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第二部 漂流編
第28話 深層の裂層(れっそう)
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深層が最後に鳴らした“始まりの音”が、
まるで沈んでいく石のように闇へ消えていった。
その余韻が完全に溶ける頃――
世界は音という音を失っていた。
リタの唇が「だれ」と震えた直後の静寂が、
三人の耳の奥にしつこくこびりついている。
空気は凍りついたように動かず、
深層の呼吸さえも一度止められたかのようだった。
タケルの喉が、ごくりと鳴った。
そのわずかな飲み込む音でさえ、深層にとっては異物のようだった。
空気がそれを押し戻そうとする。音という音を、この場から追い出そうとする。
アキトは、胸の内側の“空洞”を確かめるように自分の胸骨の上から手を当てた。
心臓は打っている。
しかし、その鼓動が自分のものではないように感じる。
深層のどこかに、同じテンポの脈がある。
それが、こちらの速度に合わせてきている。
「兄さん……」
タケルが囁いた。
囁きのつもりでも、声はこの静寂の中で不釣り合いなほど大きく感じられた。
「……何も、聞こえない」
「さっきまで、深層の呼吸が……」
タケルは言葉を探して、そこで止まった。
彼が感じている違和感を、アキトも同じように感じていた。
深層が息を潜めている。
呼吸を止めているのは、苦しさからではない。
獲物に息を悟られないように、あえて止めている静けさだった。
リタは、その静けさの中心に立っていた。
目を閉じているのか、開けているのかさえ分からない。
瞼の向こう側で、何かを見ている。
誰かを探している。
赤い拍が、胸の奥で微かに光った。
深層の脈とは、半拍ずれている。
その半拍分のずれが、かろうじて“こちら側”と“あちら側”を分けていた。
アキトは、呼びかける言葉を選んだ。
名前を呼ぶのか。
記憶を名指すのか。
それとも、ただ“ここにいる”と言うのか。
何を選んでも、どこかの層を刺激してしまう。
リタは、塔で壊れたとき――
最後の最後まで、自分で自分の役割を握っていた。
「心臓」の命令を、自分の意志で上書きしようとしていた。
今は違う。
深層が、リタの内側にある層を、勝手に洗い直そうとしている。
「……リタ」
アキトは、できるだけ低く、短く呼んだ。
音ではなく、形だけを残す呼び方。
リタの肩が、ほんのわずかに揺れた。
目は開かない。
だが、赤い拍がひとつだけ“浮かび上がる”ように強く光った。
塔の中で、タケルを背負って走ったときのテンポ。
祈り機の胸から現れたとき、最初に刻んだ拍。
どちらとも違う。
そのどちらもが混ざり合った、ぎこちないテンポ。
タケルが、耐えかねたように前へ出ようとする。
アキトは、反射的にその腕を掴んだ。
「待て」
「でも……このままじゃ、リタが……」
タケルの声は震えている。
その震えには、塔での記憶が上塗りされていた。
届かなかった腕。崩れた拍。沈んでいく光。
アキトは、タケルの手首に食い込むほど力を込めた。
「今、触ったら……どこに引っ張られるか分からない」
深層は、待っている。
誰かが動くのを。
誰かが選ぶのを。
沈黙は、ただの空白ではなく、
「選択が行われるのを待つ時間」そのものだった。
空気が、微かに震えた。
深層の呼吸が、再び始まろうとしている。
吸うのか。
吐くのか。
そのどちらにも聞こえない、曖昧な動きだった。
リタの赤い拍が、その動きに引かれるように揺れる。
記憶の層が、また一枚、裏返る。
塔の階段。
矯正教育局の教室。
ホテルのロビー。
街角での会話。
塔の心臓層。
祈りの海。
どれも本物で、どれも偽物のように薄い。
深層は、それらを全部ひとまとめにして、“都市の記録”として押し固めようとしている。
――ここにいるリタを、都市の記録の中のひとつの「祈り」に戻そうとしている。
アキトの背筋が、冷たくなった。
「リタ」
今度は一歩、踏み込んだ。
タケルの腕を離し、その代わりに声に全ての力を乗せる。
「リタ。お前は、祈りじゃない」
深層の空気が、その言葉に反応した。
壁のひびが、細かく震える。
足元の石が、脈のようにわずかに上下した。
“間違い”と刻まれたような振動だった。
この世界では、「祈りでないもの」はエラーだ。
塔も、街も、矯正教育局も、全部がそう教えてきた。
リタは、その中でいちど壊れ、いちど戻り、そして今、深層の前でまた揺れている。
赤い拍が、深層の脈に逆らうように、半拍分だけ遅れた。
タケルが息を呑む。
「兄さん……今……」
「分かってる」
アキトは短く答えた。
リタは、完全に深層に同調してはいない。
まだ“ずれ”がある。
そのずれを、広げなければならない。
広げた上で、どこかに「逃がす」必要がある。
だが、どこへ?
