18 / 23
女王様と初下校・4
しおりを挟む「どうぞ、狭い家だけど」
「お邪魔します」
家の鍵とドアを開け、中へ入るように優弥を促すと、少し緊張した様子で、優弥は靴を脱ぎ家へとあがった。
(優弥のとこのお屋敷に比べたら、かなり小さく感じるんだろうなぁ)
優弥の家に行ったことはないが、深海家がかなりの資産家で優弥はそこのお坊ちゃんだと言うことは、学園の誰もが知っている事実だ。
改めてそれを考えると、自分と優弥の立場の違いを思い知らされた気がする。
なんだか自分達が学園内でエッチをしていたことが、現実ではないような気さえしてくる。
「……瀬、高瀬?」
優弥の自分を呼ぶ声に、千歳は我に返る。
「あっ、何?」
「だから、ご家族は?って……仕事なのか?」
話を聞いていなかった千歳に怒ったのか、優弥は頬を膨らませて聞いてきた。
優弥がこういう子供っぽい表情を見せてくれるのは自分だけだ。
(そうだ、これが俺の現実じゃないか)
優弥がどんなお坊ちゃんだろうと、今こうして目の前に、千歳の恋人としての優弥はいる。
それを優弥自身も望んでくれているのだから、千歳が卑屈になる理由はない。
「親父とお袋は旅行中、姉貴は友達のとこ行ってるから。今日は俺一人なの」
吹っ切れた千歳はそう言いながら、膨れた優弥の頬をつついて階段へと向かう。
「俺の部屋、二階だから。おいで」
笑顔で千歳がそう言うと、優弥はおとなしく後をついてきた。
部屋に入るなり、優弥は物珍しそうに室内を見渡している。
そんな優弥を千歳はベッドに腰掛けて眺めていた。
「優弥の気にしているような物は残念ながらないよ」
「俺が気にしているような物?」
本棚の雑誌を眺めていた優弥が不思議そうに聞き返してくる。
「エッチな雑誌とか」
これは嘘。
千歳だって年頃の男だし、そういった物に興味がないわけじゃない。
もっとも普通に本棚にしまうなんてことはしないが。
(でも……優弥は本当にそういうのに興味なさそうだよなぁ。可愛いというか、純粋というか……)
「なっ! 俺は別にっ……」
千歳の冗談にムキになって言い返そうとした優弥の言葉を遮って、千歳は言う。
「女の子の形跡とかもね。家族と友達以外、この部屋入れたことないから」
「え……」
優弥が驚いたように、千歳を見てくる。
でも、これは本当。
優弥を抱くようになってからは、学校内で優弥を抱くことしかなかったし、それ以前は外だったり、一人暮らしのお姉さんの家に行くことが多かった。
だから……。
「付き合っている子を部屋に入れたの、優弥が初めてだよ」
そう言うと、泣き出しそうな……嬉しそうな表情の優弥を手招きし、千歳は自分の横へと優弥を座らせた。
「好きだよ、優弥」
「うん……俺も」
優弥の頭を抱き寄せて、優しくその頬に口づけると優弥もちゃんと答えてくれた。
千歳は邪魔になる眼鏡を外して、テーブルへと置くと優弥の身体を強く抱き締め、深く唇を合わせる。
「ん……っ、あ……」
唇を離すと、名残惜しそうな優弥の表情が目に入ってきた。
優弥の後頭部に手を回して、そのまま抱き寄せる。
「……何時くらいまで平気?」
優弥の髪の毛を撫でながら、そう聞くと残念そうに答えが返ってくる。
「……十時前には帰るって言ってある」
(まだ多少の時間はある……か)
「シャワー、浴びる?」
千歳が聞くと、優弥は不安そうに見上げてくる。
「本当に……誰も来ない?」
「大丈夫だよ。姉貴はカラオケでオールするって張り切ってたし」
「じゃあ……借りる」
少し安心したのか、優弥が小さくそう答えたので、千歳はもう一度、優弥の頬にキスをしてから風呂場へと案内した。
「タオル、後でここに置いておくから」
「うん……」
風呂場の説明を終えた千歳は、タオルを取りに自分の部屋へと戻った。
本当は一緒に入りたかったのに、恥ずかしがった優弥に断られてしまったのだ。
ここで優弥の機嫌を損ねるのも嫌なので、とりあえずはおとなしく引き下がる。
「あっ、そうだ……」
引き出しからタオルを出した千歳は、ふと、帰りに和彦から袋を渡されたことを思い出した。
(中身、何だったんだ?)
あの時の亮太の態度を思い出すと、少し不安要素があるが千歳はとりあえず中身を確認してみることにする。
「…………」
カバンの中の袋を開けて、中身を取り出した千歳はそれを見た途端、絶句した。
「和彦……なんでお前がこんなの持ってんだよ」
袋の中身は、簡単に言ってしまえばマッサージなどにも使えるオイルだった。
でも、それはただのオイルではなく、そのボトルにはしっかりと『媚薬入り特製オイル』の文字が書かれている。
用途の説明書きを読んでも、それが普通のドラッグストアなどで売られているものではないことがわかる。
普段、あまり和彦は女の話をしないからこのプレゼントは意外だった。
(でも、この用途をみる限り……和彦ってもしかして。だって、女相手に必要ないよな、ここまで本格的なの……)
そんなことを思っていると、袋の底から一枚の紙が出てきた。
そこには和彦の文字で、
『上手く会長と仲直り出来たか?
きっと身も心も
盛り上がっているであろう二人に
俺がいい物をあげよう!
人体に無害で身体の中に入っても
口にしても大丈夫だし(ちなみにバニラ味)
媚薬効果もバッチリある!
亮太で実証済みだから安心して使えよ♪
きっと今夜は会長のお泊まり決定だな』
と、楽しそうに書いてあった。
途中の「亮太で実証済み」ってところは、あえてどう実証したのかは考えないようにしておく。
千歳は、和彦からのプレゼントとタオルを二人分手に取ると、優弥のいる風呂場へと向かったのだった。
なんにせよ……。
和彦、偉いっ!
お前の親友で良かったぜ
0
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
アプリで元カノを気にしなくなるくらい魅力的になろうとした結果、彼氏がフリーズしました
あと
BL
「目指せ!!魅力的な彼氏!!」
誰にでも優しいように見えて重い…?攻め×天然な受け
⚠️攻めの元カノが出て来ます。
⚠️強い執着・ストーカー的表現があります。
⚠️細かいことが気になる人には向いてません。
合わないと感じた方は自衛をお願いします。
受けは、恋人が元カノと同級生と過去の付き合いについて話している場面に出くわしてしまう。失意の中、人生相談アプリの存在を知る。実は、なぜか苗字呼び、家に入れてもらえない、手を出さないといった不思議がある。こうして、元カノなんか気にしなくなるほど魅力的になろうとするための受けの戦いが始まった…。
攻め:進藤郁也
受け:天野翔
※誤字脱字・表現の修正はサイレントで行う場合があります。
※タグは定期的に整理します。
※批判・中傷コメントはご遠慮ください。
ただの雑兵が、年上武士に溺愛された結果。
みどりのおおかみ
BL
「強情だな」
忠頼はぽつりと呟く。
「ならば、体に証を残す。どうしても嫌なら、自分の力で、逃げてみろ」
滅茶苦茶なことを言われているはずなのに、俺はぼんやりした頭で、全然別のことを思っていた。
――俺は、この声が、嫌いじゃねえ。
*******
雑兵の弥次郎は、なぜか急に、有力武士である、忠頼の寝所に呼ばれる。嫌々寝所に行く弥次郎だったが、なぜか忠頼は弥次郎を抱こうとはしなくて――。
やんちゃ系雑兵・弥次郎17歳と、不愛想&無口だがハイスぺ武士の忠頼28歳。
身分差を越えて、二人は惹かれ合う。
けれど二人は、どうしても避けられない、戦乱の濁流の中に、追い込まれていく。
※南北朝時代の話をベースにした、和風世界が舞台です。
※pixivに、作品のキャライラストを置いています。宜しければそちらもご覧ください。
https://www.pixiv.net/users/4499660
【キャラクター紹介】
●弥次郎
「戦場では武士も雑兵も、命の価値は皆平等なんじゃ、なかったのかよ? なんで命令一つで、寝所に連れてこられなきゃならねえんだ! 他人に思うようにされるくらいなら、死ぬほうがましだ!」
・十八歳。
・忠頼と共に、南波軍の雑兵として、既存権力に反旗を翻す。
・吊り目。髪も目も焦げ茶に近い。目鼻立ちははっきりしている。
・細身だが、すばしこい。槍を武器にしている。
・はねっかえりだが、本質は割と素直。
●忠頼
忠頼は、俺の耳元に、そっと唇を寄せる。
「お前がいなくなったら、どこまででも、捜しに行く」
地獄へでもな、と囁く声に、俺の全身が、ぞくりと震えた。
・二十八歳。
・父や祖父の代から、南波とは村ぐるみで深いかかわりがあったため、南波とともに戦うことを承諾。
・弓の名手。才能より、弛まぬ鍛錬によるところが大きい。
・感情の起伏が少なく、あまり笑わない。
・派手な顔立ちではないが、端正な配置の塩顔。
●南波
・弥次郎たちの頭。帝を戴き、帝を排除しようとする武士を退けさせ、帝の地位と安全を守ることを目指す。策士で、かつ人格者。
●源太
・医療兵として南波軍に従軍。弥次郎が、一番信頼する友。
●五郎兵衛
・雑兵。弥次郎の仲間。体が大きく、力も強い。
●孝太郎
・雑兵。弥次郎の仲間。頭がいい。
●庄吉
・雑兵。弥次郎の仲間。色白で、小さい。物腰が柔らかい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる