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~ 真之介&清隆 ~
凸凹コンビの襲撃
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それから数日経っても、真之介は圭とちゃんと話せないまま仕事から週末の家路へとついていた。
何度か覚悟を決めて圭に話しかけようとしたが、圭の方が完全に怒っているようで目を合わせてくれようとすらしない。
(圭くん、結構頑固なとこあるからな~)
男臭くない中性的な外見からは意外なほどに、圭が頑固で男らしい性格なのはさすがに付き合いの深い真之介にはわかっていた。
だからこそ、こうやって圭が一度本気で怒ってしまったらそう簡単には元に戻らないことも知っている。
だが、はっきりとした時期は決まっていないとはいえ、確実に真之介が退職するまでの時間は減ってきているのだ。このままでは、圭と気まずい関係のまま終わってしまう可能性もある。
「ほんま、どうしたらいいねん」
そう呟いてうな垂れていた頭を上げると、マンションの入り口に二つの人影を見つけた。
「……アキ、遊馬!」
予想外の人物達に真之介が驚いた声をあげると、それに気づいた遊馬が腰かけていた階段から素早く立ち上がり、大きく真之介へと手を振った。
「おかえり~、真!」
「あ、ただいま……って、え?」
いまいち状況が理解できていない真之介を見て、遊馬と同じく階段へと座っていた奏太が怠そうに立ち上がり、服の汚れをはらいながら言った。
「遅い。いくら夕方とはいえ、こんな暑い中待たせるなよな」
「俺、なんか約束しとったっけ?」
奏太に責められ、真之介は必死にここ数日の記憶を手繰り寄せてみるが二人と約束をした覚えがない。
自分だけが忘れていて二人を待たせていたとしたら、本当に申し訳ない。
そう反省しかけていた真之介だったが、次の遊馬の言葉でそれが無駄なことだと知る。
「ううん。俺らが勝手に来ただけ」
「それなら遅いって文句言うな、サラリーマンの帰宅時間としては普通やろ! だいたい事前に連絡くらい……」
「あ~、もううるさい。とにかく、部屋入れてよ、暑いんだから」
全く悪びれた様子のない奏太に真之介はこれ以上何を言っても無駄だと判断し、ふて腐れながら二人を部屋へと招き入れた。
「で、何の用やねん?」
玄関の戸締りをして真之介が二人へと問いかけると、遊馬が笑顔で答える。
「俺は専門の課題提出で今日まで仕事休み貰ってたの。で、アキは今日は早番だったからさ、たまには真と飲もうかって。最近、真、カフェにも顔出さないじゃん」
確かに遊馬の言う通り、ここ最近は圭とのことで悩んでいてカフェへと寄る余裕すらなかった。
「で、悩みとかさ気兼ねなく話すには真の家のがいいんじゃないかって、アキが」
「え……?」
遊馬の言葉で真之介が奏太の方へと向くと、そのことは言わないように口止めしていたのか恨めしそうに遊馬を睨んだ奏太が、ばつが悪そうに呟いた。
「週末の飲み屋はどこも混んでるだろうし、お前達酔っ払いが店で迷惑かけないように配慮しただけ。俺一人で面倒見切れないし」
そう悪態をつく奏太だったが、それが本心ではなく本当は真之介のことを心配してくれているだということが、真之介本人にも伝わる。
「真、台所借りていい? 材料買ってきたからさ、特製チャーハン作ってあげる」
手にしていたスーパーの袋を見せながら遊馬が言うと、すかさず奏太が言葉を続けた。
「遊の料理、見た目はともかく味は大丈夫だから。その間にカネは風呂入って着替えちゃえば? 自分ちなんだし」
「見た目はともかくってなんだよ!」
「お前の料理は豪快すぎんだよ。だいたい味付けの目分量が分量じゃなくて秒数っておかしいからな」
「でも、とよちゃんは美味しいって言ってくれるもん」
「だから、あの作り方でそうなることが奇跡なんだよ」
袋の中の食材を出しながら騒いでいる二人の姿に、真之介はどこか癒しを感じて笑みを零してしまう。
二人の言い合いを止めるのも勿体ない気がして、真之介はお言葉に甘えて汗を流してくることにした。
