ゴミ召喚士と呼ばれたスライム超特化テイマーの僕〜超特化が凄すぎて、最強スライムを育ててしまう〜

伊藤ほほほ

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 放課後、コロマルを抱えて森へ……行く前に、パッセ工房を訪れた。
 ザンブとの決闘が決まったので、その報告のためだ。

「こんにちはー! あっ、パッセの親方!」

 ドアをノックして中に入ろうとしたところ、外の作業場でギーコギーコとノコギリの音がする。
 ふと視線を向けてみると、よく乾かした原木を木材に加工中の親方を見つけた。
 パッセの親方に駆け寄り、コロマルを地面に降ろす。

「よく来たな坊主。おっ、新しいスライムをテイムしたのか。すぐ行くから中で待ってな!」

「いつも突然来ちゃってすみません。……そうだ、今日は外で話したいんですけど大丈夫ですか?」

 僕は全てを打ち明けるつもりだ。スライム超特化テイマーであることも、コロマルがスライムジャンアントになったことも全部。
 親方には、信じてくれた僕の可能性を知って欲しい。ただの自己満足かもしれないけど、そうするべきだと思った。

「そりゃ構わねえが……なるほど、そういうことか。ちょうどうちのはみんな出払ってる。その話ってのはおそらく、俺以外の奴がいねえ方がいいんだろ?」

「そうですね、できれば……」

 まだ何も言っていないのに、どうして分かったんだろう。
 やっぱり親方はすごいや。

「だはは、坊主の顔は読みやすくて助かるぜ。来い、デラー!」
 
 親方が叫ぶと、工房の扉が開く。
 中から飛び出してきたのは、ゴブリンエリートのデラー。
 普通のゴブリンよりも背が高く、筋肉も発達して体も大きい。
 動きやすそうな革鎧を身に着けており、今すぐにでも戦えそうだ。

「人が来たら教えろ」
「ゲギャッ!」

 親方の指示を聞いたデラーは大きく頷き、周囲の警戒へと向かう。
 その動きは、目を丸くするほどに素早い。
 かなりレベルが高そうだ。

「うし、これでいいだろう。ゆっくり話そうや」

 親方が丸太の上に腰掛け、ぽんぽんと叩いたその左横に僕も座る。
 毎度毎度、親方の仕事を中断させては申し訳ない。
 今日は長居せず、早めに立ち去るべきだろう。

「コロマル、君の本当の姿を見せて」

"分かった! ――元に戻る"

 ポワンと膨らみ、コロマルの体長が一瞬で三メーターを超す。
 巨体の親方でさえ見上げるほどのスライムジャイアントのお出ましだ。

「な、な……なんだこりゃ! おい坊主、いったい何しやがった?」
「僕は、スライム特化テイマーなんです。ダグラスさんとパッセの親方に言われて自分を見つめ直していたとき、新たな力に気づきました。どうやら普通のテイマーとは違うみたいで……」

 ステータスの加算値が二倍であること。
 他のスライムテイマーより従魔と深く意思疎通が取れること。
 合体させることで二回も種族が変わったこと。
 以上が現在分かっている。
 しかし、超特化について記されている本はなく、自分でも何ができるのか全ては把握していない。
 こんなところをコロマルに協力してもらいながら、ギョッと目を見開いている親方に伝えた。

「そんで、スライムがこんなにでかくなっちまったと。いやいや驚いた。超特化なんて初めて聞いたぞ」

「はい、僕もびっくりで。……話は変わりますが、一ヶ月後にザンブと決闘します。上手く説明できないんですけど、前と違って感情に任せて決めたわけじゃありません」

「今日の坊主を見たとき、目が違うとは思ってたんだ。まあ、謎が解けたって感じだな。……で、勝算はあんのか?」

 前回の敗因は、僕がザンブという人間を過小評価していたこと、僕がテイマーとして未熟だったことに他ならない。
 あいつは僕に勝つためなら全力だ。
 オークサモナーという優位性はあれど、一週間でレベルを24……僕の二倍以上にまで上げてきた。
 今回、ザンブには謹慎期間中の一週間というアドバンテージがあり、決闘までの一ヶ月間も死に物狂いで鍛えてくるだろう。
 だんだんと上がりにくくなるとはいえ、本番当日にはレベル100前後になっているかもしれない。
 でも……。

「僕が勝ちます!」

 僕だって前回とは違う。
 超特化により合体という新たな力を手に入れている。それに、一度負けていることも大きい。
 勝利は確実……とは言えないが、敗因となる可能性を一つずつ潰していく。
 やることは前回とほぼ同じ。知識を蓄えながら、僕とコロマルの二人……いや、みんなで強くなる。
 一ヶ月という期間こそが勝利への鍵だ。

