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ザメハの笑み
第四十二話 メリッサの秘密
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「なぜ、助けてくれなかったの?」
少女がこちらをにらみ、恨み言をつぶやく、すまない、僕はヒーローじゃないんだ、ましてや神様なんかじゃない。……無理だったんだ。
「本当に、助けられなかったの」
ああ、そうだわかってくれよ、僕は万能じゃないんだ。しがない男なんだ。──暗闇の中、僕の祈りの声が心の中で響いていく、突然、急に少女の顔が変化し、メリッサの顔に変わった。
「じゃあ、私を守るなんて嘘だったんだな」
いや、違う! 君だけは命をかけて守る、絶対約束する。本当だ、お願いだ、信じてくれ!
急に僕はベッドから起き上がり、現実に引き戻された。よかった夢だったか。気づけば上半身裸で僕はベッドに寝かされていた。
周りを見ると、宿の一室で僕以外、誰もいない。どうやらメリッサはいないらしい。メリッサとは最近すれ違っているような気がするな。
不意に近くを見るとのベッドの隣の椅子に僕の服があった。よく調べると破れたところをきれいにぬっていて、たたんで置いている。
やっぱり女子力高いな、良い妻だ。こんな些細なことでも女の子といる喜びを感じ、僕は服を着て、外に出た。……もう昼ぐらいか、よく寝ていたな。あくびをすると、どこへいったものかと思考をめぐらす。また迷子になってはメリッサに迷惑がかかる。
まあ、ザメハみたいなエインヘリャルはもういないだろう、記憶にある風景を見ながら、ブラブラと歩いた。ホント人多いな、カップルが多い。メリッサはここは愛の聖地みたいなこと言ってたな。
しかし、その割にはこの街で戦闘ばかりしていた気がする、……なんだか3日ぐらいしかいなかったのに長く感じるな。
でも、それは僕にとって喜ばしいことでもあった、年を取るとともに時間の流れが速く感じるようになる、今まで刺激のない毎日を送っていた。
今では十代の時のような新鮮な気分に満ちあふれている。こころなしか体が軽い、早足で街を歩く、気がつくとメリッサと来た教会に着いていた。メリッサを求めて僕は教会の扉を開くと、礼拝堂の奥を見やると見たことのない神父がそこに立っていた。
「あの……」
──そうだ言葉が通じないんだどうしたものか。
「異世界の方ですね、こちらへ」
何を話しているかわからない、だが、敵意はなさそうだ、むしろ親切そうな様子に僕は安堵して、とりあえずその神父について行くことにした。
そう言えばザメハが言葉が通じる教会の人間がいるって言ったな、もし、それが本当ならばエインヘリャルかヴァルキュリアのはずだ。
おっさんと言っていたような気がするが、男のヴァルキュリアがいるのだろうか。神父はどんどん足を進めていく、教会の別の出口から木々に包まれた庭をすすんで、大きな館へとたどり着いた。神父の中年は右手を挙げる、ここに入れというのか?
僕は館の大きくて鉄できた扉を開く、すると中に見えたのは巨大なテーブルと50mぐらい続くキッチンたちだった。
神父は中に進んでいき、それについていくと部屋の中程に小さい女の子が一生懸命料理をしているのを見つけた。白い帽子とエプロンらしき服を着て欧州民謡を鼻歌で歌いながら料理を熱心に作っている。あれ、この鼻歌聴いたことがあるぞ。
「あ……」
少女がこちらに気づく。その顔を見ると一瞬で誰かわかった。
「メリッサじゃないか! こんなところで何をしているんだ」
「み、見るなあああ――――――――――――!」
メリッサの顔が真っ赤に染まり僕の胸を押してくる。
「お、おいどうしたんだい? 何があったんだ」
「見ちゃダメって言ってるんだ、バカ!」
本気で少女のように怒っているどうしたんだ?
