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うらにわのこどもたち2 それから季節がひとつ、すぎる間のこと
case4.蒼一郎(2/2)
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真白ちゃんが遊びに来たのは、その日の午後の事だった。なんでも、眠兎くんから、「神様」について教えてもらったらしい。
神様。この世界を創った、なんでも知っている存在。
「おれ、ぜってーそーいちろうが好きそーな話だと思ったからさー!」
真白ちゃんは得意げだ。僕も、真白ちゃんの話を聞いていると、どんどん興味がわいて、わくわくしてくる。
「うん、すごいね! 世界には、そんな存在がいるんだ……僕、なにも知らなかった」
「だろー!?」
二人で盛り上がっている隣で、十歌くんは僕達の話に、静かに耳を傾けている。
「いいなあ。僕も先生達から色んなことを教えてもらったけど、神様はもっともっと、たくさんの事を知っているんだろうなぁ。もし神様に会えたら、もっと色んな事を教えてもらうのに」
「おれもー! もし、もっと色んなことが分かったら、……そしたら、みんととも、もっとなかよくできるかもしれねーし……」
おれ、ばかだからさ。あいつのこと、おこらせてばっかだからさ。と、少しだけ悲しそうに、真白ちゃんは笑う。
「真白ちゃん……」
(真白ちゃんは、眠兎くんともっと仲良くなりたいんだな……)
僕から見れば、真白ちゃんはとってもいい子のように思う。元気で、明るくて、色んな遊びを知っていて、いつもにこにこしているから、一緒にいるととっても楽しい気分になる。眠兎くんだって、頭が良くて、僕よりもっと色んなことを知っている。部屋には本がずらっと並んでいて、そのほとんどを読んで理解しているのだから、尊敬している。
ただ、眠兎くんは、誰かに優しくする方法を、知らないんじゃないかと思う。皆それぞれにたくさんいいところがあって、ほんの少し変わっていくだけで、もっと仲良くなれる気がするのに。……それだけはすごく、もったいないことのように思う。
「そうだ。十歌くんは、どう思う? 神様っていると思う?」
聞き役になっていた十歌くんに話を振ってみる。十歌くんは「ん……」と言って目を閉じ、考える素振りを見せてから、「難しいな」と答えた。僕や真白ちゃんの顔に疑問符が浮かんでいることに気付いたのか、やや間を置いて続ける。
「……神という存在もまた、誰も見た事がない以上は、仮説の域を出ない、と俺は考える。個人的な願望だけなら、俺はこの世界に、神という絶対者がいなければいい、と考える」
「なんで? ヒーローよりつえーんだぜ?」
かっこいいじゃん、と真白ちゃんが口を挟む。僕も同じ意見だ。何でも知ってるなんて、すごいし、かっこいいと思う。
だけど、十歌くんはあまり表情のない顔を軽く傾げて、
「お前達は、その〝この世界を創った、何でも知っている存在〟が、〝俺達の味方ではない可能性〟を考えないのか?」
と言った。
「え……っ……」
真白ちゃんが、声をひきつらせる。
「もしも絶対者である神にとって、俺達がどうしようもなく間違った存在だったら? 俺達が正しいと信じて選んだものが、神にとっては間違いだったら? そう考えると、俺は神という存在が存在しない方が有難い」
十歌くんの言葉に、僕はどきっとした。万能の存在が、大きな波のように押し寄せて、僕を飲み込んでしまうイメージが頭に浮かぶ。怖い、と思った。
考えたこともなかった。
もしも、僕達が間違えていたら。
「で、でも、僕達、悪いことなんて何も……」
口をついて出た言葉の、その先が出てこない。真白ちゃんも、僕の腕にぎゅっとしがみついている。おびえる僕達を十歌くんはじっと見つめて、それから表情と口調を和らげた。
