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見えない敵
第二十二話 森は笑わない②
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僕はゆっくりと敵に近づこうとした。しかし──。
「そこには罠が張ってあるぞ」
メリッサの声のおかげで、はっと気づき、僕は足下を見る、トラバサミだ。危ないな、まるでトラップの地雷原だ。これ以上のダメージは命取りになる、だから、慎重に進む。しばらくすると、メリッサが手を挙げて僕を静止させた。
彼女が石を投げると、先のとがった木が上空から、投げた石の場所に勢いよく降りてくる。
それに反応したのだろう、敵が、閃光を撃ってきた、あそこにいるのか。僕たちは敵へと距離を縮めた、追い打ちにもう一度閃光、同じところから伸びてくる。どうやら相手は移動する気がないらしい。
「メリッサ、さっき言ったとおりにしてくれ」
僕が諭すように言う、実は策があって二人で話し合って決めてある。対してメリッサはため息をついた。
「できれば真っ正面から戦いたいものだが……」
僕の戦い方は彼女の美学に合わないみたいだ、不満げにしながらも、それでも従ってくれるから、非常にありがたい。
─────────────────────────
そしてメリッサと別れた。僕は敵がいるだろう場所にMP7A1を構える。MP7A1はストックをしまえば拳銃のように片手一本で撃てるようにできている。左手を失った僕に最適な武器だ。
当たりをつけて弾を並べていく、制圧射撃だ、森の中に銃声がうなっていく!
だが、今では片手だ、命中精度は期待できない。なんとか敵に近づいて、致命的なダメージを与えないと。相手の反応を待つが、僕の意に反して、同じ場所から閃光がほとばしった!
敵は動くつもりはないのか? 何故? 考えをめぐらと、ふと思いつく、──もしかして動けないんじゃないのか?
ダメージを受けたのか? いやそれにしては反応が早い、その考えは早計だ。ひょっとして罠を張り巡らせて逆に自分が動けない状況にあるんじゃないのか?
ここまで長期戦になるとは思っていなかっただろう、おそらく詰めとしてここら一帯に罠を張り巡らして自分自身も動けなくなっているんじゃないのだろうか 。
予想が当たっていればこの先は死のエリア、より慎重に進まなければ。メリッサがいない以上自分で察知するしかない、僕は距離を縮めていく。
罠がそこらかしこに張ってあった、やはり当たりだ。
──この先にいる……!
こうなったらどちらが先に見つけるかが勝敗を決めるだろう、そしてあたりを探る。どこだ……? どこにいる……?
非情にも先に見つけられたのは僕のほうだった、閃光が僕に向かって走ってきた、しまった、ダメだよけきれない! 僕は体を投げ出して閃光を必死に避けた、自分の体を調べると、どうやら僕の靴をかすっただけだ。
そのあとが最悪だった──。
ロープがいきなり首を巻き付けて僕を宙づりにした。ギリギリと荒縄が首を締め付けて圧迫する。あぶり出された僕は格好の的だった、閃光が僕に向かってくる、僕は避けようにない。閃光は僕の体を粉々に打ち砕く!
「やったか!」
金髪の男が草陰の中から飛び出し、命中したのを確認すると、手を叩き、大喜びした。
「やった、やった!」
度重なるストレスから解放されたのだ、満面の笑みを浮かべ、僕を殺したのを確認しようとする。これでもう終わりだろう。
――と、そのように見えたんだろ?
彼の喜びようとは裏腹に僕はフルオートで金髪の男の背中を撃ちぬいてやった──!
「ぐああ――!!?」
片手だ反動で急所には当たらない。だが、背中から腹にかけて何発も叩き込んだ。奴は信じられないといった様子でこちらを見つめてきた。
「な、なぜだ? お前は死んだはず!?」
男はなんども後ろを振り返り、僕と宙づりになったものを見比べた。
「あれのことかい? よく見ろお前の大切なお仲間だろう?」
僕は宙づりになった死体を親指で指し示す、その言葉の真意を金髪の男は理解した。
「まさか、死体を使ったのか!?」
その通りだ。実に人をだますのは心地よい。特に裏でこそこそ粋がっている奴にはな。その後、女の声が遠くの方から聞こえてきた。メリッサだ。
「どうやらエインヘリャル二人と契約すると片方が生きている限り、死体は消滅しないらしいな」
「よくやってくれた。メリッサ。完璧だ」
僕は彼女をねぎらった。彼女はまた誇らしげにしながらも疲れた様子だ。おつかれさん。
「死体のところに戻って佑月にみせかけて死体を罠に投げ入れるのは、ちょっと大変だったな」
メリッサは首や肩をならしながらため息をついた、形勢逆転に、金髪の男が狼狽しながら吐血した。
「……そんな! あれは完璧にお前だったはず。一体どうして!?」
彼に事態をわからせようと、僕は冷静に静かなトーンで口を開く。
「そう見えただけだ。お互い見えない敵だ、姿形なんてわからない、人間を見れば敵だと錯覚する。お前をあぶり出すのは大変だったよ、何せ臆病で自分の罠に自信を持っている、敵を仕留めたと思わない限り姿をみせなかっただろう。
だから逆に考えれば、勝ったと思わせれば、何もしなくても自分からやってくる、確認しないと誰を倒したかわからないからな。相手が見えない以上そうなる」
満身創痍の男にやられたのが信じられないのだろう。「くそ! くそっ!」と男は悔しがって納得できない様子だ。
「しゃべってないで早く仕留めろ」
どうやら、僕のお喋りにメリッサは少しイラついていた。ご機嫌斜めですか、まあいいここいらでしまいにするか。
「ああ、そうするさ」
──その刹那、僕が引き金を引こうとすると、鋭い剣が僕に向かって振り下ろされてしまう!
