鳥籠のリーチェスジア

水無月

文字の大きさ
3 / 9

♡3

「貴様などに辱められたくはない!」

 無様にも声は震えていた。

「来い。素直に身を任せるなら、気持ち優しくしてやる」

 嫌に決まっている。ふるふると首を横に振る。
 だが枕を取り上げられると両腕が勝手に、左右から引っ張られたようにピンと伸びた。

「は?」
「便利な腕輪だろう? 俺の配下の、技術部の変態……天才が作ったのだ。なぁに。動けなくなるだけだ」

 力を入れるも、リーチェスジアの両腕は、はりつけにされたように動かせない。またもや体重をかけられ、シーツに押し付けられる。
 少年のような胸元に目を落とされ、急激に羞恥が沸き起こった。

「あ、ぁう。見るな! 下種が」
「きれいな乳首だ。薄いピンク色をしている。これほどきれいな乳首は見たことがないな」

 ご丁寧に感想まで述べられ、リーチェスジアは顔から火が出そうだった。

「どれ」

 太ももの上に跨ってきた皇帝が乳首を摘んだ。
 ぴりっと痛みが走り、きつく瞼を閉ざす。

「んっ」

 硬い男の指でつままれ、くりくりとこね回される。生まれた時と伴侶以外に、肌を無暗矢鱈と晒さない――妖精帝なら尚更――のが普通である。厳格で潔癖なリーチェスジアは、この事態に酷く戸惑う。

「無礼者! 気安く触るな!」

 もはや悲鳴に近い声だった。

「ひゃー。折れそうなほど細いなぁ。俺が抱いて壊れないか? 餓鬼の頃以来だなぁ、少年を抱くのは」

 叫びを無視される。おまけにリーチェスジアに体重をかけないようにしているのが腹立たしかった。

「蛮族が……」
「紫狂だ。し・きょ・う。名前で呼んでも構わないぞ? リーチェスジア殿」
「誰が――あ、あっ」

 噛みつこうとすると乳輪を指先でくすぐられる。くすぐったいような、味わったことのない形容しがたい痺れが上半身に広がっていく。

「ん、ふぅ」
「初めてか? 初めてだろうなぁ。女を知らない初々しさがある」

 徐々に硬さを帯びてくる乳首に、リーチェスジアは身を震わせる。先代や母から教えられ、身体がこうなる事は知っているが、あくまで知識だけでの話。
 尖ってきた乳首を爪先で軽く引っ掻かれ、顎をのけ反った。

「ぁあ! やめろ」

 我慢できずに声を上げたが、自分でも驚くような情けない声音だった。

「ん? もしや胸で感じるのか? ははっ。いいぞ。リーチェスジア殿。敏感な者は好きだ」

 自分では何も感じずに身体を洗っていたのに、他人に触れられるとこうも意識してしまうものなのか。指先で弄ぶように転がさえ、ぴくぴくと小刻みに跳ねてしまう。

「ううん……」
「声を我慢する必要はない。そのカナリアのような声で、たくさん歌ってくれ」

 口を吊り上げると、男はリーチェスジアの胸に吸いついた。
 こんなことをされれば、敏感なリーチェスジアはひとたまりもない。

「いやあっ……ああああ!」

 強烈な快感に、両足をバタつかせた。足は封じられていないが、紫狂が乗っかっているので自由に動かせないことに変わりはない。
 やめさせたい。頭を掴んで引き剥がしたいのに、両腕は横一文字に伸びたまま。
 せめて、声を上げてなるものかと唇を噛み締める。が、乳首を舌先でつつかれ、舐められるとぱかっと小さな口が開く。

「あ、んう!」
「さえずりのような声だな」

 舌を這わせたまま喋るので、歯が敏感なところに当たってしまう。

「あんっ」

 自分の口から出た甘い声に、信じられない気持ちで頬が紅潮する。薔薇が咲いたように。

「あ……」
「恥じらいの表情も悪くない。しかし妖精とは皆『こう』なのか?」

 熱が籠った頭では紫狂の言葉の意味が把握できなかった。普段の頭の回転の速度が明確に落ちてしまっている。

「……何が言いたい?」
「リーチェスジア殿の肌を舐めると、瑞々しい花の蜜のような味がするのだ。ほのかに甘いというか……。妖精の特徴か?」

 花を散らす無邪気な子どもの笑みを浮かべた紫狂。それは酷く邪悪なものに思え、リーチェスジアは身を竦める。

「し、知るか」
「ふぅん? と、なると、唾液や涙、精液がどうなのかも気になるところだ」

 故郷の森では聞いたことも無い卑猥な言葉の羅列に、赤かった顔が青ざめる。

「恥を知れ!」
「なんでだよ。俺はエロいこと大好きだ。それが悪いとも恥ずかしいとも思わん……。が、まあ。清廉妖精には難しい話か」
「っ」

 きつく吸いつかれ、痛みに身をこわばらせた。すぐに唇が離され、甘さと痛みが混じり合った感覚が溶け込んでいく。

「赤く色づいたな。あんたの乳首は薄くて物足りないと思ってたんだ。よしよし。じゃ、次はこっちだな」

 無事な方の乳首に目を付けられ、ゾクッと背筋を悪寒が駆け抜ける。

「い、いやだ」
「赤い花を咲かせてやるだけだ。つっても? 抵抗なんてできないだろうが」

 小馬鹿にするように笑われ、屈辱に顔を歪めた。

「諦めて身をゆだねろ。その方が楽だと思うぜ?」
「貴様……」

 大男が少年を貪っている。それは大きな虎が子ウサギを踏みつけているようにも似て、間接照明悪魔は興味津々に、見物しようと檻の隙間から顔を出そうとする。
 視線を感じたのか、紫狂皇帝は天蓋のカーテンを下ろしてしまった。

『あ、チクショウ! 隠しやがった』

 地団太を踏む悪魔の声を聞きながら、紫狂はベッド内に取り付けてある明かりを燈した。取っ手を捻ると、内部の魔法石が反応して光を発する仕掛けのようだ。眠りを妨げない淡い光だが、暗闇に包まれたベッド内を浮かび上がらせるには十分だった。
 水色の髪が紫に染まる。

「俺好みの色だ。手触りも良い」

 一房髪を掬うと、紫狂は軽く口づける。

「気安く……」
「触るなってか? 俺の物を俺がどう扱おうが自由だと思うが。まさかあんた。まだ自分の立場ってのが理解できてないのか?」

 へらへらしていた皇帝から穏やかな空気が掻き消えた。

 空気が引き締まり、妖精帝は生唾を呑む。
 紫狂はベッド横のサイドテーブルに置かれた瓶を手に取る。

「なんだそれは。香油か?」

 皇帝はヒュウと口笛を吹いた。

「梟の眼ってのはなんでも見抜くのだな。そう。特性の香油でな。滑らかにするだけでなく、身体をいやらしい気分にさせる成分も含まれているんだ」

 よく見えるように鼻先に突きつけてくる。そのままフタを開けられ、甘いにおいが鼻腔をくすぐった。不快ではないが、きついにおいだ。

「妖精にも使えるように、天然の成分だけで作られてある。安心しろ、リーチェスジア殿」
「んっ……。それを、近づけるな」

 嫌がる彼に、紫狂は目を瞬かせた。

「まさか香りで? ははーん。ではこれを直接肌に塗ってやればどうなるかな」

 恐ろしいことを言われ、腕に力を込めるが動くはずもなく。
 紫狂はフタを開けると、ピンと立った乳首の上に香油を垂らしてしまう。冷たい感触に、きゅっと眉間に力を入れた。

「あっ」
「服が着られなくなるほど、敏感な身体にしてやろう」

 ごつい指で塗り込むように乳輪に添うように円を描かれ、リーチェスジアは激しく鳴いた。

「ああああっ。そんな……あ!」

 腰が何度も浮き上がり、首を嫌々と左右に振る。

「これからお前さんに服を与えるときは、胸元に生地がない着物にしなくてはならんなぁ」
「ああっあああぁ……」

 肋骨の凸凹が感じ取れるほど執拗にこねくり回され、乳首はどんどん色づいていく。
 甘い吐息が零れ、白い喉を晒して震える。なめかましくも淫らで、男を誘う南国の花の香りが立ち込めた。

「リーチェスジア殿の体臭……汗のにおいか? どちらにしろ心地よいものだ」
「も、もう、やめ」
「そうはいかん。まだもう片方が残っている」
「ああ、あうっ」

 香油を指で掬うと、左の乳首にも塗りつけていく。
 苦しそうに息を吐き、顔を背けようとしている。リーチェスジアができるかすかな抵抗。

「顔を見せろ」
「あ……」

 顎を掴んで正面に向けさせる。
 捕食者に見つめられ、落ち着かない。

「見る、な」
「美しいものを見ないのは損だからな。しかし色っぽい顔をする」

 ぬるぬると親指の腹で撫でられ、ときに押しつぶされ、リーチェスジアはビクンと跳ねた。

「あうっ」
「キスしても良いだろうか? こちらも我慢できなくなってきてな」

 香油が付いた指で、紅でも塗るように唇をなぞられ、噛みつこうと大口を開けた。

「おっと。美しい容姿で蛇のようだな」

 しかし逆に親指を押し込まれ、口を閉じられないようにされる。

「ん、ふ」
「香油を飲み込むとより効きが早くなってしまうぞ。にしても小さい口だ。俺のが入るかどうか」
「んや……」

 親指を動かされ、口内をかき混ぜられる。くちゃくちと音が響き、リーチェスジアはまつ毛を震わせた。

「あが……めお」
「このまま口づけしても噛みつかれそうだな。抵抗する気力を削ぐとしよう」

 指が出て行きホッとしたのも束の間。紫狂皇帝は尻の位置を膝までずらした。
 胸に触れていた指が滑っていき、人差し指と中指でヘソの穴を左右にくぱぁと開く。

「何を!」
「ヘソも抜かりなく美しいな。変なにおい一つしない」

 紫狂皇帝の高い鼻が近づけられ、鼻先にヘソが触れた。

「ッ」
「ううむ。俺は多少、体臭がある方が好みなのだが。美しい者から体臭がすると興奮するだろう? リーチェスジア殿には難しい話か」
「なら失せよ」
「いやいや。美しいものを汚すのもまた一興」

