訳あり高校生 ヨシオの変骨騒動記 (ヨシオはプログラム解説書を出版した。お陰で色々な奴等に絡まれる。)

ヨシオ ヤマモト

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1S 暴露と騒乱

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 S-1  暴露 山賀賀生の全て暴露される
 S-2  インド講習 講習
 S-3  ゆすりの気配 インドで喧嘩 ナイフ銃 奥義
 S-4  雑誌座談会とパーティ ニューヨーク
 S-5  教育庁 解説書の説明を断わる
 S-6  大学退学 一校目の大学退学

 
 S-1  暴露

その男子学生は、SNS に全てを曝した。日本人のプログラム解説書が、何故アメリカで人気なのか?  それが何故日本では、無視されているのか?
その SNS には、数々の疑問が呈されていた。つまり、賀生の全てが曝されてしまった訳だ。本名や大学迄曝されてしまった。
副学長や生徒代表組織と、喧嘩になった事まで調べられていた。
その子は悪気では無く、山賀賀生が評価されない事を、不思議に思ったのだ。
本人が隠して居たとは、思い至らなかったのだ。
賀生は頭を抱えた。まいった、完全に曝されてしまった。
「山賀さん、殆んど曝されてしまったね?」
「そうなんだよな?  煩い事にならなければ良いんだけど、曝した本人には、悪意が感じられないので始末が悪い。」
「そうだよね?  有名になりたいのが、当たり前だと思われてるからね?」
「せっかく、大人しくしていたのに。」
「アメリカの教育界まで騒がせたんだから、諦めなさいよ。」
「又、一週間ほど講義を休むわ。少しは静かになるかも知れない。」
「分かった。」
賀生は、その日から一週間大学を休んだ。一週間も休めば、落ち着くと思ったのだ。
一週間程して、賀生は瞳に電話を入れた。
「瞳、大学では騒いでないかな?」
「本人が居ないから、騒ぎようが無いんだけどね?」
次の日、賀生は講義に出席した。少し心配をしていたが、直接話し掛ける者も無く、物珍しげに眺めているだけだった。
「なんか、動物園の猿みたいだな?」
「あまり有名になったので、話し掛けづらいのよ。」
「うーん、何か居心地が悪いな?」
「当分は仕方がないわよ。動物園の猿で我慢しなさいよ。」
そんな状態でも、賀生は毎日、講義には出席している。


 S-2  インド講習

そんなある日、PC 出版から電話がかかった。
「山賀です。」
「山賀さんに相談ですが、インドへ講習に行けますか?」
「アジアでは、白人の方が、受けは良いのでは有りませんか?」
「いえ、インドのSNS でも、山賀さんの名が売れていて、山賀さんの方が良いだろうと言う、結論になりました。」
「雑誌の座談会と、重複しなければ大丈夫ですが?」
「それは大丈夫です。今回は、インドからニューヨークへ飛んで下さい。パーティが有りますので。」
「学校の講習は、ウェブシステムでは、無理ですか?」
「地方によって環境が違うので、今回は足を運んで下さい。」
「インドの治安はどうですか?  女性は連れて行けますか?」
「微妙なところですね?  日本ほど安全な国は、あまり有りませんので。」
「分かりました。一度相談をしてみます。」
次の日、大学で瞳に話しをした。
「来月にインドへ行くんだけど、瞳は、行けるかな?」
「インドは安全かな?  日本人旅行者も居ると思うけど。」
「瞳は、インドへ行きたい?」
「あの辺りでは、安全な方でしょうけど、どうしようかな?」
瞳には、賀生の体質が感応しており、少々の事では安全なのだが、瞳は迷っている。
瞳と賀生は、古武術の訓練も一緒に行なっている。その結果だろうか、賀生の祖父の奇翔流奥義が、瞳にも感応した。
「終れば、アメリカで座談会をして、その後パーティーになる。」
「講演と座談会とパーティーか?  少し長くなるね?」
「それでも、主体はインドの講習だからね?」
「うーん、やっぱり私も行く。インドへは、一度は行って置きたいし。」
「僕は SNS で、インドでも有名らしいよ。」
「プログラム解説者の秘密が、暴露されたのだから当然だよ。」
「5月になるから、用意して置いて。」
「分かった。」

