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東洋経済 サウジアラビアの王子一斉逮捕 ④執筆:David D. Kirkpatrick、翻訳:東方雅美

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アナリストらによると、リストに含まれているのは、私利をむさぼっているとうわさされている人々や、王国内で力を持っている対抗勢力のようだという。そのほかには、アブドラ国王の時代に王宮を動かしていた黒幕的な人物や、中東で最大手クラスの民間メディア企業のオーナーらが含まれている。

しかし、リストの中にはムハンマド皇太子の側近、アーデル・ファキーフ経済計画相の名前もあった。彼は、野心的な経済改革プログラムを中心となって推進している人物だと考えられており、アナリストらは彼の逮捕の理由は何なのかといぶかっている。

また、アルワリード王子の逮捕の理由も明らかでない。同王子は、ツイッターやニューズコーポレーション、アップルやフォーシーズンズなど、西側の著名企業に投資を行ってきたことで有名だ。


中東のリーダーは時に残酷な粛清を行う

アルワリード王子は、海外からの投資を呼び込もうという皇太子の計画を積極的に支援してもいた。ただし、王家の年長者34人で構成される「忠誠委員会」が、ムハンマドの皇太子への昇格を承認した際、アルワリードの一族であるタラル家の人々が3人反対に回ったという。

ロンドンの王立防衛安全保障研究所でサウジアラビアについて研究するマイケル・スティーブンスは、中東のリーダーは時に残酷な粛清を行って、ライバルたちを抑えてきたと話す。ムハンマド皇太子が行ったことは、スティーブンスによると「自分の権力が脅かされないようにする方法としては、より穏やかなもの」だった。

今回の逮捕が、専制政治になだれ込んでいく兆候なのか、あるいは「ムハンマドは壁を認識し、それを何とか乗り越えたのだと、後になって語られるのか」。それは時間が経てばわかると、スティーブンスは言う。

(執筆:David D. Kirkpatrick、翻訳:東方雅美)

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