「いい男になったじゃねえか。試合を見に行けねえのが残念だ……が、その顔ができりゃ安心だろう。楽しみにしてんぜ?」

 親方の左手が、僕の頭をぐしゃぐしゃと撫で回す。
 ゴツゴツといかつい男の手だ。力が強く、首まで動いてしまう。

「はいっ! では、今日はここで失礼します。ありがとうございました。また遊びに来ますね!」

 僕は髪を整えながら立ち上がり、コロマルを縮ませてから抱き上げる。

「なんだ、もう帰んのか? じゃあ最後に、テイマーの先輩がどんなもんか教えてやるよ。坊主の筋力は、自分のと従魔の加算値合わせて200かそこらだろ? その槍で思いっきり俺を突いてこい」

「……え? いや、でも。そんなの無理ですよ」

 森へ向かおうとしたところ、ダグランス一号で体を突けと言う。
 驚いて振り返るが、親方が立ち上がった親方の目は真剣だった。冗談ではなさそうだ。
 でも、いくら命じられたとはいえ、恩人に対して槍を向けるなんてできない。 
 それに、今の僕の筋力は201。オークどころかオーガが相手でも負けないだろう。
 そんな僕の一撃をまともに受けて、作業着姿の親方が無事で済むはずがない。

「いいからやれ。俺をオークだと思って、どこでも好きなとこを攻撃してみろ。遠慮だけはすんなよ? ザンブって野郎と戦うためのヒントくらいにゃなるはずだぜ」
「なるほど、分かりました。いきますよ!」

 どうやらパッセの親方は、オークと戦うときのコツか何かを教えてくれるらしい。
 僕の槍をオークの拳に見立てて体捌きを見せてくれるのかな?
 だったら遠慮は要らない。

「——えいっ!」

 大きく踏み込んで距離を詰め、オークの弱点である心臓を狙う。
 上昇したステータスによる踏み込みは、自分でも驚くほどに鋭い。
 突き出した両手。体重を乗せて放った突きはビュッと風を切り裂く。
 親方はまだ動かない。
 ギリギリまで引きつけて躱そうというのだろうか。
 陽光を反射して輝く銀色の穂先が、斜め下から親方のみぞおちあたりに迫る。
 ちょっと待って、このままじゃ当たっちゃう。
 もう僕の体は止まら……。

 ——キィンッ!

 鉄の棒同士を打ち鳴らしたかのような金属音。
 刃はたしかに親方の作業服を貫通している。僕の両手は衝撃で痺れている。
 でも、パッセの親方はなんでもなさそうに笑っていた。
 
「……え、なんで?」

 おそらく槍の穂先が体表で止まっている。力づくで押し込んでもびくともしない。
 恐ろしく硬いアイアンゴーレムでも相手にしてるみたいだ。戦ったことはないけど、例えるならそんな感じ。

「どうだ坊主? これがケンカの技ぁ教えて鍛えたゴブリンたちの前で拳を振り回し、自ら道を切り開くテイマーの姿だ。半端な攻撃なんざ通じねえのよ。街のゴロツキを躾けながら、もしかしたら闘士になれるんじゃねえかなんて夢を見たこともある。……まあ、諦めちまったんだけどな。俺の防御でだいたい4500。Bランクのダンジョンならソロで攻略できるくらいか」

 僕に微笑みながら、どこか悲しそうな表情を浮かべる親方。
 話を聞くかぎり、相当な実力だ。

 冒険者にはランクがあり、ランクによって受注できる依頼や潜れるダンジョンの難易度が違う。
 最初は誰でもEランクから始まるのだが、D、Cと上がっていき、Aランクにもなれば一か月の稼ぎが庶民の年収を超えるらしい。
 そのさらに上がSランク。闘士になれる最低条件にもなっている。
 多分、パッセの親方は元Aランク冒険者だ。ソロでBランクダンジョンをクリアできるなら、仲間と協力すればその上だって目指せたはず。
 Aランクダンジョンに挑戦できるテイマーなんて一握り。親方ってすごい人だったんだな。

「レベルを上げ続けても限界がある。でも、僕とコロマルなら無限に成長できるかもしれない。つまり親方は、僕にどんな相手にだって無傷で勝てるような最強のテイマーを目指せって言いたいんですよね?」

「ま、そういうこった。この世界で坊主にしかできないんだぜ? 夢見れるなんて最高じゃねえか! お前が世界をひっくり返すとこを想像したら笑えるな。がはははは!」

 バシンバシンと僕の背中を叩く親方と一緒に笑った。

 すごく世界が明るくて、今の僕なら何でもできる気がする。
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