「……ああ、悪かった。可能性の話だからそう怯えないでくれ。性格が悪いのかな、俺はそう思ってしまう、というだけなんだ」
「も、もう……なんだよー……。おどかすなよなぁー……」
真白ちゃんが涙声になっている。僕もほっとして胸を撫で下ろす。
「そうだよ。本当に怖かったんだから」
「脅かすつもりはなかったんだ。興味深い話だと思って聞いていた。……二人のそういう知的好奇心や素直さは、とてもいいところだと思う。だから、大切にして欲しい」
「……うん」
「……おー」
すまなかった、と、十歌くんは僕や真白ちゃんの頭をそっと撫でる。少し照れくさいな、と思ったけれど、コミュニケーションが苦手な十歌くんなりの優しさだと分かっているから、素直に受け入れる。
初めて会った時から、そんなに時間は経っていないはずなのに、十歌くんは本当に変わったと思う。初めのうちは、もっとずっと、反応がなかった。僕が一方的に話しかけて、十歌くんはそれを黙って聞いているだけだった。それが、今はこんな風に、一緒にお喋りしたり、触れ合ったりできるようになった。きっと、十歌くんの中で、少しずつ、何かが変わったからなんだと思う。僕も、自分では気付かないだけで、少しずつ変わっているのだろうか。こういう小さな変化やきっかけが、僕達それぞれに積み重なっていったら、いつか大きな変化が、僕達に訪れるのだろうか。
「あ、そーいちろう、おーきせんせーのとこ、行ったほーがいーんじゃねー?」
真白ちゃんが、点滴パックを指して教えてくれる。点滴棒の先でゆらゆら揺れる液体は、あと四分の一くらい。
「本当だ。真白ちゃん、教えてくれてありがとう」
立ち上がる。一瞬、ぐにゃりと視界が歪んだ。前にもこんなことがあった気がする。一度だけじゃない。何度も、何度も。だけど、それ以上は思い出せない。
よろめいた僕を、慌てて真白ちゃんが支えてくれる。
「だいじょーぶか?」
「……うん」
…………あれ?
どうして、僕は今、こんなに不安な気持ちなんだろう。何かが怖い。すごく怖い。何が怖いんだろう。怖いことなんて何も無いはずなのに。十歌くんが、変なことを言ったから?
心臓がはねる。心の奥で、誰かが「思い出せ」と言っているような。そう、とても、大切なことを、忘れている気がするのに。
「そーいちろうが行くなら、おれも行くよ。とーたは?」
「俺は残る」
「そっか。じゃー、行ってくるなー」
真白ちゃんが僕の腕を引っ張る。点滴棒を引きずりながら、部屋を出ようとして、十歌くんに呼び止められた。
「なあ、蒼一郎。ずっと気になっていたんだが、聞いてもいいか?」
「え、何?」
「もし気に触ったらすまない。お前、ずっと点滴をしているだろう?それが気になっていて」
「ああ、これかぁ」
言われて、今更ながら、十歌くんにきちんと説明していなかったことを思い出す。
「えっと、僕は、他の「こども」よりも身体が弱いみたいで。この点滴がないと倒れちゃうんだよ。ほら、十歌くんと初めて会った日。あの日も、倒れて心配かけちゃったでしょ?これが何の薬なのかはよく分からないけど……この点滴は、僕にとって、とっても大切なものなんだ」
「そうだったのか」
僕はうなずく。
「てっきり、先生達から聞いてると思ってた」
「いや。何も聞かされていないし、俺から……先生達、に聞くのも気が引けてな」
「そうだったんだね。気を使ってくれてありがとう」
点滴パックを見上げる。チューブを通って僕の中に流れる、不思議な色の液体。
「そうだ。僕、大規先生に聞いてみるよ。自分の身体のことも、薬のことも、ちゃんと聞いたことなかった気がするし」
「いいのか?」
「うん。ちゃんと分かっていた方が、きっと自分のためにもなるから」
そう言って、僕は十歌くんに手を振る。
「それじゃあ、また後で」
「……ああ」
