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砂城の愛
第五十四話 砂城の愛④
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「ははっ、今度は命乞いかい?」
セルモアの声に、僕は密かに静かに笑う、誰が命乞いなどするか、演技に決まっているだろ。まずはサーベルを置き、セルモアの警戒心を解かせた。そして、勝負が決まったと思わせる瞬間、僕は腰の後ろに下げていたショートソードをミリアの喉元に突きつけた。
「……だがどうせ死ぬんだ、この女を切り刻ませてもらう……!」
僕が言い放つと、ミリアとセルモアが動揺した。ミリアが何故? と言った瞳でこちらを見てくる。
「やりなよ、ミリアがどうなろうと知ったことじゃない」
「そんな……」
セルモアがそう応えると心底哀しそうにするミリアだった。裏切りがラグナロクの流儀だ。しかし、彼女に対して僕は”落ち着いてくれミリア”と囁く。
「えっ……」と動揺した声を漏らすミリア、小さな声で”取引がある”と僕は言う。その一方でセルモアにさらにたたみかける。
「ホントにそう思えるのか……?」
「なにがいいたい?」
この状況を打開するには第一条件として時間稼ぎをすること。時間がかかれば騎士と貴族たちが罠を解除して跳ね橋を下ろしてくる脱出口ができると言うことだ。
なら、ミリアに協力してもらえば良い、彼女に”セルモアを捕らえる代わりに、僕に協力をして欲しい――”と、本音を語った。
「ヴァルキュリアが死ぬとどうなるかわかっているのか?」
「君みたいにバカになるのかい?」
「本当に知らないらしいな……」
僕は意味ありげに含んだ言い方をする、ヴァルキュリアが死ぬと困るのは、僕みたいに武器を交換するタイプだが、おそらくセルモアには関係ないだろう、はっきり言ってブラフだ。
ミリアは悩んだ様子で、セルモアがこの状態をせせら笑ってるのを不快に感じたのだろう、僕に対して”どうすればいい? ユヅ……”とか細い声で応えてきたミリアだった。
”僕の合図でセルモアに飛びかかってくれ、奴の動きを封じている間、僕が奴の喉元に剣を突きつけてその間に騎士たちが来る、後は君がこいつを捕らえて煮るなり焼くなり好きにするがいい、メンフェスの仇だ”と言うので、
彼女は”……そう、佑月の気持ちはわかった、──そう、わかったわ”と答えてくれた。――よし、第二段階終了。
「もうやりたいなら、やっちゃいなよ、ぼくはそれでいいから」
「そうか、残念だったなミリア」
僕と奴のやり取りにミリアが割って入る。
「ちょっと待ってよ、セルモア! 貴方は私のパートナーでしょ、このままだと私がどうなるかわからないじゃない。それでいいの?」
「どうせ生き返るんだから、お前がどうなろうとぼくは知ったことないね」
「なんですって! 貴方が言うから城の乗っ取り計画に参加したんじゃない! ……私はこんなことしたくなかったのに! しかも愛している人を犠牲になんかしたくなかった、あれもこれも全部アンタのせいじゃない!」
第二条件、ミリアを味方につけること。彼女を味方につけるとこの城の領有権があるため、騎士たちは言うことをきく、やろうと思えばセルモアをリンチできる。
……続けて、僕はそそ抜かした。
「おいおい、それは計画通りに行って楽しかっただろうなあ、セルモア?」
セルモアはさも不満げに苦々しい顔をする。
「何が楽しいものか、このバカ女が何度となく、止めようとか、本気で好きになった……とかほざくからさ、ぼくはそんなくだらないことをきくたびに、コイツいつ本当に炎で焼き尽くしてろうかと思ったほどだよ」
セルモアの非情なセリフにミリアの表情が変わっていった。
「ほう、女は難しいな」
それにわざと僕は同調した。これで、ミリアの心を確かにする。
「難しいんじゃなくてバカなんだよ、女ってやつは。ちょっと男の顔が良ければ好きになって、優しくされたら、もう奴隷。なんでこんなくだらない生き物を創ったんだろうね、神は。
しかも笑い事のように男の方も本気になって、だまされてるとも知らずにさ、ホントとち狂ってさ、バッカじゃないの。所詮愛なんてくだらないゲームなのに、本気になって命がけとか!
それでもって結局死亡って、本当無様な奴だったな、救いようがないバカだったね、メンフェスとかいう奴は、ははは!」
セルモアの笑い声が響くとシーツにくるまったミリアの手が僕の服を握った。徐々に力強く握りしめていくのが感じられた。だが、セルモアの煽りは続く、
「ホント、ヴァルキュリアってクズみたいな生き物だね。勝手に惚れて、しかもやれません、でも私を好きになってー、ってどんな拷問だよ。
さらに、恋している最中は普通の女ぶって男を誘惑してさ、ははっ、最低だよね。欠陥品ですごめんなさいって、はっきり言えよ。お前は女として価値がないんだからさ、気持ち悪いんだよ。
それにだまされる男もクズだよね、だって無価値の恋愛して一歩間違えれば死ぬって、それを受け入れたメンフェスは、よっぽどのクズだわ。領主のくせに跡取りとか考えない自分勝手なクソだよ、はははは……!」
セルモアの侮辱にミリアは唇をかみ口元から血が流れている。体は小刻みに震えていた。僕は煽りが過ぎると思って、場を冷静に進めるように、
「それでもエインヘリャルはヴァルキュリアがいないと、どうしようもない。それは事実だ」
と、僕が口を挟む。だが、言いたいことを言ったセルモアは飽きた様子で、あざけりだす。
「もう、君の言っていることよくわからないや、もうどうでもいいよ、そんなやつ、はっ」
「本当にそう思えるのか、自分のヴァルキュリアが切り刻まれるのだぞ!」
僕の言葉にセルモアはいやらしそうに笑い出した。
「君なんか忘れてない? そこにいるのはぼくのヴァルキュリアだよ。こいつはぼくの言いなりさ、もういい、ミリア、その馬鹿なおっさんを捕らえろ、いいな、二度は言わない、ぼくに従え、わかったな?」
「ええ……わかったわ……!」
そう言うとミリアは僕の関節を逆にひねり上げ、投げ飛ばし、地面に落ちたサーベルをとった。──なっミリア⁉ これは逆に僕の方が動揺した、何故だミリア……こんな奴に協力するのか――?
だが、落ち着く間もなく、目まぐるしく事態は変化をし続ける。
……彼女はエインヘリャルの武器である僕のサーベルで、
――僕の右の腹を刺したのだった……。
「……お、おい、なにをやってるんだ……?」と今度はセルモアが呆気にとられていた。ちょ、ちょっと待ってくれ、まさか、ミリア、君は!?
「……ミリア……本気なのか……⁉」
その意を悟った僕は腹を抱え膝をついてミリアの顔を見た。それは般若の面をかぶった女の鬼の顔に見えた。歯を食いしばり眉を逆立たようで、目が血走っている、女というのはこんな表情をするのかと僕はあまりもの恐怖で凍り付いた。
「おい、バカ……! ヴァルキュリアがエインヘリャルを攻撃すると、ぼくの方に災難が来るんだろ――何やって――る」
セルモアの走った声をさえぎるように、ミリアは即座にセルモア向かって走り込んだ! そして、彼女は腹もとに体を丸める、何も言わない。見ると、無言でサーベルを奴の腹の中に突き入れていた。
「どう? 気分いいでしょ、パートナーに裏切られた気分は?」
ミリアはもう一度ゆっくりとサーベルを持つ右手を挙げ、セルモアの胸を何度も深々と刺し続けた。セルモアは何が起こったのかわからない様子で奴自身の胸のあたりを見る。――サーベルが胸を心臓を貫いていた。
「ミリア……お前……自分で何やっているかわかっているのか……?」
「……正常よ……!」
セルモアは口から血を吐きながらミリアに助けを乞うように見つめるが、対してミリアはこう言い放った。
「――そうよ、思い出したようね、セルモア。もし、相手のエインヘリャルをヴァルキュリアが攻撃したとき、因果律が狂って貴方自身に災厄がおこるということを――!」
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ミリアは悩んだ様子で、セルモアがこの状態をせせら笑ってるのを不快に感じたのだろう、僕に対して”どうすればいい? ユヅ……”とか細い声で応えてきたミリアだった。
”僕の合図でセルモアに飛びかかってくれ、奴の動きを封じている間、僕が奴の喉元に剣を突きつけてその間に騎士たちが来る、後は君がこいつを捕らえて煮るなり焼くなり好きにするがいい、メンフェスの仇だ”と言うので、
彼女は”……そう、佑月の気持ちはわかった、──そう、わかったわ”と答えてくれた。――よし、第二段階終了。
「もうやりたいなら、やっちゃいなよ、ぼくはそれでいいから」
「そうか、残念だったなミリア」
僕と奴のやり取りにミリアが割って入る。
「ちょっと待ってよ、セルモア! 貴方は私のパートナーでしょ、このままだと私がどうなるかわからないじゃない。それでいいの?」
「どうせ生き返るんだから、お前がどうなろうとぼくは知ったことないね」
「なんですって! 貴方が言うから城の乗っ取り計画に参加したんじゃない! ……私はこんなことしたくなかったのに! しかも愛している人を犠牲になんかしたくなかった、あれもこれも全部アンタのせいじゃない!」
第二条件、ミリアを味方につけること。彼女を味方につけるとこの城の領有権があるため、騎士たちは言うことをきく、やろうと思えばセルモアをリンチできる。
……続けて、僕はそそ抜かした。
「おいおい、それは計画通りに行って楽しかっただろうなあ、セルモア?」
セルモアはさも不満げに苦々しい顔をする。
「何が楽しいものか、このバカ女が何度となく、止めようとか、本気で好きになった……とかほざくからさ、ぼくはそんなくだらないことをきくたびに、コイツいつ本当に炎で焼き尽くしてろうかと思ったほどだよ」
セルモアの非情なセリフにミリアの表情が変わっていった。
「ほう、女は難しいな」
それにわざと僕は同調した。これで、ミリアの心を確かにする。
「難しいんじゃなくてバカなんだよ、女ってやつは。ちょっと男の顔が良ければ好きになって、優しくされたら、もう奴隷。なんでこんなくだらない生き物を創ったんだろうね、神は。
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セルモアの笑い声が響くとシーツにくるまったミリアの手が僕の服を握った。徐々に力強く握りしめていくのが感じられた。だが、セルモアの煽りは続く、
「ホント、ヴァルキュリアってクズみたいな生き物だね。勝手に惚れて、しかもやれません、でも私を好きになってー、ってどんな拷問だよ。
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セルモアの侮辱にミリアは唇をかみ口元から血が流れている。体は小刻みに震えていた。僕は煽りが過ぎると思って、場を冷静に進めるように、
「それでもエインヘリャルはヴァルキュリアがいないと、どうしようもない。それは事実だ」
と、僕が口を挟む。だが、言いたいことを言ったセルモアは飽きた様子で、あざけりだす。
「もう、君の言っていることよくわからないや、もうどうでもいいよ、そんなやつ、はっ」
「本当にそう思えるのか、自分のヴァルキュリアが切り刻まれるのだぞ!」
僕の言葉にセルモアはいやらしそうに笑い出した。
「君なんか忘れてない? そこにいるのはぼくのヴァルキュリアだよ。こいつはぼくの言いなりさ、もういい、ミリア、その馬鹿なおっさんを捕らえろ、いいな、二度は言わない、ぼくに従え、わかったな?」
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「……正常よ……!」
セルモアは口から血を吐きながらミリアに助けを乞うように見つめるが、対してミリアはこう言い放った。
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※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
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