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15 あ
しおりを挟む目を覚ますと良く晴れた空と、宇佐美さんの顔があった。
「うしゃみ、さん?」
「よう。無理に起きるなよ」
「あう……」
ズキッと頭が痛む。
周囲を確認すると、マンション近くの広場だった。サイレンの音が響き渡り、遠くで、自衛隊の人たちが倒れているのが見える。
(僕は……?)
腕の傷は簡単にだが手当てされていた。
どうやら、彼に膝枕されているようだ。がばっと跳ね起きる。驚いたのか宇佐美さんの白い毛先も跳ねた。
「おい。いきなり起き上がるなって」
「お、あ、あ、ヘドロは?」
「倒した。ボスにも連絡したし、今は救護部隊待ち。あのヘドロ雨。能力者だけ昏睡させるようでさ。命に別状はないけど放置しとくとヤバかったわ。あのまま雨雲に変化されてたら日本人の六割がぶっ倒れるとこだった」
能力者だけを……?
「そんなのが、ランク一なんですか?」
「ランク一っつってもピンキリだしなー。強さや厄介度数に幅があるんだよ。いつも俺が瞬殺してるから、ピンとこないだろうけど」
「……」
何か、心に引っかかる。
「宇佐美さんが気絶しなかったのは、最強だからですか? 流石です!」
「俺も無能力者だけど?」
拍手しようとした体勢のまま固まった。
世界から音が消えたように静まり返る。
彼に詰め寄った。
「え? ええええええ? え? 宇佐美さ、ええ⁉ む、むむむ無能力者……えええっ⁉」
嘘です。あんな、ア〇パンマンみたいな動きをしておいて。無能力者⁉
「噓ですよ‼ 騙されませんよ」
「落ち着けよ……。俺が能力者だなんて、言ったか?」
「うっ」
疑いもしなかった。身体強化系の能力者だとばかり。思い込んでいた。
「そう、なんですか?」
「うん。あ、ボスも無能力者だぞ。食堂のおばちゃんもな」
「え、う、あ」
「ま、ボスは権力という最強の武器を持ってるけどな」
不敵に笑う彼はいつも通りだった。
僕の頭にぼすっと手を乗せる。
「本当は叱り飛ばさないと駄目なんだけど……。ありがとうな。アル。怪我させてごめん。俺ああなっちまうと数分は動けなくてさ。逆に言えば数分あれば動けるようになるけど。今回はそんな余裕なかったし。なんか、お前に……だ、抱きつかれると……。すげー安心したっていうか……。発作が嘘みたいに引いたというか…………見るなっ‼」
宇佐美さんがまた可愛く真っ赤になっていたので覗き込んでいたら顔面を掴まれた。むぎゅう。
じたばたともがく。
「そんなぁー。可愛いお顔しておいて見るななんて酷いです!」
「可愛いのはお前だろ!」
「……」
「……」
宇佐美さんが、口が滑ったと言いたげに膝を抱えて背中を向けた。かわいい……。
彼の背中にぎゅっと抱きつく。
「好きです。宇佐美さん」
「……お、俺は……。おい。なんかすげーザーザーって無線の音聞こえるんだけど。応答ボタン、切ってるよな?」
「あ」
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