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徒花
第八十六話 疑惑
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時間は帰ることの出来ない一本道。およそ誰もが書き換えたい過去がある。そして、戻れないからこそ未来へと希望を抱く。
最後に老いていき、振り返って過去がどうであったか、良きことも悪しきこともすべて老いた自分につながる大切な記憶で、死を迎えるとき自分の人生に満足であったか、その問いこそが人間の生死である。
なのに、この女は運命を変える力がその手にあるという。自分の思いのまま世界を変える力、神の法則を捻じ曲げる禁じられた魔法のような能力、時間変革能力が使えるなんて。
ララァは嫋やかに、さらに優しく微笑んだ。
「おわかりかしら、貴方に勝ち目はありません。どんなに策略をめぐらし、私たちを罠にはめても、過去を書き換えれば済むこと。
貴方に出来ることは、ただ絶望すること。それだけです」
「見てよこのおっさんの顔、信じられないって。残念ながらララァの能力は本物だよ。本当に時間が書き換えられる。
ははは、なぶり殺しにしてあげるから覚悟しろよ」
「そんなことを言ってはダメよ。優しく殺してあげなきゃ。せっかく日向さんを殺してくれた人だから」
「そうだね、ララァ。アンタのそういう優しいところ好きだよ」
「私も貴方のことが好きよ、リリィ」
ララァは細い手でリリィの胸に手を当て、リリィは唇が寂しかったのか、二人はまたキスを始め舌が絡みつく。
日向さんを殺してくれたから……?
どこか違和感がする言葉だ。こいつらの説明だと日向さんは手出しの出来ないほどの強敵だったと言いたいのか。でも時間変革能力があれば簡単に倒すことが出来るんじゃないか?
……何か秘密がある。絶望するにはまだ早い。
冷静に頭に血を巡らせて、考えた結果、様子見にSG552をバースト射撃でリリィを撃った。
あっさりとリリィの胸から血が流れていき倒れた。その瞬間二人は消え、僕は周りを見渡す。なるほど二人が特異点となり過去にさかのぼっているのか。
「はあ~わかんないのかなー、意味が無いって」
リリィはとなりに積んであった木箱の上に片足を上げて、座っていた。ミニスカートから、白い太ももが魅惑的に覗かせるように足を組む。
「まあ! 乱暴な方。少しタイプです」
ララァはタルの上にちょこりと座り、頬を染めこちらをチラリと見ている。なんだララァとかいう娘は、僕を魅了する気なのか、戦いで少し忘れていたが、メリッサが不機嫌そうにこちらをにらんでいた。
「ちょっと、ララァ! 浮気する気!?」
リリィは動揺したが、それ以上に僕が動揺してしまっているのだから情けない。
「ふふふ、佑月さん、ちょっと慌てていて、可愛い」
「ララァ!」
まあ、落ち着こう。今わかったことはララァの時間変革能力は、制限があるということだ。なぜなら、無制限に時間を変えられるなら、僕はすでに殺されているはずだ。無制限に行動できれば僕の行動を先読みして殺しておくことなど簡単なはずだ。なら、有効範囲に制限があるのか?
「よくもララァを惑わせたな! おっさん死んでしまえ!」
リリィが手を上げると目の前が黒い球体で埋め尽くされ、空間が漆黒へと変えられた。僕はそれをかわそうと後ろを見る、しまった、すでに黒い太陽に周りを囲まれていた。
まずい――
「佑月!」
武装をしたメリッサが大盾を上に掲げ、僕たち二人の体をかばって、いっしょに倒れ込む。
高熱を帯びた黒い液体が襲う。盾が溶けながらも、なんとか持ちこたえ僕たちの体を守った。高温のため周りの地面が音を立てて焼けて溶けている。鉄臭い嫌な匂いだ。
……しかし、まともに食らったら即死だった、メリッサの機転に感謝だ。
「ヴァルキュリア、すまない!」
メリッサは胸を張り、鼻で笑ってにこやかに、「当たり前だ、パートナーだろ」と言う。たまにはこういう素直な反応をするのだな、この娘は気分でコロコロ態度を変えるから、感情が読みにくいが僕にとっては退屈しない女の子だ。
「へえ~ヴァルキュリアを使うんだ。じゃあこっちも使うか」
「さあ、ヴァルキュリアさんたち、いらっしゃい──」
金髪のヴァルキュリアと黒髪のヴァルキュリアが現れ、リリィとララァの側に立ちこちらを威圧している。
「エインヘリャルに手を出すなよ。あの法則はごめんだ、佑月はあたしたちが始末する。お前たちは銀髪のヴァルキュリアを仕留めてこい!」
二人のヴァルキュリアはメリッサに襲いかかってきた。僕が反応するより早く、彼女に二人とも斬りかかっており、手出しがしにくい。
「大丈夫か! ヴァルキュリア!」
僕が声をかけるが、返事が返ってこない。メリッサは二人の手練れを相手にして精一杯のようだ、憎まれ口の一つも飛んでこない。だが、彼女なら二人相手でも後れは取らないだろう、なら、こっちはこっちで何とかするしかないか。
「ほら! おっさんまだまだ行くよ!」
