようと招かれた。
(2人に聞きたい、けど聞いてもいいのかな)
うーんうーんと内心悩んでいたのは、しっかり純太の表情に出ていて、顔を見合わせた鷹宮とルイに「また1人で何を悩んでるんだ」と問い質されてしまう。
「すいません、2人の話をたまたま聞いてしまって、気になるのは無粋なことかもとは思ったんですけど!」
あまりに純太が思い詰めていたので何事かと思っていたのに、拍子抜けの内容だったのか2人はポカンとしたあと、噴き出して笑った。
「ハハハ! なんだ、そんなことかよ! 俺はなー、前の事務所で、おバカタレントさせられかけてたとこを社長に助けてもらってさー」
モデルで所属したはずが、事務所の飲み会で物を知らない奴だと先輩たちにからかわれ、そのままテレビに出されそうになったんだという。
「ひ、酷すぎる!」
「だろー? まじでコレは恥をかく前に辞めるしかない! って悩んでた時に社長が声かけてくれてさ、今があるんだよねーー」
いい話にジーンと感動し涙目になった純太を見て、さりげなくティッシュを手渡す鷹宮。
「良いように言ってくれて助かるよ。ルイはすでに人気があったから、僕としては引き抜き成功! って感じで、助かったのはこっちなんだけどね」
「社長も同じようなことされたんだっけ」
「そうだね、俳優で入ったはずがモデルしかさせてもらえなくて……」
それ以外にも色々と嫌なことを思い出したのか、少し鷹宮の表情が曇り、2人はごくりと生つばを飲み込む。
「クリスさんのこと、僕何も知りませんでした……」
「そういえば純太は芸能人ってことも、知らなかったんだよな」
「言ってなかったね、まぁ今は休業してるようなものだし」
((今までの会話で何度かそうかも? ってことはあったはずだけど))
しかしピュアな純太が気づくはずもないかと2人は同じタイミングで思い、納得した。
それにも気づかない純太は、1番聞きたかったことを鷹宮に問いかける。
「もう、復帰はされないんですか?」
シーンとする部屋、少し困った表情の鷹宮とルイは顔を見合わせた。
そして、鷹宮が話し始める。
「そうだね、出来れば復帰したいけど」
「はぁーー、マネージャーが見つかればだろー? 社長こだわり強いからむずいんだって」
「人手不足ってやつですね……」
「うちは2人しかいないからね」
純太は初めましての時に社長兼マネージャーという肩書きの名刺をもらったことを思い出す。
(きっとクリスさんは素敵な演技をするんだろうなぁ。見てみたいなぁ……)
考えがまとまるよりも先に、純太の口から言葉がこぼれ出た。
「僕とか、どうですか?」
ふたたび、シーンとする部屋。考えもなしに発言したことを後悔した純太は青ざめる。
「いいの?!」
「純太がマネージャーなら最高なんだけど?!」
先ほどの沈黙が嘘かのような、大歓迎ムードな2人が勢い良く身を乗り出す。
「あ、その、ひゃい!」
2人の勢いに押され、プラスほっぺをルイにムニムニされ変な声が出てしまった純太だったが、嬉しそうにニコニコする2人が目の前にいて自分も嬉しくなりにっこり笑った。
「じゃあ俺、純太のために戦隊のブルー役とれるよう頑張るわ」
「え!? なにそれルイ、最高すぎるんだけど!」
ルイが調子のいいことを言って、喜び崇める純太が視界に入った鷹宮は大人気なく本領を発揮していく。
「じゃあ、僕は悪の総司令官になってあげよう」
「ひゃああ!」
そう耳元で囁かれて真っ赤になる純太、目の前で行われた行為にドン引きのルイは、表情を歪め、苦言を呈した。
「やりすぎ、大人気なさすぎ」
「純太くんの夢は、恋人である僕が叶えるべきだ」
「わぁぁ……」
まだ声の余韻にやられて、腑抜けた声をあげている純太を抱き寄せながら、キリッとした表情を作った鷹宮はそれが当たり前だろうというように反論した。
(オエーー。本当のことも、まだ言ってないくせによく言うねぇ)
(それは、追々に言うから黙ってろよ)
長年の付き合いからか、表情とジェスチャーで2人は会話を成立させる。もちろん今回も純太は気づいていない。
ーー数ヶ月後ーー
惜しまれつつも退職した純太は鷹宮芸能事務所のマネージャーとして転職し、今日は社宅である鷹宮と同じフロアの部屋へと引っ越しの日である。
「社宅が、こんな豪華なマンションなんて……」
「マネージャーは近くに住んでた方がいいからね」
「念願の1人暮らしっ! 最高っ!」
純太が部屋を借りる時に便乗して、ルイも自分の部屋を借りてもらいルンルンで引っ越し作業を進めている。3人お隣同士になり、これから楽しくなりそうな予感しかしない純太も嬉しそうに荷物を運んだ。
「これからよろしくね、藤白マネージャー」
「よろしくな、マネージャー!」
「よろしくお願いします!」
協力して大方の荷物を運び終えると、後はそれぞれの作業になりルイが自分の部屋へと帰っていく。
そして純太も戻ろうとするが、グイッと肩を抱き寄せられてバランスを崩し、ぽふっと鷹宮の胸に身を預ける形になった。
「もちろん、恋人としてもよろしくね?」
「は、はい……よろしくお願いします」
赤くなった純太が愛おしくて、鷹宮は周りから見えないように開いた扉の影に隠れながら純太へ軽くキスをする。
「そ、外ですよ!?」
「え、部屋の中ならいいの?」
イタズラな表情で鷹宮がそう言うと、純太は言い返せずに口を噤んだ。
「何も言わないのは、イエスってことだよね」
「わぁっ! 待って、ちが、!」
ぐいっと手を引きながらウキウキで鷹宮は純太を部屋の中へ連れ立っていく。心の準備が出来ていない純太の声が途切れ途切れ聞こえかけたが、扉はパタリと閉まったのでそれ以上先は2人以外、誰も知り得ないのだった。
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