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VS海賊
マカロン船長
しおりを挟む大小の島々が百以上存在する群島。次は一番近い島へ、と言う前に言葉を被せてきた。
『どうやら。この海域には無いようだ』
主語は無くとも何の話かすぐにピンときた。
「……もしかしてケルツァさん情報?」
『然り』
ロッド声が雷鳴の如く低まる。レリスは笑みを消し、目を水平線へ向けた。
迷わずこちらに迫ってくる三隻の船。帆や旗には――剣で串刺しにされた龍の絵。
明らかに特定の生物に喧嘩を売っている。ロッドの機嫌が見事に傾き、不快感を示すようにグウウウゥと低く唸る。
「またか」
呆れた声が出る。頼むからロッドの機嫌を斜めにしないでくれ。
龍の卵――もしくは、龍自体を狙う一団だろう。逃げてもしつこく追いかけてくる。海に潜ってしまえばどうという事は無いが、人間とペアを組んでいる以上、ロッドは海底に逃げられない。
――そもそも気位の高い龍が人間如きに「逃げる」を選択するなど、矜持が許さない。
海龍の瞳に怒りを通り越した、殺意の光が宿る。
『沈めるぞ。レリス!』
「はいはい」
進路を変えると、一直線に船へと向かっていく。こちらの動きに気づいたのか、船も窓を開き数台の砲台を突き出させた。
ドゥン! と音が空に響き、黒い鉄球に似た球が撃ち上がる。それは綺麗な放物線を描くと真っすぐにレリス目掛けて降ってきた。
『ふん』
わずかに身体をずらして大砲の玉を避ける。空ぶった玉は海面を激しく叩き、派手な水飛沫を立てた。一発ではない。ドォン! ドォン! と立て続けに発射される。
大人の海龍なら大砲ごときで怪我などしないが、ロッドはまだウロコではなく体毛が全身を覆っている幼い龍。大砲の直撃はさけたい。かといって体毛が頼りないかと言われればそんなことはない。例え直撃してももふもふが威力を殺す。それなのにいちいち躱すのは、頭上に人間が乗っているからだ。
レリスはしっかり角に掴まり、振り落とされないように踏ん張りつつ船を睨む。龍狩り――卵だけでなく龍を狙う奴ら――と戦うのは何度目か。ロッドは幼龍のため目を付けられやすい。
虫を払うように追い払える相手ではないのだ。出来れば会いたくない連中である。
『ふんっ!』
海龍は怒りのまま船底に頭突きをかます。ロッドの角が突き刺さらないという妙な頑丈さを披露したが、波が跳ね、船は大きく振動する。間近で見れば小山の如き高さがあったが、進行が止まったタイミングでレリスは跳び上がった。
船のデッキ、その縁に着地する。
それとほぼ同時。
「よーぅ。レリス君」
「!」
待ち構えていたかのように水平に振るわれた刃が、両眼を切り裂こうと迫る。四つ足の獣のように伏せて躱すと、カウンターを叩き込んだ。
ガァン!
「……ッ」
「おほ。痛かったんじゃねぇの?」
レリスの回し蹴りは、腕を覆う金属の鎧によって塞がれていた。金属を思い切り蹴った踵に痛みが走る。一瞬顔をしかめたが、ぐるんと逆方向に回転し、足払いを放つ。相手は大きく跳んで少し距離を開けた場所に着地した。
腕の鎧を悟られないよう、先手を取ってきたのか。
レリスが短く舌打ちする。
二度と拝みたくなかった顔なじみの相手だったのだ。
端正な顔つきの若い男。牙を見せて笑う様は野性味溢れているが、無表情でいれば気品があると言ってもいい。目にも鮮やかな朱色のコートにドクロが描かれた海賊帽。顔半分を覆う眼帯をつけ、いっそ滑稽なほどに世間に流布される海賊の姿をなぞっていた。
片腕がフックであったなら完璧だったが、肩まであるゴツイ鎧を装着している。
輝く金糸の髪を背に流した男が吠えるように笑う。
「舌打ちなんかするなよぉ! レリス君。その顔でさぁ! 似合わねぇよ?」
(顔……?)
