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第百四十五話 初夜
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神聖な式が終わった後、僕たち二人にはもう一つの儀式がある、初夜だ。町の広い館を僕たちは案内された。元貴族の館で、今は商人が使っていて金さえ払えば貸してくれて、広い洋館の部屋にタキシード姿の僕と、純白のドレスのメリッサはベッドに座った。
そっと僕は彼女の手を握る、シルクの手袋の中でメリッサの手は震えていた。だが、その顔は母のように微笑んでいた。僕は緊張をほぐすためこの沈黙を破ることにする。
「月が綺麗だね」
「そうだね、私たちを見守ってくれているみたいで」
窓の外に浮かぶ満月、誇らしげにかつ優しくやわらかな月光、彼女の銀色の髪を照らし出し、透き通らせる。
「ここまでいろんなことあったね」
「そうだね、私も……」
そう口ずさむ前にそっと彼女の口元に僕の右手の人差し指を当てる、そのときはっと気づいたようだ、彼女の心が今どこにいたのかどうか。そして軽くメリッサは笑った。
「そうだな、やめやめ、私は、私だ、花嫁演技なんて似合わないよな」
「可愛かったけど、普段通りでいいよ、ありのままの君を僕は好きなんだ」
そう言って僕たちは笑い合う。何故おかしいのかわからない、でも、凄く心地が良かったんだ、この瞬間が。……そして彼女が黙ると、僕は彼女が待っていることを悟り、望んでいるだろう言葉をかける。
「メリッサ、愛している。今日の夜は僕のものだけになってくれ」
「うん、ありがとう、今夜は私は佑月のものだ、そして……愛してる……」
その言葉を告げた刹那彼女の唇を奪う。二人は大人のキスをお互い味わった。舌を絡め、彼女と僕のが絡みつく、これから行う、神聖な儀式の開幕式を飾るように。
そしてメリッサをベッドに押し倒した、僕はじっと彼女の瞳が潤んでいるのを見つめ、そっとキスを交わし、ドレスを脱がす。絹一つなく、生まれたままの体、彼女の体に愛おしくない場所などない、彼女の秘部を指で優しくさすりながら、円を描くように形よく実った乳房を揉み、そして乳首をなめる。
「ああ……いい……」
彼女の漏らす嬌声。高ぶる心を静めつつ、桃色の乳首を優しく甘くかむ。
「あっ……! それ……いいっ……!」
その言葉と同時に彼女の秘部の中に指を進める、ビクリとしなやかに体をくねらせた後、メリッサの潤んだ瞳を見て、僕は優しく口づけをする。大丈夫、大丈夫だから……。
そう、心の中で呟きながらゆっくりと繰り広げる行為にしっとりと彼女の大事な部分が湿っていることを指先で感じた。メリッサの呼吸が乱れていく、彼女が乱れていったのだ、そう、淫らに。
メリッサの顔が少女から大人の女の顔になった瞬間、そっと僕の耳元で彼女は囁いた。
「今度は私にさせてくれ……」
僕はタキシードを脱いで彼女と同じ産まれたままの姿になった。何も恥じることはない、隠す必要などない。僕たちは夫婦なのだから。
メリッサは静かに僕のモノを優しく白い指先でさわり、大きくなった頭の部分を撫でる。次に、僕の竿をゆっくりと擦った。思わず僕が少し声を漏らしてしまうと、彼女は小悪魔のように微笑む。
僕のが十分に大きくなったことを確認した後、メリッサは僕のモノを口に含んだ。初めての心地、温かくぬめりとした彼女の口の中、巧みに舌で先っぽを転がしながら、僕から湿った液体が出始めた感覚が走った瞬間、彼女はそっと口からだし、僕の先っぽにキスして笑った。
「どうせなら、お互い幸せになろう、最後まではできないけど、それは勝利へのご褒美として置いておいて」
「そう……だね、これは始まりなんだ、僕たちの幸せな人生の」
二人は頷き、僕はシーツに横たわり、彼女はいつもと逆向きに覆いかぶさる。僕の口元に彼女の大事な場所が、彼女の口元では僕のモノが。そしてお互いの湿った場所へ口から侵入する。
彼女は初めてながらとても上手だった。恥ずかしながら、彼女と一緒にイクと誓いながら、僕の方が先にイってしまった。彼女は白濁液をなめてくれたあと、手ぬぐいでふきとり、また行為を続ける。
結局、彼女が満足するまで絞られたのは僕だった。5回もイってしまったのだ。我ながらここまで溜まっていたのかと恥じながら、彼女はそのたびに嬉しそうだった。汗だくの二人。神聖な行為が済んだ後、僕とメリッサは裸で一緒に枕のもとで囁き合う。
「メリッサは素敵な女性だよ、とても美しい」
「佑月もかっこいい男だな、でも五回はイキすぎだ、ばーか」
その冗談に羞恥心がうずくというより愛情が増した、軽くキスを交わし、僕たちは照れ笑いをし始めた。幸せって感じたことは何度もあったけどこの時ほど神聖で幸せな心地は今までなかった。
彼女はそっと目を閉じ僕の胸に顔を埋め小さな声で言葉をつづけた。
「お前に告げることがある」
「えっ……」
僕が言葉を漏らすと、彼女はその声を遮る。
「しっ! 黙って聞いてくれ、ヴァルキュリアは神だ、また、神は本来名前は存在しない、しかし、創造神はヴァルキュリアをヴァルハラから、神性を薄めるためにわざわざ名前を与えた、それが神名だ」
神名……! そんなものがあるのか初めて聞いたぞ……!