賀生と瞳は、今インドに居る。賀生が有名人だと言っても、ネットの中の事なので、一般の人達には、あまり関係がない。
それでも、学校へ講習に行くと、結構知っている子達が居た。インドでもSNS で見られている。面白いニュースは全世界に流される。既に数校を回り、今は少し田舎の都市に来ている。
部屋から外を眺めると、田舎とは言え、十数軒の商店が見える。遠目にでは有るが、アクセサリー店も有るようだ。お茶を飲んでいた瞳が、興味深そうに眺めている。
「興味が有るの?」
「うん、ちょっとね?  英子と爽香に、土産を買いたいなと思って。」
「行って見るか?  この辺りなら東洋人は珍しく無いだろう?」
この国では、中国人や韓国人の来訪も多いと思われる。当然日本人も結構多い。 
「それでも、動ける服装に着替えよう。」
賀生と瞳の二人は、服を着換えて玄関を出る。今日は無事に店に着いた。
その店では、珍しいアクセサリーが、たくさん並んでいた。
瞳は、そのアクセサリーを数種類買った。かさ張るので箱は断わった。
包装箱は断ったが、壊さないように、慎重にポーチにしまっている。
「土産が買えたんなら、そろそろホテルへ帰ろうか?」


 S-3  ゆすりの気配

ホテルの方へ歩いている時、賀生は、歩調を緩めて横の路地に入る。
「用心をして。つけられている。」
「そのようだね?」
路地を少し進んだが、その気配は消えない。やっばり、つけられている。
「この辺りで良いか?」
賀生は、細い路地まで進んで動きを止めた。つけていたのは、数人の男達だった。
日本人と知って、付けて来たようだ。日本人は、一般的に脇が甘いと思われて居る。
細い道だと危険に思えるのだが、左右の敵を妨げる利点が有る。後方は瞳に任せる。
なんか喋って居るのだが、言葉が通じない。賀生は黙って相手を見る。どうやら、金を要求しているらしい。賀生は顔を横に振った。
「アイヤー。」
その一人が、突然殴ってくる。
賀生は、体をズラし打撃を避ける。相手は、格闘技の経験が有るらしく、結構速い。
「厶ン。」
やり過ごした腕を取り、下から後ろへ捻り足を祓う。
「ぎやっ。」
そいつは、顔から地に落ちた。
「奇翔流奥義天翔!」
賀生が、奥義を起動する。
瞳は、捕獲しようと襲って来た奴を、背負いで放る。瞳も奥義を詠唱する。
「奥義天翔!」
瞳に、まだ攻撃が来る。瞳の後から拳銃が襲う。瞳は上に跳び上がる。その下を銃弾が飛び過ぎる。
賀生は、襲って来た奴の手を取り、逆手に捻り倒した。
「うっつー。」
賀生の後から銃が撃たれる。賀生は瞬間上に跳ぶ。その下を銃弾が通る。その賀生に二丁の銃が撃たれた。
「天翔!」
賀生の身体が、空中で横に翔ぶ。その跡に銃弾が流れる。
地に降りた賀生の足が、横の奴の腰を蹴る。
「ぐっう。」
こんな時は、瞳も賀生も、日頃の動作とは、想像出来ない動きを見せる。
もう一人の大柄な男が、賀生の頭に回し蹴りを掛ける。これは、奇襲の場合は効果が有るが、予測された場合は、対処が出来る。賀生は、上半身を反らして蹴り足を避け、地の足を祓う。そいつは地に落ちる。ついでに強烈な当て身を喰らわして置く。
「ぐおうっー」
その間に、瞳も一人を投げ飛ばしている。
賀生と瞳に、大半を倒され、奴らは倒れた者を庇いながら、路地の奥へ消えた。
「やれやれ、金が目当てだったのだろうな?  言葉は分からなかったけど。」
「多分、そうだろうね?」
「僕達は、何処か甘い処が有るようだ。いつも騒動に巻き込まれる。」
「総体的に、日本人は甘いと思われているんだよ。」
二人は、土産物も買ったし、つけられない様に、大回りをしてホテルに戻った。

ホテルに戻った二人は、気を取り直して、お茶を飲んでいる。
「やっぱり、お茶を飲んでる方が無難だね?」
「最後に、お土産も買えたし、良い事にするわ。」
プログラムの講習も、明日で終わる。


 S-4  雑誌座談会とパーティ

明日は、ニューヨークへ飛ぶ。雑誌用の座談会が有るのだ。
「山賀さん、間に合いましたね?  少々心配をしていました。山賀さんには悪いのですが、正体が曝された事で、こちらでは、又盛り上がっています。あの本の著者名は、こちらでも売れてますのでね。大学でのエピソードは面白かったですね?  首席で入学されたのに、入学の挨拶を断ったり、学長と喧嘩をしたり、学生組織と揉めて、役職に付かなかったり、物語りとしても面白いです。」
「いや、出来るだけ、目立たない様にした積りですが、無理でしたね?」
「そうですか、顔を売るのが嫌いですか?」
「顔を知られていない方が、行動に自由が有ります。」
山香ヨシオとして、知られている賀生は、もっと大人しく、穏やかな少年だと認識されていた。解説書の書き方が優しいからだろうか?
それが、日本での行動を見ると、まるで悪戯っ子の様に見える。
一見すれば、その行動は権威に立ち向かう、ヒーローの様にも映るのだった。
ただ、私的な喧嘩は曝されて居なかった。それが不幸中の幸いである。
今日の座談会は、賀生と瞳だけがニューヨークへ来ている。そして、そこのパソコンで、ウェブ参加をしている。他の人達は、自国からのウェブ参加で有った。
「山賀さん、明日はパーティーになりますので、以前の様に服を借りて下さい。」
今回も、秋芳順子がパーティーに付き添った。

瞳と賀生、順子の三人は、PC 出版主催のパーティー会場に居る。
その三人が、隅の方のテーブルで雑談をしていると、中年の白人が、その席へ近づいて来た。アメリカ教務省の局長であった。
「久しぶりだな?  SNS で見たよ。中々面白い内容だった。局内では、その話題で盛り上がっていたぞ。」
「恐縮です。至らないところを見せてしまって。」
局長と話をしていると、長官まで現れた。
賀生は、折を見て挨拶に行く積もりだったのだが、向こうから来てしまった。
「こんな所に居たか?  今まで本名を伏せて、活躍していたんだな?」
「あ、ご無沙汰しております。まぁ、本名を出す程では無いと思いましたので。」
「あの暴露記事は面白かったよ。」
「いえ、あまり誉められた話しでも無いので。」
「喧嘩の原因は何だね?」
「入学試験の結果だけで、大学の用事をしろと言うので、揉めました。」
「大学の用事は、嫌いなのかね?」
長官は興味が有るのか、賀生に色々と聞いて来る。その人にすれば、些細な事なのだが、喧嘩で助けられた事も有り、親密感が有るのだろうか?
「少しぐらいは構いませんが、それを優先しろ等と言われるのは困ります。何の為に大学に入ったのか、解らなくなります。自分の仕事も有りますし。」
「学歴は付くと思うが?」
「学歴は付きますが、実力は付きません。大学の意味が有りませんので。」
「それはそうだな?  そうだ、今回は息子も来ている。会ってくれるか?」
「ぜひ、会いたいです。」
長官は、お付きの人に話している。その人は、小学生の子供を連れてきた。
「お兄さん、この前は有り難う。会いたかったです。」
「あの時は、バタバタしてたので、話も出来なかった。元気で良かった。」
「又、何処かで会いたいです。お姉さんも有り難う。」
「又会えたらいいね?  元気にしていてね。」
その子は、しばらく話してから、元の所へ帰って行った。


