56 / 85
51話 今でも残る忠誠
しおりを挟む
51話 今だに残る忠誠
王宮の使いの者が来るとは聞いていたが、団長室に入って来たのは、あのアルディータ・フルーレだったとは。
苦手なんだよな….
父親のである総騎士団長プレスト・フルーレと顔がそっくりで。
鍛錬でしごかれた日々がチラついて、今でも気が張る。
「久しぶりだなリソルート」
ほら…声まで似ている。
「お前がここに来るとは珍しいな。要件は?」
「急かすなよ。共に国法試験に打ち勝った昵懇の仲だろ?」
「国法試験っていつの話だよ。『アンブルメン』に行きたいんだ」
「アンブルメン?何だそれ?」
知らなかったか。僕の勝ちだ。
「リソルート。お見事だったよ。こちらは何も手立てがないが、王家も必死でね。悪あがきをしにきた」
「お前、暇なんだな。慰謝料か?」
「あぁ。ヴィヴァーチェ王女殿下との婚約における慰労報奨金を請求する」
面白いな。軽く遊んでやろうか。
「…いいだろう。それで?金額は?」
アルディータが持っていた書類を僕に示すと、昨年、王家の私的支出に匹敵する金額だった。
「この金額はどの国法と慣例に基づいて、算出された?」
僕は書類の金額をあえて指でコンコンを音を立てた。
「国王と王女殿下の頭の中にある」
あの二人の頭の中には何もない。
ただキリのいい数字を言っただけだ。
「ならば聞くが——
王女殿下が私に“慰労金”を請求できるほど、婚約者としての相応しいふるまい、義務や役割は果たされたのだろうか?
それを証明できる客観的事実を、証拠として提出できるのか?」
「ない。あるわけないだろ」
「だったらお前は何をしにきたんだ!」
「ただのパフォーマンスだよ。本題は別にある」
タキトスもアルディータもなぜ、すぐに本題に入らない。暇なのか。
「間も無くヴィヴァーチェ王女殿下の婚約が発表される。相手はまぁ…周知の事実だが、フェルヴィド・ペルデント侯爵子息だ。この侯爵家とはシレージオ王国ときな臭い話がある」
シレージオ王国が出てくるとは面倒ごとにならなければいいが…
「王女殿下の生誕祭あたりからシレージオ王国からペルデント家に接触している。多分お前と婚約解消したことが公になり動き出したのだろう」
皮肉にも僕が盾となっていたか。
「今、侯爵家のボンクラワインはシレージオ王国で飛ぶように売れている。そのおかげもあって今回の王女殿下の生誕祭の費用は王家と侯爵家で折半することになった」
ならば良かったのでは…とはならないな。
「話は分かった。こちらも探っておく。話はそれだけか?」
「あともう一点。『アンブルメン』の営業時間は十七時までだ。ちなみに明日は休業日。残念だったな」
そう言って十七時を示した懐中時計を、僕に見せた。
詰めが甘いな。
「今日は店舗と周辺の状況確認、移動時間の計算だ。そして私のターゲットは…明後日の木曜日限定の“芳醇ラズベリーマカロン”だ!」
軽くアルディータを睨むと、「さて、あの2人に何て言い訳しようか」と話を逸らした。
マルツイのおかげで僕の連勝だ。
アルディータは僕の胸元にある、王族の血筋だけが許される紋章にそっと触れて、
「リソルート。父も、俺も準備はできているぞ。早く俺たちを臣下にさせろよ」と僕を睨み返す。
アルディータは僕に対する忠誠心を捨てきれない。
そしてそれはアルディータだけではない。
父上が玉座に座ったとしても僕は座ることはないと再三言っている。
「バケモノでは玉座に座れない。何度も言わせるな」
「それでも俺が膝をつくのはお前だけだ」
お前の忠誠は痛いほど分かっているつもりだ。
だが、僕は王座には座らない。
アルディータは手を胸に当て、王族に対する礼をとり静かに出ていった。
王宮の使いの者が来るとは聞いていたが、団長室に入って来たのは、あのアルディータ・フルーレだったとは。
苦手なんだよな….
父親のである総騎士団長プレスト・フルーレと顔がそっくりで。
鍛錬でしごかれた日々がチラついて、今でも気が張る。
「久しぶりだなリソルート」
ほら…声まで似ている。
「お前がここに来るとは珍しいな。要件は?」
「急かすなよ。共に国法試験に打ち勝った昵懇の仲だろ?」
「国法試験っていつの話だよ。『アンブルメン』に行きたいんだ」
「アンブルメン?何だそれ?」
知らなかったか。僕の勝ちだ。
「リソルート。お見事だったよ。こちらは何も手立てがないが、王家も必死でね。悪あがきをしにきた」
「お前、暇なんだな。慰謝料か?」
「あぁ。ヴィヴァーチェ王女殿下との婚約における慰労報奨金を請求する」
面白いな。軽く遊んでやろうか。
「…いいだろう。それで?金額は?」
アルディータが持っていた書類を僕に示すと、昨年、王家の私的支出に匹敵する金額だった。
「この金額はどの国法と慣例に基づいて、算出された?」
僕は書類の金額をあえて指でコンコンを音を立てた。
「国王と王女殿下の頭の中にある」
あの二人の頭の中には何もない。
ただキリのいい数字を言っただけだ。
「ならば聞くが——
王女殿下が私に“慰労金”を請求できるほど、婚約者としての相応しいふるまい、義務や役割は果たされたのだろうか?
それを証明できる客観的事実を、証拠として提出できるのか?」
「ない。あるわけないだろ」
「だったらお前は何をしにきたんだ!」
「ただのパフォーマンスだよ。本題は別にある」
タキトスもアルディータもなぜ、すぐに本題に入らない。暇なのか。
「間も無くヴィヴァーチェ王女殿下の婚約が発表される。相手はまぁ…周知の事実だが、フェルヴィド・ペルデント侯爵子息だ。この侯爵家とはシレージオ王国ときな臭い話がある」
シレージオ王国が出てくるとは面倒ごとにならなければいいが…
「王女殿下の生誕祭あたりからシレージオ王国からペルデント家に接触している。多分お前と婚約解消したことが公になり動き出したのだろう」
皮肉にも僕が盾となっていたか。
「今、侯爵家のボンクラワインはシレージオ王国で飛ぶように売れている。そのおかげもあって今回の王女殿下の生誕祭の費用は王家と侯爵家で折半することになった」
ならば良かったのでは…とはならないな。
「話は分かった。こちらも探っておく。話はそれだけか?」
「あともう一点。『アンブルメン』の営業時間は十七時までだ。ちなみに明日は休業日。残念だったな」
そう言って十七時を示した懐中時計を、僕に見せた。
詰めが甘いな。
「今日は店舗と周辺の状況確認、移動時間の計算だ。そして私のターゲットは…明後日の木曜日限定の“芳醇ラズベリーマカロン”だ!」
軽くアルディータを睨むと、「さて、あの2人に何て言い訳しようか」と話を逸らした。
マルツイのおかげで僕の連勝だ。
アルディータは僕の胸元にある、王族の血筋だけが許される紋章にそっと触れて、
「リソルート。父も、俺も準備はできているぞ。早く俺たちを臣下にさせろよ」と僕を睨み返す。
アルディータは僕に対する忠誠心を捨てきれない。
そしてそれはアルディータだけではない。
父上が玉座に座ったとしても僕は座ることはないと再三言っている。
「バケモノでは玉座に座れない。何度も言わせるな」
「それでも俺が膝をつくのはお前だけだ」
お前の忠誠は痛いほど分かっているつもりだ。
だが、僕は王座には座らない。
アルディータは手を胸に当て、王族に対する礼をとり静かに出ていった。
5
あなたにおすすめの小説
本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました
音芽 心
恋愛
私は今日、幼い頃から大好きだった人と結婚式を挙げる。
____私の妹のことが昔から好きな婚約者と、だ。
だから私は決めている。
この白い結婚を一年で終わらせて、彼を解放してあげることを。
彼の気持ちを直接聞いたことはないけれど……きっとその方が、彼も喜ぶだろうから。
……これは、恋を諦めていた令嬢が、本当の幸せを掴むまでの物語。
枯渇聖女は婚約破棄され結婚絶対無理ランキング1位の辺境伯に言い寄られる
はなまる
恋愛
らすじ
フレイシアは10歳の頃母と一緒に魔物に遭遇。その時母はかなりの傷を負い亡くなりショックで喋れなくなtったがその時月の精霊の加護を受けて微力ながらも魔法が使えるようになった。
このニルス国では魔力を持っている人間はほとんどいなくて魔物討伐でけがを負った第二王子のジェリク殿下の怪我をほんの少し治せた事からジェリク殿下から聖女として王都に来るように誘われる。
フレイシアは戸惑いながらも淡い恋心を抱きジェリク殿下の申し出を受ける。
そして王都の聖教会で聖女として働くことになりジェリク殿下からも頼られ婚約者にもなってこの6年フレイシアはジェリク殿下の期待に応えようと必死だった。
だが、最近になってジェリクは治癒魔法が使えるカトリーナ公爵令嬢に気持ちを移してしまう。
その前からジェリク殿下の態度に不信感を抱いていたフレイシアは魔力をだんだん失くしていて、ついにジェリクから枯渇聖女と言われ婚約を破棄されおまけに群れ衣を着せられて王都から辺境に追放される事になった。
追放が決まり牢に入れられている間に月の精霊が現れフレイシアの魔力は回復し、翌日、辺境に向かう騎士3名と一緒に荷馬車に乗ってその途中で魔物に遭遇。フレイシアは想像を超える魔力を発揮する。