ハラリと布が落ちる。躱したと思っていたが、奴の刃はフードの上半分を両断していた。
海風に銀髪がなびき、見せびらかしたくないレリスの顔が露わになる。
レリスを取り囲む海賊共がニヤつき、金髪の男・海賊船船長マカロンは手を叩いた。
「ようこそ! 俺様の船へ! 歓迎するぜ、レリス君」
ばっと両腕を広げると、それが合図であったかのように一斉に弓矢が放たれる。見張り台やマストの上にいた者たちだ。
雨のように降る矢を、自身を取り囲む海賊の中に紛れて躱す。ドスドスドスと、矢が甲板に刺さる。矢は躱せたが、抜剣したものたちが斬りかかってきた。
「この顔の傷の恨みふぎゅっ⁉」
顔に傷のある男の顔を踏みつけ、海賊たちの頭上を飛び超える。
弓兵から片付けていく。
「おおっ――なんっ」
樽の上にいた奴はレリスに踏みつけられ、ついでに蹴飛ばされ海に落ちた。
「ぎゃっ!」
「死にやがれ!」
「この野郎!」
二人同時に斬りかかってくる。樽を一人の顔にサッカーボールのようにぶつけ、小柄なもう一人の腹に拳を叩き込んだ。
「うぎゅっ⁉」
そのままそいつを担ぐと肉盾にして弓兵が群がる屋根の上に跳び上がる。仲間は射抜けないのか、はたまた矢の無駄だと感じたのか、攻撃の手が緩む。
「とっ捕まえろ!」
もういらないと、肉盾にしていた人間をぶん投げる。
「ウロチョロすんなガキ――ぐふっ!」
「野郎!」
弓矢を捨て短剣を突きさそうとしてくる。手の甲で軌道をズラずと、顎に掌底を叩き込んだ。顎を跳ね上げられ、一人を巻き添えにして背中から倒れる。
「ぎゃあ!」
「おい。気をつけろ」
レリスは一ヵ所に留まらず、船上を絶えず走り回った。こちらは一人。しかも相手の船の上。よほどの実力差があれば別だろうが、レリスではあっという間に数で押しつぶされてしまう。
だがここは船の上。一度海に落としてしまえば、そう簡単には這い上がってこられない。
倒せないのなら船から落としてしまえばいい。レリスの腕があれば戦況はそこまで悪いものではない
――はずだった。
(おかしい……)
手ごたえがない。
初戦時はレリスのうろちょろした戦い方に翻弄されたのだろうが、これでこいつらと戦うのは三度目。二回目は嵐で全員海に投げ落とされてお開きとなったとはいえ。龍の卵を狙う者が何の対策もしていないなど不自然だった。
現に、荒事大好き船長が戦闘には加わらず、樽の上で腰掛けニヤついている。襲い掛かってくるのはその部下だけ。
やはり何かがおかしい。ここは海に飛び込んででも離脱すべきか。
本能が警鐘を鳴らす。勘は当たる方だ。勘の通りにして難を逃れたことは幾度とある。逆に勘に従わなかったらえらい目に合った。
レリスが下した決断は。
――一時撤退だ!
「はぁ!」
「ぐふっ」
鎖分銅男を投げ飛ばし、転身しようと船の縁まで走ろうとした。
だがわずかに遅かった。
瞬間。ガクンと視界が下がる。体重が十倍になったかのように身体が沈み、膝が悲鳴を上げた。そのまま叩きつけられたように倒れ込む。
「――うッ⁉」
倒れると同時、レリスを中心に甲板に複雑な陣のようなものが花開くように浮かび上がった。満開の花びらにも見えるそれは光を放ち、レリスを床に押さえつける。
「ぐっ! なんだ」
力を込めてみるも指一本動かせない。
冷や汗が流れた。
カトラス――舶刀(はくとう)ともいい、湾曲した刃を持つ片手剣――を握った船長が腰を上げる。最悪な状況だが、
まだ終わりではなかった。
「いてて……」
「野郎……。一撃が重いな。相変わらずよ」
撃沈させたはずの部下が起き上がってくる。腹を押さえたり曲がった鼻を直そうとしたり。脂汗が滲んではいるが、言ってしまえばそれだけだ。
「な」
橙の瞳を見開く。
初戦時よりは鋭い一撃を叩き込んだはずだ。船長と傷の男を除けばどいつもこいつも一撃で沈み、しばらくは目覚めなかったというのに。
会わない数ヶ月で猛特訓でもしたのか。
それに光る陣。この力は……
「レリスくぅ~ん。考え事は終わったかな?」
近づいてくるマカロンのブーツにハッとなり、渾身の力で起き上がろうと腕で上体を持ち上げたが、
「おお、すげぇな」
感心した風の船長が指を鳴らすと、陣から光の紐が蛇のようにしゅるしゅると現れる。それはレリスの手首に巻きつくと、手錠へと変化した。
「はっ⁉」
重い。せっかく持ち上げたからだが倒れてしまう。鉄の鎖がついた手枷。足元を見れば、両足首にも同じように装着されていた。
マカロンの靴先がレリスの無防備な横っ腹を蹴り飛ばす。
「あがっ」
「はっは! 見たことあるだろ? この力」
ぐりっと、靴底がレリスの頭を踏みつける。
「……ぐ」
動けなくなったレリスに、周りの部下たちがにじり寄ってくる。
レリスは吐き捨てるように言う。
「精霊か」
「ご名答~。そりゃ知ってるよな。あちこち旅してるレリス君だもん、なぁ‼」
サッカーボールのように顔を蹴り上げられた。視界がブレ、意識が飛びかける。
「……ぁ、う」
本来なら身体ごと転がっていってもおかしくない威力だが、身体は拘束されているせいで首の骨が折れそうだった。
意識を失わないよう歯を喰いしばるレリスの背中に、筋肉質な船長がどすんと尻を下ろす。屈辱だ。しかし睨みつけるので精一杯。
銀の髪が散らばる甲板に、カトラスを突き立てた。
「情けねぇことに俺たちじゃお前らに、特に海龍には敵わねぇ……。だから精霊をとっ捕まえてきたのさ」
鎧を着けていない方の手で銀の髪を掴み、レリスの顔を強引に持ち上げる。敗者の顔を部下に晒すように。
ブチブチッと、何本か千切れた音がした。
「う、ぐ」
「いい戦力強化になったぜ。なぁ? お前ら?」
なかなか情けないことを言っているのに、部下はうんうんと頷き、手を叩いて囃し立てる。
精霊が操る不思議な力――神秘。
それを無理矢理使わせ、部下や船までも守りの力で覆っているのだろう。ロッドの頭突きで穴が開かないわけだ。
人間は弱いのに。いやか弱いからこそ、他種族を押さえつけ従えさせることに特化した力を持つ。他の種族はそれを忌み嫌い悪魔のような力――魔法と呼んだ。人類全員が使えるものではないが、使える人間はそりゃもう厄介だ。
この船のどこかに捕らえられた精霊がいる。魔法の首輪で、今この瞬間も神秘を絞り尽くされている被害者が。
精霊は力を使いすぎるとしなびた野菜のように干からびる。髪は抜け落ち、眩いばかりの美貌が台無しとなった精霊の残りカスが、奴隷市場で売られているのを見かけたことがある。使い道など、サンドバッグか実験体か。ろくな最期を辿るまい。
レリスは歯を喰いしばった。
「下種が……」
「なぁに言ってんだ。俺らはワルモノだぜ? 非道こそ正道だろうが」
レリスを拘束している力も、精霊たちを縛っている力も、マカロンの魔法によるものだろう。ここまで魔法を使える人物は少ない。何故その才能を悪いことに使うのか。
マカロンは立ち上がると、レリスの首筋に刃を押し当て叫ぶ。
「――だからそこの! 俺様の船を沈めている海龍! こっち見やがれ」
『む?』
海賊船を守る役目を持っていた護衛船二隻。海賊船より一回り小柄とはいえ、武装した船があっけなく半壊していた。
この短時間で船が二隻も。
見ないようにしていた海賊たちの顔色が悪くなっていく。
そんな中で、船長は笑顔で手を振った。
「よぉ。ロッド。元気そうだな。で、こっちには見ての通り人質がいるな? 大人しく捕まっ――」
人間が何か言っていたようだが、ロッドは海に沈んでいくと、海賊船に体当たりをかました。
ドオォン‼
「おあああっ!」
「待って。俺泳げなっ」
シャレにならない衝撃に、勝ちを確信し余裕ぶっこいて縁に座っていた部下数名が吹っ飛んでいく。
船長もよろめいたが、レリスに一番に斬りかかってきた、顔に傷のある大男が背中を支える。
精霊の守りが発動し、巨体がぶつかる直前で薄い皮膜が船を覆うように広がった。船は無傷だったが、不可視の盾に亀裂が走る。
船長は舌打ちした。
「クソッ」
精霊の守りを、二発でヒビ入れやがった。
船長は『あれ? 壊れてない』と顔を出した海龍にビシッと指差した。
「お前! 人質がいるって言ってんだろが。レリス君が死んでもいいのかァアン⁉」
ロッドは首を伸ばすと、のろのろと、億劫そうにようやく甲板を覗き込んだ。
『……』
甲板には、虫の標本のように押さえつけられたレリスの姿が。
怒るでも嘆くでもなく。ため息混じりに浮かべたのは侮蔑の表情だった。
『なんと無様な。これ以上の醜態をさらす前に、いっそ死んでしまえばどうだ』
「……ロッド……ッ」
レリスの顔が引きつる。だがその口元は鮮やかに笑っていた。こういう流れになるだろうなと分かり切っていた顔だ。
甲板に「そりゃないぜ……」という空気が満ちるが、マカロンはカトラスをレリスの太ももに突き刺した。
「――あ、が、ああああっ!」
レリスの悲鳴が響く。
「そうかいそうかい。じゃあ、その台詞が強がりじゃないか試そうか。目の前でお前のレリス君を刻んでやるよぉ! そこで見てな!」
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