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肆意
17 トゥーム
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※ ショタ受け、公衆の面前でのくすぐりが含まれます。
🌙
「あんたが『トゥーム』のリーダーなんだって?」
ハンターで賑わうギルド『スクリーン』にくっついている酒場で、飯を食べていると声をかけられた。
「ええまあ」
控えめに頷くのは黒ランクのレムナント。集団行動するモンスターばかり掃除していたらめでたくランクアップしたので、チーム皆で祝っていたところだ。
同じ席にいるのはリーダーと、彼にぴったりくっついている首輪の少年。はちみつ色にも見える濃い金の髪が眩しい青年ハンターの三人。
声をかけてきた男はニヤリと笑う。
「俺も仲間に入れてくれよ」
レムナントはしれっとクリアを指差す。
「そこの金髪の人に勝てたら構いませんよ」
「はい出たー。レムナント様の無茶ぶり~。面倒なことは全部俺に押し付ければいいやみたいな感じやめません?」
ピンク髪のロイツ少年がきゃぴっと拳を握る。
「頑張って(ボコされて)ください。クリアさあぁん」
「てめー。覚えてろよ!」
ロイツを指差しながらも慣れた様子で席を立つ。
仲間になりたいという者はたびたび出てくる。レムナントも初めは丁重に断っていたのだが、人とは面倒臭くなる生き物だ。クリアに押し付ければいいやと思いついてから雑にぶん投げている。文句を言いながらも対処してくれるので楽だ。
もしクリアに勝てても次はロイツが控えているので、仲間は増えない。増やすつもりもない。ていうかひとりで、ソロでやるつもりだったのにいつの間にか二人も増えている。
―ーロイツは兄上から頂いたアイテム枠として諦めもつきますがクリアさんはなんなんですかね……。
コーヒーを飲みながら心の中で愚痴っているとクリアが戻ってきた。椅子を引いて席に座る。
「雑魚でした。俺たちのパーティに足りない知識や技能持ちとかでも無かったです」
「クリアさんがですか?」
食堂の床で金髪と喧嘩を吹っ掛けた少年の取っ組み合いが始まるが、リーダーは我関せず。ギルド側も揉め事などよくあるので無視している。
「やめてくださいよ。いい大人が子ども相手に……やああんっやだ! えっち。レムナント様、助けて」
「調子に乗り回しやがって。おらおらおら。身の程を弁えろてめー」
「あひゃあああはははははっ駄目えぇぇええ」
クリアにくすぐられロイツは暴れまくるが、レベル差は覆せない。後ろから抱きしめられ、片手が服の中に潜り込む。
「きゅわああ駄目ええ! ひうっ! くすぐった……あっあ、やだあ」
「ぶりっ子小僧がよお~。おら、さっきまでの偉そうな態度はどうした。生意気な口を叩いてみろ」
「ひゃひひゃはははははっ! あはっあはははははは。あーあー! 息があああ」
胸の突起の下あたりをやわやわと引っ掻くようにくすぐると、両手両足をぐるぐると振り回す。
内心「おもしれー」と思う大人げない大人。
「触らないで変態。僕に触って良いのはレムナント様だけ……きゅうううっ」
「変態はてめーもだろが! 夜這い小僧が」
ズボンの上から太ももや付け根、わざと当たったふりをして股間を揉んでやると色気のない声に艶が混じり始める。
「ああ、ああん。あ、くすぐった……」
「くすぐったい? 違うだろ? 気持ちいいんだろ?」
「調子に乗らな……っ、あん、やだ! どこ触っ! ンッ」
抵抗が弱まり、ビクビクと震えるだけとなってくる少年の身体。どれだけ力を込めても、クリアの腕から抜け出せない。
「っは……はあ……んんっ。へ、へんたい……」
「おお」
「エロいな」
周囲の言葉にハッとなる。
「放してください!」
人の多い食堂でこんな姿を晒していることが耐えられず、ロイツは自分を拘束する腕に爪を立てるが、
「意味ねーよ」
「きゃあっ!」
拘束していた方の腕の指が動き、ロイツの脇をくすぐった。力が抜け、爪を立てるどころではなくなる。
「あ、あん、あ、あははははは。あ。やだ、やめてぇ……」
「おら! もっと見てもらえよお前の痴態を」
ぐいっと抱き上げられ、机や椅子で隠れていた下半身までもが、観客に見えやすくなる。
「やだ! ばかやめて。クリアさん!」
真っ赤になり瞳を潤ませる少年の股間を、青年の手が下から上に撫でていく。
「あっ! ああっ」
「見てもらえって。股間が膨らんできているところを。なんならズボンも脱ぐか?」
「下ろして。嫌です!」
ぶんぶんと首を振るが股間を刺激する手は止まってくれず、視線もばらけない。酒の肴にちょうど良いと見られている。
足の間を丁寧に撫でられ、自分でもわかるほど息が荒くなってくる。ズボンも、内側から押し上げられだしている。
――こんなのやだっ。恥ずかしい!
「クリアさん!」
「何いっぱしに嫌がってんだよ。奴隷に相応しい余興だろ? もっと楽しませろよ観客をよぉ」
「いや……!」
「よーし。ロイツ君はどんなパンツ履いてるのかなー?」
ズボンのベルトを半ばまで外した時、レムナントの安っぽい剣がクリアの後頭部を殴打した。
鈍い音が鳴り、クリアが床に沈む。
「私のランクアップ祝いではなかったのですか?」
「レムナント様ぁ!」
ぎゅうっとロイツがしがみついてくる。避けようかなと思ったレムナントだったが、可哀想なので抱きしめてやった。艶のあるピンク髪を撫でる。
「あう~わうわうわう。出来ればもうちょっとはやく、助けてほしかったですぅ……」
「はあぁ……」
鞘付きの剣を腰に戻し、ぐりぐりと顔を擦りつけてくる少年を引き剥がす。
「ああー。もうちょっとだけ……匂い嗅ぎたいです」
そういうことを言うのをやめなさい。魔法学園のクラスメイトにも言ってるんじゃないかと不安になる。
後頭部を押さえながらもクリアはすぐに起き上がってきた。
「ナイス一撃でした」
「あなたは……くすぐるのが趣味なのですか?」
呆れたような目線を受けても、クリアはてこてこと近寄ってくる。
「え? レムナント様もくすぐっていいんですか? どれどれ……」
にやけ面に指を突きつけてやると流れるように土下座した。
「調子に乗りました」
「私に触れたら血を搾り取った残りカスにしますよ」
脅し文句が怖すぎてロイツまで目を逸らしている。
席に座るもロイツは腕に引っ付いてくる。
「動きにくいのですが」
「クリアさんが怖かったですぅ。慰めてくださいよお」
「甘いものでも注文なさい」
メニュー表を渡すとロイツはうっきうきで注文し出した。泣きそうな顔も演技だったのか切り替えが早いのか、甘いものが好きなのか。
(甘いものが好きって可愛……なんでもないっ)
頬が緩みそうになる自分にイラつく。
バシバシ頬を叩くレムナントに、頬杖をついていたクリアの口が引きつる。
「甘いですってば。はあ……。レムナント様の美しさに免じて許しましょう」
「なんですかあなたは」
クリアは酒のつまみに手を伸ばす。
「それより多いですよね。仲間に入りたがる奴。せっかく縁起の悪いパーティー名にしたってのに。意味ねぇし」
トゥーム。墓場のことである。
この名前でお願いしますと申請を出した時の受付嬢の顔。そりゃそういう顔になるよな、と予想通りのものだった。
「クリアさん目当てですかね?」
ふざけているがこの金髪は優秀だ。モンスターだけでなく、毒草や野宿する際の注意点など、幅広い知識がある。
クリアは冷めた声でおつまみナッツを咀嚼する。
「誉め言葉として受け取っておきましょう」
「……?」
「あ、マジでわかってないんですか。レムナント様。あなたの瞬殺劇場が噂になってるんですよ」
「は?」
「お待たせいたしました。こちら『ゆめかわハッピーめろめろメロンちゃんのパフェ』でございます」
渋くて恰幅の良い食堂の店員が夢の国を凝縮したようなデザートを運んできた。器はちょっとした花瓶サイズで黄緑系の果物がこれでもかと盛られ、生クリームが天高くそびえている。
「「……」」
レムナントもクリアも白目を剥いて固まった。なんじゃこりゃ。
「わあい。待ってましたーおいしそーぅ」
ああなんだ。ロイツが注文したのか安心……ではない。
「なな、なっんですかこの砂糖の化け物は⁉」
「やめとけお前! このあともう一件、依頼こなすんだぞ」
大人組が止めるが、お子様はさっさとスプーンを生クリームに突き刺してしまう。
あむっと一口。
「んんー。おいひーい。おいひいでふ。レムナント様」
落ちそうなほっぺを片手で押さえ、キラキラと瞳を輝かせる。
甘味がそこまで得意ではないレムナントはうっぷと口元を押さえ、クリアは座った自分の背丈もある白い塔をぼーぜんと見上げる。
レムナントは目を逸らして会話を再開する。
「……で、私の、なんです? 瞬殺?」
「え? ああ。レムナント様の魔法って、格上でなければ相手の防御力を無視して殺せるじゃないですか。端から見ればすげー楽そうなんですよ」
「……そ、うですか」
たしかに魔法一発で終わる。自分でもたまにそう思うが、実は大きな間違いだ。この二人が場を整えてくれているおかげである。
悔しいがレムナントひとりでは一撃で倒せず、魔法を乱発するか逃げられるかのどちらかだろう。最初は雑魚モンスターばかりなのでひとりでも楽勝だったが、狩場を変えると強いモンスターも出てくる。闇魔法の「吸引」を踏ん張りで耐えたり、発動する前に逃げたりするモンスターも現れるのだ。闇魔法は強いが、使い手がまだまだへぼいので絶対に殺せる確証はない。
「だから俺たちが戦ってる現場を見て、『あいつとパーティー組めばあの手強いモンスターも一瞬で……』なーんて、楽をしたがるお馬鹿さんが湧いて出てくるんすよ」
キチンと目を鍛えているハンターなら、レムナントひとりでさくっと倒したのではなく、仲間との連携のおかげと見極められるだろう。それが出来ずに楽な道を選んで声をかけてくる時点で、ほぼほぼ格下かろくな奴ではない。
「ま、俺の意見ですけどねー」
ぎしっと、椅子の背もたれにもたれかかる。
「クリアさんはちゃらんぽらんですけど、そういう所は信用できますので。私も同意見です」
クリアはつまらなさそうな顔になる。
「レムナント様と同意見で嬉しいでーす」
ムッとなったが、ハンター経験値ではまだクリアには遠く及ばない。教えてもらっている立場なのだ、ここは自重して……
「すやぴー」
なんか、可愛い寝息が聞こえた。
大人組が目を向けるとそこには、空になった器と口の端に生クリームを付けて眠っているお子様の姿が。
寝かせておいてあげたい可愛い寝顔。
「いやいやいや! 何を寝ているのです。起きなさい!」
「おいコラアアァ! このあとまだ依頼こなすって言っただろうが。あほっ起きろ。食うの早いな」
二人して肩を揺するが、ロイツはむにゃむにゃとレムナントに甘える。
「ねむい……です」
分かりやすい血糖値スパイク。
プールの後が給食で、次の授業が国語だった時の眠さ。
「だから言っただろどあほ」
「まあ、クリアさんのせいでもあるので、ロイツは休ませてあげますか。……涎垂らしちゃって、かわいい」
「秒でほだされないでください‼ 甘いんですって甘いの苦手そうなくせして」
これでもロイツは立派な戦力なのでいないと困る。二人は制服姿の少年が起きるまで仕事に行けなかった。
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「あんたが『トゥーム』のリーダーなんだって?」
ハンターで賑わうギルド『スクリーン』にくっついている酒場で、飯を食べていると声をかけられた。
「ええまあ」
控えめに頷くのは黒ランクのレムナント。集団行動するモンスターばかり掃除していたらめでたくランクアップしたので、チーム皆で祝っていたところだ。
同じ席にいるのはリーダーと、彼にぴったりくっついている首輪の少年。はちみつ色にも見える濃い金の髪が眩しい青年ハンターの三人。
声をかけてきた男はニヤリと笑う。
「俺も仲間に入れてくれよ」
レムナントはしれっとクリアを指差す。
「そこの金髪の人に勝てたら構いませんよ」
「はい出たー。レムナント様の無茶ぶり~。面倒なことは全部俺に押し付ければいいやみたいな感じやめません?」
ピンク髪のロイツ少年がきゃぴっと拳を握る。
「頑張って(ボコされて)ください。クリアさあぁん」
「てめー。覚えてろよ!」
ロイツを指差しながらも慣れた様子で席を立つ。
仲間になりたいという者はたびたび出てくる。レムナントも初めは丁重に断っていたのだが、人とは面倒臭くなる生き物だ。クリアに押し付ければいいやと思いついてから雑にぶん投げている。文句を言いながらも対処してくれるので楽だ。
もしクリアに勝てても次はロイツが控えているので、仲間は増えない。増やすつもりもない。ていうかひとりで、ソロでやるつもりだったのにいつの間にか二人も増えている。
―ーロイツは兄上から頂いたアイテム枠として諦めもつきますがクリアさんはなんなんですかね……。
コーヒーを飲みながら心の中で愚痴っているとクリアが戻ってきた。椅子を引いて席に座る。
「雑魚でした。俺たちのパーティに足りない知識や技能持ちとかでも無かったです」
「クリアさんがですか?」
食堂の床で金髪と喧嘩を吹っ掛けた少年の取っ組み合いが始まるが、リーダーは我関せず。ギルド側も揉め事などよくあるので無視している。
「やめてくださいよ。いい大人が子ども相手に……やああんっやだ! えっち。レムナント様、助けて」
「調子に乗り回しやがって。おらおらおら。身の程を弁えろてめー」
「あひゃあああはははははっ駄目えぇぇええ」
クリアにくすぐられロイツは暴れまくるが、レベル差は覆せない。後ろから抱きしめられ、片手が服の中に潜り込む。
「きゅわああ駄目ええ! ひうっ! くすぐった……あっあ、やだあ」
「ぶりっ子小僧がよお~。おら、さっきまでの偉そうな態度はどうした。生意気な口を叩いてみろ」
「ひゃひひゃはははははっ! あはっあはははははは。あーあー! 息があああ」
胸の突起の下あたりをやわやわと引っ掻くようにくすぐると、両手両足をぐるぐると振り回す。
内心「おもしれー」と思う大人げない大人。
「触らないで変態。僕に触って良いのはレムナント様だけ……きゅうううっ」
「変態はてめーもだろが! 夜這い小僧が」
ズボンの上から太ももや付け根、わざと当たったふりをして股間を揉んでやると色気のない声に艶が混じり始める。
「ああ、ああん。あ、くすぐった……」
「くすぐったい? 違うだろ? 気持ちいいんだろ?」
「調子に乗らな……っ、あん、やだ! どこ触っ! ンッ」
抵抗が弱まり、ビクビクと震えるだけとなってくる少年の身体。どれだけ力を込めても、クリアの腕から抜け出せない。
「っは……はあ……んんっ。へ、へんたい……」
「おお」
「エロいな」
周囲の言葉にハッとなる。
「放してください!」
人の多い食堂でこんな姿を晒していることが耐えられず、ロイツは自分を拘束する腕に爪を立てるが、
「意味ねーよ」
「きゃあっ!」
拘束していた方の腕の指が動き、ロイツの脇をくすぐった。力が抜け、爪を立てるどころではなくなる。
「あ、あん、あ、あははははは。あ。やだ、やめてぇ……」
「おら! もっと見てもらえよお前の痴態を」
ぐいっと抱き上げられ、机や椅子で隠れていた下半身までもが、観客に見えやすくなる。
「やだ! ばかやめて。クリアさん!」
真っ赤になり瞳を潤ませる少年の股間を、青年の手が下から上に撫でていく。
「あっ! ああっ」
「見てもらえって。股間が膨らんできているところを。なんならズボンも脱ぐか?」
「下ろして。嫌です!」
ぶんぶんと首を振るが股間を刺激する手は止まってくれず、視線もばらけない。酒の肴にちょうど良いと見られている。
足の間を丁寧に撫でられ、自分でもわかるほど息が荒くなってくる。ズボンも、内側から押し上げられだしている。
――こんなのやだっ。恥ずかしい!
「クリアさん!」
「何いっぱしに嫌がってんだよ。奴隷に相応しい余興だろ? もっと楽しませろよ観客をよぉ」
「いや……!」
「よーし。ロイツ君はどんなパンツ履いてるのかなー?」
ズボンのベルトを半ばまで外した時、レムナントの安っぽい剣がクリアの後頭部を殴打した。
鈍い音が鳴り、クリアが床に沈む。
「私のランクアップ祝いではなかったのですか?」
「レムナント様ぁ!」
ぎゅうっとロイツがしがみついてくる。避けようかなと思ったレムナントだったが、可哀想なので抱きしめてやった。艶のあるピンク髪を撫でる。
「あう~わうわうわう。出来ればもうちょっとはやく、助けてほしかったですぅ……」
「はあぁ……」
鞘付きの剣を腰に戻し、ぐりぐりと顔を擦りつけてくる少年を引き剥がす。
「ああー。もうちょっとだけ……匂い嗅ぎたいです」
そういうことを言うのをやめなさい。魔法学園のクラスメイトにも言ってるんじゃないかと不安になる。
後頭部を押さえながらもクリアはすぐに起き上がってきた。
「ナイス一撃でした」
「あなたは……くすぐるのが趣味なのですか?」
呆れたような目線を受けても、クリアはてこてこと近寄ってくる。
「え? レムナント様もくすぐっていいんですか? どれどれ……」
にやけ面に指を突きつけてやると流れるように土下座した。
「調子に乗りました」
「私に触れたら血を搾り取った残りカスにしますよ」
脅し文句が怖すぎてロイツまで目を逸らしている。
席に座るもロイツは腕に引っ付いてくる。
「動きにくいのですが」
「クリアさんが怖かったですぅ。慰めてくださいよお」
「甘いものでも注文なさい」
メニュー表を渡すとロイツはうっきうきで注文し出した。泣きそうな顔も演技だったのか切り替えが早いのか、甘いものが好きなのか。
(甘いものが好きって可愛……なんでもないっ)
頬が緩みそうになる自分にイラつく。
バシバシ頬を叩くレムナントに、頬杖をついていたクリアの口が引きつる。
「甘いですってば。はあ……。レムナント様の美しさに免じて許しましょう」
「なんですかあなたは」
クリアは酒のつまみに手を伸ばす。
「それより多いですよね。仲間に入りたがる奴。せっかく縁起の悪いパーティー名にしたってのに。意味ねぇし」
トゥーム。墓場のことである。
この名前でお願いしますと申請を出した時の受付嬢の顔。そりゃそういう顔になるよな、と予想通りのものだった。
「クリアさん目当てですかね?」
ふざけているがこの金髪は優秀だ。モンスターだけでなく、毒草や野宿する際の注意点など、幅広い知識がある。
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「誉め言葉として受け取っておきましょう」
「……?」
「あ、マジでわかってないんですか。レムナント様。あなたの瞬殺劇場が噂になってるんですよ」
「は?」
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「「……」」
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「え? ああ。レムナント様の魔法って、格上でなければ相手の防御力を無視して殺せるじゃないですか。端から見ればすげー楽そうなんですよ」
「……そ、うですか」
たしかに魔法一発で終わる。自分でもたまにそう思うが、実は大きな間違いだ。この二人が場を整えてくれているおかげである。
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「だから俺たちが戦ってる現場を見て、『あいつとパーティー組めばあの手強いモンスターも一瞬で……』なーんて、楽をしたがるお馬鹿さんが湧いて出てくるんすよ」
キチンと目を鍛えているハンターなら、レムナントひとりでさくっと倒したのではなく、仲間との連携のおかげと見極められるだろう。それが出来ずに楽な道を選んで声をかけてくる時点で、ほぼほぼ格下かろくな奴ではない。
「ま、俺の意見ですけどねー」
ぎしっと、椅子の背もたれにもたれかかる。
「クリアさんはちゃらんぽらんですけど、そういう所は信用できますので。私も同意見です」
クリアはつまらなさそうな顔になる。
「レムナント様と同意見で嬉しいでーす」
ムッとなったが、ハンター経験値ではまだクリアには遠く及ばない。教えてもらっている立場なのだ、ここは自重して……
「すやぴー」
なんか、可愛い寝息が聞こえた。
大人組が目を向けるとそこには、空になった器と口の端に生クリームを付けて眠っているお子様の姿が。
寝かせておいてあげたい可愛い寝顔。
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「おいコラアアァ! このあとまだ依頼こなすって言っただろうが。あほっ起きろ。食うの早いな」
二人して肩を揺するが、ロイツはむにゃむにゃとレムナントに甘える。
「ねむい……です」
分かりやすい血糖値スパイク。
プールの後が給食で、次の授業が国語だった時の眠さ。
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