「――何!?」
ちぃ! まさか、まだ敵がいたのか⁉
「そこには罠が張ってあるぞ」
メリッサの声のおかげで、はっと気づき、僕は足下を見る、トラバサミだ。危ないな、まるでトラップの地雷原だ。これ以上のダメージは命取りになる、だから、慎重に進む。しばらくすると、メリッサが手を挙げて僕を静止させた。
彼女が石を投げると、先のとがった木が上空から、投げた石の場所に勢いよく降りてくる。
それに反応したのだろう、敵が、閃光を撃ってきた、あそこにいるのか。僕たちは敵へと距離を縮めた、追い打ちにもう一度閃光、同じところから伸びてくる。どうやら相手は移動する気がないらしい。
「メリッサ、さっき言ったとおりにしてくれ」
僕が諭すように言う、実は策があって二人で話し合って決めてある。対してメリッサはため息をついた。
「できれば真っ正面から戦いたいものだが……」
僕の戦い方は彼女の美学に合わないみたいだ、不満げにしながらも、それでも従ってくれるから、非常にありがたい。
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そしてメリッサと別れた。僕は敵がいるだろう場所にMP7A1を構える。MP7A1はストックをしまえば拳銃のように片手一本で撃てるようにできている。左手を失った僕に最適な武器だ。
当たりをつけて弾を並べていく、制圧射撃だ、森の中に銃声がうなっていく!
だが、今では片手だ、命中精度は期待できない。なんとか敵に近づいて、致命的なダメージを与えないと。相手の反応を待つが、僕の意に反して、同じ場所から閃光がほとばしった!
敵は動くつもりはないのか? 何故? 考えをめぐらと、ふと思いつく、──もしかして動けないんじゃないのか?
ダメージを受けたのか? いやそれにしては反応が早い、その考えは早計だ。ひょっとして罠を張り巡らせて逆に自分が動けない状況にあるんじゃないのか?
ここまで長期戦になるとは思っていなかっただろう、おそらく詰めとしてここら一帯に罠を張り巡らして自分自身も動けなくなっているんじゃないのだろうか 。
予想が当たっていればこの先は死のエリア、より慎重に進まなければ。メリッサがいない以上自分で察知するしかない、僕は距離を縮めていく。
罠がそこらかしこに張ってあった、やはり当たりだ。
──この先にいる……!
こうなったらどちらが先に見つけるかが勝敗を決めるだろう、そしてあたりを探る。どこだ……? どこにいる……?
非情にも先に見つけられたのは僕のほうだった、閃光が僕に向かって走ってきた、しまった、ダメだよけきれない! 僕は体を投げ出して閃光を必死に避けた、自分の体を調べると、どうやら僕の靴をかすっただけだ。
そのあとが最悪だった──。
ロープがいきなり首を巻き付けて僕を宙づりにした。ギリギリと荒縄が首を締め付けて圧迫する。あぶり出された僕は格好の的だった、閃光が僕に向かってくる、僕は避けようにない。閃光は僕の体を粉々に打ち砕く!
「やったか!」
金髪の男が草陰の中から飛び出し、命中したのを確認すると、手を叩き、大喜びした。
「やった、やった!」
度重なるストレスから解放されたのだ、満面の笑みを浮かべ、僕を殺したのを確認しようとする。これでもう終わりだろう。
――と、そのように見えたんだろ?
彼の喜びようとは裏腹に僕はフルオートで金髪の男の背中を撃ちぬいてやった──!
「ぐああ――!!?」
片手だ反動で急所には当たらない。だが、背中から腹にかけて何発も叩き込んだ。奴は信じられないといった様子でこちらを見つめてきた。
「な、なぜだ? お前は死んだはず!?」
男はなんども後ろを振り返り、僕と宙づりになったものを見比べた。
「あれのことかい? よく見ろお前の大切なお仲間だろう?」
僕は宙づりになった死体を親指で指し示す、その言葉の真意を金髪の男は理解した。
「まさか、死体を使ったのか!?」
その通りだ。実に人をだますのは心地よい。特に裏でこそこそ粋がっている奴にはな。その後、女の声が遠くの方から聞こえてきた。メリッサだ。
「どうやらエインヘリャル二人と契約すると片方が生きている限り、死体は消滅しないらしいな」
「よくやってくれた。メリッサ。完璧だ」
僕は彼女をねぎらった。彼女はまた誇らしげにしながらも疲れた様子だ。おつかれさん。
「死体のところに戻って佑月にみせかけて死体を罠に投げ入れるのは、ちょっと大変だったな」
メリッサは首や肩をならしながらため息をついた、形勢逆転に、金髪の男が狼狽しながら吐血した。
「……そんな! あれは完璧にお前だったはず。一体どうして!?」
彼に事態をわからせようと、僕は冷静に静かなトーンで口を開く。
「そう見えただけだ。お互い見えない敵だ、姿形なんてわからない、人間を見れば敵だと錯覚する。お前をあぶり出すのは大変だったよ、何せ臆病で自分の罠に自信を持っている、敵を仕留めたと思わない限り姿をみせなかっただろう。
だから逆に考えれば、勝ったと思わせれば、何もしなくても自分からやってくる、確認しないと誰を倒したかわからないからな。相手が見えない以上そうなる」
満身創痍の男にやられたのが信じられないのだろう。「くそ! くそっ!」と男は悔しがって納得できない様子だ。
「しゃべってないで早く仕留めろ」
どうやら、僕のお喋りにメリッサは少しイラついていた。ご機嫌斜めですか、まあいいここいらでしまいにするか。
「ああ、そうするさ」
──その刹那、僕が引き金を引こうとすると、鋭い剣が僕に向かって振り下ろされてしまう!
「――何!?」
ちぃ! まさか、まだ敵がいたのか⁉
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