45 / 126
41話 想像のその先
しおりを挟む
41話 想像のその先
仕事を一つ終わらせて中庭に向かう。
背後からカサっと気配を感じ、もしミスティア嬢だったらと振り返るが、そんな運良く会えるわけでもなく、来たのは予想通りタキトスだった。
「振り向く前からガッカリすんなよ」
いや…ガッカリするだろ。
しばらくミスティア嬢に会えていないんだから。
「一段落ついた。ありがとう。タキトス」
「うまくいったようで何よりだ。ところで…」
「何だ」
「“伝家の宝刀 仮面外し”やったの?」
「あーあれな。やめておいたよ。『脅迫された』って言われかねないからね。それに子どもじみてるだろ」
タキトスは「おまえがそれを言うか」と二人で笑い、剣を交えた。久しぶりに仮面を外し思いっきり剣を振るうのは面白い。
十分ほど剣を交えるとタキトスはおもむろに懐中時計で確認し、「剣の腕が落ちてるぞ!十五分ほど一人で特訓しておけ!命令だ」
と言って帰ってしまった。
不真面目な僕は命令を無視して、あの古いベンチに寝転んだ。
ヴィヴァーチェ王女殿下の生誕祭が終われば、いよいよ夏が来る。ミスティア嬢の第一騎士団で研修も残り三ヶ月となる。
“レアソル団長とミスティア嬢”の関係も三ヶ月で終わりだろうか…あの娘とはそれぐらいが良いのかもしれない。
いずれあの娘は上級薬術師となり活躍するだろう。
上級薬術師の令嬢は滅多にいないので、高位貴族からの縁談が舞い込むだろう。
今でも縁談の話はあるが、レガート伯爵が強気で断っているらしい。
もしかして誰か想う男性がいるのか——
もし、そうであればあの娘の右肩ごと大切にする男性であってほしい。
そうでなければ僕は——
あの娘なら良い妻となり、良い母になるだろう。
結婚したら様々な家門から、社交の誘いが舞い込む。できればどこにも出したくない。
子どもが転けて怪我をしたら手作りの薬で優しく手当てしそうだ。
そしたら僕は優しく子どもを抱っこしてあげよう。
剣術が上達できないと悔し泣きをすれば「昨日より上手になってるわ」とミスティア嬢は励ますだろう。
そんなミスティア嬢と子どもたちを僕はガバっと抱きしめるんだ。
あれ?待てよ?
何で僕が出てくるんだ。
まずい…想像が妄想を超えてしまった。
一気に込み上げる恥ずかしさで起き上がると、バランスを崩し豪快にベンチから転げ落ちた。
「キャァ!お怪我はございませんか?頭は打ちませんでしたか?」
この声は…まさか——
駆け寄って来たのは、心配そうな顔のミスティア嬢であった。
なぜか両手にはバケツがぶら下がっていた。
「僕は大丈夫だが、ミスティア嬢は重たそうだね…」
よりによって、このタイミング…
カッコつけることもできいない。
そして僕はまたあの時のように、仮面をつけるタイミングを見失った。
仕事を一つ終わらせて中庭に向かう。
背後からカサっと気配を感じ、もしミスティア嬢だったらと振り返るが、そんな運良く会えるわけでもなく、来たのは予想通りタキトスだった。
「振り向く前からガッカリすんなよ」
いや…ガッカリするだろ。
しばらくミスティア嬢に会えていないんだから。
「一段落ついた。ありがとう。タキトス」
「うまくいったようで何よりだ。ところで…」
「何だ」
「“伝家の宝刀 仮面外し”やったの?」
「あーあれな。やめておいたよ。『脅迫された』って言われかねないからね。それに子どもじみてるだろ」
タキトスは「おまえがそれを言うか」と二人で笑い、剣を交えた。久しぶりに仮面を外し思いっきり剣を振るうのは面白い。
十分ほど剣を交えるとタキトスはおもむろに懐中時計で確認し、「剣の腕が落ちてるぞ!十五分ほど一人で特訓しておけ!命令だ」
と言って帰ってしまった。
不真面目な僕は命令を無視して、あの古いベンチに寝転んだ。
ヴィヴァーチェ王女殿下の生誕祭が終われば、いよいよ夏が来る。ミスティア嬢の第一騎士団で研修も残り三ヶ月となる。
“レアソル団長とミスティア嬢”の関係も三ヶ月で終わりだろうか…あの娘とはそれぐらいが良いのかもしれない。
いずれあの娘は上級薬術師となり活躍するだろう。
上級薬術師の令嬢は滅多にいないので、高位貴族からの縁談が舞い込むだろう。
今でも縁談の話はあるが、レガート伯爵が強気で断っているらしい。
もしかして誰か想う男性がいるのか——
もし、そうであればあの娘の右肩ごと大切にする男性であってほしい。
そうでなければ僕は——
あの娘なら良い妻となり、良い母になるだろう。
結婚したら様々な家門から、社交の誘いが舞い込む。できればどこにも出したくない。
子どもが転けて怪我をしたら手作りの薬で優しく手当てしそうだ。
そしたら僕は優しく子どもを抱っこしてあげよう。
剣術が上達できないと悔し泣きをすれば「昨日より上手になってるわ」とミスティア嬢は励ますだろう。
そんなミスティア嬢と子どもたちを僕はガバっと抱きしめるんだ。
あれ?待てよ?
何で僕が出てくるんだ。
まずい…想像が妄想を超えてしまった。
一気に込み上げる恥ずかしさで起き上がると、バランスを崩し豪快にベンチから転げ落ちた。
「キャァ!お怪我はございませんか?頭は打ちませんでしたか?」
この声は…まさか——
駆け寄って来たのは、心配そうな顔のミスティア嬢であった。
なぜか両手にはバケツがぶら下がっていた。
「僕は大丈夫だが、ミスティア嬢は重たそうだね…」
よりによって、このタイミング…
カッコつけることもできいない。
そして僕はまたあの時のように、仮面をつけるタイミングを見失った。
9
あなたにおすすめの小説
政略結婚で「新興国の王女のくせに」と馬鹿にされたので反撃します
nanahi
恋愛
政略結婚により新興国クリューガーから因習漂う隣国に嫁いだ王女イーリス。王宮に上がったその日から「子爵上がりの王が作った新興国風情が」と揶揄される。さらに側妃の陰謀で王との夜も邪魔され続け、次第に身の危険を感じるようになる。
イーリスが邪険にされる理由は父が王と交わした婚姻の条件にあった。財政難で困窮している隣国の王は巨万の富を得たイーリスの父の財に目をつけ、婚姻を打診してきたのだ。資金援助と引き換えに父が提示した条件がこれだ。
「娘イーリスが王子を産んだ場合、その子を王太子とすること」
すでに二人の側妃の間にそれぞれ王子がいるにも関わらずだ。こうしてイーリスの輿入れは王宮に波乱をもたらすことになる。
わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
※完結しました。
離婚約――それは離婚を約束した結婚のこと。
王太子アルバートの婚約披露パーティーで目にあまる行動をした、社交界でも噂の毒女クラリスは、辺境伯ユージーンと結婚するようにと国王から命じられる。
アルバートの側にいたかったクラリスであるが、国王からの命令である以上、この結婚は断れない。
断れないのはユージーンも同じだったようで、二人は二年後の離婚を前提として結婚を受け入れた――はずなのだが。
毒女令嬢クラリスと女に縁のない辺境伯ユージーンの、離婚前提の結婚による空回り恋愛物語。
※以前、短編で書いたものを長編にしたものです。
※蛇が出てきますので、苦手な方はお気をつけください。
婚約者の命令により魔法で醜くなっていた私は、婚約破棄を言い渡されたので魔法を解きました
天宮有
恋愛
「貴様のような醜い者とは婚約を破棄する!」
婚約者バハムスにそんなことを言われて、侯爵令嬢の私ルーミエは唖然としていた。
婚約が決まった際に、バハムスは「お前の見た目は弱々しい。なんとかしろ」と私に言っていた。
私は独自に作成した魔法により太ることで解決したのに、その後バハムスは婚約破棄を言い渡してくる。
もう太る魔法を使い続ける必要はないと考えた私は――魔法を解くことにしていた。
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
【完結】婚約者なんて眼中にありません
らんか
恋愛
あー、気が抜ける。
婚約者とのお茶会なのにときめかない……
私は若いお子様には興味ないんだってば。
やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?
大人の哀愁が滲み出ているわぁ。
それに強くて守ってもらえそう。
男はやっぱり包容力よね!
私も守ってもらいたいわぁ!
これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語……
短めのお話です。
サクッと、読み終えてしまえます。
石女を理由に離縁されましたが、実家に出戻って幸せになりました
お好み焼き
恋愛
ゼネラル侯爵家に嫁いで三年、私は子が出来ないことを理由に冷遇されていて、とうとう離縁されてしまいました。なのにその後、ゼネラル家に嫁として戻って来いと手紙と書類が届きました。息子は種無しだったと、だから石女として私に叩き付けた離縁状は無効だと。
その他にも色々ありましたが、今となっては心は落ち着いています。私には優しい弟がいて、頼れるお祖父様がいて、可愛い妹もいるのですから。
「優秀な妹の相手は疲れるので平凡な姉で妥協したい」なんて言われて、受け入れると思っているんですか?
木山楽斗
恋愛
子爵令嬢であるラルーナは、平凡な令嬢であった。
ただ彼女には一つだけ普通ではない点がある。それは優秀な妹の存在だ。
魔法学園においても入学以来首位を独占している妹は、多くの貴族令息から注目されており、学園内で何度も求婚されていた。
そんな妹が求婚を受け入れたという噂を聞いて、ラルーナは驚いた。
ずっと求婚され続けても断っていた妹を射止めたのか誰なのか、彼女は気になった。そこでラルーナは、自分にも無関係ではないため、その婚約者の元を訪ねてみることにした。
妹の婚約者だと噂される人物と顔を合わせたラルーナは、ひどく不快な気持ちになった。
侯爵家の令息であるその男は、嫌味な人であったからだ。そんな人を婚約者に選ぶなんて信じられない。ラルーナはそう思っていた。
しかし彼女は、すぐに知ることとなった。自分の周りで、不可解なことが起きているということを。
契約妻に「愛さない」と言い放った冷酷騎士、一分後に彼女の健気さが性癖に刺さって理性が崩壊した件
水月
恋愛
冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件の旦那様視点短編となります。
「君を愛するつもりはない」
結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。
出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。
愛を期待されないのなら、失望させることもない。
契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。
ただ「役に立ちたい」という一心だった。
――その瞬間。
冷酷騎士の情緒が崩壊した。
「君は、自分の価値を分かっていない」
開始一分で愛さない宣言は撤回。
無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる