鳥籠のリーチェスジア

水無月

文字の大きさ
4 / 9

♡4

 本当に歯先が触れる程度だったが、コリっと乳首を紫狂に甘噛みされ、リーチェスジアは片足を跳ね上げた。邪魔くさい男が跨っているので、数センチしか持ち上がらなかったが。

「いやぁっ!」
「濡れてきたな」

 涙をこぼす先端を親指の腹で、円を描くように擦る。だいぶ取れたとはいえ、香油が付着したままの指で、だ。
 胸と同じ――胸に比べれば弱いが――糖蜜のような甘い痺れが、先端で疼き始めた。

「ん、く」
「もっとたくさん使いたいが、初めてのリーチェスジア殿にはこのくらいの量にしておいてやろう」

 恩着せがましく言い放ち、香油の入った瓶のフタを閉じた。瓶を仕舞うと大きな手で包まれ、まんべんなく塗りつけられた。
 己を扱われるたびに、香油を吸収してしまった胸が疼いてたまらなくなる。
 痒いのではない。やさしく撫でてほしくて――

「っ」

 そこまで考えて頭を振った。
 私は何を考えて。こんな時に。

「どうした? リーチェスジア殿。乳首を気にされているようだが……?」

 分かり切ったような顔でとぼけてくる男を睨むが、そのタイミングで先端を抉るように押し込まれ、甘く鳴いてしまう。

「あうっ! 、ぁ、んあぁ」
「乳首を触ってほしいか? 妖精帝。お前が可愛くおねだりしてくるのなら、気持ち良くしてやるが?」

 色事と無縁だったリーチェスジアにとって、これは何よりもキツイ拷問であった。もはや腕輪の力で動きを封じられていなくとも、逃げ出せないだろう。膝に力が入らなくなっている。

「……ンッ」

 やわやわと己を揉まれるほど、共鳴するかのように胸が熱を帯びてしまう。触れてほしいと。触ってほしいと主張するかのように尖る。
 快楽に慣れていないリーチェスジアの心に紫狂の攻めは深く突き刺さるが、身体には達するほどの刺激ではない。これがもどかしくて、黒と灰色の中間のような色の瞳に、涙が滲んでいた。

「ああぁ……」
「おう。待っていたぞ」

 何を思ったのか、己を掴んでいない方の手でリーチェスジアの後頭部と枕の間に手を差し込むと、小さな頭を少しだけ持ち上げた。

「なにを……」

 根元をぐるりと爪先で一周され、甘ったるい声を漏らすと紫狂皇帝が瞼にキスを落としてきた。軽くちゅっと吸われる。

「やはり。涙は一層甘いな。シロップを口に含んだかのようだ」
「のむ、な」
「そうつれないことを言うな。もう一口味わいたい。悪いが泣いてくれんか?」

 そう言うと執拗に先端部分を擦り始める。

「ひゃう! あう、あう!」

 ガクンと腰が弓のように反り、男を求めるかのように、しきりに腰を前後させてしまう。

「いやらしいことだ」

 嘲笑する言葉に耳を塞ぎたくなるが、両腕は魔法の力で押さえつけられたまま。
 先端部分の刺激だけではイくこともできず、リーチェスジアはぼろぼろと透明な滴を零してしまう。

「ああっ、ああ、ああー!」
「いい子だ」

 熱い舌が頬を撫で、涙を奪い取っていく。苦痛を含んだ涙も、この男を楽しませるおやつに過ぎない。厳しい現実が涙をあふれさせた。

「んっ……ぐうぅ。……っ」
「赤子のようになりおって。それほどまでに心地よいか?」

 泣いてなどいない! と怒鳴りつけたかったが、嗚咽を堪えるので精一杯だった。
 なにしろ吐精の前兆が腰つきをなやましくさせる。思考がそちらに持っていかれ、声すら我慢できなくなってしまう。

「イきたそうだな」

 ぐりっと先端を抉られ、涙を散らすほど首を振るがやめてくれるような慈悲深い相手ではない。

「んん? どうなのだ? 言葉にせぬと伝わらんぞ」
「ああっ、はうっ……! ぁああっ」

 それどころか集中的に尿道口を擦られ、達したくば自らの声でお願いしてみろと言う。

「だ、誰が、貴様などに……あんっ」
「強情なことだ。だが、言わないのなら、このままだぞ?」
「あう、あ、あっ!」

 切ない声がひっきりなしに溢れる。ビンビンに高まった胸を放置され、刺激を与えられるのは先端のみ。リーチェスジアは真夏に走り回った時のような、玉の汗を全身に浮かべていた。

「なにか、望みがあるのだろう?」

 頭に靄がかかったようだ。快楽の波にもまれ、縋るように憎いはずの紫狂を見上げてしまう。

「あ、あ……」
「どうした? リーチェスジア殿」
「っ、つう……」

 あくまで言わせるつもりなのか。やる気のない指使いで快楽の渦が途切れないようにだけしてくる。

「もう……」

 これがずっと続けば、ぬるま湯に沈んでいくように、リーチェスジアは壊れかねない。しかしこの男に頭を下げるなど死んでも御免だ。
 リーチェスジアの心を折るように、紫狂は指先で乳首を掠めてくる。

