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ロッドウルム編
1 日常に差し込む影
しおりを挟む〈ミチ視点〉
八月真っ昼間。
「「……」」
ほとりが動かなくなった。扇風機の前で陣取り「ア~。ワレワレハウチュウジンダ~」と一人なのに我々と零している。心配になった。可愛斗などはアイスを食う機械と化しているし。
照りつける太陽光。じりじり上昇し続ける気温。人間にはちとキツイらしく、カメラ片手に群がっていた人影たちがいなくなる。
買い物に行けるのは俺だけか。
(この調子ではスーパーの人もいないのではないか?)
エコバッグと自転車を借りてスーパーへ。
日本人は勤勉のようだ。店員さんがいる。しかも笑顔で。三十度を超えたら働かなくてもいいと思うのだが。そうはいかないのだろうか? 地球人は分からんな。
やる気のないクーラーが利いた店内で息をつく。
(冷凍食品も美味だが、気分的にはほとりの手料理が食いたいかな)
しかしこの気温のなか、火の前に立てと言うのも酷か。日本の料理はだいたい火を使うようだしな。
(俺が作るか。ほとり、喜んでくれていた)
いい思い出だ。
ほとりのことばかり考えてスーパー内をうろつく。ふと思い出した可愛斗のためにアイスもいくつか買っていこう。俺にスイカのジュースをくれたしな。
「はじめまして」
アイス売り場に向かおうとすると、初老の男性がにこやかに挨拶をしてきた。まったく見覚えがなかったが、スーパーにちょくちょくきているし、それで俺の顔を覚えた常連さんか。
日本人は挨拶が大事だと聞いた。俺も返しておこう。
「こんにちは。今日も暑いなですね」
敬語をミスったかもしれない。
それですれ違ってお終い――なはずだった。
すれ違う瞬間、男性が敵意を俺に向ける。その瞳は氷刃のようだった。
「地球外生物さん、ですね?」
「――え?」
「害虫が。この美しい星を、歩かないでいただきたい」
心に氷が滑り落ちる。
バッと振り向くと、男性は角を曲がり消えていく。
「……」
俺は、嫌な予感がした。そう、あの赤髪の時のような。いや、それ以上かもしれない。
胸騒ぎがする。
俺の知らないところで、何かが動き出しているような。飲み込めない、気持ち悪い感覚。
胸元を握りしめる。
とりあえず会計を済ませて――超ダッシュ。
外に出た男性の後頭部目掛け、飛び蹴りを放っておいた。赤髪本人でなくとも、あれの仲間なら有言実行サッカーをしてやる。
「おがっ⁉」
コンクリートの地面にバウンドしたが、一般人のように気絶しなかった。
身軽に一回転すると、着地してみせたのである。
砂埃を払い、紳士帽を被る。
「おやおや。あなたのように目立つ若者が、こんな年寄り相手に暴力を働くなど。事件になってしまいま――⁉」
分かってる。ほとりに迷惑はかけない。
腹巻が似合うよぼよぼの老人に変身する。
耳に手を添えた。
「なんか、言ったかの?」
男性はたらりと汗を流すも、不敵に唇を舐めた。
「そうでした。変身能力があるのでしたね。……いやはやしかし。見事なものです」
「君は赤髪の仲間だろ? サッカーしよう。君がボールな」
「赤髪? ……ああ、違いますよ。あのような変態蒐集家と一緒にしないでいただきたい」
「そうなのか。では? 教えてくれるか?」
周囲に人がいないからか、男性は刃物を抜いた。
「教える義理はありませんな」
――なるほど。舐めてるな。
コンクリが割れるほど踏み込むと、俺はジジイパンチをお見舞いする。
「ごふっ⁉」
三回転した男性は地面に倒れ込んだ。鍛えているようだ。明らかに一般人ではない。
……だが、人間が耐えられる衝撃は決まっている。
白目を剥いた男性の足首を掴むと引きずって行った。ちょうどお日様のおかげで野次馬もいなかったので。悠々と。
(変身能力のことも知られているとなると。また組織が絡んでいるのか?)
このまま帰ると尾行がくっついてきそうだ。ほとりの家を知られると厄介か?
動かない紳士帽子の男性に腰掛けて少し悩む。
俺をスーパーで足止めしているうちに、家に居るほとりを狙う作戦、ということも考えられるが。それは心配していない。
可愛斗がいるし。ルンバ型の生物もいるのでな。
(どうしたものか)
殴り合いは得意だが、ルンバさんのように気配を探ったり行動を予想したりするのは苦手だ。何も考えずに殴りたい。こういった頭脳戦なら人間の方が百枚は上手だろう。
(この人間から聞き出せばいいか)
円盤の中に放り込んでおけばいいな。尾行は……もういいや。考えても分からん。さっさと帰って、俺が近くで守ればいいだけだ。
よぼよぼしながら帰宅する。
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