ドアを閉める。ぱたん、という音とともに、十歌くんの顔が視界から消える。だけど、その顔が少し、思い詰めているように見えたのは、僕の気のせいだろうか。
*
「点滴の中身?」
「はい。僕の点滴って、何の薬なんですか?」
医務室のベッドに横になり、点滴を交換して貰いながら尋ねると、白いマスクの下で大規先生が不思議そうに笑った。
「どうしたの? なにか気になるようなことでもあったのかな?」
「その……さっき、真白ちゃんや十歌くんと話してて、そういえば僕、自分の身体のことも、この薬のことも、ちゃんと分かっていなかったな、って思って……。自分の身体のこと、もっと知っておいた方が、自分の為になる気がして」
「どうなの? せんせー」
パイプ椅子に座って、ぱたぱたと足を動かしていた真白ちゃんも、先生の顔をのぞく。
「うん、少なくとも、何かの病気という訳じゃないから、それは安心して欲しいな。でも……そうだね。その薬は、蒼一郎くんが此処で暮らして行くために、今はまだ、必要なものなんだ」
先生は、僕達と近い目線になるよう、別のパイプ椅子に座る。
「君の身体は、確かに他の子よりも弱い。その点滴があって、やっと皆と同じ生活ができるくらいには。それでも、所長……日野尾先生は、君を「こども」として選んで、とても大切にしている。本当は僕も、蒼一郎くんが点滴無しで生活出来るようにしてあげたいんだけど……不安にさせてごめんね。少しでも早く、その日が来るように、頑張るから」
申し訳なさそうに話す先生の目は優しい。聞いた僕の方が、申し訳なくなってしまう。きっと、先生達は僕のために、色んな事をたくさん考えて、僕が少しでも元気でいられるように頑張ってくれているんだ。
髪にとめたヘアピンを触る。そうだ、身体が弱くても、心は強くいなくちゃ。僕を大切にしてくれる、先生達のためにも。
「先生、あの、……僕が出来ることなんて限られているけど……、もし、ほんの少しでも手伝えることがあったら教えてください。僕も、頑張れることがあったら、先生達と一緒に頑張ります」
「おれもー!」
真白ちゃんも手を挙げる。
先生は、僕達を交互に見つめた後に、
「……二人とも、本当にいい子だね」
嬉しそうに、そう言った。
神様。この世界を創った、なんでも知っている存在。
「おれ、ぜってーそーいちろうが好きそーな話だと思ったからさー!」
真白ちゃんは得意げだ。僕も、真白ちゃんの話を聞いていると、どんどん興味がわいて、わくわくしてくる。
「うん、すごいね! 世界には、そんな存在がいるんだ……僕、なにも知らなかった」
「だろー!?」
二人で盛り上がっている隣で、十歌くんは僕達の話に、静かに耳を傾けている。
「いいなあ。僕も先生達から色んなことを教えてもらったけど、神様はもっともっと、たくさんの事を知っているんだろうなぁ。もし神様に会えたら、もっと色んな事を教えてもらうのに」
「おれもー! もし、もっと色んなことが分かったら、……そしたら、みんととも、もっとなかよくできるかもしれねーし……」
おれ、ばかだからさ。あいつのこと、おこらせてばっかだからさ。と、少しだけ悲しそうに、真白ちゃんは笑う。
「真白ちゃん……」
(真白ちゃんは、眠兎くんともっと仲良くなりたいんだな……)
僕から見れば、真白ちゃんはとってもいい子のように思う。元気で、明るくて、色んな遊びを知っていて、いつもにこにこしているから、一緒にいるととっても楽しい気分になる。眠兎くんだって、頭が良くて、僕よりもっと色んなことを知っている。部屋には本がずらっと並んでいて、そのほとんどを読んで理解しているのだから、尊敬している。
ただ、眠兎くんは、誰かに優しくする方法を、知らないんじゃないかと思う。皆それぞれにたくさんいいところがあって、ほんの少し変わっていくだけで、もっと仲良くなれる気がするのに。……それだけはすごく、もったいないことのように思う。
「そうだ。十歌くんは、どう思う? 神様っていると思う?」
聞き役になっていた十歌くんに話を振ってみる。十歌くんは「ん……」と言って目を閉じ、考える素振りを見せてから、「難しいな」と答えた。僕や真白ちゃんの顔に疑問符が浮かんでいることに気付いたのか、やや間を置いて続ける。
「……神という存在もまた、誰も見た事がない以上は、仮説の域を出ない、と俺は考える。個人的な願望だけなら、俺はこの世界に、神という絶対者がいなければいい、と考える」
「なんで? ヒーローよりつえーんだぜ?」
かっこいいじゃん、と真白ちゃんが口を挟む。僕も同じ意見だ。何でも知ってるなんて、すごいし、かっこいいと思う。
だけど、十歌くんはあまり表情のない顔を軽く傾げて、
「お前達は、その〝この世界を創った、何でも知っている存在〟が、〝俺達の味方ではない可能性〟を考えないのか?」
と言った。
「え……っ……」
真白ちゃんが、声をひきつらせる。
「もしも絶対者である神にとって、俺達がどうしようもなく間違った存在だったら? 俺達が正しいと信じて選んだものが、神にとっては間違いだったら? そう考えると、俺は神という存在が存在しない方が有難い」
十歌くんの言葉に、僕はどきっとした。万能の存在が、大きな波のように押し寄せて、僕を飲み込んでしまうイメージが頭に浮かぶ。怖い、と思った。
考えたこともなかった。
もしも、僕達が間違えていたら。
「で、でも、僕達、悪いことなんて何も……」
口をついて出た言葉の、その先が出てこない。真白ちゃんも、僕の腕にぎゅっとしがみついている。おびえる僕達を十歌くんはじっと見つめて、それから表情と口調を和らげた。
「……ああ、悪かった。可能性の話だからそう怯えないでくれ。性格が悪いのかな、俺はそう思ってしまう、というだけなんだ」
「も、もう……なんだよー……。おどかすなよなぁー……」
真白ちゃんが涙声になっている。僕もほっとして胸を撫で下ろす。
「そうだよ。本当に怖かったんだから」
「脅かすつもりはなかったんだ。興味深い話だと思って聞いていた。……二人のそういう知的好奇心や素直さは、とてもいいところだと思う。だから、大切にして欲しい」
「……うん」
「……おー」
すまなかった、と、十歌くんは僕や真白ちゃんの頭をそっと撫でる。少し照れくさいな、と思ったけれど、コミュニケーションが苦手な十歌くんなりの優しさだと分かっているから、素直に受け入れる。
初めて会った時から、そんなに時間は経っていないはずなのに、十歌くんは本当に変わったと思う。初めのうちは、もっとずっと、反応がなかった。僕が一方的に話しかけて、十歌くんはそれを黙って聞いているだけだった。それが、今はこんな風に、一緒にお喋りしたり、触れ合ったりできるようになった。きっと、十歌くんの中で、少しずつ、何かが変わったからなんだと思う。僕も、自分では気付かないだけで、少しずつ変わっているのだろうか。こういう小さな変化やきっかけが、僕達それぞれに積み重なっていったら、いつか大きな変化が、僕達に訪れるのだろうか。
「あ、そーいちろう、おーきせんせーのとこ、行ったほーがいーんじゃねー?」
真白ちゃんが、点滴パックを指して教えてくれる。点滴棒の先でゆらゆら揺れる液体は、あと四分の一くらい。
「本当だ。真白ちゃん、教えてくれてありがとう」
立ち上がる。一瞬、ぐにゃりと視界が歪んだ。前にもこんなことがあった気がする。一度だけじゃない。何度も、何度も。だけど、それ以上は思い出せない。
よろめいた僕を、慌てて真白ちゃんが支えてくれる。
「だいじょーぶか?」
「……うん」
…………あれ?
どうして、僕は今、こんなに不安な気持ちなんだろう。何かが怖い。すごく怖い。何が怖いんだろう。怖いことなんて何も無いはずなのに。十歌くんが、変なことを言ったから?
心臓がはねる。心の奥で、誰かが「思い出せ」と言っているような。そう、とても、大切なことを、忘れている気がするのに。
「そーいちろうが行くなら、おれも行くよ。とーたは?」
「俺は残る」
「そっか。じゃー、行ってくるなー」
真白ちゃんが僕の腕を引っ張る。点滴棒を引きずりながら、部屋を出ようとして、十歌くんに呼び止められた。
「なあ、蒼一郎。ずっと気になっていたんだが、聞いてもいいか?」
「え、何?」
「もし気に触ったらすまない。お前、ずっと点滴をしているだろう?それが気になっていて」
「ああ、これかぁ」
言われて、今更ながら、十歌くんにきちんと説明していなかったことを思い出す。
「えっと、僕は、他の「こども」よりも身体が弱いみたいで。この点滴がないと倒れちゃうんだよ。ほら、十歌くんと初めて会った日。あの日も、倒れて心配かけちゃったでしょ?これが何の薬なのかはよく分からないけど……この点滴は、僕にとって、とっても大切なものなんだ」
「そうだったのか」
僕はうなずく。
「てっきり、先生達から聞いてると思ってた」
「いや。何も聞かされていないし、俺から……先生達、に聞くのも気が引けてな」
「そうだったんだね。気を使ってくれてありがとう」
点滴パックを見上げる。チューブを通って僕の中に流れる、不思議な色の液体。
「そうだ。僕、大規先生に聞いてみるよ。自分の身体のことも、薬のことも、ちゃんと聞いたことなかった気がするし」
「いいのか?」
「うん。ちゃんと分かっていた方が、きっと自分のためにもなるから」
そう言って、僕は十歌くんに手を振る。
「それじゃあ、また後で」
「……ああ」
ドアを閉める。ぱたん、という音とともに、十歌くんの顔が視界から消える。だけど、その顔が少し、思い詰めているように見えたのは、僕の気のせいだろうか。
*
「点滴の中身?」
「はい。僕の点滴って、何の薬なんですか?」
医務室のベッドに横になり、点滴を交換して貰いながら尋ねると、白いマスクの下で大規先生が不思議そうに笑った。
「どうしたの? なにか気になるようなことでもあったのかな?」
「その……さっき、真白ちゃんや十歌くんと話してて、そういえば僕、自分の身体のことも、この薬のことも、ちゃんと分かっていなかったな、って思って……。自分の身体のこと、もっと知っておいた方が、自分の為になる気がして」
「どうなの? せんせー」
パイプ椅子に座って、ぱたぱたと足を動かしていた真白ちゃんも、先生の顔をのぞく。
「うん、少なくとも、何かの病気という訳じゃないから、それは安心して欲しいな。でも……そうだね。その薬は、蒼一郎くんが此処で暮らして行くために、今はまだ、必要なものなんだ」
先生は、僕達と近い目線になるよう、別のパイプ椅子に座る。
「君の身体は、確かに他の子よりも弱い。その点滴があって、やっと皆と同じ生活ができるくらいには。それでも、所長……日野尾先生は、君を「こども」として選んで、とても大切にしている。本当は僕も、蒼一郎くんが点滴無しで生活出来るようにしてあげたいんだけど……不安にさせてごめんね。少しでも早く、その日が来るように、頑張るから」
申し訳なさそうに話す先生の目は優しい。聞いた僕の方が、申し訳なくなってしまう。きっと、先生達は僕のために、色んな事をたくさん考えて、僕が少しでも元気でいられるように頑張ってくれているんだ。
髪にとめたヘアピンを触る。そうだ、身体が弱くても、心は強くいなくちゃ。僕を大切にしてくれる、先生達のためにも。
「先生、あの、……僕が出来ることなんて限られているけど……、もし、ほんの少しでも手伝えることがあったら教えてください。僕も、頑張れることがあったら、先生達と一緒に頑張ります」
「おれもー!」
真白ちゃんも手を挙げる。
先生は、僕達を交互に見つめた後に、
「……二人とも、本当にいい子だね」
嬉しそうに、そう言った。
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