LARGO:ReBOOT~追放先の異常事態が、世界の根幹を揺るがす~

ターキン

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―第1章:リベルタス騒乱―

第4話:神聖冒涜者、若き芽を蹂躙す  

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 ――訓練場。
 生温い昼の潮風が吹き抜ける。空気がぴんと張り詰め、砂の香りが立つ。
 三ツ星《トライスタ》の三人はそれぞれ距離を取って、ラルゴを睨みつけている。
 
 黒髪の男――ラルゴ。
 対するは三つの若き影。
 銀槍を携えた騎士、シャーヴィス。
 赤い魔力を纏う魔法使い、アニー。
 そして、まるで空気のように存在感の無い、ウィル。

「さて、お坊ちゃん達。まずは軽く身体を動かそうか」
「手加減は無用だ、神聖冒涜者殿!」
「おう、言ったな。じゃあ泣くなよ」
 
 槍を構えるシャーヴィス。
 アニーは杖の先に赤い光を灯し、ウィルは無言で弓を引いた。
 三人同時に動く。

 だが遅い。
 一歩踏み込んで、風を裂く音。
 ラルゴの指先がシャーヴィスの槍を弾き、同時にアニーの火球を横へ逸らす。
 ウィルの矢だけは正確だった。矢羽がラルゴの頬をかすめ、背後の杭に突き立つ。

「ほぉ……やるじゃねえか」
「当たらなきゃ意味ないでしょう」
「そうだな。だが“当てるために動く”ことはできてる。お前だけはな」

 ウィルの目が一瞬だけ見開かれた。
 その隙に、ラルゴは足元の砂を蹴り上げ、三人の視界を奪う。

 次の瞬間、三人は地面に転がっていた。
 ほんの三秒の出来事。

「これが“現実”だ。お前らの動きは綺麗すぎる。戦場は舞台じゃねえ」
 
 沈黙のあと、アニーが歯を食いしばって立ち上がる。
 
「……もう一度。次は負けない!」
 
 その目に宿るのは、初めて見る“闘志”の光。

 悪くない。
 口元が自然と緩む。
 この瞬間を、俺は待っていたのかもしれない。

「くっ……まだまだァッ!」
 
 シャーヴィスの銀槍が風を裂いた。
 土煙を上げる踏み込み――その一突きは鋭い。だが。

「……ふっ」
 
 ラルゴはわずかに身を傾けただけで槍先を避けた。

「なっ……!?」
「ちょっと眠いかな」

 怒りに歯を食いしばるシャーヴィス。
 その後方で、アニーとウィルが同時に動いた。

 ウィルの弓がうなり、矢が三本――瞬時に放たれる。
 ラルゴは後方へ一歩。矢は風を切るだけで空を裂いた。

「っ……本気でいくわよ!」
 
 アニーが杖を突き出し、赤い魔力が迸る。
 それは、魔法使いにあるまじき捨て身の一撃だった。

「スパーク……・フレアッ!」

 轟音とともに爆ぜる火球。
 爆風が砂を巻き上げ、熱が訓練場を包み込む。

 ――だが、煙の中から聞こえてきたのは欠伸だった。

「ふぁ~……まあ、悪くないな」

「なっ、無傷!?」
 
 アニーの声が震える。

 その瞬間、ウィルが反射的に矢を連射――。
 だがすべての矢が、空中で弾かれた。

「……石?」
 
 放たれた矢が空中で弾けた。
 ――ラルゴの指先には、小石が一つ。
 それだけで十分だった。

「いい反射神経だ。けど、今度はこっちの番だな」

 一呼吸の間に、視界が揺れた。
 ウィルとシャーヴィスが何かに打たれたように吹き飛び、砂の上を転がる。

 ラルゴが静かに立つ――その姿は、動いたようには見えなかった。

「……っ! まだ終わってない!」
 
 アニーが歯を食いしばり、再び杖を構える。

「よせアニー!これ以上は身体がもたない!」
 
 ウィルが制止するが、アニーは首を振った。

「うるさいうるさいうるさい! 女だからって、手加減されてたまるもんか!」

「いい気概だ。……だが」

 ラルゴは踏み込み、アニーの目前まで詰めた。
 杖を掴み取るようにして、その魔力の流れを止め――。

「力を振るう前に、制御を覚えろ」

 ラルゴの掌から微かな赤光が走る。
 その瞬間、アニーの杖先に灯った魔力が“消えた”。

 まるで火を吹き消したように。

「……え?」
 
 アニーは力が抜けたように、その場に崩れた。

 ラルゴは静かに息を吐き、三人を見渡す。

「悪くねぇ。三人とも“勇気”はある。ただ――技術も経験も、圧倒的に足りねぇ」

 そう言い残して、ラルゴは背を向けた。

「おい、あれ見たか!」「あの男……化け物だ……」
 
 周囲の冒険者たちがざわつく。
 だがそのざわめきは、称賛ではなかった。

「何なのあの動き……化け物よ!」
「それ見た? あの目、まるで悪魔だわ!」

 投げられる言葉が胸を刺す。
 ラルゴはそれを無言で受け流し、空を仰いだ。

「……はぁ勝っても負けてもこれかよ、虚しいよ」

 そう呟くと、彼は倒れた三人を丁寧に並べ、訓練場を去っていった。

 哀愁漂う影を、潮風が慰めるように吹き抜けていく。
 その背中を見送る者は、誰もいない。
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