愛の集う場所 ~Magic to love~

慧野翔

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~ 真之介&清隆 ~

遠距離恋愛の本音

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 すると、電話越しに清隆の優しい声が聞こえた。

『悪い、そんなつもりで言ったんやない。真が俺のために頑張ってくれてるんもわかってる』

 その真剣なトーンに、清隆の言葉が本当だということが伝わる。

『でも、そばにおらんと不安やねん。東京で変な奴に引っかかってへんかとか……』
「そんな心配すんの、お前だけやて」
『そんなことない!』

 急に甘い言葉を喋りだした清隆に少し呆れながら真之介がそう言うと、すごい勢いで遮られた。

『お前は社交的過ぎやから、俺がいつも心配してんのがわからんのか?』
「キヨがインドア派なだけやろ」
『東京に住んで一ヶ月もしないうちに、行きつけのカフェの店員と友達になるってどんだけ社交的やねん!』
(ああ……確かにそんなこともあったな)

 仕事帰りにふと立ち寄ったカフェの店員が同世代の男ばっかりいて、話してるうちに仲良くなりプライベートで一緒に飲みに行ったりした。

「最初の時、いきなりお前東京に乗り込んできたっけ」

 当時のことを思い出して真之介が笑いをこらえて言うと、気恥ずかしかったのか清隆が拗ねたように答えた。

『そりゃ、驚くやろ。見知らぬ男と完全に酔っ払ってる恋人が一緒に写メに映ってたら……まあ、今では信用してるけどな』
「当たり前や」

 そう、まだ真之介が上京したてのころ、泥酔しながら送った写メを見ていきなり次の日に清隆が東京に押し掛けてきたことがある。
 もっとも、真之介はそんなメールを送ったことすら覚えていなくて、突然現れた清隆に驚かされたのだが。
 その清隆の騒動がきっかけで、カフェのメンバーに二人の仲がバレ、今では清隆共々、カフェのメンバーとは交流を深めている。
 冷静に考えれば、よく軽蔑もされずに受け入れられたものだ。

『あいつらがおれば、お前も変に浮気とかしやんやろうしな』
「アホ! 俺の心配よりお前や。一人は寂しいって泣きついてくるって綾から聞いたで」

 真之介がそう言うと、電話越しに清隆が小さく舌打ちしたのが聞こえた。

『あいつ……真には言うなって言うたのに』
「万が一、浮気でもしてみろ? 即、別れるからな」

 その言葉に清隆はむきになったように言い返してきた。

『誰がそんなことするか! いつも、一人寂しく慰め……』
「余計なことは言わんでいい!」

 なんだか変な方向に話がいきそうで真之介が慌ててそう遮ると、少し黙ったかと思った清隆が甘い声で囁いた。

『なあ、せっかくやし……このままテレフォンセックスでもせえへん?』

 その声に、悔しいが真之介はぞくっとした。
 だが、ここで流されたら清隆の思うつぼになってしまうと思い直し真之介は大声で答える。

「せえへん! そんな用なら、もう電話切るぞ!」

 清隆を想像しながらならともかく、本人の声を聞きながら一人でなんて、会いたい欲求に負けそうになるから嫌だ。
 でも、そんなことを伝えたら清隆がいい気になるだろうから、絶対に言わないと真之介は決意する。
 そんな真之介の本心に気づいているのかいないのか、清隆が焦ったように言った。

『冗談やて! もう少しくらい声聞かせてぇや。あっ、そうや。物件の方は? 良さそうなのあったか?』

 あからさまに話題を変えた清隆が何だか可愛く思えてしまい、真之介は清隆に聞こえないように小さく笑うとさっきまで薫と話しながら見ていた情報を話し始めた。
 それからしばらく真面目な話を清隆として、真之介はふと時計へと目をやった。

「お、もうこんな時間か」

 時計の針はすでに二十三時を超えていた。

『明日も仕事、早いんか?』
「ん~、ちゃんと寝とかへんとお客に変な顔見せるわけにいかへんしな。営業は大変なんやで」
『そっか……』

 少し落ち込んだような清隆の呟きが聞こえ、真之介はわざと明るく言う。

「お前も綾達にあんま迷惑かけへんようにな」
『子供扱いすんな!』
「大きい子供が何言うてんねん」

 電話越しでも清隆がふて腐れてんのがわかる。
 真之介はそんな清隆に言葉にならない笑みを零して言った。

「じゃあな、おやすみ」
『おお、おやすみ。仕事頑張れや』
「おう!」

 そして、真之介は名残惜しい気持ちを抑えて通話を切った。

「はぁ……」

 途端に訪れる静寂の時間。
 この寂しさは薫との電話では感じることのない、恋人である清隆に対してだけ湧いてくる感情だ。

「まだ、一年経たへんのか」

 携帯画面のカレンダーを眺めながら真之介は小さく呟いた。
 真之介が東京に来たのは去年の冬……そして、今が初夏。つまり、清隆との遠距離恋愛が始まってから一年経っていないのだ。

「まあ、こんなに離れてんのも初めてやけどな」

 真之介と清隆が初めて会ったのは高校二年の時のクラス変えで、たまたま席が隣同士になったのが喋るきっかけだった。
 それで、何となく一緒にいることが多くなったのだが、清隆は身体を動かす授業や行事はいつも不参加で、交流関係もなぜか三年の先輩達に知り合いが多く、真之介以外の同級生とはどこか距離を置いているような不思議な存在だった。
 だが、真之介が後から聞いた話によると、どうやら清隆は真之介達よりも一つ年上で病気療養のために長期欠席をしていて、完治してから留年という形で復学したらしい。
 なので三年生に知り合いが多いのも当然のことで、クラスに馴染めずにいたのも自分は年上だから……と、変な遠慮をしていたからだと知った。
 でも、真之介としては清隆が年上だとわかったからといって態度を変えるのも違和感があって、結局そのままを貫くことにした。
 それどころか、意外と人見知りな清隆を積極的にクラスに馴染ませようとした結果、本人は『病弱だったから』と言い訳していたが、実際は病気とは関係なく根っからのインドア派で面倒くさがりやということが判明して、真之介は清隆のことを放っておけなくなってしまったのだ。
 そんな時に、清隆から『付き合って欲しい』と告白され……真之介はそれを受け入れた。
 高校を卒業してからは社会人の真之介とフリーターの清隆とで生活リズムが違ってしまうからという理由で一緒に住むことになり、なんだかんだと毎日顔を合わせていたのだから、今のこの状態は確かにお互い寂しく感じてもおかしくないのかもしれない。

「早よこっちに来いや」

 絶対に本人には言わない願望を呟いた真之介は、おとなしくベッドへと潜り込んだのだった。


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