 S-5  教育庁

次の日二人は、関空直通便で日本に帰ってきた。
「やっぱり、日本の方が落ち着くな?」
「それは、日本人だもの。」
それから毎日、大学の講義には真面目に出席している。そんなある日、教育関係の国の機関から、大学へ電話が有った。マイクで盛んに、賀生を呼び出している。
やむを得ず、賀生は学長室まで出向いて行った。
「山賀ですが、何か有りましたか?」
「この番号に電話をして、その部局の、古池さんと話してくれますか?  」
学長の秘書が、話しかけて来た。
「分かりました。」
そこは、教育庁の部局の筈だが、何の用事だろうか?
賀生は疑問に思いながら、その番号へ電話をかけた。
「もしもし、山賀と言う者ですが、古池さんは居られますか?」
「古池ですが、昭洋大学の山賀君ですか?  一度東京へ出て来れないですか?」
「何の用事でしょうか?」
「他でも無いんですが、プログラム解説書の話しを、聞きたいと思いまして。」
「そちらの専門家に、聞かれた方が良いと思いますが?」
「著者に、話しを聞いて見たいんですが?」
どうやら、本の著者に会ってみたいようだが、本の事なら読めば分かる。
「読めば分かる筈ですが?」
「本の特徴を聞いて、推薦出来るか判断をしたいのです。」
「教育関係の部局なら、専門的な方が居られる筈です。初歩の解説なので誰でも読めますので。それでは失礼します。」
賀生は、電話を切ってしまった。
「用事は済みましたので、講義に戻ります。失礼しました。」
そう言って、賀生は講義室に戻ってしまった。
「又だ、彼奴は何故、あれだけ捻くれているんだ?」  
又、放送で呼出して居たが、賀生は無視を決め込んだ。
「山賀さん、まだ呼び出してるよ。行かないの?」
「今の電話だろう?  話しは済んだ。」
「国の機関でしょう?  逆らわない方が、いいんじゃない?」
「東京へ出て来いって言うから断わった。僕の出る話しでは無い。」
その頃、東京の教育局で、一人の局員が頭を抱えていた。
「山賀って奴、電話にも出なくなってしまった。何と言う奴だ?」
「アメリカの教務省の推薦だろう?  こっちは無視出来ないと言うのにな?」
「関西の支局から、大学へ直接行かせれば良いんじゃないか?」
結局、関西支局に、昭洋大学の件は任せる事になった。
数日して、関西支局員が、昭洋大学を訪問した。
「山賀さん、山賀さん、学長室まで、おいで下さい。」
「山賀賀生さん、学長室まで、おいで下さい。」
いくら、呼び出しても、賀生は現れなかった。インドへ講習に行っていたのだ。瞳も一緒だった。
「今日は居ない様ですね?  多分、外国へ行ってるんじゃ無いですか?」
「外国へ、何をしに行ってるんですか?」
「講習に行ってる様ですね?  休暇届けが良く出ている様です。」
「仕方が有りません。又来ます。」
大学は、あてになりそうに無い。
関西支局員は、その本を買い出版社を探した。本にはPC 出版と有った。
「教育局の者ですが、山賀さんに連絡は取れませんか?」
「今はインドですから、10日程先になります。電話を入れる様に言いますか?」
「お願いします。関西支局の前山です。連絡をお願いします。」
10日後、賀生と瞳は日本に帰って来た。
「本当に飛行機は疲れるな?  時間が長過ぎだ。」
「それでも、外国へ行きたい人は多いよ。」
賀生は、続きにPC 出版へ電話を入れた。
「こんにちは、山賀です。今帰ってきました。」
「ご苦労さんです。教育庁の部局から、電話が有りましたよ。」

出版社まで手を回して来たか?  仕方が無い。
「もしもし、山賀と言いますが、前山さんは居られますか?」
「前山です。待っていました。」
「何の用事でしょうか?」
「何処かで会えませんか?  少しなら動けますが?」
「それでしたら、明日の講義の後で、大学の所の駅前で良いでしょうか?」
「分かりました。昭洋大学の近くの駅ですね?」
次の日の講義の後、賀生は駅に向っている。その時ちょうど電話が来た。
「前山です。駅前の喫茶店に来て居ます。」
「分かりました。5分ぐらいで行けます。」
喫茶店に着いた賀生は、ウエイトレスに、前山を呼出して貰った。
「山賀さんですか?  前山です。」
「山賀です。確か植芝さんは、関西支局でしたよね?」
「植芝をご存知でしたか?  今は偉くなって東京ですよ。」
賀生は、植芝の意向で、テレビ座談会に出た事が有った。
「そうでしたか?  テレビで御一緒した事が有りますので。」
「山賀さんは、プログラムの初歩を書いて居られますね?」
「確かに、そんな本を書いた事が有ります。」
「それの講義を、一度して欲しいんですが?」
この人達は、何の為に働いているのだろう?  あんな本なら誰でも読める。誰でも理解できる。賀生は、説明に来いと言う意味が分からなかった。
「あれは初歩ですから、誰でも読める筈ですが?」
「教科書に使えるかどうかを、判断したいのです。」
「それは読んで見て決めてください。講義は意味が有りません。」
要は、権威を知らしめたいだけなのだろうと、賀生は思っている。
「素人なので、一度聞きたいのですが?」
「素人に読めるように書いています。中学生の教科書補助ですから。」
「それでも一度、説明が欲しいのです。」
「人の口を介せば、本の内容と違いが出ます。素直に本で決めて下さい。それに、教育機関ですから、専門家は居られる筈です。この話しはこれ迄ですね?」
「教科書の話しが、止まる事になりますが?」
「それは、そちらの問題です。私は、そんな政治問題に関与しません。」
「困りましたね?」
「素直に判断をされれば良い話しです。それでは失礼します。」
賀生はさっさと、その場を離れた。
前山は支局に帰って、その話しを説明した。録音も聞かせた。
「これは、箸にも棒にも掛からんな?  この音声を東京に送っておけ。しかし、植芝さんと知り合いか?  かなわんな?」
その録音記録を再生した、東京教育庁の支部では、皆んな唖然としていた。
「こいつは、理屈の塊だな?  本を売り込む気は無いようだ。」
「しかし、これは正論だよ。反論の余地が無い。植芝氏の知り合いか?  話しを通しておいた方が良さそうだ。」
「アメリカの教務省が惚れる筈だな?  冷静になってから、もう一度聞こう。」
「そうですね?  この子は営業しようとは思って居ない。あくまで理屈だ。」
「考えれば、却って正直だと言う事だよ。」
東京支局員達は、植芝に経緯を話した。
「植芝さん、山賀と言う男子学生を知ってますか?」
「知っているよ。以前テレビに、一緒に出た事が有る。」
「プログラムの解説書を、推薦する事で話が進んでいます。」
「そこ迄は知っているんだが、本人を知っているだけに、口を出しにくかった。」
「なる程、そう言う事情でしたか?」
植芝としては、なまじ賀生を知っているだけに、口を出しにくかったのだ。
癒着と思われるのも、お互いに拙い事になる。

賀生は、この件を、そのまま忘れていた。
ところが、大学側が、教育機関へ問い合せをした。
「プログラム初歩の、本の件はどうなって居るでしょうか?」
「あのままで進展は有りません。上の省に上げたままです。」
「山賀君は、説明に行った筈ですが?」
「その件は、山賀さんに断られました。本で判断をしてくれと言う事でした。」
「わかりました。」
昭洋大学では、教授達も含めて、会議を開いた。
「どうしたものだろう?  本人は説明を断わってしまった。」
「当校の学生の著書が、教育に使われるチャンスなのに、説明にも行っていない。」
「一応うちから、推薦状を出して置きましょう。それしか有りません。」