「はうっ……ぅ」

 それだけで心地よい痺れが全身に広がり、たまらない喜びに身体が打ち震えてしまう。

「リーチェスジア殿。難しいことではない。一言。たった一言『イかせてほしい』と願うなら。叶えてやるぞ?」

 悪魔のように囁き、男は吐息を胸に吹きかける。刺激を待ちわびている胸の突起はそれだけで、下半身に熱を送ってしまう。

「……ぁ、あ」
「言ってみろ。この愛らしい口で」
「あん、あっ」

 蜜で濡れた紫狂の指は滑りが良くなり、根元からツゥっとなぞられるだけで背筋が小刻みに震えた。反り立った己は自らの蜜でてらてらと濡れ、その時をただ待つだけとなっている。

「も、もう、いやだ……」
「うん」
「……ぅ、言いたく、ない」

 子をあやすように、紫狂皇帝はリーチェスジアの頭を撫でる。

「甘やかしてやりたいが、俺はそんなに優しくはない。この俺に捕まったのだ。もう諦めろ」

 舌先で突起を舐められ、その甘い痺れだけでイきかけた。全身に力が入る。イけるかと希望を持ってしまったが、当然それだけの刺激で達するのは無理だ。
 リーチェスジアは自分がどこに居るのかも忘れ、虚ろな目で喘ぐ。

「もっ……イかせて、ほしい……。これ以上は……無理だ……」

 紫狂皇帝は罠にかかった子ウサギを楽しむような笑みを浮かべた。ニタリと。

「ふははっ! 性欲の薄い妖精が、しかもその頂点の存在たる妖精帝がなんということだ!」

 くっくっと肩を揺らす。愉快でたまらないと言いたげに。

「はぁー笑った。いやお前の口からそんないやらしい言葉が聞けるとはな。ますます気に入ったぞ。リーチェスジア。奴隷として、俺の横に置いてやろう」
「……っ」

 悔しかった。憎くて仕方がない。
 それなのにリーチェスジアにできることは睨むことだけ。
 白くなるほど唇を噛みしめる。

「おっと。血が出るぞ。その身を傷つけることは許さん」

 おはじきでも飛ばすように乳首を弾かれ、口を開けさせられる。

「ひゃあ!」
「ははっ! 愛い奴め。……さて。こちらも約束は守るとしようか。望み通り、イかせてやる」

 手でイかされるのだろうとぼんやり考えていたリーチェスジアは驚愕した。紫狂皇帝が自身の股に顔を埋めてきたのだ。

「な、なにを……」

 根元を持つと、先端に舌を這わせたのだ。

「馬鹿なっ……! どこを舐め……っあ」

 わざと音を立て、己を濡らす蜜をじゅるると吸っていく。水音が鼓膜を叩くたびに耐えがたい羞恥が襲う。嫌だと拒もうが、この状況を望んだのはお前だと、もう一人の自分が心の奥底から責め立ててくる。

「こちらはそこまで甘くないのだな。いやぁ助かる。そろそろ胸やけしそうだったのだ。これならまだ飲めるな」

 胸やけしそうなら飲まなければいいのに。紫狂皇帝は己の根元まで咥え込んでしまう。

「はうっ……」

 熱いほどの口内に、リーチェスジアは腰を前後に揺すった。早く。早く楽になりたい。熱を放ちたい。
 だが紫狂はすんなり口を放してしまう。

「こらこら。人の口を勝手に使うな。いやしい性奴隷風情が」
「あ、あぅ……」

 イけなかった苦しみに泣きそうになるも、紫狂は胸に指を伸ばしてきた。

「さて。胸だけでイけるか確認してみよう」

 左右の指が同時に、リーチェスジアの乳首を摘んだ。待ちわびた刺激に、リーチェスジアの身体は大きく跳ねた。

「ああぁぁ――――ッ」

 伸ばされた両足がぶるぶると痙攣する。

「はあっ、あ……」

 射精していないのに、達したような感覚がある。なんだこれは。気持ち良いのに、気持ち悪さが渦巻き眉間にしわを寄せる。

「うう、ん」
「ほう。乳首だけでイったか。素質があるな。乳首だけでイけるように開発する手間が省けたぞ。ここがそんなに良いか?」

 人差し指での腹で尖った乳首を撫でられ、両足をバタつかせた。イった直後に触れられ、脳に電流が刺さる。

「いやあぁっ、いやぁあああー!」
「そんなに嫌がられると興奮してくるな。挿れないつもりだったが、ナカも味わってみるか」

 ねちっこく乳首を虐め、リーチェスジアを鳴かせると満足したのか。足元へ移動する。
 リーチェスジアの両足を持ち上げ、しとどに濡れた穴を観察した。

「いやはや。小さな穴だ。指が入るかも妖しい」

 リーチェスジアの口に手を突っ込み、指に唾液を纏わせると、尻穴に塗りつけた。

「あぁ……」

 解すことなく挿入されるかと危惧したが、皇帝本人も傷つけるつもりはないようだ。紫狂は指を半回転させながら押し込んでくる。本来なら激痛が走るのだろうが、香油でふにゃふにゃにされたリーチェスジアが感じるのは快楽だけとなっていた。

「あっ、ふぁ……。んやぁ……」
「そう可愛く鳴くな。かすかに残っている理性が風と去りそうだ」

 小さな穴を押し広げ、太い指が第二関節まで入ってくる。

「あっ、大きい。入らな……」
「指でそんなことを言っていては、俺のものを挿れたらどうなるのやら」

 内部をぐちゅぐちゅとかき混ぜながら、紫狂の指が根元まで埋まる。リーチェスジアは小刻みに全身を震わせた。

「ナカに、入って……」
「動かすぞ」
「だめ。んっ。……動かされたら」

 リーチェスジアの様子を楽しむように中指をくいっと曲げた。

「ああぁあっ!」
「おっと」

 その衝撃だけで達してしまった。自慰などほとんどしない己は、大量の精液を吐き出した。

「……くぅ」
「もっと勢いよく出せば、俺の顔にかかったというのに。控えめなことだ」

 意味不明な感想を述べられ、リーチェスジアのぼーっとした瞳は男に向けられる。

「こんな序盤でイってしまっては、増々堪えられんぞ。リーチェスジア」

 慈悲深そうに笑うと、ナカにある熟した一ヵ所を押し上げた。

「ひゃっ⁉」

 視界に火花が散り、つい腕を使おうと両腕に力が入る。

「妖精にも前立腺があるのだな。嬉しいぞ」

 指の腹で何度も擦ると、妖精は魚のようにシーツで跳ねた。

「ああっ、あうう! やめ! あああっ」

 びゅっと、二度目の吐精をしてしまう。

「は――あ、ああぁ……」
「おお。後ろだけでもイけるのか。香油の効果もあるのだろうが、素質があるな」

 指を引き抜かれ、追加でとぷっと先端から白い液が零れる。

「どれ。味見を……」

 精液に舌を絡ませる。
 生温かいものが己に、這うようにヒタリと吸いつく。

「舐めちゃ、だめぇ……」
「……リーチェスジア。なんだか可愛い喋り方になっているが、そちらが素なのか?」

 呆れたように言うと、妖精帝はハッとしたようだった。涙の浮かんだ瞳でこちらを睨みつけ、歯を食いしばっている。

「あれだな。やはり、随分可愛い性格なのだな」
「……っ。……黙れ」
「精液の味は人間とそう変わらんのか。メープルシロップを想像していたが……。ははっ! では挿れるぞ」

 ベルトを外し、ズボンを適当に放る。
 紫狂皇帝のモノはすでに張り詰めるように滾り、雄々しく勃っていた。
 あれを入れられるのかと、怯えた瞳がまじまじと見つめる。
 やりやすいようにと、腰を軽く持ち上げられた。

「力を抜け」
「っ!」

 恐ろしくて目を閉じると、穴に先端があてがわれた。一気に貫かれる。

「――――ッ!」

 自分は確かに悲鳴を上げた気はする。
 リーチェスジアの意識はブツンと断ち切れ、真っ暗な闇へ沈んだ。








「まさか気絶するとは」

 ズボンを履き、ベルトを閉めながらぼやく皇帝。
 ベッドでは意識を失った妖精の身体を、メイドたちが甲斐甲斐しく世話していた。わざわざ魔法で湯を沸かし、熱くないようにしっかりとタオルを絞り、汗や蜜を拭き取る。

「妖精の羽は脆い。丁重に扱え」
「かしこまりました」

 コートに袖を通しながらメイドたちに命じ、従者の一人を呼び寄せた。

「沼花」
「お呼びでしょうか」

 細身の男が天井から降ってくる。しかしメイドたちも慣れているのか誰一人驚かない。

「俺は仕事があるからなぁ。リーチェスジアを見張っておけ」
「仕事があるなら時間かけて抱いていないでー、さっさと切り上げれば良かったのでは?」

 ほぼ同じ身長の男の頭部に拳骨を落とす。

「ではな」

 去っていく皇帝にメイドたちは深々と頭を下げる。床に男が倒れていたが、やはり誰も気にしなかった。
感想 1

あなたにおすすめの小説

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

魔性の男

久野字
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。 最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。 そう、思っていた。

姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王

ミクリ21
BL
姫が拐われた! ……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。 しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。 誰が拐われたのかを調べる皆。 一方魔王は? 「姫じゃなくて勇者なんだが」 「え?」 姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?