恋せよ乙女のオカマウェイ!!

隆駆

文字の大きさ
32 / 47
普通の女の子に戻りたい。

ここから先、一切の希望を捨てよ。

しおりを挟む
ガンッ……………!

スキンヘッドが当たり前のように車から取り出したバールを用い、下りたままのシャッターを無理矢理にこじ開ける。

人一人潜れるほどの高さまで開いた所で、「お先に失礼します」と頭を下げるスキンヘッド。

偵察もかねているのだろう。
自ら尖兵を買って出るスキンヘッドだったが、それは渋い顔をした明日夢によって止められた。

「無駄ですよ。………曽根さんの顔を見てください」

明日夢のその言葉に、恐る恐る振り返ったスキンヘッドが見たのは、まさしく嗤う死神。

「折角の機会です。始まりは是非とも、派手にいきたいものですね」

「わ、若頭っ何を…………!!」

ガシャーーーーーン!!

止めるまもなく曽根がその長い足を振り上げ、半端にあいたままのシャッターを思いきり蹴りあげた。

「な、なんだぁ!?」

シャッターの内側から聞こえてくる、ざらついた男の声。
足音は一人ではなく、複数だ。

「行きましょう」

シャッターに片手をかけ、曽根が明日夢を誘う。

「まるで遠足にでも行くような顔ですね」

そんな場合か、と眉間にシワを寄せて罵れば、「あなたは楽しいと思いませんか?」と逆に問い返された。

楽しい?
そんな事を言っている場合か。

そう思いながらも、暴力と血の匂いのするこの場所に、興奮を覚える自分がいるのも確かで。

「楽しみましょう。ここは、遊技場です」

ーーーーーーーーー?

「曽根さん、それはどういう…」

聞き捨てならない言葉を耳にした明日夢が問い返したその時。
懐から、曽根が取り出したものを見て戦慄した。

「!?曽根さん、いきなりなんてものを出すんですか!?」

やはりどう見ても「拳銃」にしかみえないそれに驚き、目を見張る明日夢。

「安心してください。ただのモデルガンですよ」

ちっとも安心できない笑顔でそう笑う曽根の横。
スキンヘッドがぼそりと、「殺傷機能を限界まで高めた代物っすけどね…」とつぶやいたのを聞き逃す明日夢ではない。

「そんなの最早本物とほぼ変わらないじゃないですか!!」
「いいえ、こんなものは所詮ただのオモチャです」

なんなら誰かほかの人間に聞いてみてはいかがですか?と。
妙な事を言い出した曽根の言葉は、すぐに現実となった。


「おい、一体なん騒ぎだ!?」

奥から飛び出してきたのは、ひと目でチンピラとわかる若者。
明日夢は曽根の手から無言でその「おもちゃ」を取り上げると、何のためらいもなくチンピラの足元めがけて滑らせるように投げつけた。

「…なんだてめぇ・・・・・・・らぁ!?」

ドンッ…!!と。。
明日夢の思惑通り、モデルガンは下も見ずに走ってきたチンピラの足元にみごと滑り込み、それに足を滑らせたチンピラが、まさしくコントかというほど見事な勢いで背中から激しく床に倒れた。

その瞬間、すかさずチンピラの元に走りより、足元のを回収した明日夢は、それをチンピラの額につきつけ、静かに口を開いた。

「――――――ーー死にたくなかったら、私の質問に素直答えてください」


素人とはとても思えない、流れるような一連の動作である。

けれど、相手も一端のヤクザだ。
一瞬の動揺から覚めると、この程度の荒事には慣れているのか、「撃てるもんなら撃ってみろよコラァ!!」と勢いをつけて明日夢を恫喝する。

「てめぇ、兄貴になんて口の利き方をしやがる…!!」

背後でいきりたつスキンヘッドの声が聞こえるが、一体明日夢はいつからになったのか。
そんなものになった覚えは欠片もない。

「てめぇどこの組のもんだ!んなオモチャみてぇなチャカで騙されると思ってんのか!?」

あぁ!?と、ヤクザの面目躍如でドスを利かすチンピラ。

それに対し、「………そうですか」と、恐ろしい程静かにつぶやいたのは明日夢だ。

「どうやらあなた方の業界では、これはただのという認識で正しかったようですね」

ねぇ曽根さん、と振り返れば、笑顔の曽根が「もちろんです」と首を縦に振る。

「だから言ったじゃありませんか。ただのおもちゃです、と」

に何を見たのか、明日夢の足元でチンピラが、「曽根って……まさかあの…!?」と慌てふためいた様子で声を上げたが、今更何を言っても遅い。

完全に傍観体制の曽根がチンピラへと手出しをする様子はなく、どうやら明日夢がどう動くのかを観察している様子。

なら。

「せっかくのですから、試しにちょっと、ここで撃ってみても構いませんよね?」

だって、ただの玩具なんでしょう?といえば、その笑みを更に深くした曽根が、楽しげに頷く。

「お好きなようにどうぞ」
「お、おいてめぇっ一体何をっ!!」

さすがになにかまずいと悟ったチンピラ。
だが、モデルガンを構えた明日夢の腕は既に男の頭から徐々に下がっていき、やがて狙いを定めたのはーーーーーー男のシンボル。


つまり、股間。
ある意味、これ以上ないほどわかりやすい「的」だ。


「失敗してしまったらすみません。何分、銃を撃つのはこれが初めてなもので。
多少的が外れてしまっても、大丈夫ですよね?だって、これはなんだから」

失敗しても、成功しても。
どちらにせよ男にとって最悪の悲劇しか思い浮かばないその所業はまさに鬼畜。


「ま、まさか本気で撃つ気か……!?」

「男」を捨てるのは流石に御免だと、だらだらと冷や汗流しながら叫ぶチンピラ。
例えそれがただのオモチャであったとしても、この至近距離から玉を打ち込まれれば悶絶するのは必死。


「……さて、どうしましょうか」

モデルガンを片手に小首をかしげた明日夢は、口だけは微笑みを作りながらも目が笑っていない。
勿論、銃の狙いもつけたまま。

撃たれる。
絶対、本気で撃たれる。

そう確信したチンピラと、なぜか無関係のはずのスキンヘッドまでもが、股間を押さえてすくみあがった。


「な、なんでも話す!!だからそのチャカを下ろしてくれーーーーーーーーー!!!」


チンピラがそう叫んだ瞬間。


明日夢の手元から、「パンッ」という乾いた音が鳴り響いたーーーーーーーーーーー。


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら

赤羽夕夜
恋愛
親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。 問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。 もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

還暦妻と若い彼 継承される情熱

MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。 しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。 母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。 同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

処理中です...