「だが、それをヴァルキュリアは隠す、それは、知られてしまえば、ヴァルキュリアの真実の能力を明かしてしまうことになる。だから、ヴァルキュリアは仮名を使う、私の“メリッサ”というのは本当の名ではない、私が仮につけた名だ。
だがヴァルキュリアはそれも知られることすら嫌う、名が知れたヴァルキュリアは、その神階を周知されているものがいるからだ。エイミアほどになれば知られようが知られまいが、関係なく圧倒的な能力で押しつぶすことができる力を持っている。
しかし、私たち凡百のヴァルキュリアは違う、ヴァルキュリア大戦で能力を明らかにされたものも多く、また神階によって対策を練られる可能性が高い。よって仮名すら普通は伏せる」
そんな事情が……。最初会った時、彼女のことを皆の前ではヴァルキュリアと呼べって言ったのはそういうことか。
「そして私は今お前に真実の名を明かす、私の本当の名は“マリア”だ」
「マリア……!」
「しっ、静かにしろ、誰に聞かれるかわかったものではないし、これは神名で、ばれたら神ならばその能力の根源を知ることをできるんだ、決して私の神名を口に出すな、後、いつも通りメリッサと呼べ、他人が見ているときはヴァルキュリアと呼べ、これは絶対だ、契約だと思え、わかったな?」
僕はこくりと頷いた、そして彼女は彼女の本当の自分をさらけ出す。
「私の能力の根源は“虚子”だ。前にヴァルハラのことを話したことがあるな、この世界の大元の裏の姿、それを自在に扱い、この世に顕在化させる能力だ。お前がイメージした武器を作れるのはその副産物だ。
私の本来の能力の使い方はその虚子同士を激しく不規則運動をさせ、世界の実子を結び付け、どんどん飲み込ませ暴走させる能力だ。だが、この能力は今まで一度も使ったことはない。
それは何故か、ヴァルキュリアが真の能力を使った時、そのヴァルキュリアは内臓を破壊され、体中の骨を砕かれたような激しい激痛に合い、その瞬間は戦闘能力を失う、これは最終手段なんだ、お前ならわかるな」
なるほど、能力を使ってしまえば根源を知られて、この先の戦闘すら不利になる上に、その場では動けなくなる、これは彼女の言う通り切り札。使わないほうが良い、核兵器と一緒だ。彼女の話はまだ続く。
「私が直接経験した、ヴァルキュリアの真の能力は一つだけ、エイミアがヴァルキュリア大戦で追い詰められた時だ。彼女は能力を発動させるために必要な神言呪を唱えて、ヴァルハラに存在したヴァルキュリアの半分を消滅させた、神階第一階層の真の能力はそれほどの力がある。
私の力はそれほどではないが使ってしまえばエイミアですら葬れる自信がある」
そこまでの力が彼女に……。まだ彼女の話は終わっていないようだ。これは重要な話だ、心に刻む必要がある。
「エイミアの能力の根源は陽子の暴走だ、陽子たちを激しく運動させ電子を巻き込みながら世界を破壊する力で、端的に陽子崩壊といってもいい。
陽子反応を起こし核融合でエネルギーを放出しつつ、世界に存在する陽子を連鎖反応させて巨大なエネルギーを放出させた結果、陽子崩壊まで至らす力を持つ。お前には核兵器の一種といえば分かりやすいだろう。むしろエイミアのほうが一億倍、質が悪いが。
アウティスが具現化させる能力を授かっているのは、おそらくあらゆる陽子を自在に操り、魔法のように能力そのものをそっくりそのまま具現化しているだけの副産物だ。
