10 / 17
第9話・悲しげな横顔の理由③
しおりを挟む
「ん。よし、陽斗登っていいぞ。一応下で支えてはおくから」
「ああ。サンキュ。じゃあ、すぐに取って来るので待っててくださいね」
「うん。気を付けてね。赤城君」
斎藤先輩に見守られながら俺は梯子を軽々と登っていく。
律樹の言葉じゃないが、身体能力には自信がある。
こう言うのは得意と言えたので、あっという間にハンカチまで少し手を伸ばせば届く位置までの馬力ると、手を伸ばして、藤色のハンカチをしっかりと掴み取り、そのまままた梯子を下りて行く。
「よっと、ただいま」
「ご苦労様」
「はい、先輩。これで良いんですよね?」
「うん。有り難う、赤城君」
手にしたハンカチを先輩の方へと差し出せば、先輩は大事そうに受け取って頷いてくれる。
「本当に有り難う。とても大事な物だったから、失くしたらどうしようって思って。本当によかった…」
そう言って、先輩は綺麗に折りたたんだハンカチを胸元に抱き込むように持ちそっと目を閉じる。
先輩の日―その姿に余程大事な人から貰ったものなのだろうと思い自然に問いかけていた。
「大事な人から貰ったものなんですか?」
「大事な人…。うん、そうだな。とても大事な友人……だった人に貰ったものだよ」
問いかけにそう答えると、先輩はフェンスの方へと顔を向けて空を見上げる。
その横顔が余りにも寂し気で。
昨日、飛び降りようとしていた先輩を思い出してしまい、なんだか黙っていられずに俺は言葉を続けていた。
「友人だった人…。あの、何かあったんですか?その友人と。俺で良ければ話聞きますよ?」
「赤城君……。うん、そうだね。少しだけ、聞いて貰おうかな」
「はい。勿論話せる範囲でいいので、話した方が楽になる事もあるし。何か解決策も見つかるかもしれませんから」
「うん。そうだね。…そうだといいな」
「それなら陽斗、折角だし生徒会室に案内したらどうだ?ここでは他に誰か来る可能性もあるし、話しづらいだろう」
「あ、そうだな。流石、律。よく気が利くな」
「お前が気が利かな過ぎなんだ。全く。帰りはちゃんと鍵をかけて帰ってこいよ?」
「え?」
律樹の言葉に俺は不思議に思って首を傾げる。
当然律樹も一緒に先輩の相談相手に乗ってくれるものだと思っていたから。
「鍵かけるのは良いけど、律。お前も一緒に先輩の話を聞くだろ?」
「は?……いや、俺は先に帰るつもりだったが…」
俺の言葉に何故か律樹は困惑したように瞳を揺らして告げて来た。
「え?何でだよ。お前も一緒にいればいいだろ?」
「いや、だが俺がいては邪魔だろう?」
「邪魔?何でだよ?」
「…何でって……先輩も大勢には聞かれたくはないだろうし」
「ああ、僕の事なら気にしないで。別に誰かに聞かれたくない話でもないから」
「ほら、先輩もこういってくれてるし、律も一緒にいればいいだろ。お前の方が相談に乗るのも上手いしな」
斎藤先輩からの言葉を聞いて当然のように告げると、律樹はやはり困惑した様子で俺達から視線を背けて何か小さく呟いたような気がした。
「……何故、お前はそうやっていつも……」
零された言葉は余りにも小さくて俺達の耳には届く事はなかったのだけれど、何かを呟いた時の一瞬浮かべた表情がとても悲し気で、少しだけ胸が痛んだ気がしてかける言葉を失ってしまう。
「律…?」
「……はぁ、分かった。そこまで言うなら俺も同席しよう。よく考えたら、お前に任せていたら先輩の悩みが余計に深くなってしまう可能性もあるからな」
それでも何とか名前を呼んだ時には、いつもの涼しげな表情に戻っていて返事を返してきた為、結局問いかける言葉を放つ事は出来なかった。
だから、俺も代わりにいつも通り、突っかかっていくように言葉を放つ。
「失敬な!俺だって格好いい解決策の一つや二つ出せるからな!」
「悩みの相談において、必要なのは有効な解決策であって格好良さは必要ないんだ。馬鹿」
「まだ馬鹿って言ったな!そんな馬鹿馬鹿言われて本当に馬鹿になったらどうしてくれる!?」