「料理していたんだろ、別に良いじゃないか」
メリッサはまるでやかんが沸騰したように必死に怒っている、なんだなんだ。
「それを見ちゃダメだっていうんだ! こっちみるな――――――!」
「落ち着いてくれよ。どうしたんだい?」
メリッサの頬をなで頭をなでる、すると徐々に落ち着いてくれた。数分がたち、彼女が静かに体をもじらせながらわけを話し始めた。
「実は、この辺の食材は独特で味付けが難しいんだ。この街に来たとき手料理披露するって、食材買い込んでいたろ。でも、いつものように作ったら……その……味がおかしくて」
「ああ、料理を失敗した訳ね。珍しいな、メリッサが失敗するなんて」
「そうだ! そこが問題なんだ。私は、なるべくいい女であるように見せつけていた。でも、料理が作れなかったって言えるわけないだろ。あんなに自信満々に言って、無理でしたなんて言えるわけない!」
おいおい、メリッサのこと完璧な女の子だと思ってないのにどうしてこんなにこだわるんだろうな。女の子ってよくわからないところがあるな。
「別にいいじゃないか、できなくったって」
「いやだ! 私は好きな男には、いい女だと思われたいんだ! それがこっそりこの街の料理研究会で勉強していたなんて知られたら私のイメージが壊れる!」
ああ、最近すれ違っていたのはそのせいか。僕と離れている間こそこそ料理研究していたんだ。僕に美味しい料理を食べさせるために。何だか僕の頬の筋肉が緩んでいく。
「メリッサ……可愛いなあ! 僕のために努力してくれていたんだ! とても嬉しいよ」
「いやだ――――――――――そう言われると思って黙ってやってたんだ! 私のイメージが! ダメな女の子みたいに見られるヤダヤダヤダ――――――!」
「ははは、ホント可愛いな!!! メリッサは!」
僕はここぞとばかりに小さな頭をなで続けた。
「うるさい! バカ! バカ! バカあああ――――――――!」
ぽかぽかと僕の胸を叩く。僕は笑顔で、
「別にメリッサが完璧じゃなくても僕の愛は変わらないよ。完璧なメリッサを愛しているわけじゃなく、そのままの君が素敵だから愛しているんだ」
と言い、メリッサは少し涙ぐみながら僕に確認をする。
「本当に、そうなのか? こんな私でも好きだと言ってくれるのか?」
「あたりまえだよ、世界で一番愛してるよ、メリッサ」
彼女の表情に光が差し込む。メリッサは満面の笑顔になり麗しく白銀の肌が輝いた。
「本当か? 私も好きだぞ佑月!」
メリッサがキスしようと抱きついてくる、僕は膝を折りその情熱に答えた。そうやってこの日はずっとメリッサの料理研究に付き合っていた。僕が素直に感想を言うと、どんどん僕好みの料理ができあがってくる。
すれ違いとか色々あるけれど、夫婦って会話だよなあと僕は思った。女性と話すことってこんなにも面白いんだと感激した一日であった。
少女がこちらをにらみ、恨み言をつぶやく、すまない、僕はヒーローじゃないんだ、ましてや神様なんかじゃない。……無理だったんだ。
「本当に、助けられなかったの」
ああ、そうだわかってくれよ、僕は万能じゃないんだ。しがない男なんだ。──暗闇の中、僕の祈りの声が心の中で響いていく、突然、急に少女の顔が変化し、メリッサの顔に変わった。
「じゃあ、私を守るなんて嘘だったんだな」
いや、違う! 君だけは命をかけて守る、絶対約束する。本当だ、お願いだ、信じてくれ!
急に僕はベッドから起き上がり、現実に引き戻された。よかった夢だったか。気づけば上半身裸で僕はベッドに寝かされていた。
周りを見ると、宿の一室で僕以外、誰もいない。どうやらメリッサはいないらしい。メリッサとは最近すれ違っているような気がするな。
不意に近くを見るとのベッドの隣の椅子に僕の服があった。よく調べると破れたところをきれいにぬっていて、たたんで置いている。
やっぱり女子力高いな、良い妻だ。こんな些細なことでも女の子といる喜びを感じ、僕は服を着て、外に出た。……もう昼ぐらいか、よく寝ていたな。あくびをすると、どこへいったものかと思考をめぐらす。また迷子になってはメリッサに迷惑がかかる。
まあ、ザメハみたいなエインヘリャルはもういないだろう、記憶にある風景を見ながら、ブラブラと歩いた。ホント人多いな、カップルが多い。メリッサはここは愛の聖地みたいなこと言ってたな。
しかし、その割にはこの街で戦闘ばかりしていた気がする、……なんだか3日ぐらいしかいなかったのに長く感じるな。
でも、それは僕にとって喜ばしいことでもあった、年を取るとともに時間の流れが速く感じるようになる、今まで刺激のない毎日を送っていた。
今では十代の時のような新鮮な気分に満ちあふれている。こころなしか体が軽い、早足で街を歩く、気がつくとメリッサと来た教会に着いていた。メリッサを求めて僕は教会の扉を開くと、礼拝堂の奥を見やると見たことのない神父がそこに立っていた。
「あの……」
──そうだ言葉が通じないんだどうしたものか。
「異世界の方ですね、こちらへ」
何を話しているかわからない、だが、敵意はなさそうだ、むしろ親切そうな様子に僕は安堵して、とりあえずその神父について行くことにした。
そう言えばザメハが言葉が通じる教会の人間がいるって言ったな、もし、それが本当ならばエインヘリャルかヴァルキュリアのはずだ。
おっさんと言っていたような気がするが、男のヴァルキュリアがいるのだろうか。神父はどんどん足を進めていく、教会の別の出口から木々に包まれた庭をすすんで、大きな館へとたどり着いた。神父の中年は右手を挙げる、ここに入れというのか?
