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「ド、ドラゴンサモナーですって!?」
「おいおい、この街から英雄が誕生したぞ!」
「警備隊を呼んでこい! いや、領主様を……呼んでもいいのか?」
いい大人たちが揃いも揃って大慌て。教会内が騒然としている。
そりゃそうだよな。僕たちは今、奇跡を見ているんだから。
この話も、明日にはエトウィールの街中に広まっていることだろう。それどころか、瞬く間に国中に知れ渡るはず。
そのうち、ラビちゃんのグッズが発売されて、この街では生誕を祝うお祭りなんかもやるようになりそう。
まだ現実感がない。僕の幼馴染が英雄か……。
「カイトくん、どう……しよ……?」
「えーっと、いや、うーん……流れに任せるしかないんじゃない? ははは……」
僕に聞かれたところで……ね?
乾いた笑いしか出てこないよ。だって、数十年に一人現れるかどうかのすっご~いドラゴンサモナー様なんだから。
本当は狂ったように飛び跳ねて、真っ赤に腫れるくらい手を叩いて喜ぶべきなのに。素直に祝福できないのは何故だろう。
もしかして、僕の診断が先だったら、僕がドラゴンサモナーになってたんじゃないか?
……いやいや、何を考えてるんだ僕は。
召喚士の適性は、順番なんかで変わらない。産まれたときにはもう、ラビちゃんは神様に選ばれていたのだ。
「君、名前は?」
「ラ、ラビ・エンローズです」
「ふむ……誰か、警備隊を呼べ! このラビ・エンローズ様を領主様のお館にお連れするのだ! ご安心ください、すぐに護衛が参りますので」
「えっ? えっ?」
偉いはずの神父様がラビちゃんをラビ様と呼ぶ。
異様な雰囲気に包まれた教会で、ラビちゃんもどうしたらいいのか分からないようだ。
両手を胸の前で組み、顔を真っ青にして不安がっている。
優秀なサモナーの卵は、他国のスパイに誘拐されるなんてこともあるらしい。すぐに保護してあげないと危険なのだ。
いくら世界最強のドラゴンサモナーといえど、レベルが低ければ他の子供と変わらない。
今のラビちゃんでは、そこらへんの大人のそこそこのモンスターにすらコテンパンにやられてしまうだろう。
それに、テイマーの中には悪事に手を染める者が多いと聞く。
人間の知恵にモンスターの力が上乗せされるのだから、ステータスの低いラビちゃんでは、ドラゴンを召喚したところで簡単に誘拐される。
育ってしまえば誰も手が付けられない最強のドラゴンサモナーだが、今はただの保護対象でしかない。
「カイトくん助けて。ラビ、怖い……」
「だ、大丈夫だよ。ほら、少し落ち着こう。僕がついてるからさ」
ラビちゃんは国力の増強に繋がるサモナーだ。
おそらく、これから数日間は万全な警戒体制が敷かれた領主様の館で保護される。
国王に命じられてやって来るであろう国防警備隊に守られながら、パレードみたいな大行軍とともに王都へ送られるのだろう。
力になってあげたくて大丈夫だなんて声をかけてみたけれど、僕なんかがそばにいたところで何もできない。自分の無力さを呪うばかり。
街の警備隊ならラシードさんが近くにいたはずだし、早く来てくれないかな。見ているだけでラビちゃんが可哀想だ。
……これが本当に僕の考えか?
あんなに困って、不安そうに縮こまっているラビちゃんを見て他人に頼るのか?
今日の僕、なんか変だな。
ずっと一緒に仲良く育ってきた大切な幼馴染に嫉妬してたのかもしれない。
なんて愚かなんだろう。なんてちっぽけな人間なんだろう。
誰かに思いっきり頬を殴って欲しい。
ラビちゃんが大変な事態に陥っているのに、どこか他人事のように接するなんて。
本当にラビちゃんを助けられる可能性があるのは、まだ適性診断を受けてない僕だけなのに。
そうだよ、僕にも力があればいいんだ!
ラビちゃんと並べるくらい、強いサモナーになればいいだけじゃないか!