「もう既になっているから問題ないな」
「ぐぬぬぬぬぬっ!」
なんて気が付けばいつも通りの言い合いになってしまっているのを見守っていた先輩がくすくすとおかしそうに笑みを零す。
「本当に仲が良いんだね。二人共。おしどり夫婦の痴話喧嘩を見ているみたいだよ」
「「ただの幼馴染ですから!」」
楽しげに零された先輩の言葉に、俺と律樹の反論する声が綺麗にハモって屋上に響き渡ったのだった。
「ああ。サンキュ。じゃあ、すぐに取って来るので待っててくださいね」
「うん。気を付けてね。赤城君」
斎藤先輩に見守られながら俺は梯子を軽々と登っていく。
律樹の言葉じゃないが、身体能力には自信がある。
こう言うのは得意と言えたので、あっという間にハンカチまで少し手を伸ばせば届く位置までの馬力ると、手を伸ばして、藤色のハンカチをしっかりと掴み取り、そのまままた梯子を下りて行く。
「よっと、ただいま」
「ご苦労様」
「はい、先輩。これで良いんですよね?」
「うん。有り難う、赤城君」
手にしたハンカチを先輩の方へと差し出せば、先輩は大事そうに受け取って頷いてくれる。
「本当に有り難う。とても大事な物だったから、失くしたらどうしようって思って。本当によかった…」
そう言って、先輩は綺麗に折りたたんだハンカチを胸元に抱き込むように持ちそっと目を閉じる。
先輩の日―その姿に余程大事な人から貰ったものなのだろうと思い自然に問いかけていた。
「大事な人から貰ったものなんですか?」
「大事な人…。うん、そうだな。とても大事な友人……だった人に貰ったものだよ」
問いかけにそう答えると、先輩はフェンスの方へと顔を向けて空を見上げる。
その横顔が余りにも寂し気で。
昨日、飛び降りようとしていた先輩を思い出してしまい、なんだか黙っていられずに俺は言葉を続けていた。
「友人だった人…。あの、何かあったんですか?その友人と。俺で良ければ話聞きますよ?」
「赤城君……。うん、そうだね。少しだけ、聞いて貰おうかな」
「はい。勿論話せる範囲でいいので、話した方が楽になる事もあるし。何か解決策も見つかるかもしれませんから」
「うん。そうだね。…そうだといいな」
「それなら陽斗、折角だし生徒会室に案内したらどうだ?ここでは他に誰か来る可能性もあるし、話しづらいだろう」
「あ、そうだな。流石、律。よく気が利くな」
「お前が気が利かな過ぎなんだ。全く。帰りはちゃんと鍵をかけて帰ってこいよ?」
「え?」
律樹の言葉に俺は不思議に思って首を傾げる。
当然律樹も一緒に先輩の相談相手に乗ってくれるものだと思っていたから。
「鍵かけるのは良いけど、律。お前も一緒に先輩の話を聞くだろ?」
「は?……いや、俺は先に帰るつもりだったが…」
俺の言葉に何故か律樹は困惑したように瞳を揺らして告げて来た。
「え?何でだよ。お前も一緒にいればいいだろ?」
「いや、だが俺がいては邪魔だろう?」
「邪魔?何でだよ?」
「…何でって……先輩も大勢には聞かれたくはないだろうし」
「ああ、僕の事なら気にしないで。別に誰かに聞かれたくない話でもないから」
「ほら、先輩もこういってくれてるし、律も一緒にいればいいだろ。お前の方が相談に乗るのも上手いしな」
斎藤先輩からの言葉を聞いて当然のように告げると、律樹はやはり困惑した様子で俺達から視線を背けて何か小さく呟いたような気がした。
「……何故、お前はそうやっていつも……」
零された言葉は余りにも小さくて俺達の耳には届く事はなかったのだけれど、何かを呟いた時の一瞬浮かべた表情がとても悲し気で、少しだけ胸が痛んだ気がしてかける言葉を失ってしまう。
「律…?」
「……はぁ、分かった。そこまで言うなら俺も同席しよう。よく考えたら、お前に任せていたら先輩の悩みが余計に深くなってしまう可能性もあるからな」
それでも何とか名前を呼んだ時には、いつもの涼しげな表情に戻っていて返事を返してきた為、結局問いかける言葉を放つ事は出来なかった。