僕は館の大きくて鉄できた扉を開く、すると中に見えたのは巨大なテーブルと50mぐらい続くキッチンたちだった。
神父は中に進んでいき、それについていくと部屋の中程に小さい女の子が一生懸命料理をしているのを見つけた。白い帽子とエプロンらしき服を着て欧州民謡を鼻歌で歌いながら料理を熱心に作っている。あれ、この鼻歌聴いたことがあるぞ。
「あ……」
少女がこちらに気づく。その顔を見ると一瞬で誰かわかった。
「メリッサじゃないか! こんなところで何をしているんだ」
「み、見るなあああ――――――――――――!」
メリッサの顔が真っ赤に染まり僕の胸を押してくる。
「お、おいどうしたんだい? 何があったんだ」
「見ちゃダメって言ってるんだ、バカ!」
本気で少女のように怒っているどうしたんだ?
「料理していたんだろ、別に良いじゃないか」
メリッサはまるでやかんが沸騰したように必死に怒っている、なんだなんだ。
「それを見ちゃダメだっていうんだ! こっちみるな――――――!」
「落ち着いてくれよ。どうしたんだい?」
メリッサの頬をなで頭をなでる、すると徐々に落ち着いてくれた。数分がたち、彼女が静かに体をもじらせながらわけを話し始めた。
「実は、この辺の食材は独特で味付けが難しいんだ。この街に来たとき手料理披露するって、食材買い込んでいたろ。でも、いつものように作ったら……その……味がおかしくて」
「ああ、料理を失敗した訳ね。珍しいな、メリッサが失敗するなんて」
「そうだ! そこが問題なんだ。私は、なるべくいい女であるように見せつけていた。でも、料理が作れなかったって言えるわけないだろ。あんなに自信満々に言って、無理でしたなんて言えるわけない!」
おいおい、メリッサのこと完璧な女の子だと思ってないのにどうしてこんなにこだわるんだろうな。女の子ってよくわからないところがあるな。
「別にいいじゃないか、できなくったって」
「いやだ! 私は好きな男には、いい女だと思われたいんだ! それがこっそりこの街の料理研究会で勉強していたなんて知られたら私のイメージが壊れる!」
ああ、最近すれ違っていたのはそのせいか。僕と離れている間こそこそ料理研究していたんだ。僕に美味しい料理を食べさせるために。何だか僕の頬の筋肉が緩んでいく。
「メリッサ……可愛いなあ! 僕のために努力してくれていたんだ! とても嬉しいよ」
「いやだ――――――――――そう言われると思って黙ってやってたんだ! 私のイメージが! ダメな女の子みたいに見られるヤダヤダヤダ――――――!」
「ははは、ホント可愛いな!!! メリッサは!」
僕はここぞとばかりに小さな頭をなで続けた。
「うるさい! バカ! バカ! バカあああ――――――――!」
ぽかぽかと僕の胸を叩く。僕は笑顔で、
「別にメリッサが完璧じゃなくても僕の愛は変わらないよ。完璧なメリッサを愛しているわけじゃなく、そのままの君が素敵だから愛しているんだ」
と言い、メリッサは少し涙ぐみながら僕に確認をする。
「本当に、そうなのか? こんな私でも好きだと言ってくれるのか?」
「あたりまえだよ、世界で一番愛してるよ、メリッサ」
彼女の表情に光が差し込む。メリッサは満面の笑顔になり麗しく白銀の肌が輝いた。
「本当か? 私も好きだぞ佑月!」
メリッサがキスしようと抱きついてくる、僕は膝を折りその情熱に答えた。そうやってこの日はずっとメリッサの料理研究に付き合っていた。僕が素直に感想を言うと、どんどん僕好みの料理ができあがってくる。
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