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組織(ハウス)入団編

ー 7 ー 二次試験②

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-   コミュニティ・エリア  -



ざわざわ・・・ざわざわ・・・

”はいはい!安いよ安いよ!らっしゃい!”
”ほれ奥さん、これおまけ。ラッキーだねえ!もってけドロボー!”
”ぼうや、お面どうだい?惑星ギヌックの人気者、ヘラクレスだよ!かっこいいでしょ”
”ベテルギウス式の最新型モデルのUFOだよ!ステルス機だから地球で飛ばして遊べるよ!”
”え~ん!え~ん!こんなのやだよ~あっちのキラキラした橙色の飴ちゃんがよかったよ~””わたしもやだ~”

ざわざわ・・・ざわざわ・・・

未舗装の狭い道路の両端には、お祭りの時などによく見る、がびっしりと立ち並んでいた。
風に乗って、焼き鳥や鉄板焼きそば、甘いカステラに似た匂いが鼻腔をくすぐる。
街路灯と街路灯の間にはがぶら下がり、が掲げられ、電柱に取り付けられた拡声器のようなスピーカーからは、何やらドンチャンドンチャンとのような音楽が流れている。

人でごった返したその様子は、ひと昔前、古き良き時代の商店街の縁日のようだ。

だが、根本的に異なる点は、であることだ。

目の前を連れ立って歩く家族は、魚に手足を生やしたような外見の宇宙人。
たくさんの触手をうまく使って鉄板で調理している、タコとクラゲが合体したような宇宙人の職人。
街路樹かと思いきや、よく見ると顔も手足もある、植物タイプの宇宙人。
すぐに踏んづけられるのではないかと心配になるくらい小さい、キノコそっくりな宇宙人の集団。
その上をおしゃべりしながら飛んでいく、トンボみたいな宇宙人カップル。

宇宙人だけを見れば仰天ものなのだろうが、露店や屋台を背景としているからか、なんだがハロウィンの仮装行列とか、テーマパークの着ぐるみのようにも見える。
とにかく、初見の違和感が尋常ではなく、現実感が全然無いのだ。

クロロ「ひえ~、こりゃすげえ・・・!」

コン太「こ、ここ、ここは・・・、コスプレの皆さんじゃないですよね・・・」
他の受験者も唖然としている。前情報から想像したイメージとこの光景とのギャップを、処理しきれていない様子だ。


モーリー「ふふふ、正真正銘、これがアーリ国の宇宙人コミュニティ・エリアです。地球で最も異星間交流が盛んなエリアの一つですよ」

コン太(そ、そんなあ・・・う、嘘だろう?嘘だと言ってくれ~!スター戦争もエリイアンも・・・あの憧れはいずこへ・・・?メタリックで有機的なフォルムの建物は?ホログラムは?反重力装置は?そんなものどこにもない・・・!それどころか、時代を逆行しまくってるようなこの屋台や提灯やのぼりはなんだ?・・・しかも言葉・・・!魚星人もタコ星人も、しゃべってること分かるし!なんで言葉が通じる?うわあああ!)

コン太は予想を超えるカオスな状況に半分気を失っていた。

モーリー「ふふふ。ちょっと想像と違いましたかね。ですが、現実は小説よりも奇なり。
映画だって所詮はフィクション。原作者の憧れの具現化ですからね。現実は、まあ、こういった状況ということです。
宇宙というと果てしない感じがしますが、生命が誕生する星は、条件が似通っているものです。似通っている以上、進化の過程にもそんなに大きな変化は出ません。姿形や文明・発展の度合いは異なりますが、知的レベルに圧倒的な差はないようです。同じ理由で、言語の発展も似た進化を遂げて来たようです。つまり分かりやすく言うなら、地球は標準語圏にあり、ほとんどの星では、地球で話している言葉が通じるようです」

冗談のような内容であるが、少なくとも目の前に広がっている光景においては、モーリーの話の通りだ。


モーリー「さ、では時間がもったいないですし、早速はじめましょうか!
え・・・もうすぐ13時30分なので、16時までとしましょう!お気をつけて!」

クロロ「え!?も、もうはじまるんか!?」

コン太「ちょ、ちょっと待って!試験の説明はそれだけですか?い、一体、ここでどうやって・・・?」


モーリーのメガネがきらりと光った。
モーリー「・・・限られた時間、限られた条件、限られた情報だけでミッションを行う。組織では当たり前のことです」

クロロ&コン太「!!!」

モーリー「今回、このアーリ国かつ、コミュニティ・エリアが舞台であると特定されている。更にはすでに皆さんはコミュニティ・エリアにいるわけです。こんな好条件のミッションはないですよ」

再びエプロンから、ブルーメタリック基調の”虹色キューブ”を取り出す。

「そして、何を得るべきか、その目で確認できている。これほどまでにクリア条件が与えられたミッションは、実戦ではまずないでしょう。それとも・・・これ以上、さらに必要なものでもあるのでしょうか?」

モーリーがじろりと受験者を見渡す。皆、黙ったままだ。

クロロとコン太の額から汗が流れる・・・。モーリーの言う通りだ、やるべきことは明確になっている!

カッペリーニ兄弟(くくく。ここであのキューブを手に入れる。それだけが条件だ。つまり、手段は問わず、ということだな)(俺たちにとっちゃあ、好都合だぜ)

モーリー「それでは、みなさん!いってらっしゃい!」
モーリーがニコニコと手を振った。



- 商店街 -



ジャングルの時と同じように、商店街の道沿いにぽっかりと空間が空いていた。
目の前を宇宙人の客たちが通り過ぎていくが、ドアには誰も気にもとめない。

コン太(ふ、不自然な空間だけど、彼らにとっては珍しくないんだろうか・・・?し、しかしこんな形で夢見た宇宙と関わるとは・・・)

クロロがコン太の肩をバシっと叩いた。

コン太「痛っ!!!」

クロロ「よしっ!コン太、いこうぜ!」

コン太「い、いこうぜって・・・どうするつもりだ?」
肩をさすりながら言う。

クロロ「どうするもこうするも、さっきの虹色の物体、探すしかないだろ?その辺の宇宙人とかに聞いて回ろうぜ!」

はああ~っ、とコン太が大げさにため息をつく。

コン太「おまえってやつは、本当に行き当たりばったりだな、まったく!まずは状況を整理するんだ。
まずはあの虹色キューブ、全く素性が不明じゃないか。名前も知らないぞ。
宝石みたいだけど、本当に宝石なのか?宝石ならどこで採掘される?もしくはジュエリーショップみたいなところがあって、売ってるのか?
いやいや、もっと価値のあるものかもしれない。もしくは呪具のようなもの?宗教施設みたいなところにある?国宝のようなもの?もし、厳重な警戒体制の中で保管されているものだったとしたら、不用意に聞いて回ると絶対に怪しまれるだろう!
数もどれだけあるかわからないし、何かのパーツの一つかもしれないし、形もあれだけなのか?もともとあんな色をしているのか?加工したからあんな色になってるのか?
つまりは、わからない、そういうことだ!何もわかってないんだ。少なくとも、あれがなんのか、一旦調べて、アタリを付けてから捜索をしないと、たった3時間ちょっと。すぐにタイムオーバーになっちゃうぞ!」

クロロ「ははあ、なるほどな!確かにあれが何かはわかんねえなあ。食いもんかもしれないしな!」

コン太「おめえはどんだけ腹が減ってるんだ!おにぎりおかわりしておけ!
まあいずれにしても、まずはあれを調べよう。
当然、宇宙原産ならウェブでもヒットしない。
まずは、このエリアの情報収集所、書店や図書館のようなものでざっと調べてみるか。
あまりに価値のあるものだとすると、下手に嗅ぎ回ると動きづらくなるかもしれない。
まずは素性を明確にして、具体的な捜索プランの検討はそれからだな。
あと念のため、あの物体のスケッチをしておこう。写真を撮っておけばよかったが、仕方ない。
物体の名前がわからない以上、ビジュアルで伝えるしかない。困ったときはスケッチを使うとしよう。
よし、そうすると、まずは情報収集をしないとな。ただこの雑多な縁日のような通りじゃ、情報収集場所を探すのも一苦労か・・・どこかに地図はないかな? ざっとみたところ、かなり広そうなエリアだから、地図が書かれた看板の一つや二つはその辺にあるだろう・・・地図、地図っと・・・おいクロロ!地図を探して・・・っておい!」

クロロが口をぽかんと開けて、立ったまま寝ている!

コン太「お前は漫画か!漫画から出てきたのか!なんで今ここで寝ることができる!?」

クロロ「わ、わるいわるい!な、なんだか長そうだったからさ!」
クロロが頭をかきながらヘラヘラと答える。

コン太「人がせっかく考えてるのになめとんのか!!!」

クロロ「それよりオレ、ションベンしたいから、ちょっと便所さがしてくるわ!」

コン太「てめえ!もうバカっ!バカやろー!地図もついでに探してこい!!!ボクはさっきのキューブのスケッチを書いておくから!」
(ったく!あいつの脳みそはトコロテンかよ!全く!いやいや、冷静になれ。どういう調査をしていけば一番ゴールが近いかだ・・・ぶつぶつ)

クロロ「おーい!コン太ー!」
遠くからコン太を呼ぶ声がする。

コン太「(・・・ぶつぶつ)・・・!ん!なんだよ!」

クロロ「おーい!コン太!聞こえてるか!?」

コン太「聞こえてるよ!うるさいな、なんだよ!面白い便器でも見つかったのか!?」

クロロ「ちょっとこっちへきてみろよ!」

コン太が渋々振り向くと、クロロが「7」なのか「ワ」なのか、そんな造形の看板が掲げられた、コンビニのような店舗から顔を出して手を振っている
ににているがまさかな・・・。



- コンビニ(?) -



コン太「ったく、忙しいのに・・・」
ぶつぶつと文句を言いながら店内を覗き込む。

内装もコンビニそっくりだ。
入口を入って右側にレジのようなカウンターがある。
左側は等間隔で商品什器が並び、入り口側に雑誌(?)や日用品(?)、奥には弁当のようなものが並んでいる。
だが、いずれも文字やパッケージなど違和感ありで、中には袋がうごいめいているものや虫の鳴き声のような音が聞こえる箱なども陳列されている(一体、中には何が入っているのか?)。

クロロがいたのは、「お菓子」等が置いている通路だ。
早く早くと、手招きをしている。

クロロ「コン太、ほれみろ。

コン太(ぶっっっ!!!)
思わず目を見張って吹き出した。

クロロが指で示した先。お菓子っぽい商品の中に、紛れもない、あの虹色キューブが陳列されている!

恐る恐る手に取ってみる。
形と大きさ、そして何よりも特徴的なメタリックな虹色の表面・・・

こ、これは・・・モーリーが持っていたものと限りなく同じに見える・・・!

クロロ「これさ、普通に売ってるよな。買ってみようぜ、とりあえず!」

コン太「そ、それはそうだが・・・」

一度、表に出る。やはりどう贔屓目に見てもコンビニにみえる。それもいわゆるそっくりだ。
いや、でも・・・さすがに宇宙に店舗はないだろう!?いや、やっぱり、あのチェーンならそれもあり得る?
いやいや、そんなことはどうでもいい!

あのキューブ、見た目から宝石やアートのようなものだと思い込んでいたがそうではないのか?
確かにモーリーの話を思い出してみても、宝石だと言われたわけではない。むしろ「地球だったら、宝石扱い」という発言があった気がする・・・つまり逆を言えば、、ということだ!
となると、正体はわからないが、このコンビニのような場所で販売されていてもおかしくはない・・・?

コン太が店内に戻る。

手がかりがない中だが、いきなりそれっぽいものを見つけてしまった・・・。
これが本物かは不明だが、モーリーのところに持ち込めばすべて分かるだろう!
まだ時間があるし、間違っていたら、また探せばいい!

コン太「よし、買うぞ!」
クロロ「おし!」



- レジ -



コン太「あれ、誰もいないな・・・」
クロロ「よし、呼んでみるぞ! おーーーい!誰かいないかーーーい!!!」
店中どころか、表にも聞こえるくらいの声量だ。

コン太が思わず頭を小突く。
コン太「うるせーんだよ!」
クロロ「いてて・・・ん?」

レジの奥、バックヤードのほうからドシドシと音がする。
***「はいよ~~~!」

クロロ&コン太「げげっ!」

のしっと現れたのは、肉食恐竜みたいな顔の店員だった。
ただ、首から下は人間のようで、まるで特撮ものに登場する、ティラノサウルスモデルの悪役みたいだ。
ただ、白いTシャツにコンビニロゴの入ったエプロンを身につけており、アンマッチさが凄まじい。

店員「あれま。珍しいお客だこと。あんたら、地球人かいな?」

クロロ「そ、そうだけど・・・」
コン太(ふ、普通にしゃべってる・・・!)

店員「こらほんまに!道理で姿しとると思ったわ。地球人がこんなことに紛れ込むなんてなあ、たまに話に聞かねえこともねえが。まあ、お客はお客だで。何が御入用かいね?」

クロロ「これが欲しいんだ!」
虹色キューブを差し出した。

店員「はいよ、しっかし、渋いもの選ぶなあ。あんたら、分かっとんのかい?」
コン太「た、食べ方?た、食べ物なんですか、これ?」

恐竜の姿の店員が大げさに体をのけぞらせてた。
店員「こら、おったまげた!あんたら、何かよう知らんもんを買おうとしとんのか!まあええて。お客はお客だで。
それはな、「」さ。だけどそのままじゃ固くて食べられん。そのキラキラしたところが皮だで、皮むいて食べるようにな」

クロロ「く、果物だって???いやでも、オレの言ったとおり食べ物だったな!」
コン太「そ、そんな・・・もう訳がわかんないよ・・・」

店員「ははは。地球人にゃあ珍しいかもしれんな!ここらじゃ定番のおやつだけどな。でも皮むくのも面倒だで、子供らにはあんまし人気はないけどなあ・・・ま、それでも買うかね?」

クロロ「うん、買うよ!まずは買うしかないもんな、オレの分とコン太の分で2個ください!」

店員「オッケー、そうすると、1個5ギョランだから、10ギョランだね!まいどあり!」

クロロ「コン太、10ギョランだってよ、あるか?」
コン太「ちょ、ちょっと待て!な、なんだよギョランって・・・おまえなんで普通に”ギョランを持ってる体”で受け答えしてるんだよ・・・流石に地球のお金マーネしかないぞ・・・」

店員「ギョランは持ってないのかね?あらま、そら困ったね」
コン太「あ、あの・・・どうしてもマーネじゃ買えないのでしょうか?」

店員「マーネそのままだと無理だねえ。ただ、銀行で両替はできるけども・・・しかしね、ここじゃあマーネは全然価値がないんだわ。ほんだで、1ギョランのレート、相当なもんやと思うで」

コン太「れ、レートはどんなもんなのでしょう?」

店員「1ギョランあたり、15万マーネくらいやね!」

コン太「じゅ、じゅじゅ15万・・・!?」

クロロ「ん、まさかコン太、持ってないのか?」

コン太がクロロの頭を小突く。
コン太「当たり前だろ!いいか、1個5ギョラン、2個で10ギョランだろ。マーネに換算したら150万だぞ!軽自動車が買えるレベルじゃないか!そんな金があるか!」

クロロ「ま、まずいな、それは・・・ど、どうすれば・・・」

店員「あら・・・やっぱり手持ちがなさそうだねえ。アルバイトでもしたらどうだや?」

コン太「あ、アルバイト?しかし時間が・・・」

店員「あらま、時間もないんけ。まあ、職業案内所にいってみ。この店出て右行って、しばらくしたら公園横に大きな建物があるで、すぐわかる!日雇いの仕事もあるで、急ぎだったらそういった仕事やれば、1000ギョランでも2000ギョランでもすぐに稼げるわ!」

クロロ「ひえ~そ、そんな大金はいらないけどなあ・・・オレたちはこれが買えればいいだけだし」

コン太「い、いやクロロ!いこう、職業案内所に!あ、ありがとうございました!」
コン太(1000ギョランもすぐ稼げるだと・・・?マーネに換金したらい、1億5千万マーネ・・・これは試験やめてもいいレベルかもしれん・・・むふふふ!)

クロロとコン太は店員にお礼を言って、店を出た。

クロロ「っしゃ!んじゃ、仕事を探しに行くか!」

コン太「まさか夢のSFの世界まで来てアルバイト探しとは思わなかったが・・・リターンも大きいし、さっさと行こう!」

クロロ「リターン?」

コン太「な、なんでもないさ!ほら、行こう!」



-  その頃・・・ブカティーニ軍曹  -



パシャパシャ!パシャパシャ!

軍曹は手持ちのカメラでひたすらコミュニティ・エリアの写真を撮っていた。

軍曹「こ、これは!宇宙人も何もかも、本物じゃないか!だ、大発見だぞ、これを軍に報告したら、歴史に残る快挙だ!私の株も上がるはずだ!」

写真だけでなく、道端に落ちているゴミだとか、食べかすの類も見つけては拾ってポケットに格納する。

軍曹「写真だけだと、合成だCGだと疑われるに違いないからな。抜かりなく物品の証拠も集めておこう」

ブカティーニ軍曹は、ペンネの説明の通り、軍人というよりは兵器の扱いで重宝されてきた。
しかし、昨今はAIを積んだドローンやロボットにそのポジションを奪われつつある。
更に、爆弾をばら撒く戦闘方法は、コスパも悪いし、味方を巻き込む懸念も大きく、「ボマー外し」の風潮が軍の内部で高まっていた。
その現状に絶望し、別の居場所を探そうとして、組織の試験に臨んでいたのだ。

しかし、この試験で軍曹の考えがガラリと変わった。

軍曹「一次試験では久々の爆弾に浮かれて、証拠も何も消し去る勢いで暴れてしまった・・・私の悪い癖だ。
だが、二次試験は冷静だぞ!同じ失敗はしない!この証拠をもって、軍でのポジションを塗り替える!」


試験開始から30分あまり。記録媒体の容量いっぱいに写真を収め、ゴミなどの現物証拠も多数確保していた。
そろそろ、この場から撤収するタイミングだ。
GPSを起動させ、今いる位置の緯度経度も控えておく。
場所は確かに、アーリ国の外れ、砂漠地帯が広がるエリアに位置するようだ。

写真や物品も所詮は脇役。が、何よりも変え難い最大の証拠なのだ!
写真や物品は最終的には、インチキ、イカサマとして判断される可能性もある。
しかし、この場所においては、認めざるを得ないだろう!

軍曹「よしでは・・・軍に連絡を入れるとするか。しかしここでは人通りが多すぎる・・・少し離れてからにしよう」
軍曹は、人の流れとは反対の方向に向かって歩き出した。

軍曹「ふふふ。一体どんな反応をするかな・・・最初は信じてくれないだろう。軍でさえ、宇宙人の存在は公式に認めているとはいえ、雲を掴むような話だろうからな!わはは!証拠を見せたときでさえも、きっと半信半疑になるに違いない。そこで、私がこの場所に案内をしてやるのだ!するとどうなる?わはは!上層部のびっくりする顔が目に浮かぶ!
軍では一体何段階、一気に昇進するのだろうか!
いや待てよ、軍にとどまらないだろう。これだけの発見だぞ!政府も調査機関も世界も、全てが私に注目し、絶え間ない賞賛を受けるのだろう! そして歴史に名を刻み、過去の偉人と同列、いやそれ以上の存在として、後世に語り継がれるのだろう!!!わはは!も、もう笑いが止まらん!人生大逆転だ!わはは!!!」

気がついたら、コミュニティ・エリアの外れに来ていた。

目の前には砂漠地帯が広がり、サボテンのような植物や、背の低い岩場が点在していた。

軍曹「この辺でいいだろう・・・エリアからも随分離れ・・・て!?」

軍曹が振り返ると、視界の遥か彼方まで、広大な砂漠地帯が広がっていた。

軍曹「そ、そんな馬鹿な・・・!!!」

軍曹が急いで元来た方角へと戻る。しかし、どこまで行っても砂漠のままだ。
明らかにおかしい。歩いてきた距離よりも多く戻っているはずだが、何もないのだ。

軍曹「そ、そうだっ!GPSで座標を確認しよう!」
現在地を確認して驚愕した!
先ほど、緯度経度を控えた位置とほぼ同じところに立っていたのだ!

軍曹「な、なぜだーーーーー!」

叫び声は虚しく、砂漠の風にかき消された。

ブカティーニ軍曹、二次試験 失格。



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