また、黒の球体だ。僕は囲まれる前に距離をとりその場から逃げ出した。突然の僕の行動が読めなかったのかリリィとララァはこちら追う手立てなく、虚を突かれた様子だ。過去は変えられても未来は変えられまい。
とりあえずこちらは男の足だ。走れば距離を稼げる。そう思ったが時間変革能力で、逃げる前に攻撃されたらどうしようかとふと思った、しかし、簡単に奴らは見逃してくれた。どういうことだ? あまりにも手持無沙汰な感じに疑問を感じざるを得ない。
倒すチャンスのはずなのに全然攻撃してこない。ということはやはり、時間変革能力には制限があるということだ。問題は何が制限なのかだ。
相手の攻撃が来ないなら、こちらから出てきて能力を調べてやろう。威力偵察だ。気配を消し、側面から回り込む。奴らは二人でイチャイチャしながら、ヴァルキュリアたちの戦いを見て楽しんでいる。
密かに銃を構え、リリィの頭を狙撃し、すぐさま頭の一部がふっとんだ。あまりの手際の良さにララァは慌てた様子だった。そのつかぬ間、突如、二人とも地面に伏せた状態になっていた。
なるほどそういうことか――、ならアイディアが閃いた。
「メリッサ! ひとまず逃げるぞ! 付いてこい」
「人前で本名を呼ぶなって言っているだろ!」
ブチブチ言いながら敵のヴァルキュリアたちの剣戟を華麗にかわし、僕のほうへ向かってくるメリッサ。
動揺したリリィは逃がすまいと、黒い球体たちが襲ってくるが、それを後にして二人で走り抜けていった。
「どうしたんだ、佑月、体勢を立て直すのか」
「あいつらを倒す方法が思いついたんだよ、とりあえず距離を離すぞ」
メリッサは僕の自信のある様子に納得してくれて、黙って僕の後を付いていく、そして、僕たちは敵を背にした。
「おい、おっさん! 女相手に逃げて恥ずかしくないのか! 正々堂々勝負しろ!」
どうやら後ろでリリィが怒鳴っている。
「まあ、いいじゃないリリィ。もう少し佑月さんを見てみたいし」
「だってララァ……まさか本気であいつに惚れたんじゃ……!」
「あら、まあ、まあ!」
「おっさん! 殺す――――――――――――!!」
勝手にリリィが怒髪天をつく、めんどくさい敵だと僕は一つため息をついた。
最後に老いていき、振り返って過去がどうであったか、良きことも悪しきこともすべて老いた自分につながる大切な記憶で、死を迎えるとき自分の人生に満足であったか、その問いこそが人間の生死である。
なのに、この女は運命を変える力がその手にあるという。自分の思いのまま世界を変える力、神の法則を捻じ曲げる禁じられた魔法のような能力、時間変革能力が使えるなんて。
ララァは嫋やかに、さらに優しく微笑んだ。
「おわかりかしら、貴方に勝ち目はありません。どんなに策略をめぐらし、私たちを罠にはめても、過去を書き換えれば済むこと。
貴方に出来ることは、ただ絶望すること。それだけです」
「見てよこのおっさんの顔、信じられないって。残念ながらララァの能力は本物だよ。本当に時間が書き換えられる。
ははは、なぶり殺しにしてあげるから覚悟しろよ」
「そんなことを言ってはダメよ。優しく殺してあげなきゃ。せっかく日向さんを殺してくれた人だから」
「そうだね、ララァ。アンタのそういう優しいところ好きだよ」
「私も貴方のことが好きよ、リリィ」
ララァは細い手でリリィの胸に手を当て、リリィは唇が寂しかったのか、二人はまたキスを始め舌が絡みつく。
日向さんを殺してくれたから……?
どこか違和感がする言葉だ。こいつらの説明だと日向さんは手出しの出来ないほどの強敵だったと言いたいのか。でも時間変革能力があれば簡単に倒すことが出来るんじゃないか?
……何か秘密がある。絶望するにはまだ早い。
冷静に頭に血を巡らせて、考えた結果、様子見にSG552をバースト射撃でリリィを撃った。
あっさりとリリィの胸から血が流れていき倒れた。その瞬間二人は消え、僕は周りを見渡す。なるほど二人が特異点となり過去にさかのぼっているのか。
「はあ~わかんないのかなー、意味が無いって」
リリィはとなりに積んであった木箱の上に片足を上げて、座っていた。ミニスカートから、白い太ももが魅惑的に覗かせるように足を組む。
「まあ! 乱暴な方。少しタイプです」
ララァはタルの上にちょこりと座り、頬を染めこちらをチラリと見ている。なんだララァとかいう娘は、僕を魅了する気なのか、戦いで少し忘れていたが、メリッサが不機嫌そうにこちらをにらんでいた。
「ちょっと、ララァ! 浮気する気!?」
リリィは動揺したが、それ以上に僕が動揺してしまっているのだから情けない。
「ふふふ、佑月さん、ちょっと慌てていて、可愛い」
「ララァ!」
まあ、落ち着こう。今わかったことはララァの時間変革能力は、制限があるということだ。なぜなら、無制限に時間を変えられるなら、僕はすでに殺されているはずだ。無制限に行動できれば僕の行動を先読みして殺しておくことなど簡単なはずだ。なら、有効範囲に制限があるのか?
