愛の集う場所 ~Magic to love~

慧野翔

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~ 真之介&清隆 ~

賑やかな晩餐

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「じゃあ、お疲れ様~!」

 遊馬の掛け声で三人は手にしたグラスのビールを合わせ、ひとまず乾杯をした。
 それを美味しそうに半分ほど飲むと、遊馬が笑顔で言う。

「さすがに餃子は包んでたら時間がないから出来合いだけど、チャーハンは手作り! 真に作ったの初めてだよね? 食べて食べて!」

 よほど味に自信があるのか遊馬は大皿から取り分けたチャーハンを半ば強引に真之介へと渡してくる。

「ああ……いただきます」

 それでも、大皿にはまだかなりの量が残っていて、真之介は戸惑いながらも受け取ったチャーハンを口へと運ぶ。

「……あ、うまっ」
「でしょ! じゃ、俺もいただきまーす」

 真之介の反応に満足したのか、遊馬は元気よく両手を合わせてから自分もチャーハンを口に入れた。ちなみに奏太はすでに自分の分を取り分けて静かに食べ始めている。

「で、なんで最近、カフェに来ないの?」

 餃子を掴んだ瞬間にいきなり遊馬にそう聞かれ、真之介の箸から餃子が皿へと落ちる。

「どうせ、まだ例の同僚とぐだぐだとケンカして悩んでんだろ?」
「うるさいな」

 奏太に呆れたように言われて、真之介は再度、餃子を掴み直してふて腐れたように一言、言い返す。

「ん~、それなんだけどさ。真は転職したくないの?」
「別にそういうわけじゃ……」

 真っ直ぐに遊馬に聞かれてしまい、真之介は呟くように答える。
 そもそも、真之介が東京に出てきたのは清隆が東京で会社を作ると言い出したからだ。
 それを支えるために先に東京に来たのだから、いつかは転職する覚悟だってもちろん最初からある。

「じゃあ、何を悩んでるわけ?」

 素直な疑問として聞いてくる遊馬へは、真之介の代わりに奏太が答えた。

「仲良しの同僚に仕事辞める理由を隠してたら怒られて口きいてもらえなくなったんだと」
「え、なに、その可愛いケンカ」

 奏太の言葉を聞いた遊馬は餃子を食べようと開けた口をそのままに、少し驚いた表情を見せたかと思うと、ポツリとそんな言葉を零した。

「ほんと、小学生かって話だろ?」
「素直に恋人を手伝うって言えばいいんじゃないの?」
「男の恋人がいるって言えないって……だいたい、それだって男って言わないで誤魔化せばいいだけだし、バカ正直に言う必要ないっての」

 遊馬からの問いには全て奏太が、しかも毒舌付きで返してくれるので真之介はもう黙って目の前のチャーハンを食べるしかない。

「まあ、真は素直だからね。ウソはつけないか」
「そういう遊馬の方こそ、嘘つかれへんタイプやろ」
「俺?」

 真之介に言われ、遊馬は驚いたように自分を指差して聞き返してきた。
 だが、次の瞬間、はっきりとした声で言う。

「俺は嘘つく必要ないもん。とよちゃんとの関係、隠すつもりないし」

 その堂々とした宣言に真之介は驚き、奏太は予想の範囲内だったのか呆れたように一息吐いただけだった。

「俺は迷いなくとよちゃんが好きって言えるし、とよちゃんだって俺を好きでいてくれてるって自信もある。だから、周りがどう思おうが付き合ってることを隠さないよ」

 迷いのない遊馬の言葉に真之介がなんと言葉にしようか迷っていると、さっきまでの真剣さが嘘かのように遊馬がニコッと笑う。

「さっき冷蔵庫に入れて置いたビール取ってくんね」

 そう言うと遊馬は立ち上がり冷蔵庫の方へと向かう。

「あいつらしい言葉でしょ? リーダーへの想いが強すぎんだよ」
「…………」

 遊馬の背中を見送った奏太がポツリと呟いた言葉に黙っていると、奏太は今度は真之介の方へと顔を向けて言った。

「同僚を驚かせたくないからキヨのことを言えないって言うけどさ、本当はお前自身がキヨとの関係に負い目を感じてんじゃないの? 自分自身に迷いがあるから、人に堂々と言えない。違う?」
「……アキなら、堂々と言えるんか?」
「堂々と言う以前に、相手もいないから。まあ、そもそも隠さなきゃいけないような相手、好きになんないと思うし」

『俺、堅実派なのよ』と奏太が冗談めかして言うと、戻ってきた遊馬が新しいビールを置きながら不思議そうな顔をする。

「なんの話?」
「恋愛って大変だなって話」
「え~!なに、アキ、恋愛してんの? それって三次元?」
「お前、俺のこと馬鹿にしてるだろ」

 わいわいと騒ぎ出す奏太と遊馬を眺めながら、真之介は小さく溜め息を吐いた。
 今日は、なかなかに騒がしい夜になりそうだ。



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