ヴァルキュリア・サーガ~The End of All Stories~

琉奈川さとし

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ウェディングロード

第百四十六話 未来へ

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 目を覚ました時にはもう朝を十分にこえていた頃合いだろう。日が眩しい、だがこのままメリッサと抱き合った夢見心地のままで僕はいたかった。余りにも安らかで気持ちのいい時の流れがもったいなくて、ずっとこのまま永遠でいられたらいいのにと思った。

 ──だが、現実はすぐに僕を迎えにきた。

「パパー、ママ―!」

 その声でメリッサも目を覚まし、あたふたとし始めたのを間髪入れずにナオコとエイミアが部屋にノックもせずに入ってきた。

「こら! ナオコちゃん、二人をそっとしておきなさいって言ってるでしょ、お姉さん怒るよ!」

「だって、パパとママ、全然下に降りてこないし……あっ、パパ、ママ!」

 その時僕はびっくりして指をさされたことに戸惑った。メリッサも同様にまごついてしまった。その時だった、何故だかナオコは不思議そうにこちらを見つめていた。

「あれ……パパとママ、何で裸なの……?」
「きゃあ⁉」

 と言われて今の状態に初めて気づいたようで、メリッサは布団の中にもぐりこんだ。僕はただ苦笑いをするしかなかった。

「こら、ナオコ、だめでしょ、お姉さんが遊んであげるから、そっとしておきなさいって、もう……」
「はーい」

 エイミアはそう叱って、ナオコを部屋の外に出した、そのあと彼女が一言。

「ごゆっくり~」

 静かに部屋から出ていき、彼女がパタンとドアを閉めたので僕とメリッサは顔を合わせて、日のもとに明らかになった二人の姿に、恥ずかしくなり、お互いに照れ笑いをし始めた。

 僕たちは服を整えて、下の階へ降りていく。一回の食堂でブライアンとアデルが酒を飲んでいた。ブライアンが気さくに僕に声をかけてくる。

「おはようございます、佑月さん」
「おはよう、朝から酒かい?」
「もう昨日のお祭り騒ぎで何もやる気起きませんよ」

 エールを飲み干すブライアンにアデルも「同じくなー」と手を上げる。それに対して僕は最初に「今日じゃなくて良いんだけれど」と言葉の頭に付けてから、尋ねた。

「君たち銃を撃ってみないか?」
「銃って佑月さんがいつも使っている……やつですか……?」

 ブライアンが即座に食らいつく。僕はメリッサに目配せをして「ちょっと能力使うよ」と言って、例の掛け合いをして、銃を創り出す。ブライアンとアデルは「おー」と声を上げた。

「これはAKMといってね、構造が単純化されており、使いやすくまた耐久性に優れ……」

 僕たちは男同士の話で花を咲かせる。メリッサが仲間に入りたそうにしながらも、ここは女としてぐっとこらえていると感じたため、15分ぐらいで話しを切り上げた。これは今後に役立つ話しだ、じっくりと話し合わなければならない。

 客間にエイミアとナオコ、あとサラとミーナとシェリーがいた。ナオコが「パパ! ママ!」と言って突っこんできて僕はこの子を抱き上げる。

「いい子にしてたかい?」

 ナオコはうんと頷く。エイミアが立ち上がった。

「ナオコちゃんは手のかからない子よ、気さくだし心が広いし素直だし、私にはミーナちゃんが問題児ね」

「そうだな、あれこれ興味持って館のモノいじくって、壊したりして家人の奴に嫌味言われちまったよ」

 シェリーの言葉にミーナが「面目ない」と舌を出して右手拳を頭に当てた。きっと反省のポーズなんだろう、ちょっと可愛かったので僕は笑ってしまって、シェリーもくすっとわらった。

 あまり、シェリーが笑う姿を見たことがないが、失礼だが気張っていてもやっぱり女性なのかと納得できるくらい柔らかで優しげだった。また、エイミアはパーティーを影で仕切っているから、僕に報告をし始めた。

「他のみんなはね、ユリアはお眠り、ダイアナとレイラちゃんは買い物」
「せっかくなんでショッピングしたいとさ、ダイアナの奴、あれで金遣い粗いからな、まあレイラが付いてれば……安心できないか」

「シェリー、君はいかなかったのかい?」

 僕の言葉に彼女はため息をついた。

「だって、私にドレス着せようとするんだよ、ダイアナは。勘弁してくれよ、私に似合うわけねえだろってね、と言うことで女同士の付き合いはレイラに押し付けたのさ」
「別に似合わないとは僕は思わないが……なあ、メリッサ?」

「私に振るか⁉ う~ん、肌の色の関係で色は選ぶだろうけどスタイルいいし、まあ、似合うんじゃないか?」

「うえ~勘弁してくれ~、アンタらまで。私には私のイメージがあるんだよ、ダイアナにはそのこと言うなよ、ガチで泣いて着るようにねだってくるから」

 僕とメリッサは苦笑した。シェリーはシェリーで悩みがあるんだな。

「それにしてもみんなバラバラだね、まあ良いか。今後について一回話ししたいんで、落ち着いたらみんなに話しをしてみるよ」

「お姉さんは、応援しているぞ、リーダー、メリッサちゃん」
「ありがとう」

 エイミアの言葉に僕とメリッサは同時に答えた。そして僕はナオコに声をかけた。

「ナオコ、久しぶりにパパとママと一緒に散歩しようか」

 その誘いにナオコはみるみる太陽のように顔を輝かせていく。

「うん!」

 と大きく頷いた、いい子だな本当に。

「いろいろあったな」
「そうだね」

 僕とナオコとメリッサと手をつなぎ、コルドの町を歩いている。田舎だといってもエイミアが宿場町だと言っていたため、僕みたいな外人が歩いていても変に見られない。のどかで良い風景だ、山が綺麗だし、森も豊かで空気が美味しい。

 ふと昔を思い出した。

「そういえば、最初メリッサは僕にツンツンしていたね」
「そうか? 私はいつも通り接していたつもりだが」
「変わったよ。メリッサも僕も」

「……そうか……それは愛の仕業だな」

 僕がメリッサから思わず口に出た言葉ににやついていると、メリッサは照れてしまったようだ。

「にやつくな、バカ者」
「にやついてない」
「にやついてる!」

「あ~あ、ホント、パパとママは熱々だね、ごちそう、さまでした!」

 ナオコの冷やかしに僕とメリッサは顔を赤らめる。僕は青く広がる空を見上げた。これから先きっと経験したことのない戦いが始まる。気を引き締めて僕の家族に誓った。

「メリッサ、ナオコ。僕は君たちを守るよ。何があっても君たちだけは僕が守り続ける」

 その言葉が未来であんな形で実現するとは、今の僕には想像すらつかなかった。でもこの時は本気だったんだ。……きっと僕たちは幸せでいられると。

「ありがとう佑月。愛しているぞ」
「僕も愛しているよ、メリッサ」
「私もパパとママ大好き!」

 三人親子で手をつないで町を歩く。人生苦しいことも失敗することもいくらでもある。でも、信じ続ければきっと未来は開かれるさ、そう信じて僕たちは歩き続ける。

 でも、こういう普通な幸せを守るのって本当に大変だなっと感じながら、僕はメリッサと肩を寄せ合う。そして僕とメリッサとナオコの幸せな一ページがまた更新されるのであった――。
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