「よくもララァを惑わせたな! おっさん死んでしまえ!」
リリィが手を上げると目の前が黒い球体で埋め尽くされ、空間が漆黒へと変えられた。僕はそれをかわそうと後ろを見る、しまった、すでに黒い太陽に周りを囲まれていた。
まずい――
「佑月!」
武装をしたメリッサが大盾を上に掲げ、僕たち二人の体をかばって、いっしょに倒れ込む。
高熱を帯びた黒い液体が襲う。盾が溶けながらも、なんとか持ちこたえ僕たちの体を守った。高温のため周りの地面が音を立てて焼けて溶けている。鉄臭い嫌な匂いだ。
……しかし、まともに食らったら即死だった、メリッサの機転に感謝だ。
「ヴァルキュリア、すまない!」
メリッサは胸を張り、鼻で笑ってにこやかに、「当たり前だ、パートナーだろ」と言う。たまにはこういう素直な反応をするのだな、この娘は気分でコロコロ態度を変えるから、感情が読みにくいが僕にとっては退屈しない女の子だ。
「へえ~ヴァルキュリアを使うんだ。じゃあこっちも使うか」
「さあ、ヴァルキュリアさんたち、いらっしゃい──」
金髪のヴァルキュリアと黒髪のヴァルキュリアが現れ、リリィとララァの側に立ちこちらを威圧している。
「エインヘリャルに手を出すなよ。あの法則はごめんだ、佑月はあたしたちが始末する。お前たちは銀髪のヴァルキュリアを仕留めてこい!」
二人のヴァルキュリアはメリッサに襲いかかってきた。僕が反応するより早く、彼女に二人とも斬りかかっており、手出しがしにくい。
「大丈夫か! ヴァルキュリア!」
僕が声をかけるが、返事が返ってこない。メリッサは二人の手練れを相手にして精一杯のようだ、憎まれ口の一つも飛んでこない。だが、彼女なら二人相手でも後れは取らないだろう、なら、こっちはこっちで何とかするしかないか。
「ほら! おっさんまだまだ行くよ!」
また、黒の球体だ。僕は囲まれる前に距離をとりその場から逃げ出した。突然の僕の行動が読めなかったのかリリィとララァはこちら追う手立てなく、虚を突かれた様子だ。過去は変えられても未来は変えられまい。
とりあえずこちらは男の足だ。走れば距離を稼げる。そう思ったが時間変革能力で、逃げる前に攻撃されたらどうしようかとふと思った、しかし、簡単に奴らは見逃してくれた。どういうことだ? あまりにも手持無沙汰な感じに疑問を感じざるを得ない。
倒すチャンスのはずなのに全然攻撃してこない。ということはやはり、時間変革能力には制限があるということだ。問題は何が制限なのかだ。
相手の攻撃が来ないなら、こちらから出てきて能力を調べてやろう。威力偵察だ。気配を消し、側面から回り込む。奴らは二人でイチャイチャしながら、ヴァルキュリアたちの戦いを見て楽しんでいる。
密かに銃を構え、リリィの頭を狙撃し、すぐさま頭の一部がふっとんだ。あまりの手際の良さにララァは慌てた様子だった。そのつかぬ間、突如、二人とも地面に伏せた状態になっていた。
なるほどそういうことか――、ならアイディアが閃いた。
「メリッサ! ひとまず逃げるぞ! 付いてこい」
「人前で本名を呼ぶなって言っているだろ!」
ブチブチ言いながら敵のヴァルキュリアたちの剣戟を華麗にかわし、僕のほうへ向かってくるメリッサ。
動揺したリリィは逃がすまいと、黒い球体たちが襲ってくるが、それを後にして二人で走り抜けていった。
「どうしたんだ、佑月、体勢を立て直すのか」
「あいつらを倒す方法が思いついたんだよ、とりあえず距離を離すぞ」
メリッサは僕の自信のある様子に納得してくれて、黙って僕の後を付いていく、そして、僕たちは敵を背にした。
「おい、おっさん! 女相手に逃げて恥ずかしくないのか! 正々堂々勝負しろ!」
どうやら後ろでリリィが怒鳴っている。
「まあ、いいじゃないリリィ。もう少し佑月さんを見てみたいし」
「だってララァ……まさか本気であいつに惚れたんじゃ……!」
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