彼女と私の能力とは根本的に違う。彼女はこの世に存在する物質を自在に操れるほどの能力を持っている、エイミアには気を付けろ、彼女が本気を出せばこの世界など簡単に消滅させる力を持っている、問題なのはアウティスではない、エイミアだ。
お前たちエインヘリャルにとってヴァルキュリアは無抵抗なものと思っているだろうが、世界そのものが崩壊してしまえばその因果すらも超え、エインヘリャルすら葬れる。
その点私とエイミアの能力は似ている。発動させてしまえば、因果律を超える結果を生み出すのだから」
「つまり君がその能力を使えばエインヘリャルすら消滅させられると」
「ああそうだ、私は戦闘不能になるが、最終手段としてお前が知っておく必要がある事柄だ。今までお前に隠してきたのは、その資格があるかどうかわからないからだ。
どういう意味かというと、ラグナロクのルールで、神名でパートナーのエインヘリャルに呼ばれたら自動的に発動させられる因果律が組み込まれている。それ以外の発動は許されていない。
知られてしまえばヴァルキュリアを犠牲にして勝利に導こうと言う浅はかな連中も出てくるだろう、だが、ヴァルキュリアの神名を知られることは勝ったとしても、その後の戦いで結局不利になる。
だから、私の神名を呼ぶときは、このラグナロクを終わらせることができると確信したときに使え。私もボロボロになってまで、最終的に負けましたじゃ報われんからな。
ほかのヴァルキュリアも同様だろうから死んでも神名を明かさない。戦士として屈辱だからな、わかったな?」
「ああ、わかった約束するよ」
「あと、発動する時のキーワードはこれだ、私の神名を呼んで、その能力を示せ、だ。それだけでいい。くれぐれも気を付けろ。お前を本当の意味で信頼したから明かす真実だ、いいな」
「ああわかったよ、君が傷つくなんて耐えられないから、必要はないだろうけど」
「……頼もしいな。一杯しゃべったら疲れた。今日はもう眠らせてくれ、ふあーあ」
そう言って彼女は僕の腕の中で眠った。これほど彼女との確かな絆を感じたことは今までなかった。彼女の本当の名前はマリア……。創造神以外、僕だけが知っている彼女の真の名前。その事が何よりもうれしかったんだ。
彼女のすべてをこの時初めて知った気がする。そして彼女との過去を頭の中で浮かべながら、僕も共にメリッサとともに眠った。……僕は今日、この日を二度と忘れないだろう。
そっと僕は彼女の手を握る、シルクの手袋の中でメリッサの手は震えていた。だが、その顔は母のように微笑んでいた。僕は緊張をほぐすためこの沈黙を破ることにする。
「月が綺麗だね」
「そうだね、私たちを見守ってくれているみたいで」
窓の外に浮かぶ満月、誇らしげにかつ優しくやわらかな月光、彼女の銀色の髪を照らし出し、透き通らせる。
「ここまでいろんなことあったね」
「そうだね、私も……」
そう口ずさむ前にそっと彼女の口元に僕の右手の人差し指を当てる、そのときはっと気づいたようだ、彼女の心が今どこにいたのかどうか。そして軽くメリッサは笑った。
「そうだな、やめやめ、私は、私だ、花嫁演技なんて似合わないよな」
「可愛かったけど、普段通りでいいよ、ありのままの君を僕は好きなんだ」
そう言って僕たちは笑い合う。何故おかしいのかわからない、でも、凄く心地が良かったんだ、この瞬間が。……そして彼女が黙ると、僕は彼女が待っていることを悟り、望んでいるだろう言葉をかける。
「メリッサ、愛している。今日の夜は僕のものだけになってくれ」
「うん、ありがとう、今夜は私は佑月のものだ、そして……愛してる……」
その言葉を告げた刹那彼女の唇を奪う。二人は大人のキスをお互い味わった。舌を絡め、彼女と僕のが絡みつく、これから行う、神聖な儀式の開幕式を飾るように。
そしてメリッサをベッドに押し倒した、僕はじっと彼女の瞳が潤んでいるのを見つめ、そっとキスを交わし、ドレスを脱がす。絹一つなく、生まれたままの体、彼女の体に愛おしくない場所などない、彼女の秘部を指で優しくさすりながら、円を描くように形よく実った乳房を揉み、そして乳首をなめる。
「ああ……いい……」
彼女の漏らす嬌声。高ぶる心を静めつつ、桃色の乳首を優しく甘くかむ。
「あっ……! それ……いいっ……!」
その言葉と同時に彼女の秘部の中に指を進める、ビクリとしなやかに体をくねらせた後、メリッサの潤んだ瞳を見て、僕は優しく口づけをする。大丈夫、大丈夫だから……。
そう、心の中で呟きながらゆっくりと繰り広げる行為にしっとりと彼女の大事な部分が湿っていることを指先で感じた。メリッサの呼吸が乱れていく、彼女が乱れていったのだ、そう、淫らに。
メリッサの顔が少女から大人の女の顔になった瞬間、そっと僕の耳元で彼女は囁いた。
「今度は私にさせてくれ……」
僕はタキシードを脱いで彼女と同じ産まれたままの姿になった。何も恥じることはない、隠す必要などない。僕たちは夫婦なのだから。
メリッサは静かに僕のモノを優しく白い指先でさわり、大きくなった頭の部分を撫でる。次に、僕の竿をゆっくりと擦った。思わず僕が少し声を漏らしてしまうと、彼女は小悪魔のように微笑む。
僕のが十分に大きくなったことを確認した後、メリッサは僕のモノを口に含んだ。初めての心地、温かくぬめりとした彼女の口の中、巧みに舌で先っぽを転がしながら、僕から湿った液体が出始めた感覚が走った瞬間、彼女はそっと口からだし、僕の先っぽにキスして笑った。
「どうせなら、お互い幸せになろう、最後まではできないけど、それは勝利へのご褒美として置いておいて」
「そう……だね、これは始まりなんだ、僕たちの幸せな人生の」
二人は頷き、僕はシーツに横たわり、彼女はいつもと逆向きに覆いかぶさる。僕の口元に彼女の大事な場所が、彼女の口元では僕のモノが。そしてお互いの湿った場所へ口から侵入する。
彼女は初めてながらとても上手だった。恥ずかしながら、彼女と一緒にイクと誓いながら、僕の方が先にイってしまった。彼女は白濁液をなめてくれたあと、手ぬぐいでふきとり、また行為を続ける。
結局、彼女が満足するまで絞られたのは僕だった。5回もイってしまったのだ。我ながらここまで溜まっていたのかと恥じながら、彼女はそのたびに嬉しそうだった。汗だくの二人。神聖な行為が済んだ後、僕とメリッサは裸で一緒に枕のもとで囁き合う。
「メリッサは素敵な女性だよ、とても美しい」
「佑月もかっこいい男だな、でも五回はイキすぎだ、ばーか」
その冗談に羞恥心がうずくというより愛情が増した、軽くキスを交わし、僕たちは照れ笑いをし始めた。幸せって感じたことは何度もあったけどこの時ほど神聖で幸せな心地は今までなかった。
彼女はそっと目を閉じ僕の胸に顔を埋め小さな声で言葉をつづけた。
「お前に告げることがある」
「えっ……」
僕が言葉を漏らすと、彼女はその声を遮る。
「しっ! 黙って聞いてくれ、ヴァルキュリアは神だ、また、神は本来名前は存在しない、しかし、創造神はヴァルキュリアをヴァルハラから、神性を薄めるためにわざわざ名前を与えた、それが神名だ」
神名……! そんなものがあるのか初めて聞いたぞ……!