深層の外側には、祈り機の列がある。
その外には、風化した街の骨組みがある。
さらにその外に――
風があるのかどうかすら、分からない。
塔を抜けたとき、一瞬だけ感じたあの気配は、
今となっては錯覚だったのではないかと思えるほど薄い。
アキトが考えを巡らせる間にも、深層は動いていた。
沈黙が形を変える。
目に見えない“線”が、通路全体に張り巡らされていく。
アキトは、脚の裏に違和感を覚えた。
固い石の感触の下に、柔らかいものがある。
それは土ではなく、記録だった。
踏んだ瞬間に、「ここを誰かが歩いた」という情報が、深層に吸い込まれていく。
タケルが足元を見て、顔を強張らせた。
「兄さん、これ……」
「歩いた分だけ、記録されてる」
「じゃあ、僕たちがここで何を言ったかも……」
「ああ。たぶん、全部」
「……リタのことも?」
タケルの声に、恐怖だけでなく、怒りが混じり始めているのが分かった。
誰かに勝手に、記録の順番を決められることへの怒り。
自分たちの関係を、「祈り」のひとつにまとめられることへの怒り。
アキトも同じものを抱えていた。
深層は、静かにそれを観察している。
怒りも、恐怖も、決意も、全部「材料」だ。
リタが、急に口を開いた。
「……にい……」
声にならない声。
だが、確かにアキトの方を向いていた。
赤い拍が、その瞬間だけ、深層の脈から完全に外れた。
アキトは、そのずれを逃さなかった。
「リタ」
一歩、また一歩、距離を詰める。
深層の線が足首に絡みつこうとする。
踏み込むたびに、石の下の記録がざらりと音を立てる。
手を伸ばす。
届かない距離ではない。
塔で崩れたときよりも、ずっと近い。
リタの瞳が、アキトの輪郭を捉えた。
焦点が合う。
今度は、ずれない。
「……アキト」
呼んだ。
今度は、はっきりと。
誰の記憶でもない、“現在のリタ”として。
タケルが、安堵とも泣き声ともつかない息を吐いた。
アキトは、その瞬間に全てを賭けた。
「リタ。聞いてくれ」
何を伝えるべきか。
塔で言えなかったことは山ほどある。
祈り機の胸から現れたときに伝え損ねたこともずっと残っている。
だが時間は、深層によって細かく切り刻まれている。
長く喋れば、その分だけ、記憶はまたシャッフルされる。
アキトは、言葉を削った。
「俺はここにいる。タケルもここにいる。お前は今、深層に飲まれかけてる」
リタの瞳が、微かに揺れた。
「このままだと、お前のことを全部、街の“材料”にされる」
それは脅しでも、説明でもなかった。
事実を、短く並べただけだ。
「でも、お前の中にある“最初の方”は、まだこっちに残ってる」
「最初の……方……?」
リタの口が動いた。
声は掠れているが、意味を探しているのが分かる。
「塔で、タケルを引き上げたとき。俺たちと初めて走ったとき。あの時の“拍”が、お前の中の底に残ってる」
赤い拍が、弱々しく脈打った。
深層の呼吸が、再び止まる。
待っている。
どの層を選ぶのか。
どの層を削るのか。
どの層を、外へ逃がすのか。
リタは、胸に手を当てた。
「……たしかに、ある」
声は小さい。
だが、明らかな“現在形”だった。
「でも、増えすぎてる」
リタは目を閉じたまま続ける。
「塔の記録も、街の記録も、祈り機のログも、全部……私の中に流れ込んでる。どれが私で、どれが他人で、どれが都市なのか、境目が……」
言葉が途切れた。
赤い拍が、一際強く光る。
深層が、その光に反応した。
通路の両側の壁に、細い亀裂が走る。
その亀裂はまっすぐではなく、複雑に折れ曲がっている。
記録の層が、そこから漏れ出していた。
人の足跡。
祈りの断片。
塔での命令文。
矯正教育局の標語。
ホテルの予約ログ。
それらが、文字にも映像にもなりきれないまま、壁の裂け目からにじみ出ては、重力のない空間で漂っている。
タケルが怯えた声を出す。
「何だよ……これ……」
「削り損ねた“切れ端”だ」
アキトは答えた。
自分でも、それがどこまで正しいのか分からない。
だが、深層が“納得しない”揺れ方をしているのは分かった。
「都市が記録をつくるときに、きれいに並ばなかった部分。祈りにも、命令にも、異端にも分類できなかったもの」
「じゃあ、ここに浮いてるの、全部……」
「“こぼれた誰かの続き”だ」
深層は、それらを嫌っている。
完全な祈りでも、完全な忘却でもない。
曖昧な切れ端は、都市にとって一番扱いに困る存在だ。
リタの瞳がゆっくりと開いた。
「私も、そのひとつになりかけてる」
その声には、自分自身への認識があった。
「だから深層は、私を“どれかひとつにまとめようとしている”。都市に都合のいい形に」
赤い拍が、その言葉を肯定するように弱く揺れた。
タケルが叫ぶ。
「そんなの、許さない」
深層が、その叫びにかすかに反応する。
許可も、不許可も、深層には関係がない。
ここは、ただ“決まった通りに決める”場所だ。
アキトは、リタの視線を受け止めた。
「リタ」
「……何」
「お前は、どれでいたい?」
深層の圧が、わずかに変わる。
問いの方向が、都市にとって気に入らないものだったのだろう。
リタは、少しだけ笑った。
その笑いは、塔でのものに少し似ている。
けれど、そこにある感情は、もっと静かだった。
「私……?」
リタは自分の胸を指先で押さえた。
「私の“最初の方”は、きっと、あの夜だと思う」
あの夜。
塔の中で、タケルとアキトを引き上げた夜。
祈り機の列を抜け、心臓層へ向かって走った夜。
「あのとき、私はようやく“命令以外の選択”をした」
深層の空気が一瞬だけ冷たくなる。
都市にとって、それは重大な逸脱だった。
「でも、そのあと私は壊れて、祈り機の中に沈んだ。そしてまた……タケルの願いで引き上げられた」
その経路を辿るように、赤い拍がゆっくりと明滅する。
「だから本当は、最初はとっくに終わってる。今ここにいる私は、記録の続きでしかない」
タケルが首を振る。
「違う!」
声が深層に反響した。
本当は反響などないはずの空間で、確かに響いた。
「塔で引き上げてくれたときからも、祈り機の中から戻ってきたときからも、リタはちゃんと“ここにいる”だろ。記録とか、続きとかじゃなくて、ちゃんと一緒に歩いてきただろ」
その言葉は、理屈ではなく、実感だった。
深層は、黙ってそれを聞いている。
リタの瞳が、タケルを見た。
そこには、かすかな驚きがあった。
「……私、歩いてきたんだね」
「当たり前だよ!」
タケルの声が少し上ずる。
「兄さんと、僕と、一緒に。ちゃんと転んで、転ばせて、殴って、殴られて……」
アキトが軽く咳払いした。
怒っているわけではない。
怒る余裕がないだけだ。
だが、そのやり取りに一瞬だけ“いつもの二人”の空気が戻った。
深層が、その変化にじっと耳を澄ませている。
リタは、自分の中を覗き込むように目を伏せた。
「……そうか」
赤い拍が、ふっと軽くなる。
深層からの圧が、ほんのわずかに弱まる。
「“歩いてきた私”を、残したい」
リタは静かに言った。
「塔の記録でも、都市の備忘録でもなくて。あなたたちと一緒に歩いてきた、私自身の続きだけを」
深層が、はっきりと反応した。
通路の中央に、細い亀裂が走る。
それは地割れではない。
記録と記録の境目が裂けた線だった。
亀裂は、三人のちょうど真ん中を通っている。
アキトは直感した。
――ここが「選ぶ場所」だ。
深層は、リタの選択をそのまま受け入れはしない。
必ず何かを差し出させる。
記録のどれか。
祈りのどれか。
あるいは、誰か一人の“続き”そのもの。
足元の亀裂が、ゆっくりと広がる。
深さは分からない。
覗き込もうとしても、色も光も反射しない。
タケルが、恐怖と本能で一歩下がった。
その動きで、裂け目の線が変形する。
深層が、彼の位置を計算し直す。
「兄さん……」
タケルはアキトの袖を掴んだ。
「これ……俺たち、離される……?」
アキトは答えなかった。
答えようがなかった。
深層は、兄弟の間を裂こうとしている。
リタの選択を“検証”するために。
リタは、一歩前へ進んだ。
裂け目の線のちょうど上に立つ。
「私が、ここに立つ」
その声には、もう迷いがなかった。
「私が“歩いてきた私”として残るなら、その線の上に立つのが筋だと思う」
タケルが叫ぶ。
「そんな筋、いらない!」
「でも、都市はそうは思わない」
リタは静かに笑った。
「だからせめて、筋の取り方を、私が決める」
亀裂が、リタの足元から光を放った。
光と言っても、眩しさはない。
ただ、境界線が“ここにある”ということを知らせるための、最低限の輝き。
深層の呼吸が、再び動き出す。
今度ははっきりと分かる。
吸い込むための呼吸だ。
誰を?
何を?
アキトは、喉の奥に言葉を押し込んだ。
リタを守りたい。
タケルを守りたい。
自分自身の“最初の祈り”も守りたい。
だが、この場所では、全部は無理だ。
深層の脈が一段と速くなる。
裂け目の線が、リタの足元から左右へ走り、
アキトとタケルの間を、ゆっくりと割っていく。
アキトは、裂け目をまたごうとした。
その瞬間、足首に冷たいものが絡みついた。
見えない祈り線。
深層の「ここから先は渡さない」という意思。
タケルも同じように足を捕まれている。
一歩も動けない。
リタだけが、自由だった。
「兄さん」
リタが呼ぶ。
「タケル」
タケルが顔を上げる。
赤い拍が、二人の方を交互に照らした。
「さっき、タケルが言ってくれた」
リタは微笑んだ。
「“歩いてきた私”を、残したい」
深層の脈が、一瞬だけ止まる。
リタの言葉が、都市の「想定外」の位置に落ちたのだ。
「だから、私は“ここまで歩いてきた私”を、あなたたちに渡す」
「渡す……?」
アキトの声が掠れた。
「ここから先、どうなるかは分からない」
リタは、裂け目の上で、両手を広げた。
「深層に飲まれるのかもしれない。都市の記録に戻されるのかもしれない。祈りの海にもう一度沈むのかもしれない」
赤い拍が、ほんの少しずつ、形を変え始める。
「でも、“ここまで”は、もう変えられない。塔でのことも、街でのことも、ここまで歩いたことも。その全部を、あなたたちの記憶の方に繋いでおく」
深層が、拒否するように唸った。
だが、その唸りはどこか苦しそうだった。
初めて、都市の意志が“揺れている”ように聞こえた。
リタは続ける。
「深層は、きっと私の全部を選び直したい。でも、もう遅い。私の“続き”は、あなたたちと一緒に歩いたところまでしか届いてない。その先は、まだ何も書かれていない」
アキトの胸が締め付けられる。
「だからその“まだ何も書かれていない先”を、あなたたちに渡す」
亀裂の光が、一瞬だけ強まり、リタの姿を包んだ。
タケルが叫ぶ。
「リタ!!」
深層が動いた。
吸い込む。
飲み込む。
裂層の線に沿って、空間そのものが沈んでいく。
アキトとタケルは、一歩も動けない。
祈り線が、足首から膝へと絡みつき、彼らをこの側に固定している。
リタだけが、少しずつ、深層の中心へ引かれていく。
赤い拍が、最後のように強く光った。
「――続きは、任せる」
その言葉が、誰に向けられたものか、
深層は理解できなかった。
都市にとって、「続き」とは常に自分が決めるものだったからだ。
裂層が、完全に開いた。
音のない断層。
記憶の層が剥き出しになった空隙。
そこへ、リタの輪郭が静かに沈んでいく。
アキトは叫ばなかった。
叫べば、深層がそれを「材料」にする。
ただ、目を離さなかった。
タケルが、泣きそうな声で呟いた。
「リタ……続きって……どこまでだよ……」
誰も答えられない。
深層の呼吸が、ゆっくりと収束していく。
裂層の奥から、微かな光がひとすじ、上へ向かって立ち上った。
それは祈りの符号でも、命令文でもない。
名前すら持たない、淡い線だった。
深層は、それを削ることができなかった。
削ろうとするたび、
そこに兄弟の足音が混じるからだ。
塔を走った音。
街を歩いた音。
深層へ降りてくるまでに響かせた、三人の歩調。
削れば削るほど、都市は自分の“失敗”を思い出す。
祈りだけで動く世界に、
走る音と歩く音を持ち込んでしまった失敗を。
裂層が、ゆっくりと閉じ始めた。
リタの姿は、もう見えない。
だが、赤い拍の最後の余熱だけが、
アキトの胸の内側に、かすかな火傷のように残っていた。
深層の呼吸が、再び静寂に溶ける。
世界から音が消えたまま、
三人分だったはずの影のうち、
ふたつだけが、冷たい石畳に残されていた。
まるで沈んでいく石のように闇へ消えていった。
その余韻が完全に溶ける頃――
世界は音という音を失っていた。
リタの唇が「だれ」と震えた直後の静寂が、
三人の耳の奥にしつこくこびりついている。
空気は凍りついたように動かず、
深層の呼吸さえも一度止められたかのようだった。
タケルの喉が、ごくりと鳴った。
そのわずかな飲み込む音でさえ、深層にとっては異物のようだった。
空気がそれを押し戻そうとする。音という音を、この場から追い出そうとする。
アキトは、胸の内側の“空洞”を確かめるように自分の胸骨の上から手を当てた。
心臓は打っている。
しかし、その鼓動が自分のものではないように感じる。
深層のどこかに、同じテンポの脈がある。
それが、こちらの速度に合わせてきている。
「兄さん……」
タケルが囁いた。
囁きのつもりでも、声はこの静寂の中で不釣り合いなほど大きく感じられた。
「……何も、聞こえない」
「さっきまで、深層の呼吸が……」
タケルは言葉を探して、そこで止まった。
彼が感じている違和感を、アキトも同じように感じていた。
深層が息を潜めている。
呼吸を止めているのは、苦しさからではない。
獲物に息を悟られないように、あえて止めている静けさだった。
リタは、その静けさの中心に立っていた。
目を閉じているのか、開けているのかさえ分からない。
瞼の向こう側で、何かを見ている。
誰かを探している。
赤い拍が、胸の奥で微かに光った。
深層の脈とは、半拍ずれている。
その半拍分のずれが、かろうじて“こちら側”と“あちら側”を分けていた。
アキトは、呼びかける言葉を選んだ。
名前を呼ぶのか。
記憶を名指すのか。
それとも、ただ“ここにいる”と言うのか。
何を選んでも、どこかの層を刺激してしまう。
リタは、塔で壊れたとき――
最後の最後まで、自分で自分の役割を握っていた。
「心臓」の命令を、自分の意志で上書きしようとしていた。
今は違う。
深層が、リタの内側にある層を、勝手に洗い直そうとしている。
「……リタ」
アキトは、できるだけ低く、短く呼んだ。
音ではなく、形だけを残す呼び方。
リタの肩が、ほんのわずかに揺れた。
目は開かない。
だが、赤い拍がひとつだけ“浮かび上がる”ように強く光った。
塔の中で、タケルを背負って走ったときのテンポ。
祈り機の胸から現れたとき、最初に刻んだ拍。
どちらとも違う。
そのどちらもが混ざり合った、ぎこちないテンポ。
タケルが、耐えかねたように前へ出ようとする。
アキトは、反射的にその腕を掴んだ。
「待て」
「でも……このままじゃ、リタが……」
タケルの声は震えている。
その震えには、塔での記憶が上塗りされていた。
届かなかった腕。崩れた拍。沈んでいく光。
アキトは、タケルの手首に食い込むほど力を込めた。
「今、触ったら……どこに引っ張られるか分からない」
深層は、待っている。
誰かが動くのを。
誰かが選ぶのを。
沈黙は、ただの空白ではなく、
「選択が行われるのを待つ時間」そのものだった。
空気が、微かに震えた。
深層の呼吸が、再び始まろうとしている。
吸うのか。
吐くのか。
そのどちらにも聞こえない、曖昧な動きだった。
リタの赤い拍が、その動きに引かれるように揺れる。
記憶の層が、また一枚、裏返る。
塔の階段。
矯正教育局の教室。
ホテルのロビー。
街角での会話。
塔の心臓層。
祈りの海。
どれも本物で、どれも偽物のように薄い。
深層は、それらを全部ひとまとめにして、“都市の記録”として押し固めようとしている。
――ここにいるリタを、都市の記録の中のひとつの「祈り」に戻そうとしている。
アキトの背筋が、冷たくなった。
「リタ」
今度は一歩、踏み込んだ。
タケルの腕を離し、その代わりに声に全ての力を乗せる。
「リタ。お前は、祈りじゃない」
深層の空気が、その言葉に反応した。
壁のひびが、細かく震える。
足元の石が、脈のようにわずかに上下した。
“間違い”と刻まれたような振動だった。
この世界では、「祈りでないもの」はエラーだ。
塔も、街も、矯正教育局も、全部がそう教えてきた。
リタは、その中でいちど壊れ、いちど戻り、そして今、深層の前でまた揺れている。
赤い拍が、深層の脈に逆らうように、半拍分だけ遅れた。
タケルが息を呑む。
「兄さん……今……」
「分かってる」
アキトは短く答えた。
リタは、完全に深層に同調してはいない。
まだ“ずれ”がある。
そのずれを、広げなければならない。
広げた上で、どこかに「逃がす」必要がある。
だが、どこへ?
深層の外側には、祈り機の列がある。
その外には、風化した街の骨組みがある。
さらにその外に――
風があるのかどうかすら、分からない。
塔を抜けたとき、一瞬だけ感じたあの気配は、
今となっては錯覚だったのではないかと思えるほど薄い。
アキトが考えを巡らせる間にも、深層は動いていた。
沈黙が形を変える。
目に見えない“線”が、通路全体に張り巡らされていく。
アキトは、脚の裏に違和感を覚えた。
固い石の感触の下に、柔らかいものがある。
それは土ではなく、記録だった。
踏んだ瞬間に、「ここを誰かが歩いた」という情報が、深層に吸い込まれていく。
タケルが足元を見て、顔を強張らせた。
「兄さん、これ……」
「歩いた分だけ、記録されてる」
「じゃあ、僕たちがここで何を言ったかも……」
「ああ。たぶん、全部」
「……リタのことも?」
タケルの声に、恐怖だけでなく、怒りが混じり始めているのが分かった。
誰かに勝手に、記録の順番を決められることへの怒り。
自分たちの関係を、「祈り」のひとつにまとめられることへの怒り。
アキトも同じものを抱えていた。
深層は、静かにそれを観察している。
怒りも、恐怖も、決意も、全部「材料」だ。
リタが、急に口を開いた。
「……にい……」
声にならない声。
だが、確かにアキトの方を向いていた。
赤い拍が、その瞬間だけ、深層の脈から完全に外れた。
アキトは、そのずれを逃さなかった。
「リタ」
一歩、また一歩、距離を詰める。
深層の線が足首に絡みつこうとする。
踏み込むたびに、石の下の記録がざらりと音を立てる。
手を伸ばす。
届かない距離ではない。
塔で崩れたときよりも、ずっと近い。
リタの瞳が、アキトの輪郭を捉えた。
焦点が合う。
今度は、ずれない。
「……アキト」
呼んだ。
今度は、はっきりと。
誰の記憶でもない、“現在のリタ”として。
タケルが、安堵とも泣き声ともつかない息を吐いた。
アキトは、その瞬間に全てを賭けた。
「リタ。聞いてくれ」
何を伝えるべきか。
塔で言えなかったことは山ほどある。
祈り機の胸から現れたときに伝え損ねたこともずっと残っている。
だが時間は、深層によって細かく切り刻まれている。
長く喋れば、その分だけ、記憶はまたシャッフルされる。
アキトは、言葉を削った。
「俺はここにいる。タケルもここにいる。お前は今、深層に飲まれかけてる」
リタの瞳が、微かに揺れた。
「このままだと、お前のことを全部、街の“材料”にされる」
それは脅しでも、説明でもなかった。
事実を、短く並べただけだ。
「でも、お前の中にある“最初の方”は、まだこっちに残ってる」
「最初の……方……?」
リタの口が動いた。
声は掠れているが、意味を探しているのが分かる。
「塔で、タケルを引き上げたとき。俺たちと初めて走ったとき。あの時の“拍”が、お前の中の底に残ってる」
赤い拍が、弱々しく脈打った。
深層の呼吸が、再び止まる。
待っている。
どの層を選ぶのか。
どの層を削るのか。
どの層を、外へ逃がすのか。
リタは、胸に手を当てた。
「……たしかに、ある」
声は小さい。
だが、明らかな“現在形”だった。
「でも、増えすぎてる」
リタは目を閉じたまま続ける。
「塔の記録も、街の記録も、祈り機のログも、全部……私の中に流れ込んでる。どれが私で、どれが他人で、どれが都市なのか、境目が……」
言葉が途切れた。
赤い拍が、一際強く光る。
深層が、その光に反応した。
通路の両側の壁に、細い亀裂が走る。
その亀裂はまっすぐではなく、複雑に折れ曲がっている。
記録の層が、そこから漏れ出していた。
人の足跡。
祈りの断片。
塔での命令文。
矯正教育局の標語。
ホテルの予約ログ。
それらが、文字にも映像にもなりきれないまま、壁の裂け目からにじみ出ては、重力のない空間で漂っている。
タケルが怯えた声を出す。
「何だよ……これ……」
「削り損ねた“切れ端”だ」
アキトは答えた。
自分でも、それがどこまで正しいのか分からない。
だが、深層が“納得しない”揺れ方をしているのは分かった。
「都市が記録をつくるときに、きれいに並ばなかった部分。祈りにも、命令にも、異端にも分類できなかったもの」
「じゃあ、ここに浮いてるの、全部……」
「“こぼれた誰かの続き”だ」
深層は、それらを嫌っている。