だから、俺も代わりにいつも通り、突っかかっていくように言葉を放つ。
「失敬な!俺だって格好いい解決策の一つや二つ出せるからな!」
「悩みの相談において、必要なのは有効な解決策であって格好良さは必要ないんだ。馬鹿」
「まだ馬鹿って言ったな!そんな馬鹿馬鹿言われて本当に馬鹿になったらどうしてくれる!?」
「もう既になっているから問題ないな」
「ぐぬぬぬぬぬっ!」
なんて気が付けばいつも通りの言い合いになってしまっているのを見守っていた先輩がくすくすとおかしそうに笑みを零す。
「本当に仲が良いんだね。二人共。おしどり夫婦の痴話喧嘩を見ているみたいだよ」
「「ただの幼馴染ですから!」」
楽しげに零された先輩の言葉に、俺と律樹の反論する声が綺麗にハモって屋上に響き渡ったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢と呼ばれた侯爵家三男は、隣国皇子に愛される
木月月
BL
貴族学園に通う主人公、シリル。ある日、ローズピンクな髪が特徴的な令嬢にいきなりぶつかられ「悪役令嬢」と指を指されたが、シリルはれっきとした男。令嬢ではないため無視していたら、学園のエントランスの踊り場の階段から突き落とされる。骨折や打撲を覚悟してたシリルを抱き抱え助けたのは、隣国からの留学生で同じクラスに居る第2皇子殿下、ルシアン。シリルの家の侯爵家にホームステイしている友人でもある。シリルを突き落とした令嬢は「その人、悪役令嬢です!離れて殿下!」と叫び、ルシアンはシリルを「護るべきものだから、守った」といい始めーー
※この話は小説家になろうにも掲載しています。
不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)
【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
AI比較企画作品
愛だの恋だの馬鹿馬鹿しい!
蘇鉄
BL
「俺は誰とも関わりたくないんだけどなあ、おかしいなあ?」
『回答。ユーザー様の行動が微妙に裏目に出ています。シミュレーション通りにならず当システムは困惑しております( ゚Д゚)』
平和な学生生活を手に入れるために生活サポートAIシュレディンガーと共に色々と先回りして行動していたらいつの間にか風紀委員やら生徒会やらに追い回される羽目になっていた物部戯藍。
街を牛耳る二大不良チームも加わる中、執着される理由がわからず困惑しつつも彼は平穏な生活の為に逃げ回る。
彼は愛も恋も信じない。それはとても不確かなものだから。バカバカしいまやかしだと決めつけて。
※ 不定期更新です
聞いてた話と何か違う!
きのこのこのこ
BL
春、新しい出会いに胸が高鳴る中、千紘はすべてを思い出した。俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコな書記、庶務は双子の愉快な生徒会メンバーと送るドキドキな日常――前世で大人気だったBLゲームを。そしてそのゲームの舞台こそ、千紘が今日入学した名門鷹耀学院であった。
生徒会メンバーは変態ばかり!?ゲームには登場しない人気グループ!?
聞いてた話と何か違うんですけど!
※主人公総受けで過激な描写もありますが、固定カプで着地します。
他のサイトにも投稿しています。
婚約破棄を傍観していた令息は、部外者なのにキーパーソンでした
Cleyera
BL
貴族学院の交流の場である大広間で、一人の女子生徒を囲む四人の男子生徒たち
その中に第一王子が含まれていることが周囲を不安にさせ、王子の婚約者である令嬢は「その娼婦を側に置くことをおやめ下さい!」と訴える……ところを見ていた傍観者の話
:注意:
作者は素人です
傍観者視点の話
人(?)×人
安心安全の全年齢!だよ(´∀`*)
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる