乙女な女王様

慧野翔

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女王様と初下校・4

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「どうぞ、狭い家だけど」
「お邪魔します」

 家の鍵とドアを開け、中へ入るように優弥を促すと、少し緊張した様子で、優弥は靴を脱ぎ家へとあがった。

(優弥のとこのお屋敷に比べたら、かなり小さく感じるんだろうなぁ)

 優弥の家に行ったことはないが、深海家がかなりの資産家で優弥はそこのお坊ちゃんだと言うことは、学園の誰もが知っている事実だ。
 改めてそれを考えると、自分と優弥の立場の違いを思い知らされた気がする。
 なんだか自分達が学園内でエッチをしていたことが、現実ではないような気さえしてくる。

「……瀬、高瀬?」

 優弥の自分を呼ぶ声に、千歳は我に返る。

「あっ、何?」
「だから、ご家族は?って……仕事なのか?」

 話を聞いていなかった千歳に怒ったのか、優弥は頬を膨らませて聞いてきた。
 優弥がこういう子供っぽい表情を見せてくれるのは自分だけだ。

(そうだ、これが俺の現実じゃないか)

 優弥がどんなお坊ちゃんだろうと、今こうして目の前に、千歳の恋人としての優弥はいる。
 それを優弥自身も望んでくれているのだから、千歳が卑屈になる理由はない。

「親父とお袋は旅行中、姉貴は友達のとこ行ってるから。今日は俺一人なの」

 吹っ切れた千歳はそう言いながら、膨れた優弥の頬をつついて階段へと向かう。

「俺の部屋、二階だから。おいで」

 笑顔で千歳がそう言うと、優弥はおとなしく後をついてきた。
 部屋に入るなり、優弥は物珍しそうに室内を見渡している。
 そんな優弥を千歳はベッドに腰掛けて眺めていた。

「優弥の気にしているような物は残念ながらないよ」
「俺が気にしているような物?」

 本棚の雑誌を眺めていた優弥が不思議そうに聞き返してくる。

「エッチな雑誌とか」

 これは嘘。
 千歳だって年頃の男だし、そういった物に興味がないわけじゃない。
 もっとも普通に本棚にしまうなんてことはしないが。

(でも……優弥は本当にそういうのに興味なさそうだよなぁ。可愛いというか、純粋というか……)
「なっ! 俺は別にっ……」

 千歳の冗談にムキになって言い返そうとした優弥の言葉を遮って、千歳は言う。

「女の子の形跡とかもね。家族と友達以外、この部屋入れたことないから」
「え……」

 優弥が驚いたように、千歳を見てくる。
 でも、これは本当。
 優弥を抱くようになってからは、学校内で優弥を抱くことしかなかったし、それ以前は外だったり、一人暮らしのお姉さんの家に行くことが多かった。
 だから……。

「付き合っている子を部屋に入れたの、優弥が初めてだよ」

 そう言うと、泣き出しそうな……嬉しそうな表情の優弥を手招きし、千歳は自分の横へと優弥を座らせた。

「好きだよ、優弥」
「うん……俺も」

 優弥の頭を抱き寄せて、優しくその頬に口づけると優弥もちゃんと答えてくれた。
 千歳は邪魔になる眼鏡を外して、テーブルへと置くと優弥の身体を強く抱き締め、深く唇を合わせる。

「ん……っ、あ……」

 唇を離すと、名残惜しそうな優弥の表情が目に入ってきた。
 優弥の後頭部に手を回して、そのまま抱き寄せる。

「……何時くらいまで平気?」

 優弥の髪の毛を撫でながら、そう聞くと残念そうに答えが返ってくる。

「……十時前には帰るって言ってある」
(まだ多少の時間はある……か)
「シャワー、浴びる?」

 千歳が聞くと、優弥は不安そうに見上げてくる。

「本当に……誰も来ない?」
「大丈夫だよ。姉貴はカラオケでオールするって張り切ってたし」
「じゃあ……借りる」

 少し安心したのか、優弥が小さくそう答えたので、千歳はもう一度、優弥の頬にキスをしてから風呂場へと案内した。

「タオル、後でここに置いておくから」
「うん……」

 風呂場の説明を終えた千歳は、タオルを取りに自分の部屋へと戻った。
 本当は一緒に入りたかったのに、恥ずかしがった優弥に断られてしまったのだ。
 ここで優弥の機嫌を損ねるのも嫌なので、とりあえずはおとなしく引き下がる。

「あっ、そうだ……」

 引き出しからタオルを出した千歳は、ふと、帰りに和彦から袋を渡されたことを思い出した。

(中身、何だったんだ?)

 あの時の亮太の態度を思い出すと、少し不安要素があるが千歳はとりあえず中身を確認してみることにする。

「…………」

 カバンの中の袋を開けて、中身を取り出した千歳はそれを見た途端、絶句した。

「和彦……なんでお前がこんなの持ってんだよ」

 袋の中身は、簡単に言ってしまえばマッサージなどにも使えるオイルだった。
 でも、それはただのオイルではなく、そのボトルにはしっかりと『媚薬入り特製オイル』の文字が書かれている。
 用途の説明書きを読んでも、それが普通のドラッグストアなどで売られているものではないことがわかる。
 普段、あまり和彦は女の話をしないからこのプレゼントは意外だった。

(でも、この用途をみる限り……和彦ってもしかして。だって、女相手に必要ないよな、ここまで本格的なの……)

 そんなことを思っていると、袋の底から一枚の紙が出てきた。
 そこには和彦の文字で、

『上手く会長と仲直り出来たか?
 きっと身も心も
 盛り上がっているであろう二人に
 俺がいい物をあげよう!
 人体に無害で身体の中に入っても
 口にしても大丈夫だし(ちなみにバニラ味)
 媚薬効果もバッチリある!
 亮太で実証済みだから安心して使えよ♪

 きっと今夜は会長のお泊まり決定だな』

と、楽しそうに書いてあった。
 途中の「亮太で実証済み」ってところは、あえてどう実証したのかは考えないようにしておく。
 千歳は、和彦からのプレゼントとタオルを二人分手に取ると、優弥のいる風呂場へと向かったのだった。
 なんにせよ……。






     和彦、偉いっ!

     お前の親友で良かったぜ




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