女子社員が顔で選んだ《戦隊ヒーロー》がバカすぎて自業自得!

美味なめたけ

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 ヒーローを編成するにはコツがあると思う。それは、個性の分散だ。

 初代から3代目までは軍人さんや特別な訓練を受けた人たちが務めていたらしいから、別にみてくれはどうでも良かった。

 しかし、今の時代は視聴率やPV・UU・チャンネル登録数・高評価などが求められる。
 様々な個性があって、それでいて強そうで面白そうで、見た目が良いことが重要。

 うちの事務所の社長は二代目の戦隊ヒーローの人。
 正直知らない人だったけど、前に会った時は優しそうな人だった。
 すげえおじいちゃん。
 その時に言われたのは、「元気が一番」ということだった。
 確かに、いくらビジュアル重視といっても、元気が無きゃダメだよね。ヒーローなんだから。
 元自衛官や消防士も事務所所属のタレントにいたはず……。


①元消防士タレントAさん。
「私、ラーメン屋になることに決めたんですよ。なのでラーメン界隈の仕事以外は今お断りしています」

②元自衛官芸人Bさん。
 「お笑いで天下取るって決めているので」

③元陸上選手のアクション俳優Cさん。
 「体育会系のTVの仕事に支障が出ると困るので」

 
 ……ダメだ。
 何が天下だよ、テレビも出れてないのに……「ラーメン界隈」って何だよ……。
 2人目からこんなに苦戦していて、一週間以内に5人揃えるなんて全く無理な気がする。


----


 夕方になってやっと、お昼(?)ご飯を食べることが出来た。
 お気に入りのお店は地味目の定食屋。60代くらいの夫婦がやっていて、雰囲気から何から落ち着ける上にお店が綺麗。ご飯がおいしい。何でも大抵美味しい。会社の人がこない。これめっちゃ重要。

「まりちゃん疲れた顔してるねえ。お仕事頑張ってるの? ここで腹ごしらえして頑張ってね」

 なんてことも言って来ない。余計なコミュニケーションはいらない。これ重要。
 私がいつもの肉野菜炒め定食を三分の一くらい食べたところで、もう一人お客さんが入って来た。

「おばちゃん来たよー」

 その声には聞き覚えがあった。
 百階堂真宵くんだ。

「あらいらっしゃい」
「僕いつものやつね!」
「いつものって何?」
「なんだっけ? オススメでいいや」

 なんてバカなやり取りをしてるんだろう。
 私は、どうも自分がその男の知り合いと思われたくなくて、黙々と食を進めていた。
 真宵くんは私からそう遠くない席に着いたけど、私のことには気づいていないようだった。
 注意力が無いんだな。
 私がまだ、真宵くんに話し掛けようか迷っていたその時。

「おかあちゃん……」
 真宵くんがスマホで通話し始めた。「おかあちゃん……。僕、東京で頑張ってるよおかあちゃん……」

 松○一代を地で行く人間がこの世にいたんだ!
 しかも割と身近に。

 私が恐れ慄いていると、真宵くんが「あれっ?」と声を上げた。
「あ、おかあちゃん! じゃなくて花園さーん!」
「はい……」

 勘弁してもらいたい。「おかあちゃん」の流れから話し掛けられるのは荷が重いよ。
 周りの目があるのだから……。

「花園さーん。まりちゃーん」
「フルネーム晒さないで下さい! 様子見て“ちゃん付け”で呼ぼうとしないで下さい!」

 真宵くんは自分のフカヒレスープを持って、断りも無く私の向かいに着席した。
 店内には私と彼の他に、別個のおじさんが2人と忌々しい学生カップルが一組。
 店内の回転率はそんなに良くない。まあ時間も時間だしね。

「何してるんですか? 僕はお仕事が無さ過ぎて事務所うろついてたんですけど。事務所行っても『邪魔なので帰って下さい』って言われるだけでお仕事もらえないんですよね」
「そうかもですね……」
「で、何してたんですか?」
「いやまあ……」
「僕は結構このお店来るんで、まあ結構って言っても5回目くらいですけど、結構来てるんですよね」
「そうですか……」
「まりちゃんは何しに来たんですか?」
「食事に」
「へえー!」

 と言って、このバカはフカヒレを食べ始めた。
 食事以外何がある。

「あ、そうだ」

 そうだ。
 使えるツテは全部使わないといけない。

「なに?」
「知り合いに運動神経の良い人いませんか? なるべくイケメンで。真宵くん人脈ありそうだし」
「いますよ」
「え、ほんと? 紹介してもらえますか?」
「良いですよ。じゃあ僕からもお願いなんですけど」
「なんですか?」
「お金貸してください」
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