放課後の魔術師は恋ができない

恋の方程式（魔術）

「では、美鈴さん。あなたと敦さん……でしたっけ？　客観的に見て、どういう関係ですか？」
「へ？　敦君はサッカー部で、私がただ一方的に……その……す、好きなだけです……。ダメ、ですかね？　やっぱり無理かなぁ……」

　美鈴の様子を見て、すぐに一目惚れだと判断した恋れん。頭をフル回転させて、いくつもプランを練り上げる。

　艶やかな黒髪、二重瞼まぶたの大きな瞳、形の良いパーツが上手くはまった可愛らしい顔。こんな美少女に告白されたら、大抵の男子はころりと落ちてしまいそうではある。

「敦君とは、週に何回くらい会話しますか？　向こうから話しかけて来ますか？　何故彼が好きなのですか？」
「毎日喋りかけるようにしてます。敦君からは……たまに？　え、えっと、笑顔が……可愛いので……」

　恋の魔術は、質問攻めから始まる。初めて話す相手と、その恋愛対象の理解を深め、少しでも多く情報を集める為である。
　恋れんは頷きながらメモを取り、得られた答えに自分の考えを付け加えていく。そうやって恋の方程式を作り上げ、告白した時の成功率が一番高くなる方法を導き出そうとしている。

「分かりました。では、早速明日から動きましょう。最初の魔術は、『匂わせ』です。いくつか指示は出しますが、私は責任を負いません。やるかどうか決めるのは美鈴さん、あなたです」
「匂……わせ……？」

　不敵に笑う魔術師を前に、不思議な話術で困惑する美女が首を傾げる。