完全な祈りでも、完全な忘却でもない。
曖昧な切れ端は、都市にとって一番扱いに困る存在だ。
リタの瞳がゆっくりと開いた。
「私も、そのひとつになりかけてる」
その声には、自分自身への認識があった。
「だから深層は、私を“どれかひとつにまとめようとしている”。都市に都合のいい形に」
赤い拍が、その言葉を肯定するように弱く揺れた。
タケルが叫ぶ。
「そんなの、許さない」
深層が、その叫びにかすかに反応する。
許可も、不許可も、深層には関係がない。
ここは、ただ“決まった通りに決める”場所だ。
アキトは、リタの視線を受け止めた。
「リタ」
「……何」
「お前は、どれでいたい?」
深層の圧が、わずかに変わる。
問いの方向が、都市にとって気に入らないものだったのだろう。
リタは、少しだけ笑った。
その笑いは、塔でのものに少し似ている。
けれど、そこにある感情は、もっと静かだった。
「私……?」
リタは自分の胸を指先で押さえた。
「私の“最初の方”は、きっと、あの夜だと思う」
あの夜。
塔の中で、タケルとアキトを引き上げた夜。
祈り機の列を抜け、心臓層へ向かって走った夜。
「あのとき、私はようやく“命令以外の選択”をした」
深層の空気が一瞬だけ冷たくなる。
都市にとって、それは重大な逸脱だった。
「でも、そのあと私は壊れて、祈り機の中に沈んだ。そしてまた……タケルの願いで引き上げられた」
その経路を辿るように、赤い拍がゆっくりと明滅する。
「だから本当は、最初はとっくに終わってる。今ここにいる私は、記録の続きでしかない」
タケルが首を振る。
「違う!」
声が深層に反響した。
本当は反響などないはずの空間で、確かに響いた。
「塔で引き上げてくれたときからも、祈り機の中から戻ってきたときからも、リタはちゃんと“ここにいる”だろ。記録とか、続きとかじゃなくて、ちゃんと一緒に歩いてきただろ」
その言葉は、理屈ではなく、実感だった。
深層は、黙ってそれを聞いている。
リタの瞳が、タケルを見た。
そこには、かすかな驚きがあった。
「……私、歩いてきたんだね」
「当たり前だよ!」
タケルの声が少し上ずる。
「兄さんと、僕と、一緒に。ちゃんと転んで、転ばせて、殴って、殴られて……」
アキトが軽く咳払いした。
怒っているわけではない。
怒る余裕がないだけだ。
だが、そのやり取りに一瞬だけ“いつもの二人”の空気が戻った。
深層が、その変化にじっと耳を澄ませている。
リタは、自分の中を覗き込むように目を伏せた。
「……そうか」
赤い拍が、ふっと軽くなる。
深層からの圧が、ほんのわずかに弱まる。
「“歩いてきた私”を、残したい」
リタは静かに言った。
「塔の記録でも、都市の備忘録でもなくて。あなたたちと一緒に歩いてきた、私自身の続きだけを」
深層が、はっきりと反応した。
通路の中央に、細い亀裂が走る。
それは地割れではない。
記録と記録の境目が裂けた線だった。
亀裂は、三人のちょうど真ん中を通っている。
アキトは直感した。
――ここが「選ぶ場所」だ。
深層は、リタの選択をそのまま受け入れはしない。
必ず何かを差し出させる。
記録のどれか。
祈りのどれか。
あるいは、誰か一人の“続き”そのもの。
足元の亀裂が、ゆっくりと広がる。
深さは分からない。
覗き込もうとしても、色も光も反射しない。
タケルが、恐怖と本能で一歩下がった。
その動きで、裂け目の線が変形する。
深層が、彼の位置を計算し直す。
「兄さん……」
タケルはアキトの袖を掴んだ。
「これ……俺たち、離される……?」
アキトは答えなかった。
答えようがなかった。
深層は、兄弟の間を裂こうとしている。
リタの選択を“検証”するために。
リタは、一歩前へ進んだ。
裂け目の線のちょうど上に立つ。
「私が、ここに立つ」
その声には、もう迷いがなかった。
「私が“歩いてきた私”として残るなら、その線の上に立つのが筋だと思う」
タケルが叫ぶ。
「そんな筋、いらない!」
「でも、都市はそうは思わない」
リタは静かに笑った。
「だからせめて、筋の取り方を、私が決める」
亀裂が、リタの足元から光を放った。
光と言っても、眩しさはない。
ただ、境界線が“ここにある”ということを知らせるための、最低限の輝き。
深層の呼吸が、再び動き出す。
今度ははっきりと分かる。
吸い込むための呼吸だ。
誰を?
何を?
アキトは、喉の奥に言葉を押し込んだ。
リタを守りたい。
タケルを守りたい。
自分自身の“最初の祈り”も守りたい。
だが、この場所では、全部は無理だ。
深層の脈が一段と速くなる。
裂け目の線が、リタの足元から左右へ走り、
アキトとタケルの間を、ゆっくりと割っていく。
アキトは、裂け目をまたごうとした。
その瞬間、足首に冷たいものが絡みついた。
見えない祈り線。
深層の「ここから先は渡さない」という意思。
タケルも同じように足を捕まれている。
一歩も動けない。
リタだけが、自由だった。
「兄さん」
リタが呼ぶ。
「タケル」
タケルが顔を上げる。
赤い拍が、二人の方を交互に照らした。
「さっき、タケルが言ってくれた」
リタは微笑んだ。
「“歩いてきた私”を、残したい」
深層の脈が、一瞬だけ止まる。
リタの言葉が、都市の「想定外」の位置に落ちたのだ。
「だから、私は“ここまで歩いてきた私”を、あなたたちに渡す」
「渡す……?」
アキトの声が掠れた。
「ここから先、どうなるかは分からない」
リタは、裂け目の上で、両手を広げた。
「深層に飲まれるのかもしれない。都市の記録に戻されるのかもしれない。祈りの海にもう一度沈むのかもしれない」
赤い拍が、ほんの少しずつ、形を変え始める。
「でも、“ここまで”は、もう変えられない。塔でのことも、街でのことも、ここまで歩いたことも。その全部を、あなたたちの記憶の方に繋いでおく」
深層が、拒否するように唸った。
だが、その唸りはどこか苦しそうだった。
初めて、都市の意志が“揺れている”ように聞こえた。
リタは続ける。
「深層は、きっと私の全部を選び直したい。でも、もう遅い。私の“続き”は、あなたたちと一緒に歩いたところまでしか届いてない。その先は、まだ何も書かれていない」
アキトの胸が締め付けられる。
「だからその“まだ何も書かれていない先”を、あなたたちに渡す」
亀裂の光が、一瞬だけ強まり、リタの姿を包んだ。
タケルが叫ぶ。
「リタ!!」
深層が動いた。
吸い込む。
飲み込む。
裂層の線に沿って、空間そのものが沈んでいく。
アキトとタケルは、一歩も動けない。
祈り線が、足首から膝へと絡みつき、彼らをこの側に固定している。
リタだけが、少しずつ、深層の中心へ引かれていく。
赤い拍が、最後のように強く光った。
「――続きは、任せる」
その言葉が、誰に向けられたものか、
深層は理解できなかった。
都市にとって、「続き」とは常に自分が決めるものだったからだ。
裂層が、完全に開いた。
音のない断層。
記憶の層が剥き出しになった空隙。
そこへ、リタの輪郭が静かに沈んでいく。
アキトは叫ばなかった。
叫べば、深層がそれを「材料」にする。
ただ、目を離さなかった。
タケルが、泣きそうな声で呟いた。
「リタ……続きって……どこまでだよ……」
誰も答えられない。
深層の呼吸が、ゆっくりと収束していく。
裂層の奥から、微かな光がひとすじ、上へ向かって立ち上った。
それは祈りの符号でも、命令文でもない。
名前すら持たない、淡い線だった。
深層は、それを削ることができなかった。
削ろうとするたび、
そこに兄弟の足音が混じるからだ。
塔を走った音。
街を歩いた音。
深層へ降りてくるまでに響かせた、三人の歩調。
削れば削るほど、都市は自分の“失敗”を思い出す。
祈りだけで動く世界に、
走る音と歩く音を持ち込んでしまった失敗を。
裂層が、ゆっくりと閉じ始めた。
リタの姿は、もう見えない。
だが、赤い拍の最後の余熱だけが、
アキトの胸の内側に、かすかな火傷のように残っていた。
深層の呼吸が、再び静寂に溶ける。
世界から音が消えたまま、
三人分だったはずの影のうち、
ふたつだけが、冷たい石畳に残されていた。
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