幼女救世主伝説-王様、私が宰相として国を守ります。そして伝説へ~

琉奈川さとし

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世界統一編

第一話 救世主降臨

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 私、美佐はもう60歳。還暦を迎え、もはやこの世には未練はなかった。どーうせ男なんて性欲でしか女を見ないし、働いてても日本じゃ給料があがらないし、出世できない。なら、独身で自由気ままにエンジョイして、死んじゃってこんな糞ジャパンなんて適当におさらばすればいいのさー。

 まあ、なんせ私は浄土真宗を信じてる。南無阿弥陀仏って唱えたら極楽浄土へ行って、煩悩無くなってババっと苦しみから解き放たれるんだ、ああ、もう何も考えたくない、ホント生きることなんてどーでもいい。

 なーんて思ってたころ、スーパーのバイト先でもらった流行り病で私は肺炎になってぽっくり逝ってしまった。はあ、やっぱ人生つまんなかったなー、だるいー。

 こんなことをグダグダ考えていると気が付くば私の前に阿弥陀様がいらっしゃった。おお、やった、これで私も救われるんだ、仏教ってサイコー!

 見てください、金色に光り輝く御姿、慈愛に満ちた表情。ああ、こんな私を迎えに来てくださったんですね。尊い……。そんな阿弥陀様は私の方をちらりと眺めて、こうおっしゃったのです。

「修行が足りません」
「ふえ!?」

「大体なんですか、そんな不真面目に生きて、せっかく浄土に迎えに来たのに、適当に死んでしまって本当に悟れると思ってるんですか?」

「え、無理っすか」
「無理です」

 ええ、そんなー、お坊さんが言ってたことと違うじゃないですかー。

「でも私阿弥陀は、必ずどんな極悪人でも仏にできるよう、修行を積んで仏になったのでこんな貴女にもビッグチャンスを与えます」
「ええ!? できるんですか!?」

「できます、なんてったって阿弥陀ですから」
「やったー! 何でもします、何でもします。で、どうすればいいですか?」

「異世界に行って人生修行を仕切り直しなさい。貴女は五歳児の幼女として生まれ変わるのです」
「幼女にですか!? いきなりハードモードですね、でも、これって異世界転生ってやつですよね? どんなスキルくれるんです?」

「ありません」
「はい!?」

「修行ですから自分で何とかしなさい」
「そんなー、ハードどころかルナティックモードじゃないですか! 難易度下げてください、私ヌルゲーでしかクリアできないんです!」

「なんとかなさい。大丈夫、私、阿弥陀が見守っています、しっかり徳を積んで立派な仏になるんですよー」

 てな感じで、阿弥陀様がそうおっしゃると声がどんどん遠くなって意識がはっきりとしだす。気が付くとそこは中世ヨーロッパ風の異世界だった。

 うわぉ、石造りの街だ綺麗だなー。ヨーロッパ風の民族衣装とかすっごいス・テ・キ。私もああいうの着てみたかったんだよなー、外国なんて人生一度も行ったことないし。セオリー通り、きょろきょろ街並みを眺めていると、一人の商人が私にぶつかってきた。

「いた、なにすんの!」
「うるせえ、がきんちょ、こっちは商売道具運ぶので大変なんだ、突っ立ってるほうが悪いんだよ!」

「はあー、何言ってんの、ぶつかってきたのはアンタじゃない、謝んなさいよ」
「ガキのくせにいっちょ前に口が立ちやがるやつだ、はあ、ほれ、パンやるから大人しくしろ」

 そう言うと男気のある商人のおっさんは袋に入ったたくさんのパンをくれた。ラッキー! 得した、やっぱ言うべきことは言う。人生正直が一番。

 とか思ってパンをかじっていると、たぶん、ストリートチルドレンだろう、ぼろの服を着た子どもたちがうらやましそうな瞳でこちらを見ていたのだった。

「パン欲しいの?」
「……うん」

「なら分けてあげるいっぱいもらったから」
「わーい」

「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」

 私が習慣通り念仏を唱えていると、あるご縁が現れたのだ。ひらりと華麗に現れた豪華なドレスをまとった女性貴族。めっちゃ美人じゃん! ハリウッド女優だ! そんなタイタニックで出てそうな女の人がこちらを見て大声で叫び始めたのだ。

「奇跡だわ! 子どもが子どもにパンを分け与えてる! 世知辛いこのご時世、この国で奇跡が起こったんだわ!」

 何を大げさな、へっ、え、子ども? ああそうか、私、幼女になってたんだ、んなことどうでもいいけど。子どもなっても得アルカナ―? 徳はなさそう。私の姿をまじまじと見た貴族の大人の女性は、こちらに寄ってきて話しかけてくる。

「今さっき、貴女はなんの呪文を唱えたの!?」
「なもあみだぶつ、つまり、すべては阿弥陀様にお任せしますって言う感謝の言葉」

「あみだってなにかしらとても興味があるわ」
「永遠とも呼べるような修行を経て、どんな人々も救うべく仏になった素晴らしい方です」

「仏? ほとけってなに?」
「すべての超越者です、どんな迷いもなく過去現在未来を見通すお力を備えているお方です、西洋風に言うと神様」

「なんて賢い子なのかしら……! それに神様を信じているなんて、素晴らしい! これも何かの神の啓示かしら、詳しく話を聞かせて、ええ、そうだ、是非、王宮にいらっしゃい、きっとお父様もお喜びになるわ!」

「えっ王宮、お父様……?」
「申し遅れました、わたくし、第二王女のメアリーと言います、貴女の名前は?」
「私ですか? ミサです」

「ミサ! ミサですって!? ミサという名は預言に出てきた救世主の名前だわ! こうしちゃいられない、スミス、早く馬車を回しなさい! 王宮に帰るわよ!」
「ははっ」

 でもって、メアリーに命じられた白髪交じりの執事の姿をした男の老人が、召使だろう男たちにあれこれ指示をしたようだ。あわただしく召使に連れられて、私はメアリーさんと一緒に馬車へと乗り込んだのだった。やほーい、王宮かー、一度行ってみたかったんだよねー。

 ガチャ大当たりなうきうき気分で、私はまんまとでっかい王宮へと連れていかれる。いいスっね、異世界って! 高い観光代がかからなくて済む! ラッキー! てな感じで私の話が始まる。こんなしょーもない話、なんてね。

 ──この時、私は本当にこの世界を救う、救世主になるなんて夢にも思わなかった……。
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