 S-6  大学退学

それから、しばらくは副学長も大人しくしていた。しかし、秘書が家の用事で、数日間休んだ事があった。休みが明けて席につくと、退学届けが置いてあった。
それには、山賀賀生の名前が有った。
「副学長、これは何ですか?  いつ出されたんですか?」
「昨日、突然持って来た。訳の分からん奴だ。」
秘書が周囲に聞いて見ると、副学長が、山賀賀生を呼び出していたそうだ。
そして昨日、山賀賀生が退学届を置いて行ったと言う。
秘書の玲子は、神衣瞳に電話を入れた。
「もしもし、神衣さんですか?  池山玲子です。何が有ったんですか?」
「プログラムの本の事で、教育庁へ説明に行かないと、卒業が危ないぞって脅されたらしいんですよ。」
「やっぱり、そんな事を言ったのね?  今度は無理でしょうね?」
「絶対に無理ですね。山賀さんは、下から出られると弱いんですが、上から押さえつける事は無理ですよ。今度はどうにもなりません。」
「致し方ないわね?  神衣さんにも迷惑かけたわね?  ごめんなさい。」
「いえ、前に言ったように、私も折りを見て、やめる事になりますので。」
瞳は、親と相談をして、次の日に退学届けを出した。それから三日程して、教育庁から大学に電話があった。電話には、秘書の玲子が出た。
「山賀さんの件は、あの儘ですか?  駄目のようなら、こちらで電話をしますが。」
「山賀さんは退学されまして、当校には居られないのですが?」
「やめてしまったんですか?  何か有りましたか?」
「教育庁に説明に行かないと、卒業が危ないと言われて、副学長と揉めてしまって、結局、文学部の一位と二位が、同時に退学されました。」
「分かりました。有り難う。」
ここは、教育庁の有る部局の事務室である。
「山賀君は、大学をやめたそうな。」
「何で今頃に?」
「副学長と揉めたらしい、うちが原因だ。説明に行かないと卒業を止めると言われたそうだ。それで、文学部の一位と二位が、一緒にやめてしまったらしい。」
「うちが原因なら拙いな?  それに、山賀君が何故文学部なんだ?」
「大学の話しなら文学部だ。だけど、謝って置かないと拙いよ。仲裁は出来るが、どうしたものかな?  それにしても面白い子だな?」
「三日程置いて、直接電話をしてみよう。」
それから二日目、前山から、賀生に電話が掛かった。
「山賀さんですか?  前山です。」
「山賀です。何か?」
「うちが原因で、大学をやめられたそうですね?  申し訳有りません。大学に戻られる気が有りましたら、仲裁は出来ますが、どうでしょうか?」
「それは必要有りません。あの大学に戻っても、いずれ、やめる事になります。」
「そうですか?  申し訳ありません。」
前山は、植芝に電話を入れた。
「局長、山賀君が大学をやめた様です。うちが一枚絡んでいます。」
「分かった、こちらから電話を入れて置く。」
植芝は、山賀賀生へ電話を入れた。
「もしもし植芝ですが、久し振りですね?」
「あっ、こんにちは、お久し振りです。」
「今回、うちのせいで、大学をやめられたそうですね?  大丈夫ですか?」
「御心配掛けまして恐縮です。大丈夫です。遅かれ早かれ、やめる事になりますので。今度、違う大学を受験する積もりです。又、報告します。」
賀生は、植芝には、当たり障りの無い事を言って置いた。

賀生は、大学をやめる事には、後悔はしていない。同じやめるなら、早い方が良いとも思っていた。だから、その部局の責任にする積りは無い。
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