バケモノ貴公子は傷を負った令嬢を寵愛する

冬野 海

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41話 想像のその先

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41話 想像のその先


仕事を一つ終わらせて中庭に向かう。
背後からカサっと気配を感じ、もしミスティア嬢だったらと振り返るが、そんな運良く会えるわけでもなく、来たのは予想通りタキトスだった。

「振り向く前からガッカリすんなよ」

いや…ガッカリするだろ。
しばらくミスティア嬢に会えていないんだから。

「一段落ついた。ありがとう。タキトス」

「うまくいったようで何よりだ。ところで…」

「何だ」

「“伝家の宝刀 仮面外し”やったの?」

「あーあれな。やめておいたよ。『脅迫された』って言われかねないからね。それに子どもじみてるだろ」

タキトスは「おまえがそれを言うか」と二人で笑い、剣を交えた。久しぶりに仮面を外し思いっきり剣を振るうのは面白い。

十分ほど剣を交えるとタキトスはおもむろに懐中時計で確認し、「剣の腕が落ちてるぞ!十五分ほど一人で特訓しておけ!命令だ」
と言って帰ってしまった。
不真面目な僕は命令を無視して、あの古いベンチに寝転んだ。

ヴィヴァーチェ王女殿下の生誕祭が終われば、いよいよ夏が来る。ミスティア嬢の第一騎士団で研修も残り三ヶ月となる。

“レアソル団長とミスティア嬢”の関係も三ヶ月で終わりだろうか…あの娘とはそれぐらいが良いのかもしれない。

いずれあの娘は上級薬術師となり活躍するだろう。
上級薬術師の令嬢は滅多にいないので、高位貴族からの縁談が舞い込むだろう。
今でも縁談の話はあるが、レガート伯爵が強気で断っているらしい。
もしかして誰か想う男性がいるのか——
もし、そうであればあの娘の右肩ごと大切にする男性であってほしい。

そうでなければ僕は——

あの娘なら良い妻となり、良い母になるだろう。

結婚したら様々な家門から、社交の誘いが舞い込む。できればどこにも出したくない。

子どもが転けて怪我をしたら手作りの薬で優しく手当てしそうだ。
そしたら僕は優しく子どもを抱っこしてあげよう。

剣術が上達できないと悔し泣きをすれば「昨日より上手になってるわ」とミスティア嬢は励ますだろう。
そんなミスティア嬢と子どもたちを僕はガバっと抱きしめるんだ。

あれ?待てよ?
何で僕が出てくるんだ。

まずい…想像が妄想を超えてしまった。
一気に込み上げる恥ずかしさで起き上がると、バランスを崩し豪快にベンチから転げ落ちた。

「キャァ!お怪我はございませんか?頭は打ちませんでしたか?」

この声は…まさか——

駆け寄って来たのは、心配そうな顔のミスティア嬢であった。
なぜか両手にはバケツがぶら下がっていた。

「僕は大丈夫だが、ミスティア嬢は重たそうだね…」

よりによって、このタイミング…
カッコつけることもできいない。

そして僕はまたあの時のように、仮面をつけるタイミングを見失った。
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