そんな力を持って辺境に‥
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。少し間が開いてしまいましたがよろしくです。
まったくの空想の異世界のお話。誤字脱字などご不快な点は平にご容赦お願いします。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。他のサイトにも投稿しています。
氷の宰相補佐と押しつけられた厄災の花嫁
瑞原唯子
恋愛
王命により、アイザックはまだ十歳の少女を妻として娶ることになった。
彼女は生後まもなく始末されたはずの『厄災の姫』である。最近になって生存が判明したが、いまさら王家に迎え入れることも始末することもできない——悩んだ末、国王は序列一位のシェフィールド公爵家に押しつけたのだ。
転生バレ回避のはずが、領主の息子に見つかって恋をした。
黒蜜きな粉
恋愛
前世で遊び尽くしたRPGの世界に転生した少女ルーシ。
この世界で転生者は特別な存在として保護され、自由を奪われる。
英雄になんてなりたくない。
ルーシの望みはただひとつ──静かに暮らすこと。
しかし、瀕死の重傷を負った領主の息子アッシュを救ったことで、平穏な日常は崩れ始める。
才能への評価、王都への誘い、そして彼から向けられる想い。
特別になりたくない転生治癒師と、
彼女を見つけてしまった領主の息子の物語。
※第19回恋愛小説大賞にエントリーしております。
【完結】16わたしも愛人を作ります。
華蓮
恋愛
公爵令嬢のマリカは、皇太子であるアイランに冷たくされていた。側妃を持ち、子供も側妃と持つと、、
惨めで生きているのが疲れたマリカ。
第二王子のカイランがお見舞いに来てくれた、、、、
【完結】領主の妻になりました
青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」
司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。
===============================================
オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。
挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。
クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。
新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。
マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。
ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。
捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。
長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。
新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。
フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。
フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。
ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。
========================================
*荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください
*約10万字で最終話を含めて全29話です
*他のサイトでも公開します
*10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします
*誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです
元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を謳歌する!
楠ノ木雫
恋愛
貧乏な実家を救うための結婚だった……はずなのに!?
貧乏貴族に生まれたテトラは実は転生者。毎日身を粉にして領民達と一緒に働いてきた。だけど、この家には借金があり、借金取りである商会の商会長から結婚の話を出されてしまっている。彼らはこの貴族の爵位が欲しいらしいけれど、結婚なんてしたくない。
けれどとある日、奴らのせいで仕事を潰された。これでは生活が出来ない。絶体絶命だったその時、とあるお偉いさんが手紙を持ってきた。その中に書いてあったのは……この国の大公様との結婚話ですって!?
※他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる