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46話 嫉妬と無双
46話 嫉妬と無双
模擬大会には選び抜かれた、血気盛んな騎士たち総勢百名で行われることになった。
騎士たちの剣技と熱気に、審判をしている僕の心も駆り立てられる。
最終決戦には三年目の若手騎士二名が剣を交えることになり、騎士たちは固唾を呑んで見守る。
若手騎士が剣を構え審判の号令で最終決戦が始まった。
どちらの騎士も勝ち進んできたため、体力もかなり消費しているはずだが、剣と剣が打ち合う音は疲れを感じさせない。それどころか次第に激しさを増していく。
どちらも若手とは呼べないほどの実力だ。
うまくあちらの隙を捉えることができたようだ。
そこに容赦せず一気に攻め込む。
「やめ!勝負あり。優勝第一騎士団マルツイ・ルミーズ!」
マルツイが剣を天に向け、鬨の声を轟かせる。
騎士たちも応えるかのように怒号のような歓声を炸裂させた。
マルツイは僕の前で深々と一礼し
「リソルート・レアソル第一騎士団長!」と叫んだ。
「どうした。申してみよ」
「恐れながら、お願いしたいことがございます。この場を借りて申し上げてよろしいでしょうか」
「許可する」
「レアソル団長との個人戦の申し込みをお受け願いたく存じます」
同じ第一騎士団だが若手騎士の教育は主に中堅騎士たちが行っていたため、僕は彼と剣を交えたことはなかった。
想定外の願いに“まさか“という考えしかなかった。
「なぜ私と個人戦を?」
マルツイがこちらを見据えたまま続けた。
「私はレアソル団長の強さに憧れて第一騎士団への入団を希望しました。
まだ団長の剣には程遠いですが、直接剣を受けてみたいと思います。
この大会の褒美としてレアソル団長とのお手合わせを願いたく存じます」
僕も彼ぐらいの時はより強く、より傑出した騎士になりたいと鍛錬に打ち込んだ。
いや、それしかなかった——
毒薬を浴びバケモノと呼ばれた僕には剣の道しか残っていなかった。
もし、あの時のことがなかったら僕はここまで強くなれなかったのだろうか?
「ハンディは?」
「ハンディは不要です!」
とはいえあまりにも差があるので、他の若手騎士たち上位二十名と連続戦を行い、最後にマルツイと戦うことになった。
散々戦ってきた若手騎士たちと、審判をしていた第一騎士団長との個人戦には当然野次も多い。
「勝ったらマルツイが団長だぞ」
「団長が負けたら恥ずかしいなー」
主にタキトスだが…
救護所にはミスティア嬢が控えており、次々と運ばれてくる騎士たちの手当てに追われている。
若干ミスティア嬢の方に騎士が多いのは、ただの下心か?
——忌々しい奴らだ。
あっ…目があった——
彼女の眼差しが心に引っ掛かった。
心配そうな顔をしているが、何を心配しているのだろうか。
今から僕が叩きのめしていく若手騎士たちを心配しているのか。
大丈夫だ。怪我はさせない。
それぐらいの腕はある。
それとも僕を心配しているのか…
だとしたらどんなに嬉しいか。
早速一人目の騎士が僕に向かってくる。
まだ未熟だが勢いは良いな。
若手騎士たちは僕に一瞬の隙すら与えず次々と僕の左を攻撃してくる。
仮面で視野が狭いと考えているのだろう。
あいにくだが仮面を付けたぐらいで弱点では第一騎士団長なんて務まらない。
向かってくる騎士の攻撃を一振り、一振り軽く受け流す。
まだ動きに無駄が多く、剣の振りも荒い。
自分たちが気づいていない隙を、教えるように攻め込んだ。
ミスティアは眉間をくっと寄せ、白衣を握りしめている。
まだ不安そうな顔をしている。
マルツイの番がやってきた。
確かに優勝した実力はあるがまだまだ甘いな。今後の伸びしろが楽しみだ。
さて、これだけ剣を交えたら十分だろ。
最後に隙をついて一振りで決めた。
と思ったら観覧席にいた騎士たちが面白がって次々と剣を振ってきた。
焚き付けているのはタキトスしかいない。
そっちがその気なら——
思い切り向かってくる騎士たちに剣を向けてやった。
中にはベテランと呼ばれるような実力の騎士たちが何人かいたが関係ない。
こんなに剣を振るのは久しぶりだが不思議と身体も剣も軽い。もっといけそうだ。
「こんなものか!もう腕に覚えのあるヤツはいないのか!」
煽ると闘争心むき出しの騎士たちが、次々と剣を振ってくる。
なぜ皆、先の先を読まないんだ。
攻撃してくる騎士たちの一瞬の足の運び、肩の入り、予備動作を見ればわかることだ。
夢中になって騎士の剣を振り落とし、最後の騎士の剣を弾いた瞬間、広場の空気は止まったような静寂に包まれた。
向かってくる騎士はもういない。
僕の周りには大勢の騎士がひっくり返って呻き声をあげていた。
振り返るとまたミスティア嬢と目が合った。
安心したような表情をしている。
そんな顔…勘違いして良いのか…
あの娘の眼差し、仕草、何もかもが僕を揺り動かす。
騎士たちの最高潮の盛り上がりの中、ミスティア嬢の小さな息遣いが、僕にだけ聞こえたような気がした。
模擬大会には選び抜かれた、血気盛んな騎士たち総勢百名で行われることになった。
騎士たちの剣技と熱気に、審判をしている僕の心も駆り立てられる。
最終決戦には三年目の若手騎士二名が剣を交えることになり、騎士たちは固唾を呑んで見守る。
若手騎士が剣を構え審判の号令で最終決戦が始まった。
どちらの騎士も勝ち進んできたため、体力もかなり消費しているはずだが、剣と剣が打ち合う音は疲れを感じさせない。それどころか次第に激しさを増していく。
どちらも若手とは呼べないほどの実力だ。
うまくあちらの隙を捉えることができたようだ。
そこに容赦せず一気に攻め込む。
「やめ!勝負あり。優勝第一騎士団マルツイ・ルミーズ!」
マルツイが剣を天に向け、鬨の声を轟かせる。
騎士たちも応えるかのように怒号のような歓声を炸裂させた。
マルツイは僕の前で深々と一礼し
「リソルート・レアソル第一騎士団長!」と叫んだ。
「どうした。申してみよ」
「恐れながら、お願いしたいことがございます。この場を借りて申し上げてよろしいでしょうか」
「許可する」
「レアソル団長との個人戦の申し込みをお受け願いたく存じます」
同じ第一騎士団だが若手騎士の教育は主に中堅騎士たちが行っていたため、僕は彼と剣を交えたことはなかった。
想定外の願いに“まさか“という考えしかなかった。
「なぜ私と個人戦を?」
マルツイがこちらを見据えたまま続けた。
「私はレアソル団長の強さに憧れて第一騎士団への入団を希望しました。
まだ団長の剣には程遠いですが、直接剣を受けてみたいと思います。
この大会の褒美としてレアソル団長とのお手合わせを願いたく存じます」
僕も彼ぐらいの時はより強く、より傑出した騎士になりたいと鍛錬に打ち込んだ。
いや、それしかなかった——
毒薬を浴びバケモノと呼ばれた僕には剣の道しか残っていなかった。
もし、あの時のことがなかったら僕はここまで強くなれなかったのだろうか?
「ハンディは?」
「ハンディは不要です!」
とはいえあまりにも差があるので、他の若手騎士たち上位二十名と連続戦を行い、最後にマルツイと戦うことになった。
散々戦ってきた若手騎士たちと、審判をしていた第一騎士団長との個人戦には当然野次も多い。
「勝ったらマルツイが団長だぞ」
「団長が負けたら恥ずかしいなー」
主にタキトスだが…
救護所にはミスティア嬢が控えており、次々と運ばれてくる騎士たちの手当てに追われている。
若干ミスティア嬢の方に騎士が多いのは、ただの下心か?
——忌々しい奴らだ。
あっ…目があった——
彼女の眼差しが心に引っ掛かった。
心配そうな顔をしているが、何を心配しているのだろうか。
今から僕が叩きのめしていく若手騎士たちを心配しているのか。
大丈夫だ。怪我はさせない。
それぐらいの腕はある。
それとも僕を心配しているのか…
だとしたらどんなに嬉しいか。
早速一人目の騎士が僕に向かってくる。
まだ未熟だが勢いは良いな。
若手騎士たちは僕に一瞬の隙すら与えず次々と僕の左を攻撃してくる。
仮面で視野が狭いと考えているのだろう。
あいにくだが仮面を付けたぐらいで弱点では第一騎士団長なんて務まらない。
向かってくる騎士の攻撃を一振り、一振り軽く受け流す。
まだ動きに無駄が多く、剣の振りも荒い。
自分たちが気づいていない隙を、教えるように攻め込んだ。
ミスティアは眉間をくっと寄せ、白衣を握りしめている。
まだ不安そうな顔をしている。
マルツイの番がやってきた。
確かに優勝した実力はあるがまだまだ甘いな。今後の伸びしろが楽しみだ。
さて、これだけ剣を交えたら十分だろ。
最後に隙をついて一振りで決めた。
と思ったら観覧席にいた騎士たちが面白がって次々と剣を振ってきた。
焚き付けているのはタキトスしかいない。
そっちがその気なら——
思い切り向かってくる騎士たちに剣を向けてやった。
中にはベテランと呼ばれるような実力の騎士たちが何人かいたが関係ない。
こんなに剣を振るのは久しぶりだが不思議と身体も剣も軽い。もっといけそうだ。
「こんなものか!もう腕に覚えのあるヤツはいないのか!」
煽ると闘争心むき出しの騎士たちが、次々と剣を振ってくる。
なぜ皆、先の先を読まないんだ。
攻撃してくる騎士たちの一瞬の足の運び、肩の入り、予備動作を見ればわかることだ。
夢中になって騎士の剣を振り落とし、最後の騎士の剣を弾いた瞬間、広場の空気は止まったような静寂に包まれた。
向かってくる騎士はもういない。
僕の周りには大勢の騎士がひっくり返って呻き声をあげていた。
振り返るとまたミスティア嬢と目が合った。
安心したような表情をしている。
そんな顔…勘違いして良いのか…
あの娘の眼差し、仕草、何もかもが僕を揺り動かす。
騎士たちの最高潮の盛り上がりの中、ミスティア嬢の小さな息遣いが、僕にだけ聞こえたような気がした。
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