きっと、風呂から上がる頃には遊馬特製のチャーハンとやらも出来ているだろう。
何度か覚悟を決めて圭に話しかけようとしたが、圭の方が完全に怒っているようで目を合わせてくれようとすらしない。
(圭くん、結構頑固なとこあるからな~)
男臭くない中性的な外見からは意外なほどに、圭が頑固で男らしい性格なのはさすがに付き合いの深い真之介にはわかっていた。
だからこそ、こうやって圭が一度本気で怒ってしまったらそう簡単には元に戻らないことも知っている。
だが、はっきりとした時期は決まっていないとはいえ、確実に真之介が退職するまでの時間は減ってきているのだ。このままでは、圭と気まずい関係のまま終わってしまう可能性もある。
「ほんま、どうしたらいいねん」
そう呟いてうな垂れていた頭を上げると、マンションの入り口に二つの人影を見つけた。
「……アキ、遊馬!」
予想外の人物達に真之介が驚いた声をあげると、それに気づいた遊馬が腰かけていた階段から素早く立ち上がり、大きく真之介へと手を振った。
「おかえり~、真!」
「あ、ただいま……って、え?」
いまいち状況が理解できていない真之介を見て、遊馬と同じく階段へと座っていた奏太が怠そうに立ち上がり、服の汚れをはらいながら言った。
「遅い。いくら夕方とはいえ、こんな暑い中待たせるなよな」
「俺、なんか約束しとったっけ?」
奏太に責められ、真之介は必死にここ数日の記憶を手繰り寄せてみるが二人と約束をした覚えがない。
自分だけが忘れていて二人を待たせていたとしたら、本当に申し訳ない。
そう反省しかけていた真之介だったが、次の遊馬の言葉でそれが無駄なことだと知る。
「ううん。俺らが勝手に来ただけ」
「それなら遅いって文句言うな、サラリーマンの帰宅時間としては普通やろ! だいたい事前に連絡くらい……」
「あ~、もううるさい。とにかく、部屋入れてよ、暑いんだから」
全く悪びれた様子のない奏太に真之介はこれ以上何を言っても無駄だと判断し、ふて腐れながら二人を部屋へと招き入れた。
「で、何の用やねん?」
玄関の戸締りをして真之介が二人へと問いかけると、遊馬が笑顔で答える。
「俺は専門の課題提出で今日まで仕事休み貰ってたの。で、アキは今日は早番だったからさ、たまには真と飲もうかって。最近、真、カフェにも顔出さないじゃん」
確かに遊馬の言う通り、ここ最近は圭とのことで悩んでいてカフェへと寄る余裕すらなかった。
「で、悩みとかさ気兼ねなく話すには真の家のがいいんじゃないかって、アキが」
「え……?」
遊馬の言葉で真之介が奏太の方へと向くと、そのことは言わないように口止めしていたのか恨めしそうに遊馬を睨んだ奏太が、ばつが悪そうに呟いた。
「週末の飲み屋はどこも混んでるだろうし、お前達酔っ払いが店で迷惑かけないように配慮しただけ。俺一人で面倒見切れないし」
そう悪態をつく奏太だったが、それが本心ではなく本当は真之介のことを心配してくれているだということが、真之介本人にも伝わる。
「真、台所借りていい? 材料買ってきたからさ、特製チャーハン作ってあげる」
手にしていたスーパーの袋を見せながら遊馬が言うと、すかさず奏太が言葉を続けた。
「遊の料理、見た目はともかく味は大丈夫だから。その間にカネは風呂入って着替えちゃえば? 自分ちなんだし」
「見た目はともかくってなんだよ!」
「お前の料理は豪快すぎんだよ。だいたい味付けの目分量が分量じゃなくて秒数っておかしいからな」
「でも、とよちゃんは美味しいって言ってくれるもん」
「だから、あの作り方でそうなることが奇跡なんだよ」
袋の中の食材を出しながら騒いでいる二人の姿に、真之介はどこか癒しを感じて笑みを零してしまう。
二人の言い合いを止めるのも勿体ない気がして、真之介はお言葉に甘えて汗を流してくることにした。
きっと、風呂から上がる頃には遊馬特製のチャーハンとやらも出来ているだろう。
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