訳あり高校生 ヨシオの変骨騒動記 (ヨシオはプログラム解説書を出版した。お陰で色々な奴等に絡まれる。)

ヨシオ ヤマモト

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1D それぞれの主張

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 D-1  大学入試の準備
 D-2  知能指数と現実 頭が良くても、勉強しなければ知識は付かない
 D-3  プログラム講習 アメリカ
 D-4  アメリカ主義者 アメリカ主義と闘争 刃銃 奇翔流奥儀
 D-5  テレビ座談会 アメリカ
 D-6  WhDL遭遇と瞳がらみ再び WhDL(ホワイト•ドクターズ•ライン)と瞳絡み 奥義


 D-1  大学入試の準備

この7月、プログラムの初歩三号が出版された。初歩の最終編である。
アメリカでは、初歩上級編も出版されている。
解説書は、初歩で終る積りであるが、自分の勉強は、もう少し進めて置きたい。
賀生は、自分の能力に確信が持てない。頭が悪いとは思っていないが、今迄、真剣に勉強をした事が無い。能力が有ったとしても、勉強をしなければ知識は付かない。
そんな事を考えていた時、瞳から電話だ。
「山賀さん、明日は暇有る?」
「大丈夫と思うよ。」
「駅前に居るね?」
「分かった。」
次の日の放課後、賀生は駅前の喫茶店に寄った。瞳は既に来ている。
「今日は、何だったの?」
「少し日が開いて居たから、たまには、会って置こうと思って。」
瞳は、あまり会わないと、不安になるのだろう。
「お茶だけなら、もっと時間は取れるよ。」
「分かった、じゃ、もう少し連絡をするね。」
「だけど、いい加減に、入試の準備を始めないとね?」
「そろそろ、やる気を出さないとね?」
近くの公立大学に行こうとすると、今の二人は、ギリギリの成績である。
余裕を持たそうとするなら、もう少し学力を上げて置きたい。
「二人共受かろうとすると、もっと余裕が欲しいわね?」
「最低でも、二割は底上げして置きたいな?」
賀生は、もっと読書を減らさなければならない。
今の賀生は、大学入試が最優先で有る。大学進学も、能力再開発の手段だ。
「やっぱり、先ずは大学だね?」
賀生は、自分の仕事の事を、中学の時から考えていた。
瞳との、付き合いを考えるなら、若干の修正は仕方がない。賀生は、自分だけの問題なら意思を曲げない。しかし、恋愛は相合理解を必要とする。
瞳が、大学に行くと言うのなら、賀生も大学には行って置きたい。
「山賀さん、初めは大学に行く気は無かったの?」
「そうだよ。高校迄行けば、出来ない仕事は無い。研究職は難しいかもだけど。」
「そうだよね?  山賀さんなら、大学へ行かなくても、何でも出来そうだね?」
「しかし、大学へ行くのなら、時間的な余裕は出来る。」
将来の夢はまだ封印をして置こう。大学へ行ったなら、四年の余裕が出来る。
夢を見ないと言いながら、夢を見ているのは現実的ではない。 それを可能にするだけの、能力を付けなければならない。


 D-2  知能指数と現実

「山賀さん、今何処?」
「駅前に向かっている。」
「分かった。いつもの所で待ってる。」
喫茶店に行くと、瞳は相変わらず、ミルクティーを飲んでいた。
「お待たせ。」
「山賀さん、何処かへ行きたい。」
「夏休みには、友達と遊びに行かないの?」
「それとは、また別。」
「この時期は雨に当るよ。先に映画にでも行こうか?」
「取り敢えず映画にしよう。無難なところだね、雨でも大丈夫だから。」
「また、チラシを集めて来てくれる?」
「そうする。」
それから、数日後の日曜日、二人は近くの映画館を訪れた。映画は、それなりに見る事が出来た。映画も終わり、二人は、駅前の喫茶店で、お茶を飲んでいる。
「山賀さん、勉強は進みそう?」
「少しずつ、その気になると思うんだけどね?」
「山賀さんは、知能が高そうだから、実力は、もっと上がるよ。」
「知能か、僕は知能指数を、正式に測った事が無い。」
賀生は中学の頃、ネットで知能指数を測って見た事はある。
「正式にはと言う事は、何かで測ったの?」
「ネットで、やったけど、150程あった。しかし、あまり信用出来ない。」
「それ、凄いじゃ無い?  正式版でも、かなり良い数字が出るんじゃないかな?」
「それなら、良いんだけどね?  だけど、I Q と学力は比例しないからね?」  
知能を測る問題集を見ると、得手の問題と不得手の問題が有る。問題によっては、数値が変わるかも知れない。
「I Q だけでは、現実的では無いかな?」
「そうだよ。僕は頭に自信が無いから、勉強に苦労をしている。」
「よく言うよ。普通の学生の半分も勉強しないで、苦労も無いものだわよ。」
賀生は、勉強時間は少ないが、かなり効率的な勉強法をやっている。偶然では有るのだろうが、勉強時間の割には成績が良い。
「現実論なら、大学受験もそうだよ。通りそうにも無い所を、受けられない。」
「それはそうだね?  それなら尚更勉強をして、確実にしないとね?」
「結局、それが現実的だと言う事だな?」
「そうだね?  それが現実だよ。」
「そろそろ帰ろうか?  駅まで送るわ。」
瞳を改札口まで送って、賀生は相変わらず本屋に向かった。
本を買うのでは無く、どんな本が出ているかを、確かめる為にも本屋に行く。

賀生は、今日話題に出た、知能指数の事を考えている。
よしんば、知能指数が高いとしても、一度は勉強をしなければ、知識は付かない。
それが現実なのである。試験は、知識の有無を確かめている。瞳から見ると、賀生は現実的らしい。実際に、賀生は将来に夢を見ない。想像をする事が有っても、実際の行動は夢を追わない。能力を高めるように努力をする。それを元に行動を起す。
これは、賀生の理想論である。現実的には努力もしていない。
今は、読書やプログラミングが忙しくて、能力向上の方針もない。


 D-3  プログラム講習

ある日、PC出版から電話が有った。
「PC 出版の山本です。この27日に、講習をお願いしたいのです。その次の日に、テレビの座談会をお願いしたいのですが?」
「テレビは、生ですか?  テレビは、生放送しか出られませんよ。」
「何か訳が有りますか?」
「放送日が違う場合、編集の可能性が有ります。編集されると、主旨が伝わらない事が多いのです。編集によっては、全く逆の主張になる事も有ります。」
「確かめて見ます。」
次の日、PC 出版から連絡が有った。座談会は生放送だと言う。他の大物出演者からも、同じ様な疑問を言及されたそうだ。
「覚悟を決めます。何とか逃げたかったのですが、無理の様ですね?」

賀生は、瞳に電話を入れた。
「今日、喫茶店で会えるかな?」
「大丈夫だよ。今、学校の帰りだから、直ぐ行けるよ。」
「分かった、待ってる。相談が有るので。」
瞳は、程なく喫茶店に現れた。
「山賀さんから電話って、珍しいね?」
「今度、アメリカへ行く事になった。瞳に、助手を頼めないかと思って。」
「なんの用事なの?」
「プログラムの解説に行く。次の日は、テレビ放送の座談会に出る。」
瞳が居なくても支障は無いのだが、ニューヨークに行くのには、15時間は掛かる。
それが、往復になると倍になる。行事の合間も暇を持て余す。
「親に相談してみるけど、外国は危険じゃない?」
「危険にならない事を保証する。対策はこうじている。」
この対策は、瞳が反応した賀生の祖父の古武術を指す。この内容は、瞳にも詳しくは説明して居ないが、現実に反応している。それは奇翔流奥義天翔と言う。
「それなら、親に相談して見る。」
その日の夜、瞳は両親に話をした。
「二人きりで旅行か?  普通なら反対するところだが、瞳はどうだ?」
「断念ながら、山賀さんは心配いらない。頼んでも何もしないわよ。」
そこで、瞳の妹の爽香が、茶々を入れた。瞳には、二歳年下の妹が居る。
「お姉ちゃんは、何かして欲しいの?」
「そんな訳は無いでしょうが?  爽香は余計な事言わないの?」
「分かった。アメリカ行きは良い経験になる。後は自分の責任だよ。」
「危険が無いように、保証してくれるそうよ。」
「どんな保証か分からないが、無いよりはましだな?」
次の日、瞳は賀生に電話を入れた。
「両親の許可は貰った。7月26日に出発だね?」
「有り難う、助かった。一人では、どうしようかと思った。」
26日の夕方、二人は関西空港から、ニューヨーク行きの直行便に乗った。
「しかし、この15時間は長いわね?  半分は寝るとしてもね?」
ニューヨーク空港には、PC 出版本部から、秋芳順子が迎えに来ていた。
「ご苦労さまです。PC 出版の秋芳順子です。私が、案内と通訳を担当します。」
「しかし、こんな子供が講習をして、真面目に聞くんですかね?」
「内容次第でしょうね?」
賀生は、講習の原稿を作って、PC 出版の校正を受けた。
今日の講習は、ニューヨーク市内である。先ずは、アメリカの中心から始める。
講習は、二時間程で終わった。幾らか質問が来たが、何とかこなした。
これは、著者のお披露目でも有る。本の内容からして、講習の必要性はあまり無い。
中学生でも分かる内容なので、読めば解る。
「中途半端な時間になったね?」


 D-4  アメリカ主義者

賀生と瞳は、ニューヨークの繁華街に出た。まだ太陽も有り、安全だと思って居たのだが、そう上手くは行かなかった。人の少ない通りで、不審な奴等に絡まれた。
「お前は山香ヨシオだな?」
「そうですけど、何処かで会いましたか?」
「お前の様な日本人が、何故アメリカで、顔をきかせている?」
最近は、賀生のプログラム解説書に人気が有り、学校で採用の州も増えた。
著者がアメリカ人では無いので、それを問題にする団体も有った。
「本ぐらい、沢山の日本人が書いてますよ。何故これにだけ問題にする?」
「うるさい。お前が出版しなければ解決する。教育に絡むのか気にくわん。」
アメリカ至上主義の連中か?  何処の国でも、こんな奴等が居る。
「今更言われても、どうにもならないよ。」
日本でも、そんな組織が幾らか有る。しかし、こちらの名前を何処から入手した?  
教育関係者に繋がりが有るのだろうか?  
「我々の後には、大きな組織が絡んでいる。お前達の命も保証は出来んぞ。」
「それは、お互い様だ。我が国にも、色々と有る様だよ。」
「我々のものは、そんなお伽噺ではない。」
片付けるのは可能だが、人の目が多過ぎる。人の居ない路地に移動するか?
「瞳、チョット移動する。ここでは人の目が多過ぎる。」
「直ぐ左の路地は、人が少なそうだよ。」
「分かった。その路地に入る。」
二人は、左の路地に走り込んだ。奴等も、慌てて付いてくる。
「もう逃げられんぞ。もう来ないと約束するなら、許してやる。」
「アメリカ人が書いた教育書も、沢山日本に来ているんだけど。」
「煩い。お前の本が気にくわん。」
こいつ等も、上層部にはチャンネルが無い。そこで、こんな所で絡んでいる。
「それは、我々の自由にならない。権力の有る者に言うんだな?」
「それじゃ、行動不能にするしか無いぞ。覚悟しろ。」
それを聞いていた左の奴が、腕を掴みに来る。賀生は、その手をはね退ける。
今度は殴り掛かって来る。それも腕で払う。その時、賀生は不穏な気配を感じた。後から、何かの武器が来る。
「瞳、武器の気配だ。」
「分かってる。」
「奇翔流奥義天翔!」
「奇翔流奥義!」
二人が奥義を唱える。唱える必要は無いのだが、武術だと強調する為、口に出す。
その二人に、後からナイフが襲う。刃が届く寸前に、二人の身体が両側に動いた。
奇翔流奥義が発動しているのだ。
「えぇっい。」
「くそがっ。」
不意に、賀生の身体が、横にずれる。二本のナイフが、その空間をすり抜ける。
「そんな事をやっても無駄だよ。この武術は破れないよ。」
「流石に逃げるのが得意そうだな?  そろそろ覚悟をしろよ。ジャン行け。」
少し強そうな奴が前に立つ。突然そいつは、賀生の顔に拳を振るう。
「その程度では、幾ら攻撃されても当たらないよ。」
賀生は、その拳を左手で掴んだ。そして右拳を、みぞおちに叩き込む。
「ぐぉう。」
拳は届いた様だ。他の奴がナイフをかざす。そいつは、そのまま突っ込んで来る。
賀生は、そのナイフを足で蹴り上げ、腹に当て身を打ち込む。
「糞っ。」
瞳も、奥で闘っている。瞳は、護身術の心得が有り、大概の奴では歯が立たないが、相手は大柄なので、不利な事も多い。しかし、賀生との訓練で、その祖父の古武術が、瞳にも感応した。どんな条件で反応するのか解らないが、後方の危険も、身体が反応する。賀生の見解では、祖父の遺伝子情報が精神波で伝搬した。
「えっーい。」
瞳の後の奴が、回し蹴りを掛けて来た。すかさず瞳が前に動く。当たった様に見えたのだが、足は瞳の脇をすり抜けた。瞳は、そいつの顔に拳を撃ち込む。
「ぐおー。」
他の奴が、瞳の横からナイフで襲う。そいつの手を、瞳の足が蹴り上げた。
「くそっー。」
瞳は、後に悪意を感じた。瞳の体が横に動く。その後に銃弾が飛びすぎる。
きりが無いな?  賀生は、少し派手な技を出す事にした。  地味な技では、脅しにならない。賀生の体が宙に浮く。右足は前の奴を蹴り、左足で左の奴の首を刈る。
「ぐぇー。」
「ぐぉっー。」
大技は、成功すれば、かなりの脅しになる。その時、賀生の身体が、再び宙に浮く。その下を銃弾が飛び過ぎる。
「天翔。」
突然、賀生が呟く。賀生の身体が、空中で左に翔ぶ。その跡に銃弾が流れた。
側に敵が居るとか、木や岩等が有るなら、それを蹴って、反動を利用するのだが、利用する物の無い時は、飛翔術を発動する。
「何だ、あの術は?」
「我々の武術の奥義だよ。」
「一時退く! 散れ。」
リーダーの声で、奴等は路地の奥に消えた。
退いてくれたか?  そろそろ時間切れである。長時間やっていると警官が来る。
それはそれで、面倒な事になる。相手も、その時間を測っていた様だ。
「やれやれ、僕達も移動しよう。ポリスが来ても面倒だ。」
「そうだね。そっちの方が面倒になるね?  土産は明日にでもしよう。」
賀生は、壁から部品を外し、ポケットに入れる。そして、急いでそこを離れた。
ホテルに帰ってから、瞳が尋ねた。
「山賀さん、あれは何?  空中で横に動いた様に見えたんだけど。」
「あれは、飛翔術と言う奇翔流奥義で、強い気を発して、その反動で翔ぶ。」
「物理法則に反する様な気がするんだけど。」
瞳の疑念は、もっともである。現代の科学では、説明が付かない。
「僕も、そんな気がする。」
「超能力の一種かな?」
超能力なのか、人間が元々持っている能力なのかは、断念ながら解らない。強い気を発して翔ぶなんて、今時の物理学では解明でき無い。
「当時に超能力の概念は無い、全て、武術の一種として伝えられている。」
「ふーん。謎の武術かあ?  忍者そのものだね?」
賀生と共に、古武術の訓練をやっている為、瞳にも、その能力が付随している。
「瞳、あの術を使う時は、出来るだけ声を出してくれ。無理に武術を強調する。」
「そうだね?  その方が誤魔化しが効くかも。」
「あの奇翔流奥義は、何だか動きが怪しい、それで武術と強調する。」


 D-5  テレビ座談会

二人は夕食後、ホテルの喫茶室で、お茶を飲んでいる。
「明日は、テレビの座談会か?  どんな人が出るんだろうね?」
「何か、言い包められてしまったんだけど、僕で仕事になるのかな?」
「そうだね?  まあ、山賀さんの屁理屈が、聞けそうな気がするわ。」
次の日の昼頃、お茶を飲んでいる時、秋芳順子が迎えに来た。
「そろそろ行きましょうか、少し早いのですが?」
三人は、揃って放送局に向う。放送局の名は、AN 放送局と言った。
「PC 出版の山香ヨシオと秋芳順子です。喫茶室で待ちます。担当の方に、連絡をお願いします。」
喫茶室に移動した三人は、改めてお茶を飲む。
「どんな人が出演するんですか?」
「えーっとね?  教務省から一人、記者さんと一般公募が二人ずつですね?」
「僕を入れて六人ですか?  あまり沢山居ると煩いだけだし、こんなものかな?」
他の出演関係者も、この喫茶室に来ていた。その声が、ここまで聞こえて来る。
「プログラムの著者が出るんだが、日本人らしい。」
「教育で使うらしいが、何故アメリカ人じゃ無いんだ?」
「まだ、ハイスクールと言うじゃないですか?  ガツンと、お願いしますよ。」
「分かってる。ちょっと凹まして置く。」
何の関係者か分からないが、随分な事を言っている。瞳や順子は、気にしているが、賀生は気にしていない。賀生は、こう言う奴は相手にしない。
「大丈夫だよ。気にしなくていい。」
お茶を飲んでいる内に、放送時間が近づいた。皆んな指定の部屋に移動する。
順子は賀生の通訳だが、瞳は喫茶室で待つ。
「もう直ぐ時間ですので、指定の椅子に座って下さい。」
この座談会の司会者が、案内をしている。
六人が椅子に付き、落ち着いたところで、座談会の時間が来た。
「それでは、これから座談会を始めます。私は司会のジョアンです。先ず出演者を紹介致します。教務省副長官のバターソン様、プログラム解説書著者  山香様、メディア代表  サンディ様  ケディ様、一般応募  ラジーン様  ナンシー様、以上の方々が出演されています。」
そこで、教務省副長官が立ち上がった。
「先ず私からご挨拶をさせて頂きます。昨今、プラグラムに対する関心が高まっていますが、教育が充分とは言えません。そこで、皆さんのご意見を、頂戴頂きたいと思って居ります。」
「有り難う御座いました。では、プログラムの著者、山香様からお願い致します。」
「初歩のプログラム本を書いています。初心者の役に立てればと思っています。」
一通り自己紹介が終わり、議論の時間になった。
「山香さんの本は、易し過ぎて参考にならない、と言う意見も有りますが?」
「詳しい本は幾らも出ています。解る方は、そちらを読んで下さい。」
「何故そんな易しい本を、書かれたんですか?」
賀生に、色々の質問が来る。何となく否定感が大きい。
「勉強を始めた時、解らない所が多かったのです。今迄の本で足りる人は、この本は不要です。」
「それは、そうなんですけどね?」
「その言葉は、売れなくても良いとも、取れますが?」
「読むか読まないかは、読者の自由です。不要な人は読む必要は有りません。」
色々と意見が出たのだが、賀生への質問が多い。アメリカで、何故日本人の解説書を採用するのだ?  と言う疑問の雰囲気が漂っていた。
これは、気分的には分からなくも無い。どうしても、自分の国が可愛いのだ。
何やかやで、座談会は終わった。賀生と順子は、瞳の待つ喫茶室に戻った。

「山賀さんは、自分の本は読まなくても良い、と言う意見に見えたけど?」
「不要な人は、無理に読まなくても良い。必要な人だけが読めば良い。」
ところが、この座談会を見た視聴者には、却って良い宣伝になってしまった。
賀生の解説書が、余計に売れだした。解りやすい本なら、一度読んで見ようと言う人が増えたのだ。つまり、難しいと思う人が、多かったと言う事になる。


 D-6  WhDL遭遇と瞳絡み再び

アメリカでの仕事も終わり、次の日の朝、ニューヨークから帰途につく。
最後の夜、瞳と賀生は、ニューヨークの繁華街に出ている。夕食を済ませ、街のショーウインドウを眺めながら歩いて居る時、十数人の白人に呼び止められた。
「お前は山香ヨシオだな?」
「そうですが?」
「白人の国では、ちょっと遠慮して貰いたい。」
賀生には、こいつ等が、何を言わんとして居るのかは、分からない。
「何の事を言っているのかな?  良く分からないんだけど?」
「アメリカで、テレビにまで出やがって、目障りなんだよ。」
こいつ等が、白人ばかりと言う事は、白人至上主義を掲げている奴等なのか?
「しようが無いだろうが、アメリカ人に頼まれたんだから。」
「お前が断れば済む話だ。」
全く、面倒くさい事を言う奴だ。せっかく、ネットの奥から、解説書を探してくれた出版社に、文句を言える訳も無い。
「契約している物を、一方的にやぶる訳にいくか?」
「言う事を聞けんか?  仕方が無い、身体に聞かさせて貰おう。」
突然前の男が、賀生に拳をふるう。
「奇翔流奥義天翔!」
賀生と瞳は、一応武術奥義を起動する。
その拳を賀生の右手が祓う。瞳の方にも蹴り足が襲う。
「ぇーい。」
それを、瞳の足が蹴り上げる。その時、賀生が奴等に尋ねた。
「ところで、君達は何者だ?  要求の根拠が薄い。」
「一応言って置こう。我々は、WhDLの一派だ。本気を出せば一発で終るぞ。」
やっぱり、白人至上主義の奴等か。賀生は、WhDLの名は聞いている。
「精々頑張ってくれ。」
「そうだな?  ここで、終わりにして置こう。我々の立場もある。」
そう言いながら、奴等は二人を取り囲んだ。それを見た瞳が賀生の背に付く。
賀生の前に居た奴が、飛び蹴りを掛ける。賀生は横に避ける。その脚を瞳が掴んで、その勢いのまま、放り投げた。
「奇翔流奥義天翔!」
再び二人は、奥義を唱える。それからは乱戦模様だ。前から、後から、横からと、攻撃の嵐になった。瞳が背から離れた時、賀生は後に異様を感じた。賀生の身体が横にずれる。その跡にナイフが流れた。
瞳は横に悪意を感じる。その瞬間、瞳の身体が前に跳ぶ。
「危ないね?」
その脇を銃弾が掠める。賀生は奴等に言う。
「まだまだだね?  我々の術には届かないよ。」
彼らは訳が分からず、呆然としている。瞳と賀生は、黙ってその場を離れた。

日本に帰ったある日、賀生はギリギリに登校した。夜に小説を読み過ぎたのだ。
お陰で、授業中に寝てしまった。
授業も終わり、賀生は教室を出た。門の所で何か騒いでいる。少し歳上の少年達が、門を出る学生を掴まえて、何かを尋ねている。賀生もそれに掴まった。
「ちょっと聞きたいんだが、一年の山賀と言う奴を知らんか?」
賀生は、拙いところに来てしまった。裏から帰れば良かったと思ったが、もう遅い。
誤魔化して帰っても、他の学生に迷惑が掛かりそうだし、どうしたものか?
賀生は、やむを得ず、名乗り出る事にした。
「山賀は僕ですが、何か用事が有りましたか?」
「お前が山賀か?  もっとデカイ奴を想像したんだがな?」
「間違いなく僕ですよ。一年なら。」
賀生が、少年達の人数を数えると、8人ぐらいは居た。特別強そうな奴は居ない。
「それなら良い。ちょっと来てくれ。」
「いいですよ、ここでは拙いので、人の居ない所へ移動しましょう。」
「わかっとる。」
少年達に連れられて、路地を3本ほど離れた所へ案内された。
「お前、神衣瞳と言う子と会ってるな?」
「時々はね。委員もしているので、用事が有るんですよ。」
「会うのを、やめてくれないか?」
「役目が有るから、無理だと思いますよ。」
無理矢理、役目の為と誤魔化したが、通用するかな?
「それでも、やめてくれないと、こっちが困る。」
「困りましたね?」
「こっちが困るんだよ。」
「やっぱり、あの子と縁を切るのは、役目柄無理そうです。」
「その無理を聞いて欲しいんだが。」
「役目を、放って置く訳にもいかないし。」
「無理か?  身体に聞かすしか無いか?  」
「いや、暴力はやめようよ。」
「おい、ちょっと痛めつけろ。」
それを聞いた、近くの奴が体当たりに来た。賀生が、これを避けるのは難しく無い。
「おっと。」
次の奴が殴りに来た。それを掴まえ、腕を逆手に捻る。三人目も同じである。
「ぎゃっ。」
「やめませんか?  こんな所で騒いでいると、拙いですよ。」
「うるさい。しようが無い、忠義頼む。」
あれ、こんな奴が居たかな?  こいつはスキが少ない。
「悪いが、少し寝て貰う。」
「君のような者が、こんな奴等と何をやってる?」
「少し義理が有ってな?」
そいつは相当強そうだ。その右足から蹴りが飛んでくる。
「きぇっー」
賀生は、それを素直に避ける。今度は右手の突きが来る。
「やむを得ないか?」
それを避け、賀生は中へ踏み込む。そして顔に拳を打ち、腹に当身を喰らわす。
相手は、それを避け、後ろへ下がる。
その足が地に着く瞬間、賀生はそれを薙ぐ。忠義は、重心を払われ地に落ちた。
「えいっ」
賀生は強烈な当身を喰らわす。
「ぐっうー」
当身は入った様だ。これで、当分は力が失せる。
賀生が習っていた古武術には、柔術の技も、空手のような技も含まれている。忠義は、賀生を甘く見ていた。
賀生は普段、全力を出さない。相手に合わせて、力を開放する。
「引け!」
退いてくれたか、これ以上続けると、怪我人が出る。
日本では、ナイフ等が、あまり出て来ないので助かる。この国で、あまり妙な動きはしたくない。これは、誤解の産物の様なので、怪我もさせられない。
学校まで来るとは思わなかった。指示元を止めないと、うるさい事になる。
瞳本人は、気付いて居ないのが、異常なところだ。
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