 ヘソからさらに下り、皇帝の手はついに己に触れてきた。

「……」

 かわいそうなほど青ざめる異種族の帝に、紫狂皇帝はクハッと噴き出した。すぐにキッと睨みつけられる。

「何がおかしい!」
「いや、すまない。獅子の檻に放り込まれたような顔色をされてはな。嗜虐心……庇護欲が沸くというものだ」

 魔法が使えたなら、このムカつく顔に十発は叩き込んでいる。
 紫狂皇帝の親指ほどの太さの己を握り込まれ反射的に腰を引くが、ベッドの上では逃げようがない。

「さ、さわるな……」
「酷くはしない。ゆったりした気持ちでいろ」

 無茶を言われ、恐怖と悔しさが胸中で混ざり合う。
 紫狂皇帝の武骨でいかにも不器用そうな手。下手くそなら鼻で笑ってやると、半ばやけくそで強がっていたリーチェスジアは辛酸を舐める羽目になる。
 慣れ切った、巧みな指使いで動き出され、自分で触れた時以上に甘酸っぱい痺れが生じてしまう。

「あ……ん」
「気位の高さに反して、声や仕草は驚くほど可愛いな」

 可愛いなど、子どもの頃に母親に言われたきりだ。こんな男に言われても嬉しくもなんとも……いや寒気がする。

「蛮族めが。お、男の、ものなど触って、気持ち悪くはないのか」
「性別を超越した美しい容姿をしておいて何を言う。リーチェスジア殿を気持ち悪いという生物がいるなら会ってみたいわ」

 苦笑しつつも、輪にした指で己を扱き始めた。

「ふあ、あ」

 カリまで動かし、また根元に戻るという動きを繰り返される。
 リーチェスジアの心とは裏腹に、身体は悦んだように快感を湧き上がらせた。

「あ……あっ」

 己が硬くなり出していってしまう。血流が良くなったせいか、胸の突起二つが疼き始めた。

「はっ……」

 快感が溜まり、触ってほしいと強請るように乳首はピンと尖る。もちろんリーチェスジアはそんなこと微塵も思っていなかったが、香油が染み込んだ身体は言う事を聞かない。
 目ざとく紫狂皇帝に見つけられ、キュッと乳首を抓られてしまう。

「――いやあぁっ!」
「ははぁ。失礼した。俺としたことが乳首を放置していたとは。ここもたっぷり可愛がってやらんと」
「結構だ……っ! あ、手を放……んう!」

 なんとか声を発するも、紫狂は指を放さない。摘んだままにされ、ビクッビクッと腰が揺れ続けてしまう。

「や、だ。放せ」
「いい顔をする。受け止められない快感に悶えているのか。もっといじめてやりたくなる」

 根元を撫でられ、くすぐられ、乳首はやさしく引っ掻かれる。

「同時に触られると気持ちいいか?」
「あ、ふっ、あっあ」

 言葉を話せなくなり、首を振ることもできなくなる。

「感じるか? 熱くなってきている」

 尿道口と乳首を同時につままれ、大きく腰が浮いた。

「ああっ!」
「ここにも香油を垂らしてやればどうなるか。今から楽しみだな? リーチェスジア殿?」

 耳元で囁かれ、フイと顔を背けると、そのせいで上に来てしまった耳を舐め上げられた。

「甘いな。お前を抱く前には、これからは辛い酒でも呷ってからにしよう」
「も、もう……」

 敏感になった乳首をずっと転がされ、はあはあと息が上がってくる。

「香油漬けにしてやるのも面白そうだ。尻のナカにも、たっぷりと注いでやるからな。楽しみにしておけ」

 デリケートな裏筋をなぞられ、ヒクっと喉が鳴る。知らぬ間に汗が流れており、カーテンで区切られたベッドの上を、花の香りが満たす。

「さわ、るな。そんな、とこ……」
「裏筋が弱いか? ここは俺も触られると殴りそうになるからな。はっはっはっ!」

 素肌を堪能している紫狂はさぞや楽しいのだろう。快感の中に殺意が蝋燭の火のように灯り、歯を喰いしばった。
 だが乳首を吸われながら先端を指の腹で撫でられれば、その怒りも甘い痺れが上書きしてしまう。

「吸わ、なっ、うぁ……」
「確か歯が当たるのが良かったんだったか?」
感想 1

あなたにおすすめの小説

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

魔性の男

久野字
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。 最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。 そう、思っていた。

姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王

ミクリ21
BL
姫が拐われた! ……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。 しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。 誰が拐われたのかを調べる皆。 一方魔王は? 「姫じゃなくて勇者なんだが」 「え?」 姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?