「だが、それをヴァルキュリアは隠す、それは、知られてしまえば、ヴァルキュリアの真実の能力を明かしてしまうことになる。だから、ヴァルキュリアは仮名を使う、私の“メリッサ”というのは本当の名ではない、私が仮につけた名だ。
だがヴァルキュリアはそれも知られることすら嫌う、名が知れたヴァルキュリアは、その神階を周知されているものがいるからだ。エイミアほどになれば知られようが知られまいが、関係なく圧倒的な能力で押しつぶすことができる力を持っている。
しかし、私たち凡百のヴァルキュリアは違う、ヴァルキュリア大戦で能力を明らかにされたものも多く、また神階によって対策を練られる可能性が高い。よって仮名すら普通は伏せる」
そんな事情が……。最初会った時、彼女のことを皆の前ではヴァルキュリアと呼べって言ったのはそういうことか。
「そして私は今お前に真実の名を明かす、私の本当の名は“マリア”だ」
「マリア……!」
「しっ、静かにしろ、誰に聞かれるかわかったものではないし、これは神名で、ばれたら神ならばその能力の根源を知ることをできるんだ、決して私の神名を口に出すな、後、いつも通りメリッサと呼べ、他人が見ているときはヴァルキュリアと呼べ、これは絶対だ、契約だと思え、わかったな?」
僕はこくりと頷いた、そして彼女は彼女の本当の自分をさらけ出す。
「私の能力の根源は“虚子”だ。前にヴァルハラのことを話したことがあるな、この世界の大元の裏の姿、それを自在に扱い、この世に顕在化させる能力だ。お前がイメージした武器を作れるのはその副産物だ。
私の本来の能力の使い方はその虚子同士を激しく不規則運動をさせ、世界の実子を結び付け、どんどん飲み込ませ暴走させる能力だ。だが、この能力は今まで一度も使ったことはない。
それは何故か、ヴァルキュリアが真の能力を使った時、そのヴァルキュリアは内臓を破壊され、体中の骨を砕かれたような激しい激痛に合い、その瞬間は戦闘能力を失う、これは最終手段なんだ、お前ならわかるな」
なるほど、能力を使ってしまえば根源を知られて、この先の戦闘すら不利になる上に、その場では動けなくなる、これは彼女の言う通り切り札。使わないほうが良い、核兵器と一緒だ。彼女の話はまだ続く。
「私が直接経験した、ヴァルキュリアの真の能力は一つだけ、エイミアがヴァルキュリア大戦で追い詰められた時だ。彼女は能力を発動させるために必要な神言呪を唱えて、ヴァルハラに存在したヴァルキュリアの半分を消滅させた、神階第一階層の真の能力はそれほどの力がある。
私の力はそれほどではないが使ってしまえばエイミアですら葬れる自信がある」
そこまでの力が彼女に……。まだ彼女の話は終わっていないようだ。これは重要な話だ、心に刻む必要がある。
「エイミアの能力の根源は陽子の暴走だ、陽子たちを激しく運動させ電子を巻き込みながら世界を破壊する力で、端的に陽子崩壊といってもいい。
陽子反応を起こし核融合でエネルギーを放出しつつ、世界に存在する陽子を連鎖反応させて巨大なエネルギーを放出させた結果、陽子崩壊まで至らす力を持つ。お前には核兵器の一種といえば分かりやすいだろう。むしろエイミアのほうが一億倍、質が悪いが。
アウティスが具現化させる能力を授かっているのは、おそらくあらゆる陽子を自在に操り、魔法のように能力そのものをそっくりそのまま具現化しているだけの副産物だ。
彼女と私の能力とは根本的に違う。彼女はこの世に存在する物質を自在に操れるほどの能力を持っている、エイミアには気を付けろ、彼女が本気を出せばこの世界など簡単に消滅させる力を持っている、問題なのはアウティスではない、エイミアだ。
お前たちエインヘリャルにとってヴァルキュリアは無抵抗なものと思っているだろうが、世界そのものが崩壊してしまえばその因果すらも超え、エインヘリャルすら葬れる。
その点私とエイミアの能力は似ている。発動させてしまえば、因果律を超える結果を生み出すのだから」
「つまり君がその能力を使えばエインヘリャルすら消滅させられると」
「ああそうだ、私は戦闘不能になるが、最終手段としてお前が知っておく必要がある事柄だ。今までお前に隠してきたのは、その資格があるかどうかわからないからだ。
どういう意味かというと、ラグナロクのルールで、神名でパートナーのエインヘリャルに呼ばれたら自動的に発動させられる因果律が組み込まれている。それ以外の発動は許されていない。
知られてしまえばヴァルキュリアを犠牲にして勝利に導こうと言う浅はかな連中も出てくるだろう、だが、ヴァルキュリアの神名を知られることは勝ったとしても、その後の戦いで結局不利になる。
だから、私の神名を呼ぶときは、このラグナロクを終わらせることができると確信したときに使え。私もボロボロになってまで、最終的に負けましたじゃ報われんからな。
ほかのヴァルキュリアも同様だろうから死んでも神名を明かさない。戦士として屈辱だからな、わかったな?」
「ああ、わかった約束するよ」
「あと、発動する時のキーワードはこれだ、私の神名を呼んで、その能力を示せ、だ。それだけでいい。くれぐれも気を付けろ。お前を本当の意味で信頼したから明かす真実だ、いいな」
「ああわかったよ、君が傷つくなんて耐えられないから、必要はないだろうけど」
「……頼もしいな。一杯しゃべったら疲れた。今日はもう眠らせてくれ、ふあーあ」
そう言って彼女は僕の腕の中で眠った。これほど彼女との確かな絆を感じたことは今までなかった。彼女の本当の名前はマリア……。創造神以外、僕だけが知っている彼女の真の名前。その事が何よりもうれしかったんだ。
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