「神父様、僕にも指輪をください!」
勇気を振り絞り、一歩を踏みだす。
ラビちゃんを守るための、大いなる一歩を。
「おいおい、この街から英雄が誕生したぞ!」
「警備隊を呼んでこい! いや、領主様を……呼んでもいいのか?」
いい大人たちが揃いも揃って大慌て。教会内が騒然としている。
そりゃそうだよな。僕たちは今、奇跡を見ているんだから。
この話も、明日にはエトウィールの街中に広まっていることだろう。それどころか、瞬く間に国中に知れ渡るはず。
そのうち、ラビちゃんのグッズが発売されて、この街では生誕を祝うお祭りなんかもやるようになりそう。
まだ現実感がない。僕の幼馴染が英雄か……。
「カイトくん、どう……しよ……?」
「えーっと、いや、うーん……流れに任せるしかないんじゃない? ははは……」
僕に聞かれたところで……ね?
乾いた笑いしか出てこないよ。だって、数十年に一人現れるかどうかのすっご~いドラゴンサモナー様なんだから。
本当は狂ったように飛び跳ねて、真っ赤に腫れるくらい手を叩いて喜ぶべきなのに。素直に祝福できないのは何故だろう。
もしかして、僕の診断が先だったら、僕がドラゴンサモナーになってたんじゃないか?
……いやいや、何を考えてるんだ僕は。
召喚士の適性は、順番なんかで変わらない。産まれたときにはもう、ラビちゃんは神様に選ばれていたのだ。
「君、名前は?」
「ラ、ラビ・エンローズです」
「ふむ……誰か、警備隊を呼べ! このラビ・エンローズ様を領主様のお館にお連れするのだ! ご安心ください、すぐに護衛が参りますので」
「えっ? えっ?」
偉いはずの神父様がラビちゃんをラビ様と呼ぶ。
異様な雰囲気に包まれた教会で、ラビちゃんもどうしたらいいのか分からないようだ。
両手を胸の前で組み、顔を真っ青にして不安がっている。
優秀なサモナーの卵は、他国のスパイに誘拐されるなんてこともあるらしい。すぐに保護してあげないと危険なのだ。
いくら世界最強のドラゴンサモナーといえど、レベルが低ければ他の子供と変わらない。
今のラビちゃんでは、そこらへんの大人のそこそこのモンスターにすらコテンパンにやられてしまうだろう。
それに、テイマーの中には悪事に手を染める者が多いと聞く。
人間の知恵にモンスターの力が上乗せされるのだから、ステータスの低いラビちゃんでは、ドラゴンを召喚したところで簡単に誘拐される。
育ってしまえば誰も手が付けられない最強のドラゴンサモナーだが、今はただの保護対象でしかない。
「カイトくん助けて。ラビ、怖い……」
「だ、大丈夫だよ。ほら、少し落ち着こう。僕がついてるからさ」
ラビちゃんは国力の増強に繋がるサモナーだ。
おそらく、これから数日間は万全な警戒体制が敷かれた領主様の館で保護される。
国王に命じられてやって来るであろう国防警備隊に守られながら、パレードみたいな大行軍とともに王都へ送られるのだろう。
力になってあげたくて大丈夫だなんて声をかけてみたけれど、僕なんかがそばにいたところで何もできない。自分の無力さを呪うばかり。
街の警備隊ならラシードさんが近くにいたはずだし、早く来てくれないかな。見ているだけでラビちゃんが可哀想だ。
……これが本当に僕の考えか?
あんなに困って、不安そうに縮こまっているラビちゃんを見て他人に頼るのか?
今日の僕、なんか変だな。
ずっと一緒に仲良く育ってきた大切な幼馴染に嫉妬してたのかもしれない。
なんて愚かなんだろう。なんてちっぽけな人間なんだろう。
誰かに思いっきり頬を殴って欲しい。
ラビちゃんが大変な事態に陥っているのに、どこか他人事のように接するなんて。
本当にラビちゃんを助けられる可能性があるのは、まだ適性診断を受けてない僕だけなのに。
そうだよ、僕にも力があればいいんだ!
ラビちゃんと並べるくらい、強いサモナーになればいいだけじゃないか!
「神父様、僕にも指輪をください!」
勇気を振り絞り、一歩を踏みだす。
ラビちゃんを守るための、大いなる一歩を。
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